ミッドチルダの英雄(ヒーロー)   作:ロシアよ永遠に

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本編6話視聴後

ミーさぁぁぁん!!


ミッドチルダの暗黒英雄(ダークヒーロー)

リンネ・ベルリネッタの朝は早い。

ベルリネッタ・ブランドの社長の邸宅だけにその敷居は広く、それ故に使用人も数人雇われているが、彼女らの起床時間とそう変わらない時間帯に目を覚ます。

 

「おはようございます、リンネお嬢様。」

 

「おはよう、いつも通り、今朝も忌々しき日輪の昇天(今日も綺麗な日の出)この邪眼に焼き付けてくる。(何時もの場所で見てくるね)

 

「お気をつけてお嬢様。」

 

「うむ。」

 

…何やらおかしい朝の挨拶ではあるが、至ってこの家では平常運転である。

 

誉れ高き先々代の邪眼皇帝(大好きな、おじいちゃん)今日も我が覇道を貫いてこよう。(今日も日課のランニングに行ってきます)

 

階段の踊り場の壁に掛けてある、養祖父の巨大な肖像画にそう言うと、自身の両親の会社が手掛けるジャージに身を包み、未だ薄暗さと朝霧の残るクラナガンへと走り出す。

 

「ふっ…今朝も中々に冷気が我が身を刺すものよ。(今日もよく冷えるなぁ)終焉の時は近いな。(冬が近付いてきている証拠かも)

 

いくらジャージを着込めど、寒さは完全にシャットアウトできないもので、リンネは季節の移り変わりを肌で噛み締めながら、何時ものランニングコースを駆け抜けていく。

このコースを走るようになって早1年。最初の頃と比べてかなりの距離に伸びたもので、その中を走ることで朝特有の街や人の風景を楽しむのがリンネの楽しみであり、朝日もその一つだ。

…そんな中で、リンネにとって出会いたいが出会いたくない少女とばったり出会す。

 

「リンネ…」

 

フーカ・レヴェントン。自身の幼馴染みにして、孤児院時代、自身を何時も守っていてくれた少女だ。

バイトのシフト入りの時間なのか、着替えの入っているであろうバッグを手にしている。

 

「フーちゃ……んんっ!何か用?」

 

思わず笑顔で返しそうになるが、いかんいかん、と表情を切り替え、何時もの冷めた目で返す。

 

「いや…その、おはよう?」

 

「…おはよう。…要件はそれだけ?」

 

「そ、そうじゃけど…その…前から思っていたんじゃが、もう少し話はできんのか?」

 

「………。」

 

「その…何となく、最近余所余所しいから、如何しても気になるんじゃ。」

 

「別に。ベルリネッタの家での習い事が多いから、余りそう言ったことに気が回りにくいだけ。」

 

「そうか…」

 

ベルリネッタへの養子に出たことで、今まで余り大きく感じなかった差が、ここに来て目に見えてフーカの目の前に、まるで壁のように聳え立っているように見えた。

自身の友人であるリンネが、何処か遠く感じてしまうだけに、フーカは少し寂しく感じてしまう。

 

(あぁぁぁぁっ!!フーちゃん!!フーちゃぁぁああん!!!!フーちゃんにそんな表情させてしまうなんて!そんなつもりはないのに!でもでも!そんな捨てられた子猫のような顔をするフーちゃんも、す て き☆)

 

内心、リンネはこんなことを考えていたりするのだが、表面に全く出ないのは、ポーカーフェイスの極みといったところだろう。

 

「何か、何かワシに出来ることがあれば…頼って欲しいんじゃ。その…」

 

「…私には私、貴女には貴女しか出来ない事がある。それは悩みとして人と相談したとて、人は自信でその(カルマ)(コクーン)を打ち破らないといけない。それに今の私には天からの裁き(ジャッジメント)を、暗黒拳(ダークネス・アーツ)の名のもとに下すという使命がある。その天より堕ち出でた堕天使(ルシファー)の如き行為は、私にしか出来ない事。」

 

「あの…リンネ…さん?」

 

「闇を以て闇を制す。それが私の……」

 

瞬間、

けたたましいまでの警笛が2人の耳につんざくように鳴り響く。フーカは勿論、一瞬とは言えどもリンネもその表情をしかめるほどに。それは明朝における目覚まし時計の音とは桁違いなほどに大きく、五月蠅いものだ。

 

「な、なんじゃ…?」

 

「これは…」

 

あまりの警笛の音量に、消え入りそうになる声。

フーカは無意識に耳を手で塞ぐが、それでも掌を通して耳にそれは鳴り響く。対してリンネは耳を塞ぐことなく、周囲を鋭い目つきで見回していく。まるで冷静に警笛の現況を探し当てるかのように…。

そしてそれを目に留めると、躊躇うことなく、彼女は走り出していた。

 

「お、おい!リンネ!」

 

フーカは思わず後を追うが、彼女の脚力には到底追いつけず、遅れて駆けていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミッドチルダ中央銀行

1年前、強盗が押し寄せ、一人の女性によって犯人が制圧された場所。

中央銀行とあってその合計的な預金額は次元世界トップクラス。分店などで集中しないようにはしているが、それでもここに金銭が集うのは必然だ。

そして、それを狙う輩も勿論いるわけであり…

 

「ちっ…しくじったか。」

 

防犯装置の音がけたたましく鳴りひびく中、覆面を被った強盗の一人は舌打ちする。下調べをある程度していたのだが、巧妙に隠されていた警報装置に引っ掛かってしまった。

 

「こうなった以上仕方ねぇ。早いとこ金庫の扉を爆破して、ぶんどれるだけぶんどって引き上げるっきゃねぇ。おい、爆弾はどうだ?」

 

「へへっ、問題ねぇよ。この特殊合金も吹き飛ばすコイツなら、こんな扉の一つや二つ消し飛ばせるぜ。」

 

「中のブツまで吹き飛ばすなよ?」

 

「解ってるって!」

 

コイツらが言う爆弾。それは勿論質量兵器を指すことになる。いざという時に牽制と制圧を出来るようにマシンガンも同時購入。セット割引で10%オフ。決して安い買い物ではなかったが、手に入る見返りも大きいので、結果としてもうけが大幅に上回るのだ。

全く…密輸入は最高だぜ。

 

「ん?センサーに魔力反応?」

 

「もう局が来たのか?それにはまだ早くねぇか?」

 

銀行周辺に予め仕掛けておいた魔力センサーに引っかかり。だが、管理局が来るまでの予想時間を立てるのも強盗の重要な下調べの1つ。最低でも五分は掛かると想定していたのだが…。

 

「近くに巡回中の奴でもいたか…なんにせよ、質量兵器なら少しは時間を稼げる。それに相手は一人なら、押さえられるだろ。」

 

強盗団は5人、一人が爆弾を設置して、他の連中が時間稼ぎ。あわよくば、接近してくる反応を制圧して、全員で金庫に惜しいって金を奪い、そのうえで逃走できれば…。

 

「この反応の位置なら…もうすぐ目視出来るが…」

 

それと同時に、警報鳴り響く中で、カツーン…、カツーン…と、硬い靴底が床を鳴らす音が聞こえてくる。ゆっくり、ゆっくりと一歩ずつ。一人だけと解っているにも関わらず、その得体も知れない相手の恐怖に、強盗団はゴクリと固唾を飲み込む。

現れたのは

 

 

長い銀髪で10代後半を思わせるような体つきの女性。そして身に纏う銀のドレスにも似たバリアジャケット。目元を隠す無機質なバイザー。だがそのバイザー越しに、得も知れぬ威圧を孕んだ視線を、彼等は感じた。

 

「て、てめぇ!それ以上寄るなよ!」

 

突き出すは、質量兵器のマシンガン。その1発1発の威力はともかく、装弾数と連射力は高いが為に、牽制にはもってこいだ。無論、弾が当たるならば、それはそれで構わない。

しかし彼女は、強盗団を一瞥すると躊躇いも何も無く、一歩、また一歩と、そのヒールを鳴らして近付いていく。

 

「さぁ…」

 

透き通ったような声が、強盗団の耳に染み渡る。それは優しくも、それ故に感じる威圧感を孕んだもの。

 

「貴方達の罪を数えなさい。」

 

瞬間、

 

彼女が一瞬、ほんの一瞬ぶれたかと思えば、その姿は忽然と姿を消す。

幻術魔法かと、センサーを確認するも、反応はない。が、

 

「グワーッ!」

 

悲鳴に振り向けば、爆弾を仕掛けていた男が、その腕を握り潰されんばかりに件の少女に掴まれている。

 

「イヤー!!」

 

「グワーッ!」

 

ボキッ!と鈍い音が、この狭い空間に響いた。

肘をへし折ったのだ。

外側から自身の肘を打ち付けて。

 

「俺の腕ぇ…!!」

 

「次は…。」

 

再び彼女の姿が消えると、1番遠くにいた強盗の頭を掴む。

 

「あぎ…!?」

 

「堕ちなさい…!」

 

なぜかそこにあった靴箱に、つかんだその頭を思いっきり打ち付ける。

ぐしゃりと、嫌な音と共に飛び散る鮮血的な何か。

 

「ひっ!?許して…!お、俺が悪かった!だから!」

 

強盗の一人が、ニホンで有名な全身全霊の謝罪。人それを土下座という。

 

「私の中の邪気眼王(ソウル)が言うのです。」

 

「え…?」

 

「悪党、許すまじ!慈悲はない!」

 

土下座をしていた彼の腹に、彼女の剛脚が打ち込まれる。予期していない衝撃に、強盗は容易く吹き飛ばされ、背中から靴箱へ強かに背中を打ち付けて、意識を飛ばした。

 

「さて、次はどなたですか?」

 

瞬く間に3人をノックアウトした彼女に竦み上がり、二人は一歩後退る。

だがリーチで言えば、強盗の方が上だ。それを再認識した彼等は、手に持つマシンガンを構える。

 

「死ねやぁぁぁ!!」

 

激昂した声と共に、眩いまでのマズルフラッシュと火薬の爆発音が空間を支配する。

最早乱射に近い。

半狂乱で、

 

碌な狙いもつけず、

 

ただひたすらに。

 

 

 

 

 

 

体感的には長いようで、しかし実際時間にしては短いながらも、マガジン一本分を丸々撃ち尽くした。

 

「…へへ!これだけ撃ちゃあ、あんな化け物でも…!」

 

「もうお終いですか?」

 

男達には、聞きたくもない声だった。

アレだけの弾を撃った。しかしそれらは既に背後にいた彼女に当たるわけもなく、全てが文字通り無駄弾に終わってしまったのである。

 

「では…再開しましょう…!」

 

一人の頭が掴み、脚を払って顔面から地に打ち付ける。再び、飛び散る赤い液体。それだけで既に、無力化できたものを、さらにヒールで後頭部を踏みつけて追い打ちを掛ける。

 

「あと一人…。」

 

「く、来るな!来るなぁ!」

 

マガジンを取り替え、再び弾をばら撒かんとするが、彼女はそれを見逃すはずもない。

瞬時に間合いを詰めると

 

 

 

 

 

脇腹に抉り込むように左の剛拳を打ち込む。

 

(…が…!アバラの…6番と7番を…持っていかれた…!?)

 

何かがへし折られる感覚を感じながら、男はその痛みに耐えられず、身体をくの字に曲げてしまう。

しかし、項垂れた視線、その先にあるはずのない、バイザー少女の顔。

 

「ふんっ!」

 

極限まで屈み込んで、脚に溜めた力を一気に解放する。

強靱な脚の筋肉からの、カモシカを思わせるような跳躍。

それに剛腕から放たれる拳を乗せて、顎を一気に撃ち抜く。

 

くの字のように屈んで、次は『つ』の字のように仰け反る強盗。その目は最早、2発の剛拳によって焦点が合わないほどにまでなっており、身体に与えられたそのダメージの大きさを物語るには容易い。

もはや制圧、と言う面では充分すぎる程なのだが、彼女はトコノン容赦が無かった。

仰け反るとともに、覚束ない脚で後退る強盗。少し開いた間合いを詰める。拳を自身の前でブロックし、その間からしっかりと相手を見据える。リズムを取り、そして身体を左右に揺らしながら、一歩、また一歩と距離を詰めていく。

1往復、2往復とスウィーピングを重ねる毎に、彼女の身体を揺らす速度は徐々に加速していく。それはまさに旋風。振り子の如く、上半身を揺らし、加速を重ね、彼女の身体…いや、頭の軌道が目に見えて分かるほどにまで成る。その形はまさしく∞。加速に加速を重ねたそれは、残像が残るほどに。

そして、

 

神速の拳が、強盗の頬を捉えた。

 

「ぐぉっ!?」

 

何事かと、飛ばしかけていた意識を無理矢理覚醒させられ、目を見開く。だが、右からの一撃によろめいたその目の前に、彼女の右拳が既に迫っていた。

 

「がっ!?」

 

今度は左側へ。

そう気付いたときには右側へ。

もはや、訳が分からない。左右に身体を振られ、そしてその度に頬にとんでもない痛みが走る。気を失うことさえ許されない。ラッシュに次ぐラッシュ。

 

 

 

 

 

…それがどれだけ続いただろう?

 

最早数えることを止めた強盗。その顔は最早覆面の上からでも分かるほどにまでパンパンに腫れ上がり、レフェリーが居たならば試合を止めているか、相手のコーチがタオルを投げ入れているだろう。しかし、この場にそんな人間は居ない、リング外の世界。

しかし…

 

「リンネ!やり過ぎじゃ!もう止めろ!」

 

自身の身体を抱き抱えるかのように後ろから羽交い締めされた。予期せぬ身体の束縛に、ラッシュのリズムが遅れてしまい、怒濤の連撃で無理矢理立たせていた強盗の身体は、糸が切れた操り人形のようにドサリと倒れ込んでしまった。

 

「……如何してここに?」

 

「それはこっちの台詞じゃ!銀行強盗が入り込んでいたと分かるや否や、管理局の人が来る前に突入して!」

 

「だからって、追い掛けてくる必要は無いでしょ?」

 

「そ、それはそうなんじゃが…ワシはリンネが心配なんじゃ…!」

 

(ぶほっ!?フーちゃんに心配!?あぁ…僥倖…!なんという僥倖…!)

 

内心は鼻血が噴き出しかねないピンク色空間だが、やはりそこはポーカーフェイス。表情には微塵とも出さないバイザーの少女リンネ。

 

「こ、これは…!この現場は…!」

 

リンネが脳内で悶絶していると、三人目の少女がこの悲惨な現場へと足を踏み入れた。

 

「は…ハルさん…?」

 

「貴女は…フーカさん?」

 

武装形態へと姿を変え、英雄(ヒーロー)スタイルのバイザーの着用をしたアインハルト。どうやら特務として管理局よりも一足早く、この現場に辿り着いたようだ。

 

「この状況…説明して頂いても?」

 

「あぁ…それは…。」

 

「…私はこれで失礼します。」

 

フーカの羽交い締めが解かれたとき、リンネはヒールを鳴らして出口へと向かう。最早やるべき事は終わった。ならば自身がここにいる理由もないだろう。

 

「待って下さい。この状況で現場に居た貴女には、事情聴取を…」

 

「私が、強盗を制圧しました。…以上です。」

 

「お、おい…!」

 

「………。」

 

言うだけ言って、リンネはその脚力を解放して、一瞬にしてその場を後にした。最後に一瞬、ほんの一瞬、アインハルトをバイザー越しに睨んでいたのは気のせいが。残されたのは、状況が今一飲み込めないアインハルト。そして、友人の豹変振りに唖然とするフーカ。

 

 

「何でじゃ…何で…お前がそこまで変わってしまったんじゃ…!」

 

自身の知る幼馴染みの姿はそこには無く、唯々その有り余る力を振るう暴君の如く。必要以上にダメージを与えられた強盗には逆に同情してしまう程だ。

 

「…とりあえずフーカさん、貴女だけでも、事情聴取をお願いしても良いですか?」

 

「あ…はい。勿論です…。」

 

友人の豹変が未だ受け入れきれないままに、奇しくも1年前と同じ施設で1つの事件が再び幕を下ろした。しかし同時にこれは、ミッドチルダの英雄(ヒーロー)。それと双璧を成す、人呼んで、『ミッドチルダの暗黒英雄(ダークヒーロー)』となる少女の物語。その幕開けであった。




厨二って難しいね(´・ω・`)

ちなみに強盗五人の扱い

1人目から4人目
本編でフルボッコされたいじめっ子にやったやり方。
あっちでは4人目と1人目は同一人物なんだけどね。

5人目はあの長編有名ボクシング漫画と、ミウラさんの試合とが被ったので何となく。

ミウラ(アバラの6番と7番が…持って行かれよった…!)

こんな台詞が浮かんだのは自分だけだろうか、
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