プロから見たSAO攻略   作:ベルクーリ2世

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 グリゼルダさんには生き残ってもらいます。このあと、かなり無理矢理に活躍させます。


第14話 笑う棺桶との遭遇

 カイトSide

 

 第二七層 カイトの宿

 

 「呼んだのはね。制服をどうしようかなって。ほら、ウチだけバラバラじゃない。アルゴの調査結果でもDKBはダサい、ALSは問題外、KoB(血盟騎士団)は及第点、という結果なんだけどね。結構期待されてるわけよ。ウチがいつユニフォーム作るかって。」

 

 「ええ、わたしもそう思ってたんです。でも何で、わたしだけ呼んだんですか?」

 

 「だって、アスナしかいないじゃないか。センスあるのって。キリトはまっ黒け、クラインは真っ赤か、エギルはセンスあるけどあいつに似合うものが僕らに似合うとは思えないだろ。」

 

 「女子組だけでもアスナが考えてくれないか?」

 

 「シャルが女の子になったから、ユニも、ですか?」

 

 「いけないか?」

 

 「いえ、呆れてるだけです。シャルが女の子になったとたん、まるでバカップルじゃないですか。シャルだって突然、ボーッとするし、思い出し笑いするし。でも、女子って全部で4人しかいませんよ。」

 

 「戦闘員はね。でも、例えば鍛冶のリズベット、だっけ?ちょっと自分のこと構わない娘だけど本当はもっと可愛いでしょ、あの子。」

 

 「わたしもそう思って、イメチェンさせようと。いろいろ、いじってます。」

 

 「女子戦闘員は4人だが、粒ぞろい。この間、ふと思いついたんだ。アスナ、ウインリィ、シャルでユニット作ったらリアルに今ある、どのアイドルユニットにも負けないなって。もちろん、センターはアスナ。」

 

 「一人で何考えてるかと思えば!わたし、絶対嫌ですからね!」

 

 「いいと思うんだけどな。攻略組でアイドルユニット結成なんて、まさに奇跡だよ。ウインリィには冗談で言ったらノリノリだったし、シャルは僕が頼めばなんとか、あとはアスナさえ説得すれば・・・」

 

 「い・や・で・す!」

 

 「まあ、今は諦めよう。真面目な話なんだけどな。一般プレイヤーにとっては、すごく重要なことなんだよ。そういうことだけでも生きがいになるんだ。はじまりの街でも『閃光のアスナ』はすごい人気だった。」

 

 「嘘でしょう?そんな!」

 

 「街中で知らない人がいないくらいだったよ。『黒の剣士キリト』も有名。『軍神』はちょっと落ちるけど。」

 

 「ぷっ その名前、嫌がってたじゃないですか。キリト君、笑ってましたよ。」

 

 「僕もね、打ち消してはきたんだけど、もう定着しちゃったみたい。」

 

 

 一週間後

 

 

 「みんなに集まってもらったのは他でもない、まずユニフォームとエンブレムの件だ。アスナ、お願い。」

 

 「ええ、そんなに変わったデザインじゃないです。普通、こういうエンブレムって武器が入るんですけど、メインにはしづらいかなっって。それぞれ持ってる武器が違いますから。で、外側は、イーグルがいいかなと思いまして、左右にイーグルの翼。真ん中に団長の円月輪それに二本の剣をクロスさせるというエンブレムにしました。で、剣なんですけど・・・」

 

 「ちゃんと片手剣とレイピアになってるじゃないか。キリトとアスナはうちの二枚看板なんだから文句なんかあるわけないじゃない。うん、いいよ。満点!みんなもこれでいいかな。」

 

 「いいじゃないすか。」「賛成!」「異議なし!」

 

 「団長が満点って言って、反対できる奴いるわけないだろ?」

 

 「現にキリトはそうやって文句言うじゃないか。」

 

 「文句はないけど、何をやっても、どうやっても勝てないって、なんか悔しい。」

 

 「キリトが僕の歳になるまで、あと14、5年あるんだぞ。今からキリトに負けててどうするんだよ。気に入らないところでも?」

 

 「全然、ない。格好良いよ。」

 

 「僕はさ、アスナが作ったんだから、キリトには聞く必要すらないと思ってた。」

 

 「何だよ、それ!」

  

 「ヒューヒュー!」「いいぞいいぞ!」「いい加減、観念しろ!」「羨ましいぞリア充!」

 キリトとアスナはもう真っ赤!

 

 「次はユニだ。アスナ、女子組から。」

 

 「消去法っていう感じかな。青は聖竜、白は血盟、緑はALSが使ってますから、やっぱり被るのは嫌かなって。残った中では紫がいいかなって、あまり濃くないように。シャルだったらピンクもいいんですけど。私やウインリィはちょっと。」

 

 「いいんじゃないか。スカートは白でもいいよ。しかし、短いな。大丈夫か?」

 

 「戦闘用ですから、長いと邪魔です。」

 

 「うん、身に付ける人たちがそう言うんだから、いいだろう。ちなみに、男の意見は無視。」

 

 「俺は短かすぎる・・・と思う。」

 

 「懲りない奴だな、わざわざ普通と反対のこと言うし。キリト、諦めろ、美人すぎる子を好きになった税金みたいなものだ。男子組のユニはね、こうしよう。焦げ茶を基調に女子と同じ紫を入れる。」

 

 「異議なし!」「いいっすねそれ!」

 

 「そうそう、キリトはな、戦闘時は黒のままで、いいよ。みんな、怒る?贔屓って。」

 

 「いや、『黒の剣士』は、内外を問わずあまりにも有名です。キリトはあれでないと、俺たちも落ち着きませんよ。」

 

 エギルが皆を代表して言う。大人の意見だな。

 

 「よし、決まりだ。次は、ギルドホームだ。とりあえず。第二五層のイシュバールに一つ造る。当分はここを本拠とする。上に行けば当然新しいのを作る。だが、前のは全部残す。そうする理由は、一般プレイヤーの為だ。最前線じゃあ、ギルドになんか言いにもこれないからね。それから、ここにした理由でもあるが、訓練場を造る。同じ理由で団員が増えたら、第一一層にも造る。これらについては何か意見があったら直接僕に言ってくれてもいいし、それぞれの隊長に言ってもいい。じゃあ、全体会議は終わりだ。エギル、アスナ、クラインはちょっと残ってくれ。あ、今日の予定については副官に指示してね。」

 

 「ほとんど全部、即決じゃないですか。いいんですか?」

 

 「だって、アスナ、無駄じゃない。長々とやっても。ま、よそは長いの、好きみたいだけど。」

 

 「ウチはカイト兄さん、じゃなかった、団長の決めたことに文句のある人いないですから。」

 

 「いいぞ、兄さんで。僕もその方が嬉しい。」

 

 「いえ、公私のけじめはつけるべきです。」

 

 「相変わらず、真面目だな。エギル、アスナの意見も聞いて、物件を絞ってくれるか?絞れればすぐ決められる。アスナにばっかりやらせてすまないんだが、内装もお願い。凝らなくていい。どうせ長居しないから団長室も立派にしなくていいよ。」

 

 「シャルの意見は?一番大事じゃないんですか?」

 

 「何だその目は。彼女は、僕と一緒でちょっと、変わってるから。こういうことは聞かない方がいい。」

 

 「それからな、エギル、君がやってる店、どんどん上に上げて、どんどん大きくしろ。五〇層あたりで巨大店舗を目指そう。それに備えて人も要る。いままで手付かずのど田舎、二二層とかな。あの辺は人は結構多い。探せばいるだろう。」

 

 「いいんですか?そんなことして、俺だけ儲けて。」

 

 「一人で儲けているわけじゃないだろう?君が、こっそりやってるプレイヤーの援助、育成はそのうち、担当を決める。こっちでやらなきゃいけないことだった。それに、店舗の拡大は、大事なことなんだ。これから、上にいけばアイテムもインゴットも増える。他より桁違いにでっかくしておくべきなんだ。何がどこで取引されたか、自分の店以外についても把握できるようにするためにな。闇取引は犯罪の温床だ。前の店は支店として残す。それに君の商売はとにかく儲かる。とにかく商人プレイヤーの採用を増やしていく。審査は今まで通り君が担当してくれ。場合によっては、僕もやろう。」

 

 「全部ご承知だったんですね。参ったな、はい、了解しました。」

 

 「じゃ、エギルとアスナは仕事にかかってくれ。」

 

 「さて、クラインとは戦闘員の増員について相談したい。」

 

 「今までウチってスカウトは全くしてませんよね。これからも女の子の入団は増えそうすけど。」

 

 「君までが、そんなことを言うのか、クライン。」

 

 「だって、師匠もキリの字も狩りにでるっちゃあ、狩ってくるのは女性じゃないすか。」

 

 「なんてことを!それに、僕は連れて、帰ってきたことなんかないだろ。狩って帰ってくるのはキリトだけだ。」

 

 「よくもまあ。シャルをずっと隠してたじゃないすか?俺たちにまで。それに、師匠は、女性が付いてきても、途中で隠蔽使って撒いちゃうからでしょ。キリトは、断りきれないって、だけっすよ。ギルドホームができれば、撒かれても、そこを目指せばいいんだから、師匠がゲットした女性も漏れなく付いてきますって。」

 

 「シャルは最初は、女の子って確信はなかったの!それに、僕はね。この前アスナに言われて、初めてはっきりと気づいて、愕然としたんだよ。僕とキリトが一番似てるのは、悪ふざけしだすとばれるか怒られるまで、やめないってことだと思ってたけど、こんなところが似ているとは!」

 

 「二人とも『無自覚な天然ジゴロ』って言われてるっすよ。俺たちの身にもなって下さい。師匠は既に両手に華、守備範囲広すぎ。キリトにはアスナちゃんていう鉄板の相手がいるっていうのに!」

 

 「わかった、わかった。決して、その、女性の気持ちをだな、利用するというんじゃないが、使えるものは何でも使えが僕の信条だ。見込みがあれば、これからは、むしろ積極的に入団を勧誘してみよう。いや、これ、シャルとアスナには言うなよ。ぶっちゃけレベルの10や15なんて僕やキリトにしばらくピッタリくっついてればどうってことなく、上げられるんだよね。問題は実戦経験だけ。」

 

 「よかった。自分の彼女になってくれなくても、女性はできるだけ多い方がいいじゃないすか、華やかで。」

 

 「だよねー」

 

 「師匠、なんか軽いっすよ、今日。キャラ崩壊してません?」

 

 「いや悪かった。真面目な話なのに、おかしくしたのは君だぞ。これからはスカウトも積極的に行う。」

 

 「女性の、ですか。」

 

 「そうじゃないって!男女を問わずだ。オレンジが、結構いるだろ?」

 

 「ええ、防犯対策したのに増えてますね。」

 

 「奴らの手口を詳しく解説して、一般プレイヤーには睡眠PKとかMPKはやりにくくなってる。だが、連中の一番のエモノは何だ?」

 

 「中小ギルドでしょうね。」

 

 「そうだ。ソロの一般プレイヤーじゃ身入りが少ないからな。彼らは別に保護する必要がある。一般プレイヤーのレベル上げも手伝ってやりたいが、そこまでは手が回らない。これはシンカーたちに任せたい。」

 

 「そこでな、僕と、シャル、アルゴで、おおよその調べはついている。全部僕がやりたいが、そうはいかない時は手伝ってくれ。」

 

 「俺がやっても大丈夫なら、いいっすけど。」

 

 

 

 黄金林檎

 

 (さて、一人目は、ギルド「黄金林檎」のグリゼルダさんか。うーん、なかなか美人だな。これじゃあ、またシャルに何か言われるぞ、それだけで選んだって。ふーっ。まあ人妻だし、このヨルコさんていうのもかなりのもんだな。しかし、僕もリアルと全然変わったな。女性はものすごく少ないのに、どうしてこうなるのか。)

 

 「シャル、行くぞ!第一九層だ。」

 

 転移門に着いてすぐ何人か走り去った気配がした。

 

 「おい、今誰か逃げてっただろう?」

 

 「うん、あたしも感じた。あ、女の人が・・・」

 二人で駆け寄る。

 

 「グリゼルダさん!しっかりして下さい!」

 

 「眠らされている。これは、多分、睡眠PKだ!」

 

 「しっかりして下さい。あなた、殺されかけたんですよ!」

 

 「えっ 何のことか・・・あの、あなたは?」

 

 「はじめまして、わたしはギルド『インビクタス』のマスターでカイトと申します。」

 

 「同じく、シャルと申します。」

 

 「こ、攻略組のトップ中のトップが、こんなところに一体何をしに、いらっしゃったのです?」

 

 「あなたを、いや、あなたの、ギルドをスカウトに来たのです。しかし、どうも面倒なことになってますね。とにかくそこの店で詳しく事情をお聞きしたいが、よろしいですか?シャル、『円』を使え。圏内までは油断できない。」

 

 『円』というのは、特に緊張した状態で索敵スキルを発動させることによって、ある範囲内にあるものは何であろうと細大漏らさず察知する能力を言う。例外は索敵以上の隠蔽が使用されている場合のみ。50メートル四方に使えれば超一流とされるが、シャルは既に65メートル。カイトだと100メートル四方はカバーできる。精神集中するため、完全な戦闘体勢に入れない。このため、一人ではなく、二人以上の時に一人が使うということが多い。」

 

 「あの、危ないところを・・・何とお礼を言ってよいか。」

 

 「いえ、我々にとっても幸いでした。正直言いまして、こういう事態を恐れてという意味もあって、来たのですよ。まさかいきなり、とは考えてませんでしたが。ここには何をしに?まさか、一人で圏外には出ないでしょう。」

 

 「ええ、数日前にドロップしたレアアイテムを売却に。」

 

 「失礼ですが、よろしければ、どのようなものか教えていただけますか。」

 

 グリゼルダは、指輪を取り出す。

 「この指輪なんですが、敏捷値が20上がる効果があります。」

 

 「それはかなりのレアアイテムですね。」

 

 これは本音ではない。もともと敏捷値極上げのこの男にとっては、単なるアクセサリーくらいの価値しかない。

 

 「あなたは、もう少しで最前線に来てもおかしくないレベルだ。あなたが、使えば良いのでは?」

 

 「ええ、私が使うか売却かで、意見が分かれまして。結局私が売却を決断したのです。」

 

 「最後の一票が、ご自分じゃあ、そうなりますよねえ。一人でここへ?」

 

 「いえ、途中までシュミットという団員が一緒でした。」

 

 「どうもあなたにとっては覚悟が必要な結末になりますね、これは。」

 

 「それは・・・どういうことでしょうか?」

 

 「ここへくる道中、何か飲み食いは?」

 

 「サンドウィッチと紅茶を途中で。」

 

 「おそらく、飲み物に睡眠薬が入ってましたね。」

 

 「まさか、シュミットが・・・」

 

 「残念ですが、そう考えるよりありません。こんな時間に眠くなるはずがない。」

 

 「一体どうして?」

 

 「PKを請け負った奴からの報酬目当てですよ。シュミットでしたっけ、シャル、この旦那にな、ちょっとここまでご同行願ってきて。」

 

 可憐な少女になんて命令をと誰しもが思うが、シャルはその辺の男では10人掛りでも全然敵わない。シュミットは、おとなしく、シャルについてきた。

 

 「シュミットさん。ネタは割れている。だが、こんな世界だ。我々は警察じゃあない。事情によっては、君の希望通りに、してあげても良い。包み隠さず、話してくれればね。」

 

 「最近、ギルドの雰囲気が、おかしくなっていて、その、マスターのグリゼルダは攻略組あと一歩なのに、他が足を引っ張ってる感じで。」

 

 「ちょっと、私はそんなつもりは!」

 

 「ああ、ちょっとお待ちを。全部聞いてからにしましょう。彼女と君とのレベル差はそんなにあるのか?」

 

 「いえ、4くらいです。でも俺はタンクで、タンクは実質俺一人で・・・」

 

 「それで、どうしたかった。」

 

 「グリゼルダは盾持ち片手剣ですが、一人でタンクとダメージディーラー掛け持ちでやってるようなもので、スイッチ、ローテもあまり、意味なくなってます。これじゃあ、むしろ解散した方がいいかなって。純然たるタンクは俺一人ですから、俺が抜ければ、解散するしかなくなって、グリゼルダも攻略組に入れるかと。」

 

 「君がどうしたかったか、聞いてるんだ。ウチは君も含めて、スカウトに来たのだがね。」

 

 「トップギルドのインビクタスの団長に、そう言っていただいて、光栄ですが、俺には無理だと。」

 

 「どうして?」

 

 「俺がタンクなのは、死にたくないからです。あらゆることを節約しても防具につぎ込んできました。スキルも防御優先です。しかし、インビクタスは、団長のあなた以下、メンバーのほとんどが攻撃型、特にあなたと『黒の剣士』は極端な超攻撃特化仕様です。タンクのエギルさんたちでも回避は巧みなようですし。」

 

 「ウチのことに随分詳しいな。つまり、君の感覚だと、僕やキリトはほとんどアタマのおかしな人、って感じなわけだ。」

 

 「いえ、そんな。」

 

 (その通りだ、って顔に書いてあるよ。)

 

 「どこに移籍するつもりだったのかな?」

 

 「聖竜騎士団です。」

 

 (わざわざ、あそこを志望する奴もいるんだな。)

 

 「防御型なら、血盟騎士団がベストだろう。」

 

 「あそこは、ヒースクリフ団長が、自らスカウトするのが原則で、募集はしてないんです。」

 

 「リンドのところは?」

 

 「レベルと装備に基準があって、これが結構厳しいんですが、その、今回のコルが入ればクリアできるので。」

 

 「ウチはそんなの気にしないんだけどね。レベルなんて入ってから上げればいいし、装備は、必要ならこっちで揃えるさ。まあ、他所は他所だが。わかったよ。君は今いる宿で謹慎だ。僕かグリゼルダさんが、いいと言うまで絶対に外には出ないように。」

 

 「それはどういう?」

 

 「グリゼルダさんを殺そうとした連中が、今度は君を狙うってことさ。たまたま、我々が来たことで、今のところ収穫ゼロだからね。」

 

 シュミットは、震え上がっている。

 

 「君の処分はグリゼルダさんと相談して決める。文句はないね。」

 

 「はい。」

 

 「宿まで付き添ってやってくれ。」

 

 シャルに命じる。

 

 「さて、グリゼルダさん。僕はあなたに、もっと残酷なことを言わなければならない。」

 

 「まさか、夫が!」

 

 「そう、あなたが死亡すれば、ストレージのアイテムやコルはすべて夫君のグリムロック氏、でしたか、彼のものになる。今回の連中の報酬、シュミットへの報酬、これらを全部賄うには、グリムロック氏が共同正犯でなければならない。」

 

 「でも、どうして・・・」

 

 「さあ、それは本人に聞いてみないと、僕にも全く解らない。シャルが戻ってきたら、あなたの宿を取りましょう。ああ、この層の雑貨屋の店主は僕の部下です。彼に用意させますよ。で、カインズさんとヨルコさんを呼んでおいてください。お二人が来たら僕がそっちへ行きますよ。」

 「あなたはどうしたいですか?いずれにしても、ギルドは解散するよりないでしょう。万一、あなたが、それでもグリムロック氏を許すと言っても他のメンバーが納得しない。シュミット君も従犯とは言え、一枚噛んでいるわけですし。」

 

 「でも、まだ、気持ちの整理が・・・」

 

 「僕はね、あなたが、グリムロックさんを許すのには、とても賛成できない。彼は鍛冶スキルを取ってますね。腕も悪くない。彼が打った剣を何本か見たことがあります。邪剣ですね、あれは。対モンスターではなく、殺人用の剣です。これは、彼がかなり前から今回の実行犯、おそらく最悪クラスのオレンジギルドと関係があったということを示しています。やつらに武器を提供してたようですね。僕は彼に自首を勧めるつもりです。その方が彼の命は安全です。というより、そうしないと殺されるでしょう。彼と一緒だと、あなたの命まで危ない。」

 

 「・・・」

 

 「どうするかは、あなが決めることだ。だけど、あなた方を迎えたいという僕の気持ちは変わっていません。カインズ君も鍛え方一つだし、ヨルコさんは生産職に回ってもらっても良い。とにかく、ウチは平均年齢が低くてね。成人プレイヤーは貴重なんですよ。それから、シュミットだが、僕は彼がいったように防具はほとんど使わない。今持っているのをあげるだけでも十分すぎるでしょう。それから、リンドに紹介状も書いてあげます。厚遇されるはずです。もっとも、あなたが、シュミットを許すなら、ですけどね。」

 

 「私、シュミットを許そうと思います。でもそこまでしていただいては。」

 

 「僕には、要らないものをあげるだけです。それに、それだけあなたが欲しいということですよ、僕は。」

 

 「・・・・」

 

 (うわっ、この沈黙、まずい気がする。笑顔と最後の一言は余計だった。)

 

 「ああ、やっと戻ってきた。エギルには?」

 

 「ええ、宿も取ってもらいました。」

 

 「気がきくな。じゃあ送っていきますよ。ああ、僕らはエギルの店の二階にいますから。」

 

 外に出たところ、索敵に反応がある。隠蔽を使っているが・・・3人だ。

 

 「下がって!」

 

 

 「シャル、すぐに、キリトとクラインにメッセージだ。僕が危ないってな。いや全然危なくはないが、これはチャンスかもしれない。」

 

 「おい、出てこい。こっちは、戦闘可能なのは、僕一人だ。」

 

 「Wow!相変わらず舐めたマネしてくれるじゃねえか?ウインド!」

 

 「ここではその名前じゃない。お前も本名で呼んでやろうか?PoH。」

 

 「ヒヤッホー!攻略組の総大将もここであえなく討ち死にかあ!」

 

 ナイフが飛んでくる。こいつはジョニー・ブラックとか言う奴だ。弱いくせにうるさい。まあ、当たるわけないんだがこうしてやろう。

 こっちもナイフを投げる。空中で衝突して落ちる。

 

 「三下はひっこんでろ!」

 

 「ヘッヘーイ!いくらあんたが強くても、1人で俺たち3人とやり合うのは無理じゃね。」

 

 「お前なんか勘定に入ってないよ。」

 

 「ジョニー、下がってろ。」

 

 「でもよう、リーダー。」

 

 「2対1ならやる気があるか?かまわんぞ。まあ、最悪あと10分も持てば、キリトとクラインが来るからな。言っておくが、援軍じゃない。お前たちを逃がさないようにするためだ。」

 

 「相変わらずだな。お前一人でもやめとくぜ。だけどお前も随分変わったもんだな。ウインド。オンナができた上に、弟だの妹だの作って。でも、ここじゃあガキは作れないらしいぜ。残念だったな。」

 

 「相変わらずお前も、品のない煽りだな。残念だが、おまえの言った面々はみんな僕が鍛えまくっててな。全員お前より強いよ。ずっとな。」

 

 「まあいい、一人ずつゆっくり始末してやるよ。楽しみだぜ。イッツ ショウタイム!」

 

 (転移結晶を使う気だな。転移の間に攻撃すればいいのだが。投剣はさっき使って二本しか残ってない。PoHなら防ぐだろう。こいつを逃がしてはいけない。円月輪では間に合わんし、短剣では背中が危ない。赤目野郎の持っている武器は危険だ。シャルの位置からでは届かないし。)

 

 「「「転移!コラル!」」」

 

 (また辺鄙なところへ。仕方ないな。今回は。)

 

 「ふーっ」

 

 「師匠!」

 

 「カイト!無事か!」

 

 タッチ3つくらいの差でキリトとクラインが来た。まあ、無理を言ったんだ。仕方ない。

 

 「無事だよ。ありがとな、キリト、クライン。」

 

 「何だよもう!ありえねえ、って思ったけど、シャルがカイトが危ないって。」

 

 (それても、飛んできてくれる。可愛いよ。キリトは。)

 

 「いや危なくはないんだが、手が要るんだ。悪いが、キリトはシャルの案内で、グリムロックという奴にご同行願ってくれ。連れてくる場所もシャルが知っている。」

 

 「わかった。」

 

 「クラインはエギルのところの二階へ行っててくれ。じゃ、グリゼルダさん。揃ったらメッセージを。」

 

 「はい、わかりました。」

 

 

 エギルの店の二階で

 

 「でも師匠、ヤバくねえですか?師匠がやられるわけがねえとしても。」

 

 「とにかくだ、やっと正体を現しやがった。タイマン勝負でクラインが負ける相手じゃないが、おそらく、捕まえるのが一苦労だ。相性が悪い。だが、場合によってクラインにもやってもらう。あいつはな、PoHのことだが、リアルでも因縁浅からぬ奴でな。とにかく、いくら強くても、キリトやアスナにはやらせたくない。シャルは別だ。あいつは直弟子だからな。」

 

 「つまり、場合によっては、殺らなくてはならない、と。」

 

 「いかなる場合でも、なんだがな。本当は。まあ、クラインはそのくらいでいい。だが、忘れるな。向こうは殺る気で来る。それこそ、いつでもね。だからこちらが躊躇したら殺られる。子供にやらせる仕事じゃない。もちろん、他言無用だぞ。おう、向こうは揃ったようだ。問題の旦那もな。それじゃ行くか。」

 

 

 グリゼルダの宿

 

 「グリムロック、解っているだろうが、自首以外に命が助かる道はない。それから、離婚は協議でやってくれ。何を君のストレージに残すかはグリゼルダさんに任せる。もう聞かれただろうが、なぜだ!なぜ、こんなことををした。」

 

 「あなたなら解るだろう。私は妻である佑子を失いたくなかった。」

 

 「なるほど。君が愛したのは過去の彼女、ということか。」

 

 「そうだ。佑子は貞淑で従順な理想的な妻だった。だが、あの日、そう、このゲームに一緒にログインし、デスゲームとなってから、私は佑子を失った。私はただ死の恐怖に怯えていただけだったのに、佑子は私とは逆に生き生きとして、日に日に力強くなりみんなを引っ張っていった。現実世界では見たことがないくらい、佑子は輝いていた。私の全く知らない佑子になってしまった。」

 

 「それって、普通は惚れ直すんじゃねえのか?」

 

 クラインが問う。

 

 「失礼だが、あなたは、まだ、愛というものを知らないとお見受けした。真剣に人を愛した者なら、そして愛を手に入れた者なら、僕の想いが解るはずだ。」

 

 「わからねえ、わからねえよ!そんなの、奥さんを、蝋人形にでもしたいっていうのと、変わらないじゃねえか。」

 

 「ふっ そうかもしれない。愛の形は人それぞれだ。私は理想的な妻だった佑子だけを私の心に残したかった。」

 

 「そんなのって・・・」

 

 グリゼルダは大声で泣き出してしまった。

 

 「グリムロック。言いたいことは解った。だが、残念だな。僕はクラインに賛成だ。ここは仮想世界といっても、少なくともデスゲームにされて、ここにいる僕たちにとっては、ここが現実なんだ。グリゼルダさんにとっては、ここに来る前の世界こそが、仮想世界さ。君が作ったね。君はここに来るまで、彼女を勝手に君の狭い世界に閉じ込めていたんだよ。この世界で、輝いている彼女を見て、それに気づかないなんて!なんて愚かな。」

 

 「あなたとは、そもそも、人間の器が違いすぎる。あなたは、大きすぎて、私なんかとはまるで比較にならないよ。こんなこと言えた私ではないが、佑子はあなたに思いを寄せているようだ。受け入れてやってくれると有難い。」

 

 (余計なことを!後が大変だぞこりゃ。)

 

 「あなた!最後に何を言うかと思えば!」

 

 (あなたも、せめて言葉だけでも否定してくれよ。可哀想だとは思うが、こっちだって、大変なんだ。)

 

 グリムロックは離婚の手続きをしてシャルに送られて黒鉄宮へと向かった。

 

 「あの、カイトさん。」

 

 「はい。」

 

 「お忙しいのにこれ以上、お手間を取らせてはいけません。インビクタスにありがたくお世話になります。カインズとヨルコも。シュミットのことはよろしくお願いします。本当にお世話になりすぎて、お礼のしようもありません。」

 

 「そんなに、おおげさに考えないで。もともとウチに来てほしかったんですから。シュミット君だって自分を良く知っている。死にたくないけど、ボスモンスターとは戦う、このアインクラッド全体から見れば、決して臆病なんかじゃない。むしろ勇敢です。さっ、もう笑って。あなたには泣き顔は似合いませんよ。」

 

 「わたし、裁縫スキル取ってますし、もう少しレベルあげたら料理も。どうも戦うって向いてないみたいです。」

 

 (ヨルコさんだ。良かった。カインズといい仲みたいだな。)

 

 「じゃヨルコさんはその方向で、カインズ君、きみは敏捷値になかなか見どころがある。ウチに合ってるよ、きっと。ウチは僕が気が短いせいか、敏捷値極振りがやたら多いんだ。ま、みっちりと鍛えてあげましょう。」

 

 「嬉しいけど、大変ですね。」

 

 「じゃ、みんな、明日朝、イシュバールの本部に一緒にってことで。」

 

 

 

 エピローグ1

 

 「ねえ、アスナはどう思う?グリムロックの考えって。」

 

 「そんなの絶対、愛じゃないわ。ただの所有欲よ。グリゼルダさん、殺されなくてほんとうに良かった。」

 

 「キリトくんこそ、どうなの?」

 

 「どうって、グリムロック以外は表現は違うけどみんなだいたい同じ感想かなって。」

 

 「そうじゃなくて。結婚した後、相手に自分の知らない面を見せられたら。」

 

 「ラッキーって思うかな。」

 

 「えっ?」

 

 「だって、それまでの自分の知っている相手の全部はもう好きで、結婚するんでしょ。その後、自分の知らないところを発見して、そこをまた好きになれたら、その、に、二倍じゃないですか。」

 

 「ふふふ、面白い、キリトくんって。」

 

 本人は気づかないが、これは120点の答えである。キリトにはこういう茫洋とした包容力がある。これは成人男性にも滅多に見られない資質だ。それに、この殺し文句、若干たどたどしいのが、却ってアスナの好感度を上げている。やはりこの少年には、天賦の才があると言うべきか。だが数段上手がいた。

 

 「それにしても、凄いのはカイトだよ。あんなに大泣きしてたのに、グリゼルダさん、一発で泣き止むし、俺でも解ったもん。あの人、カイトのこともうめちゃくちゃ好きになってるって。あんな目に遭って、たった一日でだぜ。」

 

 「シャルが可哀想だわ。我慢できるかしら。わたしだったら、絶対無理。」

 

 

 エピソード2

 

 第二五層 カイトのホーム

 

 カイトが結局、シャルと同居し続けることには、当然、アルゴから物言いがついた。アルゴとも完全に決裂しては、却ってますい結果になる。シャルに許してもらって少し、アルゴの機嫌を取った。結局は、なしくずしである。年齢差があるが、リアルでも、シャルは結婚が可能(親権者はまったく形だけ)だ。実態は完全にバカップル、夫婦一歩手前状態。

 

 

 カイトSide

 

 

 「カイトぉ 今日のは、ちょっと、ないんじゃない?」

 

 口を尖らせて詰め寄ってくる。覚悟はしていたが・・・

 

 「あれはだな、その、あの状況では、仕方ないだろう。グリゼルダに、あれ以上ショックは与えられないよ。」

 

 「キリトも言ってたよ。殺し文句連発で、完全に陥したって。あたしだって解ったもん。」

 

 (あいつぅ余計なことを!いつもは鈍感なくせに。)

 

 「でも、無意識に、言ってるって、いうのは信じてあげる。」

 

 「ありがとう、シャル。」

 

 「だって、あたしにこう言われるのは、分かってたんでしょ?」

 

 「もちろん。言った後で、しまった、と思ったし、グリゼルダには否定してくれって思ったさ。」

 

 「いつかも言ったけど。嫌なのは確かだけど、理解はしてる。」

 

 「何をさ?」

 

 「大人の女の人がカイトを好きになること。しょうがないよ。カッコいいし、優しいし、そういう人を好きになっちゃったんだから。それにあたしは、まだ子供だし、足りない所いっぱいあるし。」

 

 「シャルぅー 」

 

 (なんていい娘なんだ。)

 

 「あのさ、カイト。」

 

 「うん?」

 

 「あたし、まだ子供だし、ほかの大人の女の人と、なにかあっても理解はするよ。怒るけど。でも一つだけ聞きたいの。あたしが女だって、はっきりしてからも、その日以外は、近くで寝てるよね?」

 

 「まずいかなあ、やっぱり。」

 

 「何言ってるのよ!あたしを抱こうって、思ったこと、一回もないって言うつもり?」

 

 (直球、というより「危険球」でしょ、これ。どれだけ、我慢してるか教えてやりたい。)

 

 僕は年甲斐もなく、真っ赤になって、やっと答えた。

 

 「あるさ・・・いっぱい・・・何回も。女だって、確信までは、ない時から。これでいいか?」

 

 「結構でしたぁ えへへ。おやすみなさーい。」

 

 (アスナはキリトより一つ年上、キリトが勝てないのはあたりまえ、シャルは僕より11歳年下、シャルに絶対に勝てない僕って、いったい・・・)

                                     続く

 

 

 

 




 作者としては、グリムロックのような心理になることまではありうると思いますが、それが殺人の動機になるとは考え難いですね。利欲的動機が主であるならば理解できますが。
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