第五〇層 ギルド「インビクタス」本部
「これから、血盟騎士団本部へ移動する。その前に僕から一言、言っておきたい。今回はいつもとは違う形で戦うことになる。敵は、おそらく最強と見られるからだ。
これまでは、皆に十分に力を発揮してもらうため、僕は全力で戦わなかった。今日は陣頭指揮を取る。僕が先頭に立って、全力で戦うことが勝利に一番近いと信じるからだ。最後まで僕を信じろ!行くぞ!」
「おーっ!」「団長!ついていきます!」「うぉーっ!」
第五五層 グランザム 血盟騎士団 本部
「予定した44名が一人も欠けることなく、集まってくれたことに感謝する。今回のレイドの指揮は私ということになっているが、ここまで、インビクタスが攻撃、我々血盟騎士団と、聖竜騎士団が防御、と役割は常にはっきりしている。撤退はありえないのだから、インビクタスの諸君はカイトさんの指揮に従いたまえ。
これから、第七五層のボス部屋前にコリドーを開く。コリドー・オープン!」
44人全員がコリドーに入っていく。これまでと変わらない光景だが、インビクタス戦士の先頭には僕がいることだけが、いつもとは違う。
第七五層 ボス部屋
カイトSide
入ってしばらくして、物凄い殺気を感じた。前には何もいない。ならば・・・
「上よ!」
勘のいいアスナが、僕と同時に上を見ていた。白っぽい長い体に無数の足が動いている。しかし百足というよりは、人間の骨のバケモノという感じだ。最先端部には頭蓋骨が見える。
(ギルバートがやられた時のことを考えれば、こいつはすぐに降りてきて、一撃必殺の攻撃を仕掛けてくる。ならば。)
「みんな下がれ!」
(離れたところに降りたが、すぐに何かやってくるはずだ。)
「The-Skullreaper」
両手に大鎌を持っている。こいつがおそらく、一撃必殺の武器だ。奴が左手の鎌を振り上げた。
「ロー・アイアス!」僕はアイテムを展開する。ピンク色の七枚の花弁が一枚ずつ開いていく。これが「熾天覆う七つの円環」(ロー・アイアス)だ。
(さて、お手並み拝見。)余裕かまして見ていたが、一瞬で一枚目を突破、二枚目も破られた。三枚目でなんとか防げた。僕はここで誰もが、仰天するような指示を出した。
「盾持ちは、盾をしまえ!あの鎌の攻撃は盾では受けられない!」
その瞬間左を見ると、ヒースクリフが、一人で大鎌を受けきっている。
(あの鎌で、どうやら、左右交互に攻撃してくるようだ。キリトならタイミングを取るのは容易なはず。)
「キリト!アスナ!あの鎌をなんとか抑えろ!きみたちでなければ、無理だ。」
キリトとアスナが向かって行く。大して効かないのは分かっているが、僕とシャル、アルゴが円月輪、チャクラム、投げナイフを敵の顔に向かって投げる。牽制だ。
ガッキィイーン!
キリトが飛び込んでいって、エリシュデータとダークリパルサーを交差させて、鎌を受ける。見事だ。だが、少し力が足りない。アスナが間髪を入れず、ランベンライトをキリトの二本の剣に重ねて補強する。二人ならなんとか支えられるようだ。
「全員横から攻撃。骨の継ぎ目を狙え!」
クー・フーリン、クラインたち、エギル、オルランドらが一斉に敵に向かって走る。
「ようし!いくぞ!シャル!」
まず、奴の後頭部を蹴る。無論飛び蹴りの形だ。そこから三角跳び。着地するが早いか今度は「弦月」、空中で踏ん張るような形で後頭部に後ろ跳び回し蹴り!」このような攻撃を僕とシャルが同時に、あるいは交互に、いつ果てるともなく、繰り返す。体術はすべて単発技だが、ここまでの速さがあれば、実質的には連撃だ。あまり効いてないように見えるが、既に何箇所か、ヒビが入る前の状態であることが確認できた。
その間にクラインは刀スキルで攻撃する。「幻月」、そして上位スキルの「緋扇」まで繰り出す。まだ、やっとこさ一本削った程度で四本残っているが、少しずつ、勝ちが見えてきた。
キリトは受けさせてもたいしたもので、かなり、長い時間、アスナと二人で鎌を封じている。もっとも、ヒースクリフが一人で同じことをやってしまっているのを気にしてるようだが。
「よし、シャル!ヒビの入りそうなところを剣で狙え。」
(今の状況なら、何が出ても何とかなる。)僕はアレを呼び出した。
「出た目によってぇ武器がぁ 変わる!それが俺様、クレイジー・スロットだ。何だぁ?ずいぶん手こずってるじゃねえか。いい目出せよ!」
「トゥルルルー 5!」(よしっ ベストだ!)
三節棍、これは、3つの部分に別れているが、上下を交互に当てて、使うことができる。シャルも僕も飛び上がっている。交互に同じ箇所を攻撃する。ついに、スカルリーパーの体にヒビが入ってきた。あとはこれを拡げていけば真っ二つだ。
「みんな!あのヒビが入ったところを拡げるんだ!」
弱点がはっきりすれば、攻撃もしやすい。無理矢理作った弱点だが。HPは少しずつしか削れないものではない。奴が鎌の一撃でHP1万5000くらいのプレイヤーを0にしてしまうのなら、逆に奴のHPを一気に0にすることだって可能なはずだ。
三節棍で狂ったように打ち続ける。ヒビが割れ目になってきた。シャルも同じところを、ホリゾンタル・スクエアなどで攻撃する。
「全員!全力攻撃!終わったら、反対側へ飛び降りろ!奴は後ろが見えない!」
「グリゼルダ!右に回って突撃!」
「キリト!アスナ!君たちは最後に行け!」
それぞれが、最強の一撃を加える。無数の発光。
(よくあるバラバラにしても、すぐ繋がる、ていうのはナシだぜ。)
キリトのジ・イクリプスでスカルリーパーは真っ二つに裂ける、と同時に消滅した。
(ふうっ これで終わりで助かった。タフということだけなら、もっとタフなのはいたが・・・)
「キリト!」
「お疲れ。凄かったよ、兄貴!」
「それより、早くこれを着けろ。着けたらすぐに、やれ。」
素早く、キリトに肘当てと手袋を着けさせる。その間にシャルとアルゴはこっそり部屋から出て、第一層はじまりの街、黒鉄宮地下の隠しダンジョンの奥にある「あの部屋」に回廊結晶で転移した。
キリトはヒースクリフのこめかみを狙って投げナイフを投げる。アフリカン投げナイフではない。あれは音が大きすぎる。この目的ために特別に作らせたナイフだ。外れた時には、僕が続けて攻撃するつもり。ただ、この場合はよほど外さない限り目的は達する。
カキィン!
命中音、ではない。跳ね返された音だ。そして例のシステムカラー・メッセージ
『Immotal Object』
ユイの時と同じだ。わかっている者以外は一様に驚いてる。
「何だ?あの表示!」「システム的不死って?」「どういうことですか!団長!」
キリトはゆっくりとヒースクリフに近づく。途中で止まる。
「この世界に来て、ずっと疑問に思ってたことがあった。・・・あいつは、一体どこで、俺たちを観察してるんだろうってな。でも、俺は単純なゲーマーの心理を忘れていたよ。・・・子供でも知っていることさ。」
「他人がやっているRPGを傍から眺めていることくらい、つまらないものはない。そうだろう?ヒースクリフ、いや茅場晶彦!」
ヒースクリフは僅かに口元を緩ませて言った。
「なぜ、気づいたのか、参考までに教えてくれるかな?」
「あなたが、この世界に登場してきた時、妙だって思ったよ。元ベータテスターでもないのに、ボスのソードスキルは知っている。第一〇層で台頭してきたにしては、レベルが高すぎるなど、腑に落ちないところがあった。あなたには『伝説』があった。HPバーが赤どころか、黄色にもなったことがないっていうアレさ。自分の身近に実際にそういうことができる人がいてね。この人はあらゆる攻撃を躱してしまう。ほとんど、掠りもしない。あなたにはそこまでの技術はなかった。それなのに、HPバーがいつでもグリーンというのはおかしい。
やっとはっきり、気がついたのはデュエルの時さ。最後のあなたの盾の動き、あれはそれまでの倍以上の速さだった。」
「あれは私にとっても痛恨だった。君の動きに圧倒されて、つい、オーバーアシストを使ってしまった。だが、キリトくん。君は自分で気がついたんだな。私はカイトさんが君に教えたものとばかり思っていた。」
「デュエルの後、疑問を口にしたら、やっと教えてくれたよ。それで、最後まで繋がったんだ。」
「カイトさんが私の正体に気づいていることは、私にも分かっていた。本来は第九五層以降で私の正体を明かし、第一〇〇層でラスボスとして君たちを待つ、つもりだったのだがね。
このストーリーは私が、攻略組の中心であることが前提だ。しかし、カイトさんがそれを許してくれなかった。私が登場した時には、優秀なプレイヤーの多くは、カイトさんの下にいた。引き抜きなど、望むべくもなかった。しかし、私の盾がなければ攻略が難しいボスもいた。勿論、私はそれを知っていた。それらの戦いを契機に盛り返せるかもしれない、とも思ったこともある。
だが、やはり、ことごとく、上をいかれた。私の盾が必要なことを認め、それを最大限利用されてしまった。」
この時、血盟騎士団の幹部の一人が立ち上がった。
「き、貴様!貴様!貴様ぁ!俺たちの忠誠を・・・よくも、よくもぉぉおお!」
剣を振り上げた・・・
カイトSide
男が剣を振り下ろそうとする前に、ヒースクリフが自分だけのメニューを呼び出そうとしているのが、見えた。
僕は躊躇なく、アレを発動した。
「タイムアルター!スクエア・アクセル!」
最速の4倍速ならさすがに間に合う。僕はヒースクリフ、いや茅場の手を押さえて、彼の後ろを取った。
「まさか、いきなり、最大速度で発動するとは!本当にあなたには、いつも、いつも上をいかれる。」
僕のHPは残り5、6%以下だ。
「グリゼルダ、シリカ、ヒール頼む!」
実際にヒールしてくれるのは、ラムレイとピナだが。
「不死属性はあなたを殺せないというだけだからね。こういうことになれば、当然、相手を動けなくすると思ったよ。ついでに他のプレイヤーも麻痺させるつもりだったんだろう?僕も含めてね。」
「そのつもりだった。私の正体を見破った以上、キリト君に、ここで私と対決して、私を倒すチャンスを与えようと思った。不死属性はもちろん解除して。」
「その予定は変更しないでもらいたいな。その上で、麻痺させる人間から、僕を除いてほしい。」
「理由を聞いてもいいですか?」
「あなたほどの人がどうやら、本当に気づいていないようですね。どうやら、カーディナルに外部から干渉しようとする気配があります。『ユイ』の時にそれを感じた、と言えばお分かりでしょう?」
「今言われてみると、思い当たることがある。」
「もっとも危険なのは、ログアウトの瞬間です。キリトの勝利を前提に、話を進めて申し訳ないが、その干渉を阻止できるのは、アルゴだけです。完全に阻止するの、は無理ですが。彼女はこの部屋から離脱していますが、護衛兼助手が必要です。一人でそれができるのは、僕しかいない。」
僕は、第一層の、あの隠しダンジョンのコンソールが置かれている部屋に回廊結晶を使って転移した。
キリトSide
俺はこの対決の作戦を詳しく説明してもらった時のことを思い出していた。
「ヒースクリフにはソードスキルを全部受けられちゃうんでしょ。なら、ソードスキルを使わなければいけると思うんだけど。」
「その考え方は平凡だな。確かにソードスキル抜きの剣技はきみが上手だ。だが、その差は僅かだ。」
「わずかでも、最後に上回ることができれば勝ちでしょ。」
「その考え方は奴には当てはまっても、きみには当てはまらない。奴の盾には攻撃判定がある。そういう細かい戦いになったらこいつが大きい。」
一般に盾持ち戦士と戦う場合のセオリーは、盾のある方向へ回り込むことだ。盾は頼れる防具であると同時に、視界を塞ぐ障壁ともなるからである。しかし、盾にまで、攻撃判定があっては、このセオリーが通用しない。
俺は二本の剣をしまって、干将・莫耶を取り出した。ヒースクリフが指を動かしていく。みんな次々と動けなくなっていく。仕方ないんだけど、やはり平気ではいられない。ひとりひとりに言いたいことがある。でも言っちゃダメだ。必ず勝つんだから。でも、本当は一つだけ頼みたかった。「俺が負けたら、アスナが自殺できないようにしてくれ」って。それも言ってはいけない。その場合は一緒に死んだ方がアスナも幸せ、だからじゃない。俺のその言葉で、アスナがどんな想いをするか。その言葉だけでも、ものすごく悲しませる。それはダメだ。アスナの顔を見る。頷いてくれた。他のみんなも俺の勝利を信じてくれている。
ヒースクリフは次に自分のHPを俺に合わせる。60%くらいしか残っていない。完全決着モードでのデュエル申請、がきた。YESを押す。カウントダウンが開始された。
俺の方から仕掛ける。まずはダブルサーキュラー。上位スキルではない。ヒースクリフは意外という顔だ。簡単に盾で受けられる。だが、スキル後の硬直がほとんどない。続けてソードスキルなしで打ち込む。攻撃の際にもっとも注意すべきは、盾によるダメージを受けないことだ。さらにカウントレス・スパイクなど基本スキルを混ぜる。
狙いは偽モーションを見破られないことだ。「見破られたとしても勝てる」ところまで準備はしたけれど。
ソードスキルは上位スキルになるほど発動が難しくなる。わずかな狂いで、システムがモーションとして検知しなくなる。わざと発動させないのだから、わざと僅かに狂わせる。そして、スキルを発動しないことを強く念じる。ジ・イクリプスのモーションに入った。ソードスキルの動きというのは非常に合理的だ。だから、スキルなしで同じ体勢になった場合でも、スキルと同じ動きが最善、ということが多い。
さらに、今手にしているのは、刀同士が引き合うような二対一体の干将・莫耶である。ソードスキルを発動した場合と見分けがつかない。いや、威力、スピードにも差はない。違うのは、偽モーションならば、スキルとは違う動きがができること、その一点だ。
太陽のコロナのような、複雑な動き。マスターするのは本当に大変だった。26連擊目、スキル発動の場合ならば相手はここで、俺の剣を弾き(または折り)剣がカウンターになる、というシナリオ。だが、俺はスキルとは逆方向から攻撃した。驚きながらも盾を動かしてくる。
(今回は意地でもオーバー・アシストは使ってこないはずだ。)
盾を大きく弾いた。右の干将の一撃で終わりだ。だが、終わらなかった。盾は間に合わなかったが、剣で受けてくる。勢いはこっちがかなり上回る。俺は剣を捨てた。ここで剣にこだわると、また、盾で受けられて、振り出しに戻ってしまう。
掌でヒースクリフの左腕を駆け上がるみたいに打ち込む。さらに懐に入って肘打ち。八極拳「猛虎硬爬山」(もうここうはざん) カイト兄貴から必殺技として、たった一つだけ習った技だ。この技の為にリズに肘当てを作ってもらったのだ。
「ま・・さ・・か!」ヒースクリフこと茅場晶彦はポリゴンの破片とともに消失した。
『アインクラッド標準時11月7日14時55分 ゲームはクリアされました。繰り返します。・・・・』
第一層 はじまりの街 黒鉄宮地下
「奴には言わなかったが、できれば、茅場のアカウントをコピーして保存しておきたいんだ。」
「全部はとても無理よ。何が狙いなの?」
「アインクラッドいやカーディナルのコピーを作ったとしても、それは間違いなく劣化コピーだ。だから、コピーのスーパーアカウントを上回る権限が欲しい。最低でもコピーのスーパーアカウントと同等の。それが本家から取れるんじゃないかってね。」
「相当無理な注文だわ。そうね、1回限り使用可というものならできるかもしれない。だけど、それをやるのはあなたよ、カイト。」
アルゴはアイテム化に必要な「容器」をくれた。アイテム化して僕かシャルのナーヴギアにデータ保存できれば成功だ。
「キリトにできて僕にできないことはないさ。今のところは、だけどね。その線でやってみるよ。ダメ元だしね。」
「あと、何らかの不正アクセスの証拠もこちら側で残すのは無理だわ。」
「仕方がないさ。あちらに戻りさえすれば、僕には手足がある。自分が動けなくても手は打てる。」
「あたしだけ、やることないって、なんかつまらないわ。」
「いや、シャルはアルゴがやるのを良く見ていてくれ。アルゴが先にログアウトしてしまうかもしれない。僕たちはおそらく最後だ。」
コンソール全体が光り出した。ユイの時と同じだ。
アルゴが猛烈な勢いでキーを叩く。その手順を記憶しようとシャルが必死で見つめる。
こっちは、アカウントは見つかった。しかし、容量が大きい。区切りのいいところで切るしかない。ちょっと無理かな、これは。
「そっちは止められたか?」
「なんとか。だけど、何人分かは持って行かれた!そっちは?」
「ちょっと厳しいな。まるごとでなければ、どこで区切るのかがわからない。」
「仕方ないわよ。元々かなり無理な話だわ。」
「あら、あたしの番みたい。シャル、あなたやり方覚えた。」
「意味は全然わかりませんけど、全く同じようにやることは、なんとかできます。」
「そんなの普通は無理なんだから、できなくても文句は言われないわ。」
「いえ、あたし、この人にできないことをやれって言われたことありません。」
シャルはにっこりして、しかし、きっぱりと、そう言う。
「はーっ やっぱり、アンタはあたしの天敵だわ。」
「光栄です。」
「じゃあね。」
アルゴのポリゴンは消えた。
それからしばらくして、僕とシャルは同時に青白い光に包まれて・・・消滅した、と思っていた。しかし、意識を取り戻すと、見渡す限り黄昏、透明な足場の上にいた。
(ログアウトできていない?どういうことだ?だが、ここはまだ、アインクラッドらしい。)
システムウインドウは呼び出せたが、「最終フェイズ実行中50%完了」とだけ表示された。
「シャルロットぉー!」
僕は大声で呼んだ。
「カイト?ねえ、これ、どういうこと?」
「わからない。ここはどこなんだろうな。」
「あなたったら、こんな時でも平然としてるんだから!」
「状況も把握できてないのに、慌てても仕方ないだろう?」
「あなた、あの人って・・・」
シャルが指さしたのは白衣を着た青年。リアルでの茅場晶彦の姿であった。
「なかなかに、絶景だと思いませんか?」
茅場が指さしたのは、アインクラッドの各層が崩壊していく様だった。
「いえ、生憎、こういう光景は、現実で散々見せつけられていましてね。嫌な記憶がよみがえってくるだけです。」
「ふっ あなたとはどこまでも相容れないらしい。」
「僕とあなたの関係ですから、ここは割り切って、事務的な話をしませんか?」
「致し方ありませんな。」
「ログアウトできなかった人間は何人になりました?」
「正確には59人、ですね。」
「そこまでにとどめるのが精一杯でした。その59人は現実世界に戻ってから、必ず救出しますよ。」
「私にはもう、それはできない。よろしくお願いします。いや、最後まで、あなたには敵わなかった。何もかも。」
「あなたに言いたいことが、一つだけあります。もう遅いわけですが。」
「なんでしょう?」
「僕は凛子さんに数回会ったことがあります。あなたが、あの女性のことをもう少しだけ、考えていればここまでは狂わなかった、と思いますよ。」
「彼女は現実世界で、私を殺しにきましたよ。私は殺されるつもりでした。」
「そんなことになってやしないかって、こっちに来てから心配してましたよ。残念ですね。お互い、通じ合えるに十分な気持ちを持っていたのに。」
「・・・」
「あなたが、何を考え、何を目指したのかは、キリトと話してください。僕はただ、現実世界の自分をこの世界にほんの一部、持ち込んだだだけ。この世界、仮想世界のヒーローはキリトですよ。」
「もっと早くあなたに、脱帽して、私の夢にピリオドを打つべきだったかもしれない。あなたにも申し訳ないことをした。」
「いえ、茅場さん、僕はね。ここで、改めて自分が自分の能力の奴隷にすぎなかったことが確認できましたよ。ベータテストの時、キリトに会って、目は覚めていました。今回さらに、多くのいい若者に会えました。かれらの親御さんたちからすれば、とんでもない話でしょうが、デスゲームであるが故に、ここで生き抜いたことで、一人ひとりが大きく成長しました。それに、僕個人としてはこのシャルロットに会えたことは、なにものにも代え難い。改めて運命というものを信じることにしましたよ。」
「そうですか、それならば、もう、何も言うことはありません。この辺で。」
僕らは二人残された。
「つくづく、変人だなあいつは。」
「そうなの?」
「そうなのって、こんな可愛い女の子がいるのに、一言も声もかけない、見向きもしないって、異常だよ。」
「そういう人だっているわよ。」
「いや、現にいたわけだけど、珍しいってことさ。」
「あたし、もう、このままでもいいわ。」
「おいおい、それはないだろう。やっと、これで、せいせいするって思ってたのに。」
「あなたと一緒なら、どこでもいいわ。」
僕はシャルを抱き寄せた。そのまま、今度こそ現実世界に帰還した。
完
アインクラッド編の最終回を原作と変えたくなるのは「相討ち」のキリトはともかく、アスナがどうして生き残るかがスッキリしないのでしょう。「ヒロインだから」でいいと思うのですが。本作では決戦のところで、そういうシーンがありませんから最後はカットしました。
次話以降も構想はあり、書いてはみたのですが、感想をよくよく、拝見して、今回はここで終わらせることにします。自分で読んでみてもあまり面白くありません。
私は、全くのオリジナル、というのにはあまり、面白味を感じませんでした。しかし、この場は、アニメや二次原作のキャラ、能力、セリフをそのまま使うのは「恥ずかしいこと」「原則、やってはいけないこと」なのですね(しかもやたらに多すぎました)。そうした基本的なルールを知らずに投稿したことを反省しております。
なかなか上手くはいかない、オリジナル。だからこそそこに価値がるのでしょう。
今回の拙作は、構想を含め、約2週間ほどしかかけていません。ざっと見ただけでも、そんな作品はありませんね。こういう安易な取り組みも読者には伝わるのでしょう。いろいろ勉強になりました。感想をいただいた方々には厚くお礼申し上げます。また、繰り返しになりますが、そんな拙作を最後までお読みいただいたことは感謝に感謝に堪えません。
修行して出直してまいります。ありがとうございました。