申し訳ないです。
リンネが余りにも原作まんまな過酷な状態なので、
キ ャ ラ を 壊 し ま す
ギャグ的な意味で。
それでは改めて、どうぞ。
昼下がりの喫茶店。
小さくもなく、しかしだからといって大きくもなく。クラナガンのメインストリートに店を構える、何処にでも有り触れているはずの喫茶店。
以前にとある教会騎士が大暴れして半壊となったとは思えないほどに小綺麗で、それが理由で一度遠のいた客足も、ほぼ元通りとなってきている。
「…それで、相談、と言うのは?」
2人用に設けられた窓際の席で、碧銀の髪をツインテールに纏めた少女と、茶髪のポニーテールの少女が向かい合って座る。双方、面持ちは険しく、真剣その物である。緊張の糸が張られているのか、配られたお冷やの氷が、カランと音を立てる事すら煩いと感じるほどだ。
前回の出会いから一月。ばったり
お久しぶりですね、そう挨拶するアインハルトと、見るからに元気のないフーカ。そんな彼女を見かねて、どうしたのか、尋ねたところ、ややあった後、相談があるのだという。立ち話も何なので、連れ立って喫茶店へと入ったのだ。
「今回、ワシがストラトスさんに相談したいのは…」
「ちょっと待って下さい。」
フーカの切り出しに、相対するアインハルトは待ったを掛ける。文字通り出鼻を挫かれた形となったフーカは、眼を丸くした。
「一応、知らない仲ではないので、もっとフランクにいきましょう。私のことは名前で、若しくは『ハルにゃん』とでも呼んで下さい。」
「は、ハルにゃん…ですか?」
「はい。」
誰がそんなニックネームを考え付いたのか。なぜか奥の席で、ニコニコとこちらを見つめる黒髪ツインテールのジャージ姿の女の人がフーカの目に留まったが、気にしないでおこう。…しかし、なぜパンの耳を大量に皿に盛って食べているのか謎だが。
「で、では間をとってハルさん…。」
「お、呼んだかい?」
「先生は呼んでません。」
「なんだよ、残念だねぇ。」
何処から湧いて出て来たのかわからないが、真壁氏をぞんざいに扱うアインハルト。すごすごと引き下がる彼を見送りながら、フーカは再び話を切り出した。
「実は、リンネのことなんですが…」
「リンネさん…と言いますと?」
「えっと、この前ワシと一緒にいた子なんじゃけど…。」
「あぁ…」
確かにあの時、彼女と一緒に居た子が居たな、とアインハルトは思い出す。
…何となく、自身と同じ匂いがするが。
「実は、最近少し余所余所しく感じるんです。」
「余所余所しい、とは?」
「実はワシらは孤児院の出なんです。小さい頃…今も小さいですけど…。って誰がチビじゃあ!?」
何か1人でボケ始めて、1人でキレ始めた。
大丈夫だろうか?この子は…。
「こほん。まぁ、ワシとリンネは言わば幼馴染みなんです。預けられたときから一緒で、あいつが里親に貰われていってからも、たまに出会ったり遊んだりはしとりました。」
それがある日、急に素っ気なくなったのだ、という。メールも、
『そうなんだ。』
『へぇ。』
等と短く簡素な返事しかない。
それが数日そこらで済むならば良いが、1週間、2週間と続くならば、それに伴って如何したものかと心配になってくる物だ。そしてここ最近は返事がない。既読マークは入っているのだが、返事が一向にないという。
「はっ!?これが所謂巷でまことしやかに囁かれる『既読スルー』と言う奴じゃろうか!?」
「落ち着いて下さいフーカさん。1番近しい貴女が取り乱しては、見える物も見えなくなりますよ?」
「う……た、確かにそれもそうじゃが…」
「家には、しっかり帰宅されているのですか?その…家出とか。」
「家にはちゃんと帰っておるようです。でもかなり遅かったんです。それでも心配で家の前で待ってたこともあるんですが…」
その時、目も合わせず、
『何か用?』
ただそれだけ。何だか様子が違って心配だから、そう言うが、
『そう、でも私は問題ないから。それじゃ。』
それだけ言い、返事も聞かずに邸宅に入っていってしまったのだ。
「…あからさまに今までのリンネと様子が違っとりました。…なにかあったんじゃろかと、ワシは心配で…。」
「…なる程。」
「そういえば…右手に包帯を巻いておったんじゃが、何か関係が…?」
確かに聞いたところの態度は、出会った時の雰囲気と真逆だ。あの時は表情も柔らかく、そんな突っ慳貪な態度をとるとも到底かんがえられない。何かあった、と言うのは間違いなさそうである。
「…解りました。リンネさん、彼女の変化について、不肖アインハルト・ストラトス。及ばずながら助力させて頂きます。」
「え、えぇんですか?」
「頼られて、嫌な気をするほど、私は余裕がないわけではありませんよ?私達で、リンネさんを元の元気な姿に戻しましょう!」
「はい!ハルさんが居て下さるなら百人力です!よし!まっとれよリンネ!」
「おーおー、若いって良いねぇ。だが、このハルさんが協力するからには、大船に乗ったつもりで…」
「先生、引っ込んでいて下さい。」
「……はい。」
再び湧いて出た彼に、静かに、そして冷ややかな視線と言葉で凄ませる彼女は、フーカにとって頼もしいと同時におそろしくもあった。
「ケーキセットとシュークリームセット、お待たせしました!」
「ありがとうございますヴィヴィオさん。」
「いえいえ。フーカさんも、ゆっくりしていて下さいね?ママのシュークリームは絶品ですから。なんせ、
「では、その娘であるヴィヴィオさんも、その味を受け継いで、超えられるようにならないといけませんね?」
「あ、アインハルトさん。ハードル高いですよ。」
「ヴィヴィオさん、子は親を超えるものですよ?」
「それはそうかも知れないですけど…。」
「まずは美味しい食パンを焼くところからかも知れませんね?チャンピオンがそれを所望しておられるようですし。」
「なっ!?ウチは希望はしとらんよ!?美味しいパンの耳があればえぇんやから!」
「そのパンの耳は、元々何から切り落としたものですか?」
「そりゃあ食パンで………ありゃ?」
「そう言うことです。」
巡り巡って、食パンと言う物は良い意味で罪作りな食べ物であった。
その日の夜
とある路地裏で鈍い音と共に、ドサリと何かが倒れ伏す音が響いた。
倒れ伏したのは、屈強な男。その背丈や肉付きから、二十代半ばと言ったところで、鍛えているのか筋肉が隆々としていた。
だがそんな男を打ち負かす相手というのは、どこまで鍛えた男なのか?
しかし、その相手は普通ではなかった。
「て、テメェ…」
息も絶え絶え、そして消え入りそうな声で男は言う。目の前には白。全身の殆どを白のドレスにも似た衣装に身を包み、そして長い銀の髪。そして異型とも取れる顔につけたバイザー。見たところ、10代後半の女性と見受けられる。
「…私の前で不届きな業を働くからです。我が
「ほ、本当に女か?」
「無論。しかし、男であれ女であれ、咎人には断罪せしめるのが我が宿命。故に、貴公には咎を償う義務を。」
「ひぃっ!?」
男にとってはただひったくりをしただけだった。勿論それは犯罪なのだが、警備組織の代わりに追い掛けてきたのは、人外染みた脚力で追い掛け、同じく腕力で自身を薙ぎ払う女性。
「怖がる必要はありません。人は罪を重ねます。それが人としての枠組みの中で、断罪されるか否か…。貴方は、彼女のパンドラの箱を強奪するという禁忌を犯しました。それは人の枠組みでは処断されるべきこと。」
「…人のカバンを開けてはいけないものみたいに言わないで下さい。」
ひったくり被害の、同じく銀髪ツインテールの女性は、自身のカバンを禁忌扱いされたことに、微妙に表情を引き攣らせる。
「しかしそれを開けてしまった愚者と同じく、この男はやってはいけないことに手を出してしまったのです。衝動に敗北した。それは心の弱さ。それは罪!そしてそれは人の心の闇!!我が右手に疼く暗黒の拳が、闇を以て闇を制せと囁くのです。」
よく分からないが、右手に包帯を巻き巻きしているのが目に入る。だが、先程問題なく拳を振るってきたので、怪我をして当たるわけではないらしい。
「さぁ!闇にのまれなさい!」
瞬間、魔力の解放。だからといって闇がどうのこうのなるわけでもなく、身体能力を高めただけだ。
「くっ…!まだ我が力では、闇の眷属たり得ない…!それだけに闇を…扱いきれないと…!?」
何も起こらないのは、彼女の魔力資質もあるのだろうが、だからといって悔やむのはいかがな物か。右手を押さえ、まさに断腸の思いと言わんばかりに顔をしかめた…様に見える。
「ならば、我が右手を触媒に、闇の力を解放します!…さぁ!我が右手に宿りし暗黒龍…!今その力を…」
「あの。」
「なんですか?今、邪王炎殺黒龍、その召喚の儀式を執り行っています。邪魔をすれば、貴女も龍によってその身を屍に…」
「あの人、逃げてますよ?」
見れば、ひったくりの男は、脚がもつれんばかりの走りで、必死に路地を走り抜けていく。その距離はかなり開いているが、
「逃がしませんよ。」
銀髪の女性の脚力を以てすれば、追い付くのは容易い。しかし、その前に…
「狙い撃ちますも」
構えたのは、黒とライトグリーンで彩られた狙撃銃にも似たデバイス。
ズドン!とそのバレルから撃ち出された魔力の弾丸。
それは今駆け出さんとする彼女の真横を通り過ぎ
路地を銀の軌跡を残し
男に迫り
その頭を撃ち抜いた。
非殺傷であるために死ぬことはないが、気絶させるには問題ない。
「目標達成、想定内の結果…いえ、貴女の乱入は想定外でしたが。」
「…どういう意味ですか?」
「元々私は、おとり捜査をしていました。連続ひったくり犯を現行犯で捕まえるための。…まさかフリーの方も追い掛けるとは思いもしませんでしたが。」
狙撃銃タイプのデバイスを格納し、保安課に連絡を取る。
「隊長?こちらアランソン。目標確保。…現地で民間協力の方が捕縛に助力してくれまして。…はい、格闘技をやっているのか、かなりの力を。…はい、そうですね。引き留めて……あ。」
隊長と呼んだ人物が、協力感謝を直接述べたいので、引き留めておくように指示してきたが、そうしようと声を出そうとした時にはすでに彼女の姿は無く、路地には銀髪ツインテールの少女…シエル・アランソンだけであった。
「すいません隊長。すでに立ち去られてました。……はい、かなりの実力者です。本人曰く、召喚儀式魔法を扱えるそうで、何でも龍を召喚すると。…はい、もしかしたら、アルザスの一族に由来する方かも知れませんね。…はい、ではこれより帰投します。」
今回の件で、自然保護隊に所属する少女に、ちょっとした聴取が入ったのは別の話だ。
「まだ…まだ足りない。もっと闇の力を高めなければ…私は護れない…!」
包帯を巻いた右手を見つめ、ぎゅっと硬く握り込む。先程の10代後半の姿は無く、10代前半の姿となった少女…リンネは、自身の力に悔やみながら、夜の街に消えていった。
リンネ・ベルリネッタ
ちょっと早い中二病
皆さんお待ちかねの彼女が満を持して登場。