ミッドチルダの英雄(ヒーロー)   作:ロシアよ永遠に

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すいません、全体的に暫く放置気味でした。
ぼちぼちではありますが、各作品、次話が出来上がってきていますので、順次更新していきます。



今回は大きく前半後半に分かれます。長くなる予定はあまりないですが、区切りの良いところで一旦は投稿しておきますね。

多分、この話の元ネタを知る人は結構居るんじゃ無いかと。
筆者の趣向を知るのならば…


ミッドチルダの聖なる探索(ディバイン・クエスト)1

時間にして20時を過ぎた時間。

世のサラリマンは定時を過ぎ、大抵は家族の待つ家、あるいは赴任先の下宿やホテルに戻って居る時間。

夜にその鳴き声を響かせる鈴虫が静寂を打ち消す唯一の音であることが、クラナガンの中央公園もその例に溺れず、秋特有の夜を演出する。

夜は満月。昔から月の満ち欠けによって魔力の強弱があると言う説もあるが、その真実は定かでは無い。

そんな月明かりが照らす公園を、今一人の少女がロードワークを行っていた。

ピンクのジャージにランニングシューズ。走る度に長いブロンドと、結い上げられたツーサイドがピョコピョコ揺れる。

 

「ふぅ…!今日のランニングもこれくらいかな。」

 

額を伝う汗を手の甲で拭う。左右非対称の紅と翠の瞳が独特の魅力を醸し出していた。

彼女、高町ヴィヴィオはとある事件を境に日々トレーニングを重ねている。

それは以前銀行強盗に巻き込まれたとき。助けてくれたあの強い女性。彼女の強さに惹かれた。揺るぎない正義と力で悪漢どもを投げては千切り、千切っては投げての大立ち回りを演じた。聞いたところやニュース、そして新聞を見るに、いろんな事件、事故などに対して積極的に、全ては無理でも、届く範囲で活動しているようだ。

 

「私も…強くなれるかな…?」

 

そう考えた矢先、はたと足を止めた。街灯が照らすスポットライトとも紛うような光。その傍らにトレンチコート。街灯からの光の遮りで全貌は判らない。しかしすらりとしたトレンチコートの裾口から見えるスーツのパンツだろうか?革靴を履いているところから見るに、サラリマンが立っている…ようだ。

しかし、

ヴィヴィオの脳内に警笛が鳴るのだ。

 

『引き返せ。』

 

と。

そう思うや否や踵を返そうと、脳から神経へ、神経から筋肉へ電気信号を送るその僅かな瞬間。

逃げようとする彼女を察してか、『奴』は街灯の影から姿を現した。

ヴィヴィオの顔は引きつる。

左手には細長く、暗器に用いるかのようなピアノ線。街灯の光を反射し、鈍く輝く。

右手から出て来る物を想像したくは無い。

ピアノ線が束縛用ならば…出て来るのはフィクションで良くある麻酔を染みこませたハンカチとか、猿ぐつわ、あるいは…!

想いを張り巡らせる内に一歩、また一歩と奴は近付いてくる。

 

「ひっ!?」

 

か弱い悲鳴が漏れた。『奴』はそれで味を占めたのか、歩くギアを一段階上げる。

逃げなきゃ!

そう頭では判っていても、恐怖から脚が震え、思うように動かない。

絡まる脚。

前のめりに倒れ、痛みに顔をしかめる。

街灯からの光を『奴』が遮る。

奴はすぐ後ろまで来ていた。

このままじゃ束縛されて、○○○されて、【禁則事項】で、《スターライトブレイカー》されるんだ!

 

「ひっ!!い、いやぁぁぁあああっ!?」

 

少女の悲痛な悲鳴が、誰に届くとも無く、夜の公園に木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法学院の生徒会室。

壁には各種方面からの賞状―ボランティアや各種大会の成績によるもの―が厳かとも言えるくらいに綺麗に並べられ、この学院の生徒の優秀さをアピールする。

その入り口から見て上座。つまり最奥に位置する一角。そこに威厳漂う重厚な作りの机と椅子。そこに居座るのはこの学院の生徒会長『エリカ・エルクラント』である。他の生徒とは違い、唯一青いスカートを履いているのは、一重に生徒会長である証。それだけに、成績に人柄、そのどちらに置いても模範的な生徒であることを示唆し、そう行動するように心掛ける決意の証であった。

 

「さて…どうしたものかな…。」

 

教員から手渡された一つの報告書。その内容にエリカは顔を若干ではあるがしかめる。

怪人物に関する報告であった。

近年、クラナガンを騒がせる『奴』は神出かつ鬼没であり、局員ですら文字通りその尻尾を掴めないで居る。

実際、エリカ自身も気には掛けていたが、管理局の捜査もあるのである程度は静観していた。しかし、御上からこうしてお達しがあった以上、看過するわけにはいかない。

物言わぬ報告書と睨めっこをしていると、入り口のドアをノックされた。

 

「入りたまえ。」

 

『失礼します。』

 

凜とした佇まいで入ってきたのは、後輩であるアインハルトであった。

 

「お呼びでしょうか閣下。」

 

「うむ、君に頼みたいことがある。」

 

「…『特務』…でしょうか?」

 

「察しの良い子は嫌いでは無いよ。」

 

そう言って若干口許をつり上げる。

特務というのは、この学院特有の極秘事項であると言える。

管理局から回ってくる任務。学生の身でありながら、裏で非公式に管理局の任務をこなしている。その内容というのは、管理局の手に負えない事項である。

こういってしまっては身も蓋もないが、管理局の台所事情と言う物があるのだろう、たぶん。

そうした中でアインハルトはその類い稀なる身体能力と格闘技術を見込まれて、こうやって『特務』をこなしているわけだ。

勿論、弱みを握られての強制とか、そう言った後ろ暗い理由は無い。

平和を裏から支える。

表舞台に名は上がらない。否、正義の味方は私です、と大手を振ってアピールすることは許されないが、それでも平和への貢献を望んでいたアインハルトにとって、特務は嬉しい誘いであった。

話を戻そう。

 

「貴方も噂には聞いたことあるでしょう?今、クラナガンを騒がせている変人のこと。」

 

「…はい、夜な夜な女性が組み伏せられ、何らかのことを強要させられている、と。」

 

「その通りよ。何をさせられているのか。それを管理局が被害者に問うたとて、皆口を紡ぐばかりなのよ。」

 

犯人に与えられた辱めと恐怖からか…。口に出せないほどの壮絶極まりないことをされたのだろう。

自然とアインハルトの拳に力が入る。

 

「わかりました。この女性の敵である痴れ者を血祭りに上げれば良いのですね。」

 

「貴女って結構物騒なのね。痴れ者であるのは事実ではあるけど。」

 

祖先の想いを受け継ぐというのも考えようか。

エリカ自身もアインハルトの特異体質については知っている。

覇王の記憶と、それにより現れる虹彩異色と碧銀の髪。そして彼の身体資質。

彼の強い無念がそうさせるのか、どちらにせよ現世にまで御苦労なことである。

 

「血祭りに上げれば良いと言うものでは無いのよ。法は裁くためにあるの。むしろ逮捕されて、マスコミに報道されれば、それこそ社会的なダメージを与えられるじゃない?」

 

「…なるほど、さすがは閣下。聡明な判断です。」

 

「それに…犯人の愚行はもう予測できてるのよ。」

 

「…と、言いますと?」

 

「これを見てみなさい。」

 

パラリと表示されたウインドウ。半透明なそのスクリーンには、被害者であろう女性のリストが並べられていた。

 

「これは…被害者リスト…?」

 

「そう。それも犯行を受けた後の、ね。これを見て共通することは無いかしら?」

 

アインハルトは顎に手を当てて思慮する。

年齢は…十代前半から二十代半ばと割と若年層を中心として被害を被っているようだ。しかし、年齢は幅がある。かといって血液型、生年月日、出身世界。どれをとっても一貫して共通する要素が見当たらない。

 

「…いえ、私から見れば、場当たりの通り魔的犯行にしか…。」

 

そう自分の意見を述べたときだった。

こんこんと小気味よいノックが生徒会室へと響く。一応特務は外秘であるために一旦話を区切り、ウインドウを消すとともにエリカは入室を促した。

来訪者はその小さな体躯の胸に資料の束を腕で抱えて、ブロンドの髪を揺らしながら入室する。

 

「エルクラント会長。四年生のアンケート、回収し終えました。」

 

「うむ、御苦労だな高町君。…と、そうだ彼女をストラトス君に紹介しておこうか。高町ヴィヴィオ君、小等科四年だ。小等科の生徒会に当たる部署の仕事を手伝って貰っている。」

 

「初めまして。アインハルト・ストラトスと申します。」

 

「はい、高町ヴィヴィオです、初めまして。よろしくお願いしますね、アインハルトさん。」

 

お辞儀をし合い、上げられた顔には…どこか作り笑いを感じる。屈託のない笑顔、その奥にどこか闇を抱えているような。

 

「あの…?」

 

自分と同じ、色は違えど虹彩異色のその瞳に魅入られていたのか、見つめてしまっていたのにようやく気付いた。

 

「あ、す、すみません。なんでも無いんです。」

 

「そうですか。それじゃエルクラント会長、アインハルトさん。失礼しますね。」

 

「待ちたまえ高町君。」

 

退室しようと背を向けたヴィヴィオを呼び止めるエリカ。その声はいつもの凜とした声以上に、シリアスな空気を生み出すのに問題は無かった。

 

「髪形を…変えたのかね?いつもは…そう、ツーサイドアップがお気に入りだったはずだ。」

 

思いがけないその言葉に、一瞬背中越しに震えを見て取れた。しかし、その帰ってきた言葉、

 

「い、イメージチェンジですよ。気分転換もかねて。」

 

そう言い残し、見事に結われたポニーテールを揺らしながら、彼女は生徒会室を後にした。

残ったのは静寂と、そしてどこか重苦しい空気。

 

「あの…先程の質問の意図は…?」

 

「…さっきの被害者リスト、その写真の角度を変えて見ろ。」

 

再度ウインドウを展開したエリカからそれを受け取り、被害者の写真一枚一枚をタップ。その撮影角度を変えてみる。一枚二枚は何の変哲も無い、と感じていたアインハルトだったが、三枚四枚と来る内に違和感が芽生えはじめ、挙げ句には十枚目に至ることろにはその顔色が若干青ざめていた。

 

「これは…そんな…まさか…!!」

 

「気付いたか。」

 

「はい……いや、しかしまさかこんな…!」

 

「事実だ。そして高町君の急なイメージチェンジと髪型を示唆されたときの、一瞬だがあの強ばり。」

 

訝しげに、エリカ自身も最初見たときには信じられなかったと話す。

 

「犯人の犯行。それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

強制的に髪形をポニーテールに変えること、だ。」

 

「は?」

 

アインハルトにとっても呆れにも腑抜けた様にも似た声が口から漏れた。

ポニーテール?一体何のために?常識とは考えにくい結論が、彼女の思考を支配する。

そもそもそれで何の生産性があるのか?かの変人は何を目的とした犯行なのか?結局ポニーテールにするという目的が判った上でも、その向こう側の真意という物に理解が届かない。否、ここから先はこの変人の様に悟りを開かないとたどり着けない、未知の秘境なのかも知れない。

 

「特務が回ってきたタイミング、そして高町君が被害を被ったこと。どちらにせよ学院生徒会側としては看過できない事態に陥っている。特務だけならまだしも、我が学院の生徒にまで被害者が出たとなれば、降り掛かる火の粉を払わねばなるまい?」

 

「はっ!同意であります!」

 

「うむ、ならば話は早い。」

 

重厚な生徒会長席からおもむろに立ち上がり、エリカは声高らかに告げた。

 

「ST.ヒルデ魔法学院生徒会長エリカ・エルクラントが命ず!女の敵を世間のさらし者にし、ひいてはクラナガンの女性達に平和と安寧を!!」

 

「アイアイマム!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高町なのはは正直なところ、憤慨していた。

誰に対してでは無い、自分自身に、だ。

昨晩、娘がロードワークから帰ってきたとき、何かしらの違和感を感じた。

髪型を変えていたこと。それに関しては気分の問題だろうからか触れないでおいた。しかし、それと関係があったのかと今更思うが、帰ってきた娘の表情はどこか強ばっていた。表情が硬いというか、どうにも心の揺らぎとも感じるような。どうかしたのか、と尋ねても、

 

『なんでもないんだ。なんでも。』

 

そう言ってシャワーを浴びに行ってしまった。

ここ最近で、あんな表情。数年前にも同じような顔を覗かせていたような、どうにも引っかかるもどかしさを感じたまま昨夜は床に就いたが、結局殆ど眠れなかった。

 

「何だったかな…、思い出せないよぅ。」

 

イライラが募る原因。思い出せない歯がゆさと、何かを抱えている娘に対して何もしてやれない悔しさ。その板挟みが憤りを大きくしていく。

身体を動かせば何か解決するかも、そう思ってさっき教え子達に『全 力 全 開』の教導をしてきたが、やはり解決しない。

 

「なのは、新しいデバイスのテスト報告なんだけど……ひっ!?」

 

十数年前からの友人であるヒカリが、金髪のポニーテールを揺らしながら報告書を持ってきたはいいが、それに応じて顔を上げたなのはの顔は、目元に隈が出来、目は若干三白眼。管理局屈指の美人の一角のされる羨望の的『エースオブエース』、その姿の片鱗は何処にも無かった。思わず悲鳴が漏れてしまう。

 

「あぁ…ヒカリちゃん、ありがと…そこに置いといて…なの。」

 

「なの!?なのは、なんか目が若干死にかけてない!?」

 

「え…?そうかな…?…そうなのかもね…。」

 

覇気が無い。

生気を感じない。

というか若干透けて見えそうだ。

憔悴しているのだ。其程までに。

 

「な、何か悩みでもあるの?ボクで良かったら…」

 

「子育てで悩みが…」

 

「ごめん、力になれないや。」

 

さすがに子供の居ないヒカリには受け付けられない。フェイト辺りなら嬉々として相談に乗ってくれそうな物だが、彼女は現在母親(実母)のアホらしい裁判に奔走している日々。くわえて無限書庫でも一人のロリッ娘が法関連の書物を読み漁っているという。なのは自身、『アレ』(大魔導師の方)を見ていると、将来の自分もあぁなるのかと不安に駆られる。

 

「そ、そうだ。なのはは定時で帰るんでしょ?ボクももう置く予定だから、ちょっとだけ気分転換しに行かない?」

 

「ごめんヒカリちゃん……私…そんな気分じゃ……」

 

「そんな気分だからだよ!なのはがそんなんじゃ、ヴィヴィオだって不安になるよ!子育て云々の前に、なのはがしっかりしてないと!ほら!速く仕事を片付けた片付けた!あと、報告書にサインね!」

 

こうして、なのはの定時終わりは友人との気分転換に少し時間を費やすことになる。




後半には、別作品から一人ゲストを出そうかなと思います。今回ギャグは余り、というかほぼ皆無ですが、次回いろいろと盛り込んでいこうかと思います。

もしかしたら今回の件で、
「筆者はヴィヴィオ嫌いか?」
と感じる方が居るかも。
とんでもないです。
むしろ大好b(スターライトブレイカー)
まぁアレですね。
可愛い子程いぢりたくなるっていう、変態的思考の持ち主なので。

ではノシ
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