プロから見たSAO攻略   作:ベルクーリ2世

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 あまりダラダラやるのも気が引けるので、いっぺんに進めます。


第23話 はじめてのデートと超派手婚

 第四七層 フローリア 

 

 フローリアの別名フラワーガーデンは、なるほど、アインクラッド一のデートスポットと、噂されるだけのことはあった。

 

 「うわぁ・・・綺麗!・・」

 

 転移門からもう一面花が咲き誇っている。

 

 (あの無粋な茅場がよく、こんなものを造れたものだ)カイトの方は、それこそ無粋に、そんなことに感心していた。

 転移門の台座から花壇の一角に走り寄るシャル。それに続くカイト。こんな時でも警戒は怠らない。さすがに「円」は使わないが。

 

 今日のシャルのファッションは、ピンクのブラウスに白黒の花柄のスカート。それにしても、短い。スラリと伸びた美脚がいやでも目に入る。カイトの好みに合わせたのではなく、シャル自身がこういうスタイルを好むのだ。そういうところが、アルゴの言う「天然の男殺し」たるゆえんか。

 もちろん、カイトもこれは大歓迎。出かける前にシャルこの姿を一目見た時は、ふるいつきたくなるどころか、例の解除コードを使うと同時に、そのまま押し倒してしまいたくなったほどだ。

 カイトの方も無地の白っぽいTシャツにストール風の黒のカーディガン、デニムと会わせて脱力モードのファッションである。二人はお互いに改めて「何着ても似合うなあ。」と感嘆していた。

 

 現在の最前線は第五二層、第四七層は本来、誰でも来れるところではないが、危険を承知で来るのだろうか。カイトの予想より、人は多かった。ほとんどというより、全部がカップルだった。それぞれ、手をつないだり、肩を組んだり。シャルも素早く、腕を絡めてきた。もちろん、カイトはシャルのしたいようにさせる。

 カイトはカジュアルな出で立ちであれば、実年齢より3つは若く見える。一方シャルは童顔なのに、年齢より大人びた雰囲気がある。合わせると実年齢の半分程度の差にしか見えない。まさに、お似合いの二人であった。

 

 二人共ただ、一緒に歩いているだけで、満足で、ずっとこうしていたかった。思えばいつも一緒と言っても、外ではボス部屋や迷宮区ばかりだった。それでも、二人だけだとカイトはふざけきっていて、楽しかったが。

 

 (まったく、攻略なんかもう、どうでもいいよなあ。クリアしないと帰れないっていうのが、なければ。)

 

 この二人の姿は、いやでも目立つ。顔を知っている者も少なからずいたが、さすがに遠慮していた。

 

 「きゃあああ!」

 その時、悲鳴が聞こえた。すぐ近くのフィールドからだ。

 

 「仕方ない。行ってみるか。」

 

 シャルも頷いて続く。

 

 フィールドに出たばかりのところで、女性が食中植物型Mobに捕まり逆さに吊るし上げられてる。男性にとってはなかなかの光景だが、彼女のお相手が、助けられないのでは、カイト達がやるより仕方がない。こんな雑魚相手でも放っておくと危険だ。

 

 (さて、困ったぞ。)

 

 何が困るかというと、このMobは口のところを一撃すれば、終わりなのだが、武器に困るのだ。投剣は例のアフリカン投げナイフしかない。しかも念入りに麻痺毒が塗ってある。いい加減に投げても当たるが、被害者にも当たる心配がある。チャクラムが一番いいのだが、今は持っていない。素手では目立ちすぎるし、汚物に手を突っ込む気にはなれない。

 

 「しゃあない、やってくれ。」

 

 シャルは跳躍して片手剣で「バーチカルアーク」の一撃で吹っ飛ばす。地味にやっても、この格好では、どうにも目立ちすぎる。落ちてくる女性をカイトが、あっという間に落下点に達し、受け止める。

 

 「あ、あの、ありがとうございます。」

 

 自分も相手がいるの、にカイトを見て、真っ赤になっている。

 

 「失礼。僕も連れがいるのでね。」

 

 すぐに女性を下ろす。

 

 剣を収めたシャルが走り寄ってくる。

 

 「どうやっても目立つな。いまさら、隠蔽でもないしなあ。」

 

 「でも、カイト・・・あれ!」

 

 気が付くとかなりの人だかりになっている。

 

 「うわぁ 舞姫だあ!」「かっわぇぇええ!」「あの男の人、もしかして」「婚約したばかりって聞いたぜ。」「こんなところで見られるなんて!」

 

 

 一瞬にして、人気アイドル同士のお忍びデート発覚、みたいな状況になってしまった。

 二人共、サインを求められたが、一人にサインしたら全員にしなくてはならないことになる。

 

 「僕たちも、その、初デートなものですから。今日のところは、そっとしておいていただけますか。」

 

 泣く子も黙る攻略組総帥の低姿勢な態度に、騒ぎも収まり、道を開けてくれた。

 

 「僕たちには、外ではもう、平和はないのか。」

 

 うんざりしてカイトが呟く。

 

 「そうね、がっかりだね。」

 

 「仕方ない。こういう楽しみは、リアルにとっておこう。家へ帰ればなんでもできるんだから。」

 

 「何でもって、カイト、何もしてくれないじゃない!」」

 

 不満そうな声。カイトは一瞬にして、その意味を理解した。こういうところが、キリトとはまるで違う。

 

 (でもあれ、一回使っちゃったら、自制する自信が全くない。解除しっぱなしは絶対ダメだな)

 

 「わかったよ。ご期待に応えよう。帰ったらね。」

 

 「本当?嬉しい!」

 

 (僕もそりゃ、嬉しいけど、不安もあるなあ。)

 

 寄り道をしてから、帰るつもりで、転移門に向かったが、門の近くでカップルが5、6人の男に絡まれていた。問題は、そいつらのカーソルの色。オレンジだ。

 

 素早くシャルが二人を保護し、カイトは男たちの前に立ち塞がる。

 

 「ちょっと、ちょっとアンタら、何してくれてんの!」「邪魔すんじゃねえよ。」「俺たちを誰だと思ってるんだ!」

 

 「どうでもいいが、因縁つける前に、相手が誰だか、くらい確めたらどうだ?」

 

 言葉は穏やかだが、殺気を開放している。

 

 「お、おい。こ、こいつ攻略組の・・・」「あ、あの素手でも、一人でボスを倒すって言う・・・」「あの人も顔を見たら、逃げろって。」

 

 

 「どうやら、僕が誰だかは、解ったようだな。おまえたちは運がいい。質問に答えたら、今日は見逃してやってもいい。」

 

 「は、はい」

 

 「おい、そこの!」

 

 カイトは連中の一人を指さした。

 

 「さっき、あの人、とか言ってたな。そいつの名前は?」

 

 「名前、はわかりません。その、黒ポンチョの・・・」

 

 「そこまででいい。そいつに伝えておけ。新婚ボケしてるなどと思ったら大間違いだ。お前のことはずっと追っている。首でも洗って待っていろ、とな。」

 

 「は、はい。」

 

 「さっさとうせろ!僕の気が変わらないうちにな。」

 

 男たちは走って逃げ去った。

 

 「あなたたち、圏外では油断しないことだ。厳しいが、ああいう輩にも、対処できないなら、来てはいけない。いいね。」

 

 「ありがとうございました。あなたは、インビクタスの団長の・・・」

 

 「カイトです。こちらはシャル、知ってますよね。」

 

 「は、はい。あの、ご婚約されたばかりとか、おめでとうございます。」

 

 「ありがとう。あの、僕は別に偉いわけじゃないんで、どうも、そうやって、恐縮されるのは苦手だなあ。」

 

 「いえ、頑張ってください。」

 

 「努力しますよ、シャル、行こう。」

 

 

 第50層 アルゲード カイトのホーム

 

 一応新居だが、そう長くいるつもりはない。インビクタスの本部もこの層に移した。大きな建物が少なく、探すのに苦労したが。ここは、なんとなく騒々しく、町並みも雑然としている。東京で言うなら「上野」に似ている。だが、活気はある。ここは情報と流通の中心になる、とカイトは睨んだ。しかし、住むには、あまり快適とは言えない(上野にお住まいの方には申し訳ないのだが)。

 カイトとしては、記念すべき夜は最高のムードがある場所で、と思っていたのだが、シャルが待ちきれないなら仕方がない。何だか話が逆のような気がしてならないが。そう決まってしまうと、夜までが、長すぎてどうにも間が持たない。しかし、相談すべきことはいくつかある。

 

 「ふーっ 驚いたな。」

 

 「ねえ、あいつら、見逃したけど、良かったの?」

 

 「しかし、二人で、あいつら全部を黒鉄宮に送るのは骨だぞ。散々ぶち壊されたが、初デートの最後が、黒鉄宮では笑い話にもならない。」

 

 「それはそうだけど。」

 

 「いや、あんなチンピラにまで、ラフコフの手が伸びているとはな。一気にやらないといけないようだ。」

 

 「うん、あたしも何でもする。」

 

 「どうするかは、もう考えた。でも今日は、記念すべき日だ。その話は明日以降だ。それより、」

 

 「うん、何、なに。」

 顔を寄せてくる。どうしてこんなに可愛いんだ。

 

 「あのさ、フラワーガーデンは残念だったけど、ああいうデートスポットはもう、ダメだな。僕たちには。もっとらしいデートを考えよう。」

 

 「うん、うん、それで?」

 

 「エギルがさ、どうも披露宴の食材の調達に困ってるらしい。S級は僕らもまだ見たことない。いるのはおそらく、七〇層より上だろう。A級でもほとんど食べたことがない人が多いだろう。だから、エギルに言ったんだ。買うより狩ればいいってね。食材狩りだよ。」

 

 「いいね、いいよ、それ。」

 

 「攻略そっちのけでやるんだから、きっと呆れられるが、投剣スキル持ち中心に、ツーマンセルであちこちで狩る。まあ、僕たちが組んだら誰も勝てっこないが、みんな競争する気でやるだろう。アルゴは忙しいからダメ、クー・フーリンは絶対やるだろう。キリトも絶対やりたがるが、問題はアスナだな。真面目だから。なあ、シャル。」

 

 「アスナを説得すればいいのね。任せて。」

 

 シャルはやらせれば、そういうことは非常に上手い。

 

 「ようし、攻略組上位者総出で、食材探しだ。」

 

 ただちに、明日、団長室で打ち合わせの旨メッセージを送る。

 

 

 数日後、超チート軍団攻略組エースメンバー総出の、食材探狩りが開始された。

 

 

 カイトとシャルは二人べったりで、これにかかりっきりであったが、他のメンバーは交代であたった。迷宮区の攻略など、メンバーが5、6人も残っていれば何も問題はないのだ。

 

 100人以上という相当な人数だから、食材も相当な量が必要だ

 

 肉は「ウィルド・ホッグ」(イノシシ)、「グレート・デイアー」(鹿)「グレイ・ラム」(羊)「ミドル・クウェイル」(ウズラ)、「ゴールデン・フェザント」(雉)などが探索して狩られた。

 

 S級食材のような、豪華すぎるものは、数が揃えられない。もちろん出逢えば狩るが、狩った者が食べても売ってもよいとされた。それでも多くのA級食材が揃えられた。

 

 魚については、既に「アインクラッド一の大商人」と言われているエギルが顔の広さを活かして、第二二層の「釣り師」ことニシダ氏の協力を得ることができた。アインクラッドには海がない。釣れる魚の名前は、いい加減なものであり、淡水のはずなのに味は海水魚、ということが少なくない。ニシダなる御仁は「釣り師」が通り名であるだけに、釣りスキルをコンプリートしていた。釣り仲間を集めて、「何匹でも用意できますよ。」と請け負ってくれた。

 

 こうして食材の目処は立ったが、実は大きな悩みがあった。調味料である。ケチャップ、ソースあたりはそれこそNPCの飲食店でも味わうことができる。妙なことに香辛料も比較的揃っていた。甘味も十分に用意されていた。決定的に欠けていたのは「塩味」である。はっきりした塩がないのだ。これが、アインクラッドの飲食店では何を食べても何か物足りない気がする原因である。

 カイトは早くからこれに気づき、料理スキルをコンプリートした4人のチームを中心に研究を重ね、塩味だけは何とか再現できていた。塩があれば、次に欲しくなるのが、醤油である。食材の試食を重ねて、この研究が一気に進んだ。これに最も貢献したのが、なんとアスナだった。このスーパー美少女は、攻略組主力であり、ギルドの事務も精力的にこなしつつ、キリトのために、料理スキルを既に700以上まで上げていた。

 アインクラッドに存在する膨大な調味料の材料は既に醤油用のものとしてかなり絞り込まれてはいたが、その膨大な組み合わせの中から、超絶的な勘によって、とうとう醤油を再現してしまったのだ。色は紫だったが、味はまさに醤油であった。この他マヨネーズの開発にもアスナは貢献した。

 醤油の開発は大変な快挙であった。キリトだけは「こんなの、公開したら俺の分がなくなる。」と小さなことを言っていたが。みな、歓喜したが、中でも狂喜したのが、釣り師ニシダ氏である。いくら魚を釣っても醤油がなければ、刺身も満足に食べられない。ニシダ氏のために、アスナとグリゼルダが第二二層まで、調理器具まで持参して出張して、料理した。ニシダ氏はインビクタスの誠意に心から感謝していた。

 (ど田舎とバカにしていたが、ニシダ氏の他にも年配の人材が結構いるなあ、ここは。)カイトは改めて、刮目した。キバオウを主任として、この層の住人との交流を図るよう指示した。キバオウはあれで社交性が結構あるのだ。

 

 結婚披露宴は婚約してから、一ヶ月後、はじまりの街の教会で行われた。教会は他にもあったがやはりここに一番縁がある。子供たちは、カイトとシャルが挨拶に来たことに狂喜したが、シャルが、実は美しいお姫様であったことには、驚愕していた。それは、ALSのシンカーとユリエールも同じだった。

 列席者は100人を超えた。子供たちは、披露宴には出席しなかったが、別室で同じ料理が振舞われた。一つとして、食べたことのあるものはなかった。もう、大喜びであった。さらに、列席者全員にデザートとして、すぐ上の第二層にあるトレンブル・ショートケーキが供された。これに近いケーキを自作することもできたのだが、ついに伝説のケーキを超えられなかったのだ。

 

 スピーチに立ったのはヒースクリフ、リンド、シンカーなど他ギルドのマスターたち、インビクタスからは、アスナとクラインの二人。いずれも滞りなく進んだが、宴たけなわの時、仰天企画が二つも披露された。

 

 まずは、キリトとアスナのゴールデンペアによる剣舞。まるデュェルのように真剣で、それでいて、美しかった。列席者は攻略組が中心であるが、それでも本気でやれば数人にしか、剣が見えないので、かなりスピードを落とした。観る者は一様に感嘆した。

 

 次になんと、アルゴとウインリィのユニットによるアイドルデュオである。実年齢よりはるかに若く見えるアルゴは実は「唄って踊れるジャーナリスト」だった。キバオウが、とうとうそのアルゴを口説き落としたのだ。そのために必要な情報もカイトから慎重に与えられた。一回こっきりの約束だったが、次の機会を虎視眈々と狙っていた(キバオウは熱狂的なタイガースファンである)。なんと言っても、アインクラッドの実質的最高権力者の後押しがある。美しい新妻まで、ユニットに参加させてもよいとまで言っているのだ。

 

 最後は新郎カイトの挨拶。最初から最後まで人を食った、堂々とした態度での惚気っぱなしのスピーチに列席者は驚き、呆れ、戸惑ったが、最後は盛大な拍手を浴び、披露宴は終了した。ゲームとは言え、想像を絶するド派手婚であった。そのスケールの大きさに誰もが驚嘆していた。

 

 外に出ると多くの一般の人も祝賀に訪れていた。花嫁のシャルが投げたブーケを受け取ったのはアスナ。もちろん、アインクラッドで、カイトに次ぐ投剣の名手、狙って投げたのは言うまでもない。

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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