タイトルも変更しました。
一方
変質者に追い回されていたはやてはと言うと、未だに逃亡を続けていた。もつれる脚を必死に鞭打ち、背後からの恐怖から逃げ惑う。
(あかん…!追いつかれる!?)
奴は四足歩行とも言えるようなしなやかな走りで、はやてとの距離を縮めていく。
はやてに諦めという文字が浮かび始めたとき、
「空破断!!」
魔力により練り上げられた空気の弾丸が、はやての背後で爆発した。
その余波で、はやて自身もその軽い体躯を浮かせて吹き飛ぶ。
もうもうと立ち込める爆煙。
「な、なんや…。何が起こったんや?」
流石にいきなりの爆発に加え、自分も吹き飛ばされようなどとは欠片とも思っていない。だが現に、それは起こった。
変態はどうなった?
何で爆発した?
様々な疑問がぐるぐると頭の中を渦巻く。
「御無事ですか?」
爆煙の中から現れたのは、一人の少女、アインハルトだった。ST.ヒルデ魔法学院の制服に身を包み、碧銀の髪を夜風に靡かせ、堂々たる面持ちではやてを見つめる。
「お、おおきに。」
「いえそれよりも早く離脱を。」
「あ、あんたはどないするん?」
「私は…。」
瞬間、
爆煙の中より、大きな人影がアインハルトに飛び掛かる。その魔手が彼女を掴み、はやてが奴の登場を知らせようと口を開けた時。『奴』の顔面に裏拳が、その鋭いキレと真逆に鈍い音を立ててめり込む。
『奴』は錐揉みながらアスファルトを転がり、約十メートルほどしてようやく止まった。
「あいつを血祭りに上げます。」
「そ、そうか…。」
やはり変わらず物騒なことを宣いながら見やる視線の先に、ソイツは何事も内容に立ち上がった。
衣服は、トレンチコートの下にスーツのパンツを履いて、革靴、と、大まか聞いていたとおりの、いや、何とか聞き出せた情報提供に一致する容姿だ。体格は服の上からではわかりにくいが、恐らくは中肉中背。すらりと伸びているであろう身体は、まるで狼男かとも言わんばかりに前屈みになってたぎっている。
しかし、しかしだ。視線を上にやっていくことで、顔に当たる部位を視界が捉えたところで、アインハルトは目をこすり、我が目を疑う。
馬。
馬だ。
動物界、脊索動物門、脊椎動物亜門、哺乳綱、ウマ目、ウマ科、ウマ属、ウマ。
馬である。
大事なことなので(略)
馬面とかそんなチャチなもんじゃあ無い。違和感しか感じられない。というか、変質者以外にただの変態、それも先程はやてが言っていたように、極めて特殊な変態だ。
お誂え向きに、タテガミと思しき所は、何故がポニーテールに縛っているところを加味して、総じて変態的だ。
『ぽにぃ…!!』
ふしゅ~っ!ふしゅ~っ!
そんな音を立てながら鼻息を荒くして片手にピアノ線、片手にブラシを構える。
「なるほど…ポニーテールと馬、それもポニーを掛けているのですか。…なるほど。考えましたね。」
『ぽにぽに。』
「しかし、貴方のやり方は間違っています。それだけに止めなくてはならない。」
『ぽにぃ!!』
「そうですか、そちらも譲れない、と。それはこちらとて変わりません。ミッドチルダの平和のため。貴方を屠ります。覇王の名にかけて!!」
「なんで言葉が判んねん!?」
はやての突っ込みも余所に、アインハルトの身体が光に包まれたかと思えば、武装形態へと姿を変えていた。
馬男―ぽに男と仮称する―は一瞬驚くが、しかしその闘志を鎮めることは無く、体勢を低くする。同じくアインハルトも構える、腰を少し落とす。
臨戦態勢。
どちらからとも無く、踏み出した両者の拳とブラシがぶつかり合い、それが戦いの狼煙となった。
爆発、爆発、爆発。
公園、その森林区画に置いて爆発による煙が所々もうもうと立ちこめていた。
地上から見れば火事でもあったのか?と思ってしまうほどの規模ではある。
しかし上から見れば、地は焼け、木は幹をへし折られ、所々小規模ではあるがクレーターまで出来ている。
「ちっ…変質者の癖に腕が立つじゃない…!」
木陰に隠れつつ、クロスミラージュにカートリッジをリロードする。
正直、幻術を駆使しても、ことごとく手を見切られ、防がれ、手玉に取られている感が半端ない。
自分の戦術は…幻術はこの程度だったのか?
所詮自分はここまでの存在…?
否!
機動六課でフォワードのセンターガードとして、フォワードの司令塔を任されたこと!教官であるなのはさんに教わった教示はこの程度では無い!
数年前、ナンバーズと三対一で渡り合えたこと。それはなのはの教えの賜物に他ならない。
ならば…、
「見せてやろうじゃない…、ランスターの…弾丸、その教示を!!」
マルチタスクをフル活用。クロスミラージュと戦術を練り合い、茂みから飛び出す。
敵の位置は判らない。だが…だからこそ先手を取る。
正面、一瞬ではあるが光が走る。恐らくは魔力の光。すかさずクロスミラージュから魔力のアンカーを射出。丁度良い位置にある植樹に打ち付ける。アンカーを巻き上げ、地から脚が離れた瞬間、胴があった位置に狙撃弾が通過した。相手の位置は見えない。しかし、射出された弾は何れも直射のみ。誘導弾は一つも無かった。撃たないのか、はたまた撃てないのか…。どちらにせよ、相手と接敵しなければ埒が明かない。
先程の角度から、相手の位置をある程度逆算。その位置から陰になる木陰で一旦着地する。アンカーでの移動はあくまでも魅せ。相手の位置を絞るための、いわば身を挺した囮のような物。
(今のが魅せであることは向こうも気付いている可能性もある。となれば逆算して特定されないように移動する。その時に相手が見えるなら…)
そこを狙う。
元々狙撃兵と言うのは、相手に悟られないように狙撃ポイントにつき、ワンショットワンキルのもと、一発の弾丸で仕留める。しかし、逆に悟られれば一気に追い込まれ、自分が仕留められることもある。
…と、
ガサリと前方の茂みが動く。
奴だ!
これを逃しては…!
「クロスファイア…!」
仕留めるなら…この距離なら…!
「フォーカスシフト!!」
クロスミラージュの銃口に、クロスファイアのスフィアが融合。
これは、なのはに教えて貰った必殺弾。弾を展開、それを一つにすることで、擬似的ながら集束砲にも似た砲撃を放てる。実質、その威力と有用性を身を以て知ったティアナにとっては、若気の至りとも言える小っ恥ずかしい思い出とともにある、感慨深い魔法だ。
「シュート!!」
放たれた橙色の砲撃。うねりを生み、それは奴のいると思われる茂みへと撃ち込まれた。
「やった!?」
「おぉっと!それはフラグだぜお嬢ちゃん!」
奴の声は上空より。さっきの茂みはブラフか!?そう思ったときに、相手は既に大剣を振りかぶって降下してきていた。
切り裂かれる空気とともに、ごうっと振り下ろされた鉄塊とも言えるデバイス。
砕けるのは大地。めり込んだ大剣が、その重々しさと威力を語る。
しかし、相手が姿をさらすのであればチャンスだ。距離としては中距離。恐らく相手は大剣による近距離。狙撃による遠距離が適正と推測する。ならばこの距離は…!
「ここは…私の距離よ!」
再び展開されるは、限界数までの魔力スフィア。その数の多さは、敵対する先生の表情を驚愕させる。
「へぇ…やるねぇ!でもおっさん一人に大人気なくな…」
「うっさい、爆ぜろ変質者。」
先生は爆発に包まれた。
『ぽに!』
「はぁっ!」
かち合うのは、アインハルトの鉄拳と、ぽに男のブラシ。このブラシ、一体素材は何で出来ているのかわからないが、アインハルトと打ち合っても折れるどころか未だその原形を留めている。デバイスの一種か、はたまた希少金属で造られた特注か。
一旦距離を取ったアインハルトは、右拳に魔力を集める。
「空破断!!」
再び放たれた空破断。この威力は先程の爆発で証明済み。距離を詰めんと掛けだしたぽに男に打ち込む。
これでヒットして決着
…の筈だった。
『ぽにぃ!!』
しかし奴はあろう事かブラシで空破断をはじき飛ばしてしまった。まるでハエ叩きを用いて虫を払い除けるかのように。結果として行き場を失った空破断は、後ろに高々と聳え立つマンションに直撃した。
「なんと…!奇天烈な…!」
『ぽにぽに!』
一瞬、ほんの一瞬、弾かれた空破断に気を取られた。その瞬間を狙い、ぽに男の片手に握られたピアノ線。それがアインハルトを雁字搦めに拘束する。
「なっ!しまっ…!」
『ぽにぽに…!』
してやったり、とその馬顔をにやけさせながら、奴はブラシ、そしてポケットから取り出すのは…接着剤。
ポニーテール、拘束、ブラシ、接着剤…。
そのキーワードで連想されるのは…
「まさか…!」
『ぽにぃ…!』
恐らく、ブラシで髪を梳いた上で、ピアノ線と接着剤で髪をポニーテールに固定するのだろう。それは断じて…受け入れるわけにはいかない。
「接着剤などで髪を固めれば、毛質が損なわれる…!私はともかく…ヴィヴィオさんの髪まで貴方は…!」
許せない…!
しかし、ピアノ線の拘束は思った以上に固く、抜け出すことができない。藻掻く最中にも、ぽに男は一歩、また一歩と距離を縮めてくる。
万事休すか…!
「ちょっと待ちや!」
アインハルトが拘束された時。
端から見るしか無かったはやては、どうすれば良いか思案していた。
先の戦闘を見る限り、格闘の達人であるアインハルトとブラシで互角に渡り合うぽに男。今この場で出たところで、広域殲滅型のはやてには分が悪い、と言うよりは悪すぎる。
しかし何とかしなければ、助けてくれたアインハルトに申し訳ない。
何か…
何か助けになる物は…!
「ん?」
自分のポケットをまさぐった時、その手に掴んだ物を取り出した。それをみたはやては奇策を思い付く。
「こ、これや!!」
そして時間を戻す。
ぽに男は静止をかけられて、そちらに目をやる。
後ろの髪をまとめ、後頭部に上げてバンドで止めた髪形。つまりポニーテールがいた。
はやては必死こいて髪をくくり上げた。
(ふふん!これであいつの目は私の方に釘付けや!そうすれば少しは時間が…!)
『ぺっ!』
「ツバ吐かれた!?」
奇策且つ的確な案だと思ったが、一瞬だけしか反応しなかった。
『ぽにッ!ぽにぽにッ!ぽーにーッ!!』
「えっと…髪も梳かず、その場しのぎのポニーテールなんて邪道だ。だそうです。」
「せやから何で翻訳できんの!?」
はやてのツッコミも余所に、再びアインハルトに向き直る。じりじり詰め寄る二足歩行の馬はかなりの恐怖が感じられ、幾度となく悪漢を退けてきたアインハルトにおいてもその例外では無かった。髪は女の命と言うが、それを汚されると言うことの意味は想像に難くない。
(クラウスの無念を果たさねばならないのに…私は…ここで…?)
『ぽにぃ…!』
死刑宣告にも似た、ぽに男の一言。目を瞑るアインハルト、その碧銀のなめらかな髪にやつの魔手が触れようとした瞬間だった。
がんっ!!
と鈍い音とともに、急に眼前の気配が消えた。
恐る恐る、と言うように目を開くと、そこにトレンチコートで馬顔の奴はいなかった。奴は、右側面方向に頬を抑えながら屈み込んでいる。
「一体…何が?」
がさり、と複数茂みから飛び出してくる。
互いに魔法戦での応酬をしながら、アインハルトにはやて、そしてぽに男の周囲を飛び跳ねながら、魔力弾をその相手に向かって撃ちまくる。
「な、なんや!?」
『ぽにぃ!?』
件のぽに男ですらこんな感じだ。
しかし戦っている2人は、と言うと、3人のことなど目に入らないのか、夢中ともとれるような戦い振りを見せつけてくれる。
そして、
上手い具合に二人の放つ弾丸は、互いに避けるのではあるが、時折流れ弾がぽに男にホーミングしているかの如く、その馬顔に撃ち込まれる。
『っ!?!?っ!?』
何かしらの作用が働いているかのように弾は吸い込まれる。狙撃弾、クロスファイア-、ヴァリアブルショット…ありとあらゆる弾が、ぽに男の意識を刈り取っていく。
「はぁ…はぁ……!やるじゃねぇかお嬢ちゃん…!」
「そちらこそ…変質者のクセに…やりますね……!」
互いに激闘を繰り広げたのか、服は所々破け、息も上がり、目も据わっている。
「こちとら限界だ…!」
「次が…」
「互いに…」
「「ラストショット…!!」」
クロスミラージュを切り札の形態『ブレイズモード』へと切り替える。バレルが延長され、さながらそれはストックのないロングライフルの様にも見える。遠距離狙撃砲特化型で、クロスミラージュとティアナの切り札たる形態。
「いいねぇ…切り札持ってたか…!んじゃま、俺もやりますかぁ!!」
突如として先生の体から溢れ出る魔力。その奔流が目に見えて、白い光を発光をしているように見える。本来の魔力素は、何らかの干渉をしない限りは無色透明なのだが、発光するまでに周囲の魔力が反応するという状態は、ティアナにとっては未知の領域だった。
それでも、怯むわけにはいかない。
管理局執務官として犯罪者は見逃すわけにはいかない。
悪漢共に御仏の慈悲は無用である。
「クロスミラージュ!カートリッジロード!」
カートリッジバレルから二発の薬莢が装填され、ティアナの魔力にブーストが掛かる。この一撃なら…どんな相手だって!
「いっけぇ!!ファントムブレイザー!!」
「スナイプ…ブースト!!」
集束された直射砲撃。
貫通力に超特化された狙撃弾。
各々の砲身から射出されたそれは、互いに引き寄せられるかのようにぶつかり合おうとする。
普通なら少年漫画のように熱い展開を迎えるシーンだろう。
しかし、
そのぶつかり合う場所に、
『彼』はいた。
『ぽ…ぽn@‡▽ÅΩqЕДя!?』
馬の悲鳴は何処吹く風よ。魔力の衝突による爆発の中に、馬の顔をした変質者は消えていった。
「じ、じゃあこっちの馬男の方が変質者…?」
「だから話を聞けって言ったろ?」
黒焦げ状態の『ぽに男だったナニか』を見下ろしながら、四人はようやく話し合いに持ち込めた。
あの砲撃の撃ち合いが終わって、互いにグロッキーになった所でようやくゴングが鳴ったのか、はやてとアインハルトの仲裁もあって話を聞く流れと相成る。
そこでようやくティアナは自分の過失を認めるに至った。
「す、すいませんでした!勘違いとは言え、戦闘を仕掛けて…。」
「気にすんなって。丁度良い戦闘訓練にはなったしな。ま、結果として犯人捕縛成功を喜ぼうや。」
広い心と、高い技量。そしてアインハルトから先生と呼ばれていたことを見るに、学校の教師のようだ。なるほど、慕われているのも解る。きっと言い先生なn
「あとお嬢ちゃん、ミニスカのバリアジャケットで跳ね回るのはお勧めできねぇよ?まぁ俺に取っちゃ眼福だったがな。」
「…はやてさん、やっぱり容疑者二名確保でも?」
「ま、まぁまぁティアナ。これで痛み分けでええやん?な?」
宥めていると、ムクリと元ぽに男が起き上がる。あの高出力の魔力砲弾でサンドイッチにされても、気絶だけで済むこの頑丈さ。いや、これがギャグ補正と言う奴なのか。
「ほなら、素顔を拝見や。」
ばさりと剥ぎ取られた馬顔。その下にあった顔は、ありふれた、それでいて特徴という特徴が無い男の顔だった。
「どうしてこんな奇行に走ったのかしら?」
「だって…ポニーテールは最高じゃないッスか!ショートのうなじの色っぽさ…ロングの女らしさ、それら二つを完璧に兼ね備えてるんッスよ!?…なのに最近、ポニーテールの女の子が少なくって…うっ!」
「「………。」」
はやてとティアナは絶句した。まさかその様なことでこのような事件を起こすに至ったとは。
「わかる!わかるよ俺には!」
しかし同情を得たのは、他でも無い先生だった。
「お淑やかなロングの女の子が髪を結い上げるだけで、活発そうに感じる世の理の不思議!俺にはそれが解らないんだ。だがそこから感じる魂はホンモノだ!お前のムーブメント『ポニーテール』。俺はお前を認める。世の誰もがお前を非難しようと、俺はお前の味方だ。」
「お前さん…いや、師匠!!」
「だから吼えろ!お前の…ムーブメントの力を!それはきっとミッドチルダの…否!全次元世界の明日への礎となる!」
「しぃぃぃいいいしょぉぉぉおおおっっっ!!!!」
ガバッと、熱い抱擁を交わす二人の男。その間にはいつの間にやら絆か、友情が、師弟愛かが芽生えていた。
「な、何なのよこの展開…。」
「はれ?はやてちゃんにティア…?どーしたの?」
あっけ取られていたティアナを背後から呼びかける見知った声。振り返って見やれば、なのはとヒカリが肩を組んで立っていた。二人ともほんのり顔は赤く、なのはの方はヒカリに比べて少し赤みが強い。
「なのはさん…ヒカリさんも…呑んでたんですか?」
「うん、まぁちょっとした相談に乗ってただけだけど。」
「二人も今度一緒に呑もうね~。ティアも呑めるんでしょ?ぱぁっとやろうよ。」
酔いが結構回っているのか、妙に明るく、それでいて表情もニヘラと崩れている。
普段なら明るい中に僅かながらも厳格さを残す彼女にしては珍しい。なるほど、アルコールが入ると違うのはこういうことを言うのか、とティアナは納得する。
「あ、貴方はさっきのお兄さん…?」
「よう…、そっちのお嬢ちゃんの酔いっぷりを見るに、あれからまた吞んだみたいだな?」
「あ、はい。その…お釣りを返さないとって」
「いや、構わんよ。って痛ぇ!」
「…やっぱり吞んでたんですね。」
わいのわいのと増えた女性陣と話に盛り上がる中、ぽに男はある女性のある一点を見つめ、ぷるぷると震えていた。
「ん?どした?」
「ポ…!」
「「「「「「ポ?」」」」」」
「ポニィィィイイイテェェェエエエルゥゥゥウウウッッッ!!!」
「ひゃぁぁっ!?」
ヒカリに飛び掛かるぽに男。そう、彼女の髪形。それは幼少期から変わらないポニーテール。ソレを見たぽに男は、まるで肉を見付けたライオンのごとく、そして怪盗ルパンの孫のようにダイブを敢行してくる。
「この……!」
ぎりっと握り拳を作る。右手に嵌められたブレスレットが呼応して、右腕のみに限定して白銀のガントレットを精製。
「変っ態!!」
顔面に殴りつけられる右の鉄拳。めぎょっ!と、妙な音とともに、ぽに男は錐揉みしながら地面にめり込んだ。
「師匠、これで思い残すことはないッス。…最後に…素晴らしい絶景を見ることが出来ましたから…。」
「そうか…。」
「もし出てこれたら…師匠の教示、伝授して貰っても構いやせんか?」
「あぁ。その時は行こう。俺とともに…『聖なる探索(ディバイン・クエスト)』へ。」
その返答にぽに男は喜んだのが、微笑みながら管理局員誘導の元、護送車へと乗り込んだ。
けたたましいサイレンと共に去りゆく車を、先生は感慨深げに見送りながら、関係者各位はどこか納得のいかない表情を浮かべていた。