第二七話 決戦のあとで
キリトSide
ここに来る直前、俺は昨日カイトに言われたことを思い出していた。
「君が指揮を取れ。いやでもそうなるがな。」
「でも、俺、カイトみたいになんて、できないよ。」
「キリト、指揮官としての僕をどう思う。」
「完璧だよ。軍神って言われてるのも大げさじゃない。」
「とんでもないよ。僕には大きな欠点がある。」
「俺にはわからない、そんなの。」
「大部隊の指揮官はむしろ、戦闘能力は平凡でいい。人を見る目があること、そして人望が大事だ。ただし、もう一人、軍師が必要だ。ここでは、僕は指揮官であり、軍師なんだ。これには無理があるんだよ。指揮官には情が、軍師には非情が必要だ。本来、一人二役は無理なんだ。」
「俺に何ができるの?」
「今回の指揮は指揮官として、というようなおおげさなものじゃない。個人の戦闘に近いからな。戦闘隊の隊長くらいのものだ。きみはその任には最も向いている。僕が言うんだ、信じろ。いいか、きみが思った通りでいい。それが、おそらく、その場で最善だ。」
「考えられる、最悪の状況を聞いておきたいんだ。俺が考えているのでいいのか、確認したい。」
「ほら、ちゃんと考えてるじゃないか。そうだな、相手が見えない場合、だな。」
「一時撤退、は相手の思うツボ、だよね。」
「その通りだ。その場合に限らないが、とにかく不測の事態が生じた時は、慌てないこと、周りをよく見て相手の出方を見るんだ。相手はこっちを罠にはめようとしてるんだから、こちらに落ち着かれたら、今度は相手の方が慌てる。いいか、今回はまず、メンバー一人一人は圧倒的にこっちが強い。その上、奴らは指揮官を欠いている。こっちも、じゃない。こっちにはきみがいて、アスナがいる。これも圧倒的に有利だ。」
「大丈夫、そのくらい、やれるよ。」
「混乱が生じるとしたら、繰り返し、言っているように、相手のHPがレッドになった時、そしてさらにはこっちに死人が出た時だ。」
「圧倒的に有利でも、そこまでの覚悟が、必要なんだね。」
「命のやり取りとは、そういうものだ。実力差なんて、気休め程度なんだよ。大丈夫だ。第一層のボス線の時に、きみとアスナはたった二人で崩れた戦線を立て直した。全く未熟で、あそこまでできたんだ。僕は心配していない。」
回廊結晶を使って、アジトの前まで来た。カイトは突入の合図をしたら、即、離脱することになっている。
カイトが右手を大きく上げた。声は出さない。右手が振り下ろされた。突入の合図だ。
「誰もいないぞ!」「どうしたんだ?」「罠かもしれないぞ!」
「慌てるな。周りをよく見て、相手が出てくるまで待て!こっちからは動くな!」
俺は大声で号令をかける。大丈夫だ。混乱してはいない。
その時だった。あっちから声がかかった。
「かかれ!」
奇襲だが、想定内だ。多少暗いが、灯りを消してこなかっただけまだ楽だ。
「ぶっ殺してやる。」 「ヘッヘーイ!」「死ねえ!」
相手の声ばかりするが、こっちが圧倒的に優勢だ。みんな、必要な時以外、声を出すなとカイトから厳命されている。
しかし、膠着状態だ。まだ、相手の数人が、投降しただけだ。後方に黒鉄宮に送るまで、拘束する部隊を置いてある。
「しまった。」
「どうした?!」
「毒ナイフにやられた。」「そこ、動くな。防御に専念しろ!」俺は指示を飛ばす。
その時だった。
「も、もう嫌だあ!」「けけっ どうした?ほら。」「やめろぉー!」「ほら、早くやってみろよ!」
恐れていた事態だ。相手のHPがレッドになっても向かってくる。それに恐怖したのだ。
「慌てるな、おまえは下がれ!」おれは味方を励ます。
「こいつらぁ、俺に任せろ!」
クー・フーリンが二人の敵の止めを刺す。
しかし、同じような事態があちこちで生じている。
(とにかく、相手の数を減らさなきゃ。半分以下になれば終わったも同然だ。)
さらに、俺にとって最悪の事態が生じた。動揺して、止めが刺せなかったアスナが毒ナイフにやられて動けなくなった。傷は浅いが。麻痺だ。
「こぉの野郎ぉおお!!」
逆上した俺は、相手に斬りかかり、二人のHPを0にした。何も判らなかった。ただアスナを殺そうとした奴が許せなかった。さらに俺はもう一本のダークリパルサーも抜いて二刀流で暴れまわった。こういう場合は防御に専念しろって自分で言っておきながら。
「このぉおおお!よくも!よくも!よくもぉー!」今度は奴らの方が恐怖した。
「キリトくん!キリトくんたら!だめぇえー!」アスナの叫びすら耳に入らなかった。
「ひっ ひぃぃいいー!」「バケモノだぁあ~!」「許してくれぇえ!」
「キリト!落ち着け!もう敵はいねぇよ。」クラインが危険を冒して後ろから押さえてくれた。皮肉なことにバーサク化した俺の大暴れが結果的に勝負を決めた。相手の残りは五、六人にすぎず、こちらはほとんどが残っている。残りの敵も投降した。
こちらの死者は人。聖竜が2人、血盟が1人だ。敵の死者は11人、投降した者は17人だった。投降者は全員回廊結晶で、直ちに黒鉄宮に送られた。
「誰がだれを殺したかなど、確認するな。見た者も忘れろ。終わったら、今日のことは全部、忘れろ。少なくともそのつもりでいろ!」これが、カイトが出陣の時にかけた言葉だった。
「ありがとう・・・止めてくれて。」俺はクラインに礼を言った。
「ったくう!俺までお前ぇにやられんじゃねえかって、ヒヤヒヤしたぜ。無茶しやがって。」クラインは笑って肩を叩いてきた。
「キリト・・くん。」アスナは小さな声で、俺の名を呼んだが、言葉がでてこないみたいだ。声を出さないで泣いている。俺はアスナの肩を抱くようにして、ギルド本部に戻った。
カイトSide
討伐隊が洞窟に入る瞬間に僕とシャルは離脱した。離脱したのを、見られないように隠蔽を使っている。アルゴは外で待っていた。最初から隠蔽を使っている。洞窟とは反対方向に索敵の反応があった。3人、予想通りだ。
「全力で追うぞ!」
全力、と言っても、電光石火、は使えない。シャルを抱えて、走ることはできるが、アルゴをおいてきぼりには、できない。普通に走っても、最速の僕についてこられるのはこの二人だけだ。あっと言う間に敵に追いつく。追いつかれて、奴も、観念したらしい。
「今度こそ終わりだPoH。遺言くらいは聞いてやるぞ。」
「けっ 罠にハマったのはこっちかよ。まさか、最初から本隊を見捨てるつもりだったとはな。」
「見捨ててなんかいないさ。僕がいなくても、貴様らなどにやられるものか。例え、お前があそこにいたってな。」
「ああ、そうかよ。ウインド!てめえのオンナはてっきり、そこの跳ねっ返りだと思ったら、そんな小娘に骨抜きにされるとはな。がっかりだぜ。」
「アンタ!いい加減にしな!あたしが引導渡してやるよ!」
「しほり!下がってろ。きみは手を出すな。」
「でも・・・」
「いいから!」
アルゴは、僕の言うとおり、後ろに下がる。
「ヘッヘーイ!わざわざ、2人で俺たち3人とやろうっての?!」
ジョニー・ブラックだ。煽りながら毒ナイフを投げるのがこいつの手だ。
「うるさいわね!」
僕より素早くシャルが恐ろしいモノを投げた。アフリカン投げナイフだ。
ビシュッ
ズッ
クリティカルではなかったが、シャルの腕ならどうやっても当たる。麻痺毒が効いて動けなくなった。これで十分だ。
「そのバカはもういい。きみはあの、薄汚い奴の動きを止めてくれ。それだけでいい。」
赤目のザザという奴の格好もまた悪趣味でいつもボロボロのマントを着ている。
「OK。ウインド。降参だ。大人しく黒鉄宮へ行ってやるよ。」
「お前、そんないいところへ行けるって、本気で思ってるのか?」
「まさか!てめえ!ちくしょう!てん・・・」
その瞬間僕はアレを発動した。
「タイムアルター!ダブルアクセル!」PoHの動きが止まって見える。これは見えるのではなく、僕とPoHの間では本当に止まっているのと同じだ。
「はっ!」僕は閃打でPoHの心臓部を突く。
「ジ、ジーザス!・・・」
僕の腕が黄色く光った。エンブレイザーで止めを刺す。
隣ではシャルがザザと戦っている。タイムアルターを発動すると、自分と相手以外は見えなくなる。別世界に飛んでいる感じだ。だから、僕にはシャルとザザの戦いがまったく見えていなかった。ザザのエストックという武器は先が尖っていて大きな針みたいな感じだ。相手は慣れないし厄介だ。実力差があっても面倒な相手と言える。何合か打ち合ったようだ。シュルは僕と同じで、少々気が短い。
シャルはザザの突きを避けない。真っ向から打ち砕くつもりだ。エストックと片手剣がぶつかって火花が散る。
ガキィィーン!
エストックを跳ね上げた。シャルは素早く剣を捨て掌で突く、いや違う、これは・・・掌がザザの腕を駆け上がる。そして、シャルはザザの懐に素早く入り込み、続けて肘打ち!
八極拳奥義「猛虎硬爬山」!八極拳歴代最高の名手と言われる李書文の必殺技だ。ここで、これを使うとは!リアルなら間違いなく死ぬが、アバターの体ではそこまではいかない。僕が閃打で止めを刺す。と、同時にシャルがジョニー・ブラックにエンブレイザーで止めを刺している。
僕たちは顔を見合わせた。
(こいつめ!)
(いいじゃない、このくらい。全部僕がやる、なんて細かいこと言わないの!)
何も言わなくても通じる。いくらこいつらでも、人を殺して笑ったり、何か言うのは失礼だ。本物の暗殺者は寡黙だ。(だからお前は二流以下なんだよPoH。何をやってもな。)
「今度こそ、終わったわね。」
「ああ、長かったな。」
僕もアルゴもPoHとの長い「悪縁」を思い出していた。
キリトSide
ギルドのアスナの部屋にいる。みんなが二人だけにしてくれている。アスナはまだ泣いている。
「わたしの・・・せい・・・だね。」
何を言っているのかは、分かった。俺は死者が出たことに落ち込んでいたが、アスナが悲しんでいたのはそれじゃなかった。俺がアスナがやられて、逆上し、相手二人に止めを刺したことに責任を感じてるんだ。自分ができなかったからって、その上、俺がバーサク化して・・・もっと殺していてもおかしくなかった。
「アスナのせいじゃないさ、あれは。やらなきゃこっちがやられてた。むしろ、俺でよかった。」
アスナはぶんぶんと首を振る。
「わたしがきみを守るって言ったのに・・・わたしが、しっかりしなかったから・・・」
「・・・・」
「キリト・・くん。」
「うん?」
「わたし・・・わたし・・・キリトくんと、わか・・・」
(言わせるか!離さない!こんな、こんなに大事な・・・)
俺はアスナを抱き寄せて、アスナの唇を塞いだ。これが、俺の初めて、だった。後で聞いたら、アスナもそうだった。続けて跪いて言った。
「俺の命はきみのものだ、アスナ。だからきみのために使う。最後の一瞬まで一緒にいよう。」
「わたしも、わたしも、きみを守る。今度こそ、一生・・・」
俺たちは今度こそ、お互いの意思で長い口づけを交わした。
「アスナ・・・今日は、いや、今夜は一緒にいたい。」
アスナは顔を赫らめ、何か考えていたが、最高の笑顔で答えてくれた。
「・・・うん。」
第六一層 セルムブルグ
「改めて見ると、いいところだなあ。景色は綺麗だし、人は多くないし、落ち着いてる。」
「わたしも、最初から、そう思ったの。だから、カイト兄さんに隣をって勧められた時、すぐ決めちゃった。」
「俺のいるところとは、正反対だ。」
「キリトくんが、あそこの方が、落ち着くって・・・わたしは・・その。」
アスナはカイトに「さっさと結婚して、一緒に住め」って言われた時のことを言っている。おれは、アスナみたいに、言うことなしの娘が、俺みたいなのでいいのかって思ってて、とてもそうしよう、なんて言えなかった。
「その、俺、そこまで、コル持ってないし。」
「あら、キリトくんなら、わたしよりずっと稼いでるはずよ。」
「その、俺、ちょっと珍しい剣とか、他の奴が持ってないアイテムとか見るとつい。」
「ダメねえ。結局使わないんでしょ。」
「反省してます。でもカイトだって凄い金じゃない、コル遣い荒いぜ。」
「カイト兄さんはムダなモノ、一切持たないもの。いらないものは、どんどん人にあげちゃうし。でも稼ぎが凄いから。それでも、アルゴさんが言うには、リアルでは、こんなもんじゃないって。」
「カイトって、実は物凄い、お坊ちゃんらしいんだ。カイトの実家には、行ったことないんだけど、カイトの家に執事さんが来ててさ、何でもやってくれるみたいだった。およそ、家事って、やったことないんだよ。みんなに言ったらダメだぜ。俺が怒られる、いや怒らないかな。」
「言わないけど、言っても怒らないでしょ、きっと。」
第六一層セルムブルグ アスナのホーム
アスナはまめまめしく働いて、いろいろ作ってくれている。あれだけ、一人で何でもやって、料理スキルを最近コンプリートしたって、やっぱり凄いよなあ。
「いつもは足りなければ、隣に行けば、大概余ってるものが、何かあるからいいんだけど、今日はさ、その、ちょっと、行きにくいかなって。」
(足りないなんて、そんなこと全然ない。それこそ食べきれないくらい、いろいろ出してくれた。しかも俺の好物ばかり。全部チェックしてくれてたんだ。)俺はすっかり感激していた。
アスナはいつになくおしゃべりだ。もともと、結構しゃべるけど、シャルほどではない。シャルはカイトがいつも一緒だからそりゃ口も達者になるよな。
そうしているうちに、何か意を決したように、アスナは、
「よしっ!」といってテーブルに両手をついて立ち上がる。ベッドの傍に行って着替え、じゃない、脱いでいく。あっという間にその・・・「初期装備」になっている。いつか見た姿・・・だけど・・・比較にならない美しさだった。俺はただ、息を飲んで、呆然としていた。世の中に、こんなに美しいものがあるのかって。
「あんまり・・・こっち・・・見ないで。キリトくんも、ほら、早く脱いで。わたしだけ、恥ずかしいよぉ。」
鈍感な俺はやっと気づいた。アスナは俺が「今夜、一緒にいたい」って言ったのを、その、ここまでするモノと受け取って、それで赤くなって。
ここで俺は生涯最悪と言える失策を犯してしまった。
「俺はその、一緒に居たいっていうのは、ただ、今夜一緒に過ごしたいって言うか・・・」
「バカぁあああ!」
アスナの右拳が俺の顔面に炸裂した。そう言えばカイトが言ってた。
「アスナの正拳は僕が教えた中でも1、2を争う。もう一人?シャルに決まってるだろ?ああ、心配するな。リアルでは護身術しか教えないから。」
そんな正拳がもろにヒットしたのだ。俺は壁まで吹っ飛ばされた。圏内だから問題はない?
(待てよ?俺は男だからハラスメントコードなし、はいい。だけど、さっき、俺、確かにキスしたよな。初めのなんか一方的に。あれ、何でコード出なかった?)
「キリトくん!大丈夫?」アスナが駆け寄ってくる。もちろんあの姿のままだ。
「大丈夫だよ。圏内だし。」
ウソだ。「圏内戦闘は心に恐怖を刻み込む」おれの脳内にはアスナの正拳の恐怖がしっかり刻み込まれた。
(アスナを絶対に、怒らせてはいけない。)
「あの、アスナさん?」
「なに?」
「ハラスメントコード出なかったけど?さっき。今だって、そ、その、できるんですか?」
本日二度目の大失策だ。こんな肝心な時に、どんだけ情けないんだ、俺って。
「キリトくん、知らないの?」
アスナが言うにはメニューの深い、さらに深ーいところに「倫理設定解除コード」っていうのがあるんだと。これを発動すれば、その、何でもできるって、俺と二人の時は解除してたって。そして、それはシャルから教わったと。そこからは解る。カイトが必要と判断してシャルにアスナに教えろって指示したんだ。何でそんなことまで分かるんだ?
俺はそこからたっぷり20分謝り続けてどうにか許して貰った。その後、俺たちの「初めて」は無事にすませることができた。
そのまま二人で眠ってしまった。俺はふと目を覚ました。
(本当に、現実か?さっきまでのこと。いやこれはゲームか。でも今はここが現・・・あーもう何だか分からなくなってきた。でも俺にはすべての感触が、しっかり残っている。ふとアスナの寝顔を見る。うーん、なんて可愛いんだ。つい頬っぺたをつついてしまった。
「ああん?うっ うーん」
「ゴメン。起こしちゃった。」
「ううん、いいの。あのね、キリトくん、今、わたし、夢をみてたの。夢の中でね、『これが夢だったらどうしよう!』って思って。それで目が覚めたら、今、そこにキリトくんがいて、ああ、夢じゃなかった、良かったって。」
「おかしな奴だな。帰りたくないのかよ。」
「帰りたいよ。帰りたいけど、今ここで起こってることが全部なくなっちゃうのは嫌。だって今はここが現実だって、キリトくんに会えて、こうして、つながった今は、全部、本当だって思えるから。」
「そうだね。俺もおんなじだよ。」
「ねえ、キリトくん。」
「うん?」
「攻略とか、しばらく、休んじゃダメかな?その二人っきりで、もっといたいっていうか・・・」
「そうだな、おれも同じ気持ちだよ。」
俺は意を決した。
「第二二層の湖の近くに、ログハウスがあってさ。景色もすごくいいんだ。そこ。その家に二人で引っ越して・・・」
「えっ?」
「け、結婚しよう。」
俺は、キメ顔で言った。アスナは暫く黙っていて、そのはしばみ色の大きな瞳から涙が流れて、でも笑顔で、最高の笑顔で・・・
「はい。」
翌日
第五〇層 ギルド「インビクタス」本部 団長室
「そうか、やっと決めたか。良かった。本当に良かった。キリト、アスナ、ふたりとも、おめでとう。」
「アスナ、よかったね。おねでとう。キリトもね。」
「それで、あの、いろいろ、お願いがあるんだけど・・・」
「いいよ。何でも。」
「まず、その、結婚披露宴は、カイト兄貴みたいな、ああいうのは、その、いいかなって。」
「あれはさ。僕もシャルもああいうの結構好きでさ。人それぞれだよ、それは。もちろん、無理にやれなんて言わない。ん、外野?僕が黙らせるさ。心配ない。」
「良かった。次はその、攻略とか、ちょっと、休んじゃダメかなあ?」
「いいよ。好きなだけ休め。新婚なんだから。」
「カイト兄さんは天衣無縫というか、いつも無茶苦茶です。好きなだけ、なんて。」
「そうだよ。好きなだけって、それじゃもう攻略に、俺たちなんか要らねってことじゃない?」
「そんなことは言ってない。アスナがいるんだから、節度は守られるさ。キリトだけだったらこうは言わない。」
「じゃ、お言葉に甘えて、3週間くらい。」
「うーん、いいんだけど、そこまでだと一日だけは、帰ってきてもらうことになるなあ。」
「一日って何?」
「ほら、ヒースクリフとのデュエルだよ。二週間後の次の日に決まった。場所は血盟騎士団本部の隣の闘技場だ。相手はもう一番か二番やりたかったらしいけど、じゃこっちは、シャルを出しますけど、それで良ければって言ってやったら、もう言葉がなかったって、ははは。ま、戦わずして、既に二連勝だ。キリトが負けたってウチの負けにはならん。」
「口だけで圧勝か。それはわかったよ。俺たち勝手なこと言ってるけど、考えてみればカイト兄貴達、休み全然なかったなあって、今頃気づいて、ごめんなさい。」
「いいんだよ。シャルがいいって言うから。シャルが本当は休みたいって思ってるなら、そうしたさ。ここだけの話、あの頃は僕も、もう攻略なんか、どうでもいいやって、思ってたくらいだから。」
「どうすんだよ。それじゃあ、帰れないじゃないか。」
「だから、一瞬そう思っただけ。思うだけなら問題ないだろ。」
「まったく!それで俺たち、第二二層に一旦引っ越すことにしたんだけど。俺でも、あそこのログハウスくらいなら買えるし。」
「ふうん。ああいうところが好きか。いいんじゃないか。だけどキリト、それぐらいでもすっからかんだろう、君。」
「だからわたしの今住んでいる、あそこを売ろうかなって言ったんですけど。」
「俺が反対したんだ。あれほどの物件を売ることはないって。」
「それは、珍しくキリトの方が正しい。僕の隣じゃ気分が出ない、か、ははは。いやそれはわかるが、また復帰すればセルムブルグの方が、なにかと便利だ。ああ、コルなら結婚祝いをあげるから心配するな。」
「そうよ。あたし達の隣からいなくなっちゃうなんて。アスナがいなかったら不便だわ。」
「不便って、本当に、シャルってだんだんカイトに似てきたな。」
「あら、似てくるって、そんなの当たり前じゃない。」
「わたしも、なくなっちゃうのは、ちょっとさみしいかなって、ホントは。」
「アスナの旦那様は、手のかかるキリトなんだから、そんなに献身的だと苦労するぞ。」
「ちぇっ、結局、アスナの味方なんだから。」
「それはそうだよ。おそらくずっとな。よし、みんなには、僕から言っておくから、すぐに出かけてよし。こちらからは連絡しないが、そっちからは、何かあったら必ずメッセージをくれ。」
「ほんとにありがとう。俺たちのわがまま、全部聞いてくれて。」
「いえいえ、どういたしまして。」
「気をつけてねアスナ。キリトが悪いことしたら、あたしに言ってね。」
「みーんな、アスナの味方。」
「諦めろ。じゃあ、気をつけてな。」
カイト夫妻は満面の笑顔で俺たちを送り出してくれた。
続く
ラフコフ討伐を書いたのは、他にキリアスを原作同様にくっつけるところが見当たらなかったからです。