プロから見たSAO攻略   作:ベルクーリ2世

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 初投稿なので、一話ずつ投稿したのでは、もっと、混乱して完結もできなかったでしょう。一気に三〇話というのは異様ではあります。あと三、四回かな。次はまだ書いてないので少々間があきます。


第30話 干将・莫耶

 話は少し前に遡る。キリトとアスナが第二二層に引っ越した直後、カイトはシャルを伴って、剣の素材集めのクエストを受けていた。第六五層で、ようやく、日本刀の素材にもなりそうなアイテムがあると、聞きつけたのであった。無論、クラインたちに与える刀や槍を作るためであったが、カイトにはもう一つ、狙いがあった。夫婦はもう迷宮区に出張ることはほとんどない。簡単にクエスト二つをクリアし、クラインたちには、順次クエストを受けることを指示した。

 

 ユイの件が一応の決着を見てしばらくした、ある日、カイトとシャルは第四八層リンダースにある、ナーザの仕事場を訪れた。リズベットもここに呼んである。実は、ナーザは仕事の都合でリズベットに何度が会っているうちに、リズに惹かれていた。カイトもできることなら、取り持ってやりたいと、お節介なことを考えていたが、こればっかりは、いかに「軍神」でもいかんともし難い。

 もともと、リズベットはキリトに思いを寄せており、親友のアスナのために身を引いたが、依然、キリトが好きという思いは変わらなかった。アスナはこれを知らない。会えば決まって、口論になるキリトとリズベットであったから、むしろ、相性が悪いのかなどと、心配していた。リズベットはナーザの気持ちは知っていた。キリトのことは、とっくに諦めている。ナーザのことは、単なる仕事仲間、というだけでなく、尊敬もしている。だが、今ひとつ「乗れない」という感じだった。ナーザもいい男なのだが、キリトのこの世界での男っぷりと、比べられては、ちと可哀想だった。

 

 「二人共、例の剣はイメージできてるかな。」

 

 「はい、十分ではありませんが、これまで作った剣を潰したりして、そこそこのものは作れました。素材さえ揃えば、エリシュデータ二本揃えたのに匹敵する、剣を作る自信はあります。」

 

 カイトが最終決戦に備えて、キリトのために、さらに強い剣を用意しようとした理由は、ヒースクリフの盾にあった。

 

 (あの盾の強度は異常だ。エリシュデータもダークリパルサーもシステム内の剣だ。下手をすると、あの盾に折られてしまう。新しい剣が必要だ。もっと、強い剣が。)

 

 「それは、頼もしい。リズはどうだい?」

 

 「はい、ナーザが作った剣をよく見て、あたしも作ってみました。ナーザの域には達していませんが。」

 

 「ちょっと、これを見てくれ。」

 

 カイトは素材をいくつか取り出した。どれも見るからに異様だ。

 

 「「な、何ですか?これ?!」」

 

 何か、素材自体が悪魔のような、そんな形をしている。光を発している。

 

 「これはね、『邪天眼』というそうだ。あらゆる武器の素材になる。クリスタル・インゴットよりレベルはかなり、上だね。」

 

 もう一種は何かの骨だ。またやたらに多い。

 

 「骨の方はね、『不可侵の突骨』という名前がついている。素材としても邪天眼とほぼ同等だ。集めるのが結構大変でね。」

 

 「で、早速、作ってもらうわけだが、その前にこの剣のおさらいをしておこう。二人共、もう、よく知っていると思うが、今回は特殊な作り方を試みたい。その意味でもね。」

 

 

 干将・莫耶

 

 カイトがナーザとリズベットに作らせようとしているのは、「干将・莫耶」という一対の剣である。この剣は「陰陽剣」とも呼ばれ、「呉越春秋」をはじめ、紀元前のいろいろな書物に記載があり、後世に様々な伝説が語られた。

 

 干将は当時、名高い刀工であり、莫耶はその妻だった。ある時、干将は呉王闔閭(こうりょ)に命じられ、宝剣を鍛えた。ところが、炉の温度がどうしても上がらず、素材を溶かすことができない。そんな中、干将は、師匠である欧治子(おうやし)が、剣を打つ時、いつも妻を同伴していたことを思い出す。(自分はいつも一人で剣を打っている。それが、師に及ばない理由かも知れぬ。)こう思った干将は、莫耶を伴って、作業場に行った。色々、試してるうちに、ふと、莫耶が思いつき、自分の自慢の髪と美しい爪を素材と一緒に炉に入れたところ、ついに素材が溶けだし、陰陽二振りの宝剣を鍛えることができた。陽剣を干将、陰剣を莫耶と名づけ、王に献上した。

 

 これが一番無難というか、ハッピーエンドのお話で、最も悲惨な話としては、莫耶が自ら炉に飛び込んだ、とか炉に放り込まれたのは莫耶の義父欧治子であって、陰陽剣は「復讐の宝剣」だった、などという伝説もある。

 こうした伝説もそれなりに重要であるが、この「干将・莫耶」はその生い立ちからして、本来は二刀流で使用する剣である。一説によれば、この剣は戦う毎に相手の剣技を吸収していく魔剣であるとも言われる。

 

 「リズベット、君の髪と爪は用意してくれたね。」

 

 「はい。でもこんなのって、本当に、効果があるんですか?」

 

 「さあ、それはやってみなくては分からない。だが、事前の知識はすべて動員してみるべきだと思う。さて、今回に限り、二人で打ってもらうが、最後に僕とシャルも念を込めたい。」

 

 「でも、お二人は鍛冶スキルも、武器作成スキルもお持ちではありませんよね?」

 

 「一つはナーザとリズが夫婦ではない、という点を補う狙いだ。もう一つは、リアルでのいろいろな話をしているうちに、僕たちは二人共『念』が非常に強いことが分かったからだ。さすがに『念力』は使えないが、今でもテレパシーは普通に通じる。相手が他人でも多少は通じる。この能力を生かさない手はないと思ってね。」

 

 「他の人の話なら、笑い話にもなりませんが、『人外夫婦』と呼ばれているおふたりなら、ありうる気がします。」

 

 「おいおい、人外ってのは、褒め言葉にならないよ。シャルが、嫌がるんだ。首尾よく、剣ができても僕たちのことは、内緒だぞ。」

 

 素材をまとめて、炉に入れる。リズベットの髪と爪の入った。青白い光が出て・・・

 

 「こ、これは!」

 

 見たこともない色、緑や鮮やかな赤が混じっている。竜なのか悪魔なのか、そんな形の極大の炎。ナーザとリズベットが二人で剣を鍛えていく。形になり始めたところで、カイトがナーザの手に、シャルがリズベットの手に自分の両手を添えて「念」を送る。

 

 ついに「干将・莫耶」が完成した。驚いたことに、+15まで強化できるという。これだけで化物クラスの魔剣と判る。無論、エリシュデータ二本より上だ。「干将」は黒ずんでおり、エリシュデータに似た色だ。亀甲模様が入っている。莫耶は薄く、曇ったように見える。ダークリパルサーに少し似た色だ。やはり、この剣はキリトが持つべき剣なのだろう。

 

 「強化素材が足りないな。今日中に取ってくるから、目一杯強化してくれ。いや、お手柄だぞ。」

 

 「あたし、今日だけは、ナーザと夫婦のつもりで打ちました。ナーザがそう言うから、この剣を作るのには必要かなって思って。」

 

 「今日だけって言うなよ。ナーザの顔を見てみろ。」

 

 ナーザは赤くなっていたが、ちょっと落胆の表情だ。

 

 「考えておきます。」

 

 「よかったな、ナーザ。諦めるのは早いみたいだぞ。」

 

 「そんな、やめてください、団長。」

 

 「この剣でキリトは、最強の敵に勝って、ゲームをクリアする。見事クリアできたなら、その功績は君たちにも帰せられる。」

 

 「ゲームクリアって、まだ七〇層にも達していないんじゃ?」

 

 「リズ、おおげさな言い方だが、僕がやると言って、その通りにならなかったことはない。クリアはもうすぐだ。それから、遅きに失したが、クラインたちにも、日本刀や槍を作ってやってくれ。ゲイ・ボルグも作り直した方がいいだろう。忙しくなるぞ。ああ、今回の報奨は強化が終わって受け取りの時にな。」

 

 

 第五〇層 ギルド「インビクタス」本部 団長室

 

 「見たまえ。これが、『干将・莫耶』だ。ヒースクリフを倒す剣だよ。ナーザとリズベットの最高傑作だ。これを超える剣はもう今後、作られることはないだろう。ちょっと振ってみろ。」

 

 キリトは目を輝かせ、早速振ってみる。

 

 「うん、しっくりくる。重いし、エリシュデータの時にも感じたけど、それ以上だよ。」

 

 「当然だな。ナーザもリズもそして僕たちも、きみが使う姿を思い浮かべて念を込めた。そうなるはずだよ。」

 

 「対決の時まで、ヒースクリフには見せるなってことだね。」

 

 「そうだ。見せたってどうってことはないが、この剣は普通の剣ではない。」

 

 「見た目も普通じゃないけど・・・」

 

 「うん、まず、右手に持つ陽剣干将そして、左手に持つ陰剣莫耶この二つは剣自体が一体だ。つまり、使い手の意思によらず、最適に連動する。次に、この剣には、僕とシャルの念が込められている。さらにこれから対決の日まできみの相手は僕たち二人だ。」

 

 「うわーっ 鬼特訓じゃないか。負けてばっかりじゃ辛いなあ。」

 

 「勝ち負けじゃない。その剣は対戦者の技を吸収するらしい。僕は剣はほとんど使わないが、ユニークスキル神速の効果としてソードスキル後の硬直時間がおそらく、最短になる。さらに、片手剣での防御は、きみよりシャルの方が上手だ。これもおそらくプラスされる。」

 

 「それなら勝てるよ。うん、必勝だ。」

 

 「甘く考えるな。絶対に負けられないんだ。ジ・イクリプスのモーションは完全に覚えたか?」

 

 「うーん、まだ完全とはいかないな。でもソードスキルが発動すれば、そんな必要はないんじゃ・・・」

 

 「ソードスキルによらずに、完全に同じモーションができるようにならなければダメだ。」

 

 「何が狙いなの?」

 

 「昨日のデュエルで僕が見ていたのは勝ち負けじゃない。奴がどうやって、どのように君の剣を受けるか、だ。あの盾は、どんなソードスキルでも受けられるおそらく。自動的にな。」

 

 「でも、最後の一撃は、オーバーアシストがなければ受けられなかった。」

 

 「そうだな。つまり、君のソードスキルは君個人の力でブーストされている、ということだ。だが、これは、おそらく奴も計算に入れることができる。」

 

 「でも、もっと速くすれば、勝てるかも。」

 

 「かも、じゃダメなんだ。それでも勝てる可能性はあるが、確実ではない。確実に勝つには、奴に想定できない動きが必要だ。そのためには、途中まで完全にソードスキルのモーションを再現し、最後の最後で裏切るんだ。」

 

 「最後に何をするかは、俺にもわかるけど。でも、ジ・イクリプスのモーションて、あれ、とんでもなく複雑だぜ。」

 

 「だからこそ必勝の策になるんだ。まさか、あれをスキルなしで再現するなんて、奴も考えないからな。」

 

 「わかった。やってみるよ。まさか、ここまで考えていて、あの技を?」

 

 「いや、必殺技を使うまでもない、と思っていた。だが、ヒースクリフは思ったよりは強かったということだ。とにかく、僕は不可能なことをやれ、と言ったことは一度もない。難しいが、きみならできる。」

 

 「その剣なら、あたしも遠慮なくやれるわ。全力でいくわよ。覚悟なさい、キリト。」

 

 「うわーっ やる気は、ほどほどにしてよ。シャル。」

 

  シャルは相手が強いほど、燃える。

 

 

 こうして、特訓は開始された。ジ・イクリプスをまともに食らっては、カイトとシャルでも危ない。だが、受ける方もオリジナルを完全に見ることができないと、訓練にならない。カイトもシャルも今度ばかりは、本気であり、真剣だった。キリトの偽モーションも本物の8割くらいには再現できるようになった。威力はそのくらいで十分。速さが本物と同じならば、いいのだ。もう少しであった。

 

 

 

 ラグー・ラビット

 

 キリトは迷宮区にもあまり行かず、対決に備えていた。レベルは既に102だ。もう何をやってもレベル自体はほとんど上がらない。カイトとシャルは毎日相手をしてくれたが、最も重要なのは「偽モーション」の完全習得なので、一人の練習は一日4時間以上に及んだ。猛特訓といっても、多少の暇はある。最前線が第七三層に達してから、第70層以降にS級食材になるMobがいるとの情報を聞きつけた。キリトはいつも献身的なアスナに報いるため、これを狩りに、第七二層に出かけていった。例のアフリカン投げナイフがある。見つけさえすれば、ゲットしたも同然だ。首尾よく、「ラグー・ラビットの肉」をドロップして帰ってきた。

 

 

 第六一層セルムブルグ アスナのホーム

 

 

 「おーい いい食材をゲットしてきたぞ。」

 

 「なあに?またいつぞやみたいなカエルの脚とかじゃないでしょうね?ってこれ、ラグー・ラビット!S級食材じゃない!」

 

 「どうやって、食べようか?なにかご希望は?旦那様。」

 

 「シェフのお任せコースで頼む。」

 

 「もうっ いっつも、そればっかり。少しは、カイト兄さんを見習って、気の利いたこと言ってよ。あっお隣にお裾分けっていうか、お呼びしないと悪いかしら?」

 

 「一応言ったさ。ちょっと、惜しいと思ったけど。でも、それで読まれちゃったんだな。居場所さえ分かれば自分で狩ってくるから、いいってさ。明日にでも狩りに行くんじゃないの?二人で。どうせ1羽じゃ満足しないだろうしね。」

 

 「そうかあ。それじゃ、料理はシチューにしましょ。ラグー=煮込むって言うくらいだから。」

 

 そわそわと、キッチンにいて、所在なげなキリト。

 

 「ほら、キリトくんはあっちのテーブルで、落ち着いて待ってて。こんなの、すぐできるわ。SAOの料理って簡略化されすぎていてつまらないのよね。」

 

 これは、料理スキルコンプリートのアスナだから言えることで、熟練度500にも達しないシャルあたりだと、とてもこうはいかない。そもそも、カイトがアスナとグリゼルダを隣に誘った真の理由は、この二人がいないと、食事が不自由だからで、あった。シャルも教えてはもらっているのだが、熟練度は、なかなか簡単には上がらない。カイトは食材を提供する代わりに、二人に料理してもらっているのだ。アスナの料理の腕前はリアルでも、なかなかのものだった。

 

 「お待たせ。」

 

 アスナが大きな手袋をはめたまま、大きなシチュー鍋を運んでくる。キリトが子供のように覗き込む。

 

 (ふふ、キリトくんたら子供みたい。可愛い。そう言えば、ちゃんと確認してないけど、確か1つ年下だったっけ。)

 

 ほとんど会話もなく、夢中で食べる二人。あっという間に食べ尽くしてしまった。

 

 「美味しかったぁ!」

 

 「ふーっ 本当にな。リアルだと何の肉なんだろう?俺、兎肉って食ったことないから。」

 

 「わたしもないけど、牛でも豚でも鳥でもないわね。でも、何とも言えない味。頑張って、生きてて、良かったぁ!ねえねえ、わたしが、料理スキルをコンプリートしたのって、今日のためだと思うの。」

 

 「そうだなあ。茅場って味オンチだとばっかり思ってたけど、こんな食材を用意してたとは。ちょっと見直した、かな。」

 

 「本当に、食べ物にはそれほど、興味ないみたい。聞いた話では、わたしたちが醤油を開発した時には、『これでラーメンが作れる』って喜んでたそうだから。最初に出てくるのがラーメンじゃねえ。」

 

 アスナも既に、ヒースクリフ=茅場晶彦であることは、知っている。

 

 翌日、キリトの予想通り、カイトとシャルは二人で勇んで、ラグー・ラビットを狩りに出かけた。この人外夫婦は日暮れまでになんと、5羽のラグーラビットを仕留め、意気揚々と引き揚げてきた。

 

 翌日から数日、最前線にいる団員を中心に、数日に渡り、ラグー・ラビットのローストを挟んだバケット・サンドが昼食用として順次配られた。調理を担当したのはアスナとグリゼルダだった。

 

 「この肉がドロップしたことは、もう情報として流したからな。みんなが狩りにいってはさすがにまずい。それに、食い物の恨みは、怖いからな。」

  

 カイトは、シャルが一緒に狩りで遊べて、大喜びだったという、それだけで、十分だった。

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 干将・莫耶はナーザとリズに究極の剣を作らせたかったから。アフリカン投げナイフだけでは設定が大げさすぎて残念です。無理矢理は承知しています。ラグー・ラビットの話も単なるつけたしになっていますね。もう結末も見えていますから。
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