カイトと再会したアスナと翌朝、クエストに行く。アスナは必要最少限の言葉しか発しないが、まあ、仕方ない。今はただ、嵐の過ぎるのを待つのみだ。
実は、昨晩、ひと悶着あった。俺が借りているところは、1フロアー貸切で、一晩80コル。アスナからまず、それに物言いがついた。ビギナーの彼女は「INN」の表示があるところにしか泊まれないと思っていたのだ。確かに、たった20コルでそりゃあんまりな差だ。さらに搾りたての牛乳飲み放題、これには反応しなかったが、「風呂」というところに、激しく反応した。
「なんですって!」とすごい勢いだった。埃も立たない、汗も出ないこの世界で、風呂なんかろくに使ったことない俺だが、女の子はその辺、事情が全然違うらしい。悪いことに、アスナが俺についてくるところを見た奴がいて、アルゴの知るところとなり、アルゴに「襲撃」されて、最悪?のタイミングで、「御開帳」になってしまった。アスナは、その、完全「初期装備」で、俺は大変なモノを見てしまったわけだが、当然その報いはあり、それが今も続いている次第。
パァァン!
相変わらず速くて、正確な「リニアー」だ。モンスターが弾ける。
「お見事!」
そう言ってもアスナの表情はまだ強ばっている。
「今のが『スイッチ』を使った連携戦闘の流れだ。まあ、結局スイッチは一回だけで、ほとんどソロでやってるのと同じだったけど。(アスナが強すぎるんだよ!)」
「何か言った?」(こ、怖い!)
「いえ、何も。それより、ドロップアイテムを確認してみて。」
「剣?ウインドフルーレ?」
「そ、フェンサーには良い剣だよ。今使ってるアイアン・レイピアより断然いい。軽いし、使いやすいよ。」
実は、これこそが今回の真の狙い。第一層と言っても、店売りのアイアン・レイピアじゃちょっと心許ない。それにボス戦前に装備を充実させれば気合も入るってものだ。
「綺麗!」ストレージから取り出してうっとりとウインドフルーレを眺めるアスナ。本当にため息が出るくらい綺麗だ。いや、その、剣がさ。
翌朝、ボス部屋へ向かう
「キリト。」進軍中に、カイトが寄ってきた。小声だ。
「キバオウの装備を見てごらん?」
「攻略会議の時と変化なし、か。やっぱり間違いないな。黒幕はあいつで。」
俺からのアニールブレード買取りが失敗したんだから、4万コルほど浮いてるはずだ。にも関わらず、装備が強化されていないのはおかしい。まして、大事な初戦なのだ。
アスナが話しかけてくる。
「ねえ、みんな、こういう時ってどういう心境なのかな、会話とか全然ないけど。」
「初戦だからだよ。そのうち、普通に仕事や学校へいくような感じになるんじゃないの?」
「ふふふ、なんか変。」
「どうして?」
「だってモンスターのボスを倒しにいくのが日常になるなんて。」
「これが、100回あるんだぜ。そのくらいにならないと、やってられないよ。」
ウインドフルーレが気に入ったか、とにかく機嫌が直って良かった。怒ってる時のあの視線はボスモンスターに睨まれるより怖い。
アスナSide
第一層ボス イルファング・ザ。コボルドロード、コボルドの王である。
「主武器は骨斧、副武器に湾刀、番兵が三体、よし!すべて情報通りだ。いけるぞ!」
「俺に続け!」ディアベルさんだ。
前方ではディアベルさんが次々に指示を飛ばしている。
「A体、下がれ!」「D隊、前進!」「B隊は次のパターンに備えろ!」
(みんな凄い。あんな大きな化物相手に。本当に死ぬかもしれないのに。)
でもやっぱり、キリト君はこの中の誰よりも凄い。段違い、なんだ。あれを見てしまうと他の人の剣が遅く見えて仕方がない。彼は速いし、強いが、一言で言うと「上手い」のだ。システムを完璧に、使いこなしている感じがする。
アスナはすっかり、見惚れていた。自分を助けたてくれた時は、見ている余裕なんか、全くなかった。女子校だったからでもあるが、男の子を見て美しい、格好良いと感じたのは初めてだった。とにかく、すべて一撃で取り巻きの剣を跳ね上げてしまう。相手はのけぞった状態だから、急所である喉元にリニアーを打ち込むのは容易だった。
「オーバーキル」のどこに問題があるの、どころではない。問題は大ありだった。それが解ったアスナはたまにではあるが、少しだけ、取り巻きのHPが残った時には、同じ急所をちょこんと突いてトドメを刺すことを覚えた。
「グッジョブ!」キリト君から声がかかる。
「あなたも。」意味はよくわからないが、そう返しておく。
取り巻きもろくに倒せないくせに、E隊の隊長キバオウが、ひっきりなしに何事か(聞こえてるけど)キリト君に向けて怒鳴ってくる。わたしが言い返してやろうと思ったけど、キリト君が眼で「やめておけ」と合図するので、彼に倣って私も無視する。
キリトSide
ここまで、俺の予想を上回る順調さだ。既にボスのHPは三本目が半減している。キバオウ隊がヘボすぎて、俺たちは結構忙しい。それにしてもアスナは凄いな。彼女のソードスキルのスピードは、システムの二倍くらいはあると思われる。その上、クリティカル率が尋常じゃない。システム任せだとクリティカルの発生率は10%以下だというのに、アスナは半分以上がクリティカルだ。あのスピードと正確さは、さんざんソードスキルを練習してきた俺よりも上。これでビギナー、リニアーしか知らないって言うのだから。次々と技なんか覚えてさらにセンスを磨いたら、どんなことになるのか。想像しただけでぞくぞくする。
俺たちオマケ部隊の活躍で一隊ボスに回す余裕があるほどに攻略は順調だった。
しかし、特に理由はないのだが、何か嫌な予感がした俺はアスナに尋ねる。
「なあ、フェンサーさん、湾刀(タルワール)ってどんなんだっけ?」
(ビギナーに聞くなよ、俺!)
「どんなって、確かイスラム圏の・・・」
(何でそんなこと知ってるんだ。この娘。)
それを聞いた時ボスの「刀」が目に入った。
(湾刀じゃない!あれは日本刀、「野太刀」だ!)
「ダメだ、退け!下がるんだ!」
「おどれ、そんなにLAボーナスが欲しいんか!」
とキバオウ。ええい、うるさい!
「LAボーナスはディベルはんのモンや。邪魔はさせへんで!」
と立ちふさがる。
「こんな時に何を言ってるんだ。今すぐ攻撃を止めさせろ!武器が違うんだ。あのコボルドは、ベータの時とは別物だ!」
「なんやと!おどれ、やっぱり、ベータテスターだったんかい!」
「ディアベルゥー!逃げろぉおおお!」
俺の声も届かず、カタナスキルを食らったディアベルはスタンに陥る。
(くっ、ディアベル。あんたはやはりそうなのか?)無理やり、LAボーナスを取りに行っていたのは俺ではなく、ディアベルだった。
カイトが助けに飛び出したのが見えた。
カイト Side
ディアベルを助け起こして言う。
「緊急事態だ、許してくれよ。とにかく、回復に専念するんだ。」
「俺は・・・リーダーだから・・・」
戦線離脱の意思はないようだ。
「俺たちが引き付ける!」キリトはアスナ君とともに飛び出す。
「あんたたち、そんな軽装で・・・」
エギルが心配して言う。
キリトはあっという間に、アスナ君と同時に一撃ぶち込み、ヘイトを彼らに向けさせる。
(さすがだなキリトは。アスナ君も彼についていけるとは凄い。防御に専念すれば何とか逃げ切れる。おいっディベル?)
「よし、武器の打ち払いを頼む。俺が喉を穿つ!」
(バカな!ディアベル、まだ回復しきってないだろう!)
「やめろ!ソードスキルを発動させるな!」
(ソードスキルを発動させてしまった。制止は間に合わん。これでは僕までやられる、くっ!)やむを得ず回避する。しかし次に確実に起こることを予測して、僕は目を閉じた。
「ディアベルゥゥゥ!」
キリトの叫びが響く。
ボスのカタナの直撃を受けたディアベルは、ポリゴンの破片を散らして消えた。
(よりによって彼が!リーダーとしてはともかく、この中ではまなりマシなプレイヤーだったのに。)
後悔している場合じゃない。僕は動けなくなっている他のプレイヤーを助けに行った。しかし、倒れている数が多すぎる。ここは撤退すべきだが、この乱れ方では、それすら無事には済まないだろう。
アスナSide
(こんなの、人間の死に方じゃないわ!)
あれでは、まるで雑魚モンスターが、消えるのと同じじゃない!初めて、目の前で見る、人の死がこんな死に方だなんて。
「落ち着け!今まで通りに対処すれば大丈夫だ!」キリト君がみんなを励ますけれど、楽勝ムードから一転して指揮官の死という動揺から、誰もが立ち直れない。それなのに、キリト君は一人で仁王立ち。そして私に向かって、
「お願いだ!君だけでも逃げてくれ。頼むから早く!」そう言って一人でボスに立ち向かっていく。
(私だけ逃げる?冗談じゃないわ!)
「一人で格好つけないで!パートナーでしょ!」
「ああ、わかった。頼む。」彼の剣先は、ガタガタと震えていた。これまで、強い彼しか見たことがなかった。こんな姿は初めて見た。
休んでいる暇はない。一点突破でリニアーを打ち込む。これしか知らないのでしょうがない。その隙に、立ち直ったキリト君が持っているスキルをフル稼働させて、ボスのカタナスキルをすべて無効化していく。キリト君は攻撃してるんじゃない。一人でみんなを守っている。
しかし、リニアーでは、やはり破壊力が全然足りない。カイトさんも来てくれて、同時に攻撃してくれるが短剣、やはりキリト君の片手剣の攻撃よりは威力がだいぶ落ちる。キリト君も神技のようなスキルキャンセルをずっと続けるなんて無理。わずかにバランスが崩れた。直撃は避けられたものの、倒れてしまった。呆然としかかった私の前にエギルさんが来てくれて、斧でボスの刀を受け止めてくれた。
「行ってやれ。これ以上、ダメージディーラーにタンクやらせられるか!」
全力でキリト君の許へ走り、回復ポーションを彼の口に突っ込む。ちょっと回復しただけなのに、キリト君は大声で指示する。
「包囲はするな!全方位攻撃が来る。とにかく防御に徹するんだ!」
戦局はほんの僅かしか回復していない。キバオウたちをはじめ、あちこちで「撤退!」「死にたくない。」などの声がする。だけど、キリト君の神技スキルキャンセルを見た私は決心した。
「ひとつ教えて。あなたなら、アイツのソードスキルを全部、見切れるのね?」
「ああ。」
「わかったわ。」
「ちゅううううもおおおく!!」
生まれてから、一番大きな声を出した。
「これより騎士ディアベルの指示を伝えます。」
「彼は言ったわ。『ボスを倒せ!』と。そして、」
キリト君を私の剣で示す。
「俺の代わりのリーダーは『彼』だと。」
「俺も聞いたぞ!」とエギルさん。「そいつはボスのソードスキルを全部知っている。ディアベルを信じるならそいつの指示に従うんだ。」
「アンタもそう言うなら」「いっちょやったるか。」という声。良かった。士気が戻ってきた。エギルさんがウインクしてくる。
「では、指示をお願いします。リーダー。」わたしはキリト君にそう告げた。
キリトSide
「はは、頼りになるお姫様だこと。」
彼女には人を動かす力があると思っていた。だが、まさかこれほどとは。この戦いを終えれば、彼女はきっとアインクラッド一の美しい剣士としてその名を轟かす。そしていつか必ず皆を開放へと導く存在になれる。俺はそう確信した。その姿をできることなら、側で見ていたい、と思った。が、今はにわか騎士としてお姫様の期待に応えなきゃな。
「B隊!範囲攻撃が来るぞ!」
「D隊!取り巻きをB隊から引き離せ!」
「A隊!リカバー用意!ボスの動きをよく見てくれ!」
(立て直したわね。やっぱり、わたしの思ったとおり。ただ腕が立つだけじゃない。)アスナは思った。
「あんガキ!調子に乘りくさりよって!」キバオウが叫んでいる。しかし、E隊はボスのゾーンに入っている。
(バカが!俺への反感なんかで、指揮を疎かにしやがって。)
「キバオウ!E隊を下がらせろ!」そう叫んでもキバオウは、俺を睨むだけ。いや、そうしなきゃならないことは分ったらしい。でも、足が竦んで動けないでいる。キバオウはカイトが助けた。しかし、E隊のメンバーまでは手が回らない。俺が何とかするしかない。これ以上誰一人、死なせたくはない。
「アスナ!」
「あなた、まだ回復しきってないでしょう?」
「一緒に来てくれ。君とならやれる!」
「一瞬でいいんだ。ボスよりも速くソードスキルを打ち込んで、あいつの注意を引きつけてくれ!」
カイトが大声で言う。
「キリト!トドメは君が刺すな!」
(無茶言うなよ!そんな余裕あるわけないだろ!)
ボスがアスナの方を向く。
「どこ見てる!うちのお姫様に、色目使ってんじゃねえぞっ!」
俺は「バーチカルアーク」を発動させた。手加減なんて、できるかよ、そんなの。
イルファング・ザ・コボルドロードはポリゴンの破片とともに消失した。
俺はエギルをはじめ、真に一緒に戦ったプレイヤーから祝福を受け、勝利の喜びを分かちあっていた。
しかし、やっと訪れた至福の瞬間は長くは続かなかった。最後に、一番奮闘してくれたアスナのところに行って、ハイタッチを交わそうとした、その刹那、勝利の喜びの陰に隠れていた元ベータテスター、というより、俺個人に対する「悪意」が暴発した。
「なんでだよっ!そこで、讃えられるべき人はディアベルさんだったはずだ。よりによって何でソイツなんだよ!ソイツはディアベルさんを見殺しにした張本人じゃないか。」
この男はディアベルに「心酔」していた、副官のようなポジションの男で、確かリンドという名だった。ディアベルは死に、あまつさえ、憎き俺に活躍されて、無念なのはわかるが、いくら何でもむちゃくちゃな言い草である。ディアベルは俺が最初思っていたような立派な男ではなかったけれど、それでもカイトは、そして俺は彼を助けようとした。ディアベルが、無謀な行動に出たために、一時は総崩れになったじゃないか。もしアスナがいなかったら、とても立て直すなんてできなかったし、何人死んでいたかわからない。本当は讃えられるべきだあ?冗談じゃないよ!だが、俺は何も言い返せなかった。コミュ障だし、やはり、負い目もあったから。
カイトが前に出る。
「最後に彼の一番近くにいたのは僕だ!防御に専念すれば逃げ切れたが、ディアベル君はソードスキルを発動してしまった。短剣ではボスの野太刀は受けきれない。回避するしかなかったが、共倒れにならないことが、見殺しだというのなら、彼を見殺しにしたのは僕だろう。」
「あれは仕方がないよ。あんたの責任じゃない。やっぱり張本人はその黒いやつだ。そいつ、ボスのスキル全部見切っていた。何でディアベルさんに教えなかったんだ?」
「あんたはディアベルさんにLAボーナスを取られるのが嫌だったんだ。だからソードスキルの情報を隠してディアベルさんを見殺しにしたんだ。図星だろ、ベータテスターさん。」
アスナが見かねて言ってくれた。
「待ってよ。ベータ時代の情報は、わたしたちだって攻略本から得ていたじゃない!あのボスについてわたしたちとベータテスターとの知識の差はなかったはずよ。ただ、ベータテストと違う、と判明した時に、彼はもっと先で得た知識を応用して、対処法を示してくれたんじゃない。」
(アスナ、ありがとう。)
それでも「悪意」は止まらない。
「いいや違うね。アルゴとかいう情報屋とそいつはグルだったんだ。ベータテスター同士つるんで、ガセ情報をばらまいて俺たちを騙し、自分たちだけで美味い汁を吸おうって魂胆さ。」
「アルゴさんはそんな人じゃないわ!」
「あんた、さっきから、やたら元ベータテスターの肩を持つじゃないか。あんたもグルか?」
(いけない、アスナだけは守らなきゃ。)
「ハハハハッ冗談だろっ!そいつは正真正銘のビギナーだぜ。」
「これだから世間知らずの優等生は。自分が利用されてるなんてこれっっぽちも考えない。」
「おまえらもおまえらだ。たった1000人のベータテスターに、本物のMMO熟達者が何人いたと思う?ほとんどはレベリングのやり方も知らない素人だったよ。」
「あれは『本物』だ。誰にも・・・うっ何すんだよ!」カイトに口を抑えられた。
「そこまでにしておくんだ。」
口調は穏やかだったが、怖かった。全然口答えできなかった。
カイトSide
「僕も元ベータテスターだ。今、君たちとこれ以上、口論するつもりはない。ディアベル君の死は僕も残念だ。最後に一番近くにいたのは僕なのだから。無念なのは分かる。冷静に考えろと言っても無理だろう。ただキリトも冷静さを失って、事実ではないことを言おうとした。だから止めた。これから、客観的事実だけを言う。それをどう判断するかは君たちの自由だ。」
「まず元ベータテスターの中でも、とびぬけた量の情報を持っているのは情報屋アルゴ、キリト君、そしてこの僕だ。だが、この3人も第九層の途中までしか知らない。」
「ガセネタとか言っていたのが、いたのがいたが、この第一層でベータテストと違っていたのは2点、フロアボスが持ち替える武器。もう一つは、取り巻きのPoPが一頭ずつ増えること。あとは、すべてアルゴの発表した情報通りだったんだ。
僕たちには、ベータテストの情報を信じてもらうための説明をする時間などない。ただデータは提供する。アルゴもそうするだろう。これからは、僕はベータテストと、どこが違うか、そこだけの調査に集中する。無論その結果も公表する。君たちが信じようと信じまいとね。」
「ボスが持ち替える武器が、野太刀だったことは誰も知らなかった。それが今回の苦戦の原因のすべてだ。なるほとキリト君はカタナスキルをすべて知っていた。しかし、刀が使われることは予測できなかった。
繰り返すが、第二層以降、元ベータテスターの情報が、信用できないというなら、勝手にしたまえ。その情報なしで生き残れる、攻略できると言うのならね。僕たちが、提供した情報を生かすか、生かさないかも君たちの自由だ。」
「一旦は総崩れになった戦線を立て直したのは、誰が見てもキリト君とアスナ君の二人だ。それでもこの二人を責めるというなら、僕がまずお相手をしよう。」
「二人の実力は、ここにいる全員の中の2トップだ。それは君たちにも十分解ったはず。この二人はこれからの攻略に必要不可欠だからね。」
カイトの大論陣であった。再反論は不可能、だが。
「何だよそれ!お前ら、ベータテスターだけで、つるんで、チートだろう。」「ベータテスターでチートだからビーターだ!」
(こいつら、ここまでバカだとは!いや、これは意図的な扇動?)
「ビーターか、いいな、それ、貰ったよ。LAボーナスと一緒にな。俺たちはビーターだ。素人のテスター如きと一緒にしないでくれ。」キリトだ。
(ええい、このバカは!)
「第二層のアクティベートは俺がやっといてやる。気をつけるんだな。ベータテストでもいたんだよ・・うっまた」口を抑える。
(これ以上言わせるか!全くこのガキは!)。
「なんだよう!」
「それ以上、ワルぶって、かっこつけるんじゃない。さっさと外に出るよ。」
キリト君の手を引っ張っていく。
迷宮区を出た草原で
「まったく!何であんたまで!どうなっても知らないからな!」キリトはまだ文句だ。
「LAボーナスさえ取らなければもっと丸く収められたんだぞ。全く!」
「あんなところで手加減なんてできるかよ。」
「これはその代償なんだよ。全く、遊びじゃないと言ったろう。バカでガキでは、救いようがない。早くどちらか直せ。」
「集団PKされても知らないからな。」
「キリト風に言えば、あんな雑魚が何人かかってきても、僕をどうこうできはしないさ。おっとアクティベートは僕がやるから、君は後からゆっくり来なさい。」
(ふふふ、いいところを邪魔する気はないよ。)
キリトSide
「カイト!あれ、もういない。何だよあいつ!」
アスナがやってきた。
(あっ、カイトのやつ、妙に気を利かせやがって)
「ええと・・・その・・・」
「あれだ、さっきは・・・」
「「ごめん!」なさい!」
「わたしが余計なことをしたせいで、却って貴方に重荷を背負わせてしまったわ。」
アスナは神妙に頭を下げる。
「余計なことなんかじゃない。君が檄を飛ばしたから、今日は勝てたんだ。ああ、『ビーター』のこと?あれは自業自得だよ。君にああ言ってもらえて、嬉しかった。大丈夫、重くないよ。カイトもだいぶ軽くしてくれた。」
「あの人・・・理路整然としてるのにどうしてあんなに怖いのかしら?一瞬、周りが凍ってたわよ。」
「俺も初めて見た。怒らせるとヤバいかも。」(誰かさんほどじゃないけど)
「伝言があるわ。エギルさんが、『第二層もまた一緒にやろうって。』キバオウさんからも。『助けてもろたことは感謝しとる。けど、ワイはジブンらのことはやっぱり認められん。ワイはワイのやり方で、ゲームクリアを目指す』だって。」
「 なあアスナ、君には人を動かす力がある。俺なんか逆立ちしたって敵わない力が。むしろこれからは君が中心になって・・・」
(いけない、近づきすぎた。無意識にアスナの頬に手が・・・調子に乗ったらエライ目にあう。)あわてて離れる。
「ううん。今はまだそこまで考えられないかな?手近な目標ができたから。手近といっても到達するのはかなり大変、かな?」
「何だよそれ?」
「ヒ・ミ・ツ。いつか目標達成したら教えてあげる。」
「それじゃ意味ないじゃないか!」
「それより君、大事なこと忘れてる。」
「えっ何?」
「な・ま・え!きみ、戦闘中に、わたしの名前呼んだでしょう?何で知ってるのよ。」
「そうか・・・その辺に俺のHPゲージ見えてるだろ?」
指差して示す。
「『Kirito』キリトって、なあんだ、こんなところに。わたしったら、ははは。」
「だからカイトも知ってたんだよ。」
「言いたいことは言ったし、聞きたいことも聞けた。じゃあ・・・またね。近いうちに。」
「ああ、またな。」
(くぅー笑顔も可愛いな!)
「あれっ」
「うわっ」
大男が逃げて行く。
「エキルさん?!いつから、いたんですか?」アスナが追っていく。「いや、その、俺はだな、アルゴがどうしてもって言うから。」
「アルゴさんの倍出しますから、言っちゃダメェー!」追って行くアスナ。
(さてカイトを追っかけるか。)
俺は第二層へ向かう門へと走っていった。 続く
元ベータテスターに対する嫉妬というのは、作者の感想としては、いかにも大袈裟です。命がかかっているのにここまではどうかな、と思うわけです。一部ビギナーの過剰な元テスターに対する反感はPoHの扇動によるもの、というストーリーも考えましたが、PoHというキャラは悪役としてもあまり魅力を感じません。