ミッドチルダの英雄(ヒーロー)   作:ロシアよ永遠に

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SM判定フォーラム(inミッドチルダ)

暗く、そして広大な空間。

小さくざわめく人々の声が木霊する。

その響き具合と声の種類から、かなり広大な部屋と大規模な人数がひしめいていることが理解できる。

なぜ集まっているのかは当の本人達にしか判らないが、余程の事が始まるのだろう。喧騒の中には、歓喜の声も伺える。

ざわりざわめく中で、不意に天井から一条の光が差し込んだ。それが皆のざわめきをしん、と抑え込み、一縷の静寂を生み出す。

そして…

差し込んだ光に当てられた場所。それを基点にして暗がりの中で朧気ながら、その周囲の形を視認させていく。

まるでステージのような床取り、そしてそのど真ん中には演説者が使用するような机と、その上に置かれたマイク。それを扇状に取り囲むように配列された座席。それが階段状に並べられ、それに座する人々。どこかのホールが、もしくは議事堂のようなこの場所で、舞台の中央でスポットライトに照らされた人物。

それは若い男のようだった。

黒い、そして短く整えられた髪。身に纏うのは白のカッターシャツに白いスーツのパンツ。そして黒のノーズリーブのベストに、胸元に白いネクタイのような布地。

これくらいならば、整えた服装の男性と思えるだろう。何処か高貴ささえ感じるかも知れない。

しかし、その外装を包むかのような漆黒のマント。そして一際目を惹くのが、眼とその周囲を覆い隠す仮面(ドミノマスク)。端から見れば、正装して仮面舞踏会にでも行くかのような出で立ちである。

正直…この場に居合わせようものならば、不審者として通報して、警備員に突き出しかねないだろうが、誰もそうはしない。多少のざわめきは起こりはしたが、そこまで大きな騒ぎではない。そして…マイクにその口を近付けると、その言霊を発した。

 

『家畜共。』

 

第一声がこれだ。

家畜

つまり…牛や豚など、そう言った類の物と同じく、集まってきた人々を呼びつけた。

自身を畜生と同じ扱いをされて憤慨する、と言うのが普通なのだろう。しかし、ここに集まった人々にはそう言った物を発する者もおらず、ブーイングのブの字すらない。むしろ平然としている。

 

『世の中には…数多次元世界には行く数千億をも超える家畜共がピーキャーピーキャー騒ぎながらその生を謳歌している。だが…次元世界広しと言えど、その概念的な種類は二つに分けられる。その違いは何か分かるか?』

 

しん…と静まり、そしてスポットライト以外が暗転したその空間で、誰も、何も応じない。

静寂と共に、長くも感じる実質数秒の時間の後に、一人の傍聴者がすっと手を上げた。深緑の髪と、そして座っていながらも、スラリと伸びた高身長が光る。だがやはりその顔には、舞台にいる男と同じく、仮面が付けられていた。

 

「男と女、かな?」

 

『んん、まぁそれも一理あるぞ、真壁はる…いや、家畜番号()()()()。だが…このフォーラムに参加した君達にはあえて言わせてもらう!』

 

そうすると、主催者たる彼は仰々しく手を横へ一杯広げ、こう宣った。

 

『人生はSかMかであると!!』

 

SかM

つまり加虐的快感の持ち主であるか、逆に被虐的快感の持ち主であるかだ。

 

『貴様ら家畜共がこのフォーラムで学ぶべき事。それは即ち周囲のSM判定である!

世の中には須く、SとM、その二つに分けられる。例えば…そうだな。貴様らが座っているその椅子!座られるために生まれたと言っても過言でない!それはMとして座られる快感を得る、そう位置付けられて生まれてきたのだ!つまり生まれながらのM!!

そしてこのホール!この空間!家畜共がひしめき合い、その圧迫感と窮屈感を味わうことが快感のM…と思わせておいて、暗い空間を演出することで、恐怖心と不安を煽り、暗所恐怖症や閉所恐怖症の家畜を見て楽しむ中々のS!』

 

最早無茶苦茶なこじつけではあるが、誰も意義を唱えることはない。むしろ聞き入っているようにすら聞こえる。

 

『この上から照らすライト!この暗い空間で眩い光によって、眼に強烈な刺激を与えようとするドS!!

この机!演説者が時折その演説内容にインパクト与える際に良くこれを叩くが、それを今か今かと待ち望むドM!!』

 

そう言った後に彼か机を叩く。するとどうだろう。Mと判定された後にその行為を見てしまっては、心なしか机が悦んでいる…そんな幻覚が、フォーラムを受けに来た大半に見受けられた。

 

『見えたか?感じたか?これは貴様ら家畜共がこの机にMと言う先入観を持ち、そしてそれに納得をしているからだ。そして何より!この机がMであることが正しいからだ!

ふふ…フハハ…!よし!それでは今から私が、貴様ら家畜共をSかMかに分別してやる!

縛られて嬉しいか!?それならお前はMだ!!

叩いて嬉しいか!?それならお前はSだ!!

んん?特にどっちでもない?なんて言う奴は邪道だ!!だが……

 

私から言わせれば【自主規制】は【閲覧不可】で【放送禁止用語】だ!だが時に!!』

 

ビシッと仮面の男は客の一人に指を指す。

 

『ヴァイス・グランセ…もとい!出席番号()()()!貴様はどちらにも分類されない!』

 

「ど、どういうことだよ!?」

 

『あえて言わせて貰おう!!\(^o^)/であると!!』

 

「どう言う意味だよ!お前の鎖骨折るぞ!」

 

『おおっと!?中々に反抗的だな?認識としてはSの素質ありと改めなければならないだろうが…生憎と私の判定は覆らない!』

 

未だ抗議が止まないヴァイス…もとい、NO.830だが、仮面の男は構うこと無く続けていく。

 

『男共の判定は置いておこう。この場にいる貴様ら家畜共は各々互いに評価し合えば問題ないのだからな。本題は…この場にいない雌【ピー】共の判定だ。』

 

ザワ…

  ザワ…

    ザワ…

 

ひしめき合っていたフォーラム参加者からざわめきが生じ始める。この集会に参加しているのは、言わずもがな、主催者である仮面の男が、男性ばかりに声を掛けたが為に、この場に女性は一人も居ないのだ。

 

『フハハハ!困惑しているようだな、よいぞよいぞ。』

 

してやってり、と言わんばかりの愉悦の笑みを浮かべる男は、手元の端末を操作して、舞台の前方…客から見れば後方に備え付けられたインジェクターを起動させる。無線で接続されたPC、そこに内蔵されたデータが、まるで映画の如く、仮面の男の後ろにあるスクリーンに映し出される。

そこに移っていたのは…茶色く、そして長い髪を左頭部でポニーテールにした女性。白と、そして青の管理局制服に身を包み、カメラに向かって愛らしい笑顔を向けている。

 

「なのは…なのはぁぁぁ……ハァ…ハァ……!!」

 

『はいはい、落ち着いておけフェレットもどき。』

 

興奮する司書長を窘めつつ、仮面の男は続ける。

 

『諸君の中で知らない者はいないだろう。エースオブエース…管理局の白い悪魔…等々異名を持つ高町なのは一等空尉だ。まずは主人公であるこの【ピー】豚を、SかMかに分別してみると…』

 

「「「「「「S!!!!!」」」」」」

 

『お、おう…』

 

万場一致で、会場内の全員が心と声を一つにして判定を下した。

 

『…なるほど、貴様ら家畜共も中々に選別眼があるようだ…よいぞよいぞ。無論!高町なのははSだ!!理由は…わかるだろう?』

 

会場内の半数近くが震え上がったように感じた。

訓練や教導の中で、彼女に教えを請うこともあるし、映像などで戦闘風景を目にすることもあるだろう。そして…その恐ろしいまでの戦法と火力を…。

鋭く、そして高速で相手を撃ち抜かんとする誘導弾。

相手を飲み込んでなお、後方を浄土に変えかねない砲撃。

唐突に絡ませてくる拘束魔法。

そして何より、縛り上げた相手を、彼女の代名詞と言われるほどの集束魔法で息の根を止めてくる。

普段の彼女は物腰柔らかく笑顔を振りまいているが、その実、戦い方はまるで悪魔か何かの所業を思わせるまでに、徹底して相手を墜としに掛かってくるのだ。それに畏怖を抱かない者がいるだろうか?

 

『では万場一致で、高町なのははS!』

 

「「「「「「「異議無し!!!」」」」」」」

 

こうして、高町なのははSと判定され、周囲から更なる畏怖の視線を向けられ、一部の特殊な性癖の持ち主からは、鼻息を荒くして熱い視線を送られる事となる。

 

『次は我が愛しのいも……んんっ!フェイト・T・ハラオウン執務官!!』

 

「「「「「「「Foooooooohhh!!!!」」」」」」」

 

「フェイトちゃーん!俺だー結婚してくれー!!!」

 

「なーな!!なーな!!なーな!!」

 

 

「ハァ…ハァ…フェイトタソ……!!」

 

家畜共狂喜乱舞である。

容姿端麗、だがその見た目もさることながら、穏やかで優しいその振る舞いに、局の男共はメロメロだったりもする。しかしその評判とは裏腹に、色恋沙汰の噂は全くと言って良いほど立たず、告白、そしてそれをすっ飛ばしてプロポーズまでした男どもはやんわりと断られ、悉く玉砕することとなってしまったという。

 

『フフフ…家畜共!!まさしく待っていたと言わんばかりの反応だな!よいぞよいぞ!…しかし!!!貴様らにはやらん!!』

 

「「「Booooooooh!!!」」」

 

クロ…もとい、仮面の男の発言により、会場内に激しいブーイングの嵐が吹き荒ぶ。

娘はやらん!的な父親の発言のそれと変わりないだけに、正体を隠している仮面の男の言葉と言う物は、家畜共にとっては納得できないものであった。

 

『フッ!中々の反抗心だ!!貴様ら、中々Sの素質が有るではないか!』

 

だがそんなブーイングも、仮面の男にとってはSかMかの判断材料にしかならない。喜々として、彼等の反抗を受け入れる。

 

『先ずは家畜共。この映像を目に焼き付けるが良い!』

 

指パッチンと共にスクリーンに映し出されたのは、幼き日のフェイト。その姿はその時期に着用していたボディースーツを彷彿させるかのような、身体のラインにぴっちりさせたもの。

そう、

幼き日のバリアジャケット。

 

『Foooooooooow!!』

 

家畜共大歓喜である。

 

『我がいも…もとい!執務官であるフェイト・テスタロッサ・ハラオウン。幼少期の頃、母親からの指示を与えられ、そして折檻としてムチで打たれていたのは諸君等が既知のことだろう。』

 

画面では、天井から吊るされたフェイトが、母親であるプレシアから鞭打たれる光景が、痛々しく映し出される。

 

『そしてなんやかんやあり、プレシアの目的であったアリシアの蘇生は成り、心に余裕が生まれたことでフェイトへの過失に気付き、和解した。それはいい!

だが彼女の中には、とある取り返しの付かないモノが残った!』

 

次に映し出されるのは、彼女の親友であるドS認定された高町なのはとの模擬戦。模擬戦はクライマックス。天に浮かんだなのは。その愛杖たるレイジングハートの矛先に、巨大で、そして暴力的な魔力の本流が渦巻いていく。

狙うはバインドで拘束されたフェイト。

そう、

これは、

彼女の代名詞たる集束(終息)魔法。

 

『スターライト…ブレイカー!!!』

 

瞬間、圧倒的な魔力の奔流は、撮影していたスフィアを巻き込み、映像にノイズが走る。距離的に数百メートルは離れていたにも関わらず。

そして、誰もが思った。

 

〔ドS以外の何物でもねぇ。〕

 

十秒ほどのノイズを経て、カメラ機能が正常化したスフィア。

やり遂げたと言わんばかりに爽やかな笑顔を見せるなのは。

そして対するフェイトはどうなのか?

非殺傷とはいえ、あれ程の魔力砲撃を受けたのだ。ダメージは如何程のものか。

そしてカメラは捉えた。

ボディスーツにも似たバリアジャケット。

その所々が擦り切れ、

焼け焦げ、

素肌が所々顕となっていた。

男子たるもの、美少女の肌露出は眼福物だろう。

しかし、彼女を見る誰もが釘付けになったのはそこではない。

 

『…気持ちいい……♡』

 

そう宣うフェイトの顔は、なのはとは別の意味でイイ笑顔だった。

恍惚とし、

まるで絶頂を迎えたかのように。

 

『おわかりいただけただろうか、家畜共。』

 

誰もが察した。

プレシアの鞭打ちで、フェイトは目覚めていた。

真正のドMに。

 

『最早判定は下すまい。我が義…もとい、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンはそういう事だ。』

 

異論の声はない。ただただ場を支配する静寂が、彼の言葉を肯定していた。

 

『では最後に…三人娘の出世頭!八神はやて!』

 

三度スクリーンが切り替わり、先の二人は明らかにこっそり撮ったのにも関わらず、はやてだけはカメラ目線で、バッチリポーズ…いわゆるグラビアポーズを決めていた。

 

『八神はやて…奴は…S!地球で言う関西人と言われる人々の血を引くだけあってか、人を弄り回し、それにより愉悦を得ている。S以外の何物でもない!更には!』

 

切り替わるスクリーン。

そこは家畜共にとってパラダイスのごとく。

湯浴み用の容器…いわゆる風呂に彼女が入っている時の写真。

それはまだいいのかどうかは分からない。

だが一緒に入っている人物、それが肝要だった。

 

『ほほぅ、シグナム、また成長したんちゃう?触り心地が良うなってるでぇ?』

 

『あ、主はやて!戯れが過ぎます!どこを触って…っ!』

 

『これも健全なバストアップの貢献や。ほらほら、ここがえぇんか?ここがえぇんか?』

 

『いけません主はやて!それ以上は…!

 

 

 

 

 

 

 

あっ!!!』

 

 

 

 

 

家畜共沈黙。

眼の前であられもなく繰り広げられる組んず解れつの桃色空間に、誰も彼もが絶句する。

ある者は前屈み、

ある者は『姐さん…』と見入り…

 

『どうやら貴様ら家畜共には刺激が強過ぎたようだ。』

 

そしてこんな映像を入手したコイツは何をやらかしているんだ。

 

『相手を攻めに攻めるこの光景…もはやS…いやドS!』

 

ここまで判定を下しておいて、彼は「だが。」と言葉を区切る。

 

『この映像を見れば家畜共の評価は変わるハズだ。』

 

そして切り替わるスクリーン。

映像はとある浜辺。

海岸沿いに設けられた鍛錬仮設では、浅黒い肌で、犬の耳をした男性が、そこで鍛錬を積む子供達に指導しているのがチラリと映る。

そしてその最寄りの家…かなり大きな一戸建ての玄関、撮影している人物は迷いなくノックする。

ややあって、パタパタとスリッパを鳴らす音を経て、玄関が開け放たれる。

 

『いらっしゃい、〇〇〇君!ひさしぶりやね。』

 

『あぁ。ほらこれ、頼まれていた過去の事件の資料だ。』

 

撮影している人物は、懐から紙封筒で封をしたそれを、出迎えたはやてに渡すと、それを受け取ったはやては花のような笑顔を浮かべる。

 

『ありがとうな、半休やのに無理言うて。』

 

『いや、俺もこっちに用があったからね。もののついでさ。』

 

『ほなら、もののついで言うことで、晩御飯食べていかへん?』

 

『いや、それは流石に図々しくないか?』

 

『奥さんからは承諾済みやけど?』

 

『…随分根回しいいな?』

 

『まぁ奥さん曰く、たまには旧友との親交を深めてきて、明日帰ってきたらいいって。つまり、泊まってこいと。』

 

『いや、流石に泊まるのは行き過ぎだろう?』

 

『別に問題ないで?私等と寝るわけやないんやし。』

 

『当たり前だ。』

 

『まぁとにかく、晩御飯は食べてぇな。〇〇〇君が食べていく体で、ようさん作ったんやで?』

 

『…仕方ない。ここまでされたらご馳走されないと悪いな。』

 

そして場面は飛び、大きなテーブルを囲む彼女の家族達。

皆誰もが客人との食事を喜び、そして大好きな家主の料理に舌鼓を打つ。

見ているだけで唾液が分泌され、そして空腹を促進させる見事な料理の数々に、スクリーンを見ている誰もの腹の虫が食事を催促する。

そして、撮影者の持つ茶碗が空になった途端。

 

『おかわりはいる?』

 

『あぁ、貰おうかな。』

 

『ふふ、了解や。たくさん食べてな?』

 

そしてよそわれる大盛り目の白米。そして華やかに微笑みながら渡される茶碗。

誰もが思った。

 

〔オカン…。〕

 

と。

 

『気付いたか?家畜共。彼女はS。しかしその実、甲斐甲斐しく客をもてなすという、Mのそれも見られる。つまり、そういう事だ。』

 

誰もが納得した。

そして思った。

なんでこの映像をこいつは持っているのか。

 

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