プロから見たSAO攻略   作:ベルクーリ2世

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 最強ギルド立ち上げの仕上げの部分です。


第7話 その男、策士

 

 カイトSide

 

 エギルに会い、「インビクタス」への彼ら4人の加入を快く、了承してもらった。このギルドの意味、目指すもの、現有戦力等々について包み隠さず話した。トップギルド確実のところから、厚遇をもって迎えるという話を断る人はまずいない。説明などしなくても、応じてくれてたようだ。彼らが入ってくれるとこのギルドのタンク不足が解消される。タンクが絶対に必要ではなくても戦術の幅は必要だ。

 エギルたちが「インビクタス」に加入したことを知れば、リンド、キバオウは、さぞショックだろう。人数で大きく上回る、自分たちのギルドへの加入を断られているのだから。少なくともこの層の攻略にリンド組やキバオウ組の助けはいらない。ただし、今後は別だが。

 

 おや、キリトからメッセージだ。どうも、面倒なことになっているようだ。

 

 クエストは第六章まで、進んでいる。しかし、リンドとキバオウが先にクエストを進めたキリト君たちによって、彼らのクエスト挑戦が頓挫してしまった。しかし、彼らはこのクエストの報酬が、攻略に不可欠のアイテムと誤解しているので、キリト君が「このクエストにそんな報酬はない。それが目的なら、諦めて迷宮区でボス部屋までのマッピングをしてくれ。」と言っても、聞こうとしない。どうすればよいか?という相談だ。

 

 こう提案するように、とキリトに返答した。

 

 「カイトがギルドを立ち上げて、マッピングをする予定だが、キリアスコンビがいないので、思うにまかせない。どうしてもクエストを諦めないというなら、俺とアスナはこちらに戻って、迷宮区のマッピングに参加する。クエストは放棄するさ。俺たちが帰れば、迷宮区は問題なく突破できる。ボス部屋に先に到達したギルドのマスターが第三層の攻略リーダーのはずだったよな?」

 

 

 彼らは、こっちがキリアスコンビ抜きで、マッピングが、コンプリートできるとは、思っていないだろう。が、とにかく手をつけているということだけ、知らせる。焦るだろう。特にもう一人のビーターである僕の存在は、不気味だろうな。しかし、進んでいない、と聞いて一安心するはずだ。実は「進めていない」のだがね。立ち上げるギルドはこれまで、攻略にも参加したことのないメンバーが多い。実は連中よりもずっと強い。しかし、僕とキリアスコンビの3人、これだけでも、迷宮区突破はもう現実のものと考えざるを得ないだろう。

 「第三層のボス攻略に必須のアイテムが、クエストの報酬」と考えることは、既に彼らにとって、かなりのリスクになっている。第二層まででも、ベータ版からの変更はフロアボスについてのみだ。この層でもそれ例外の変更はないと考えるのが自然だろう。 また、第二層では確かにクエストの報酬として貴重な攻略情報が得られたが、そのクエストそのものが、ベータ版では存在しなかった。

 そうだとすると、キリト君のクエスト達成報酬についての情報は、正しいと判断すべきことになる。彼らが恐れているのは、その攻略必須のアイテムをキリト君に取られることだが、わざわざ嘘を言うのは、彼らと完全に対立することになる。これは、今後の攻略そのものから、ハブられるリスクだ。いかにビーターといえども、取りうるリスクではない。

 あとリンドが考えそうなことは、キリアスが「インビクタス」には加入しないという「確約」だろうか?しかしながら、そもそも「キリアス別々加入の約定」など、存在すること自体、ふざけるな、と気が強いアスナ君だったら考える。下手に怒らせて、アスナ君が「インビクタス」に確実に加入してしまうリスクよりも、「キリトとアスナは本来はソロ」の状態の方が、彼らにとっては、ましだろう。ギルドに入るなら、自分たちのどちらかしかないと、勝手に考えているのだ。そこまでは、攻めてこれまい、と読んだ。仮にそうきたら「未定」で押し通す。これでなんとかなるだろう。

 こう考えるとキリトの傍に、アスナ君がいてくれることが、非常に大きい。キリトだけだと押し切られる、彼がブチ切れるの両方を心配しないとならなかったが、アスナ君がいるからこそ、こういう策が立つ。

 彼らがよほどのバカではない限りは、こう考えるはずだ。果たして、ALS(キバオウ組ギルド)DKB(リンド組ギルド)は迷宮区突破の先陣争いを選んだ。

 

 さて忙しくなった。クラインたちのところへ行き、本格的攻略の号令をかける。既に準備は完了している。当方としては先陣争いなど、真っ平ごめんだ。彼らに先んじるのは至上命題。この結果、新生ALSとDKBとやらは、何も得られない結果になる。さぞや、地団駄踏むであろうが、僕は、その先も考えておいた。この第三層の攻略が完了した時には、自分たちの行く手に「インビクタス」が越えられない壁となって、忽然と顕れる。その後どうするかは、彼らが自分で考えれば良い。彼らもレベルだけなら、今のところ、全体の上位に位置するが、リーダーの器量といい、攻略組のメンバーとしては、先々そう期待できるようなメンツではない。

 

 インビクタスの初陣だが、キリアス不在でも、彼ら以上の力を持つ愛弟子シャルがいる。「風林火山」の面々も士気は非常に高く、すっかり、実力もつけていた。アインクラッド最速の僕と、それに次ぐシャルを相手に毎日デュエルをこなしてきたのだ。その辺のMobの攻撃など、遅く見えてしかたがないだろう。スイッチも見事だった。エギルたちもいつも通りの力を見せてくれた。リンドあたりの理想とする戦い方をこの段階で実現して見せたわけだ。早々に迷宮区をなんの苦もなく突破してしまった。

 

 さてもうひと仕事だ。このままのんびりと、キリアスコンビを待っていたのでは、ALSやDKBが勝手に攻略に取り掛かってしまいかねない。先陣争いに勝った以上、僕が攻略リーダーとなる約束であるが、ここで僕は、さらに一計を案じて、リンド、キバオウの両名を呼び出して、話し合いの機会を持った。

 

 

  とある酒場にて(クラインとエギルを連れている)

 

 「いや申し訳ない。ただボーッと、キリトたちを待っているわけにもいかないので、迷宮区に手をつけたんだが、エギルたちが加入してくれたこともあって、たまたまうまくいって、キリトたちが帰ってくる前に、ボス部屋に到達できました。ああ、今回、ウチは宝箱は開けずに置きましたよ。」

 

 (あんまり嘘はつきたくないが、宝箱以外は真っ赤な嘘だ。)

 

 「カイトはん、あんさんは、この第三層ボス攻略の指揮を取るつもりでっか?まあ、それが約束やから、しゃあないけど。」

 

 「いや、ウチがその権利を得たから、あえて提言したいのだが、このまま攻略本番というのは少々危険だと思う。」

 

 「しかし、折角ここまで来て・・・」

 

 「気持ちは分かる。しかし、第一層、第二層とも、ボスについて、ベータ版からの重要なデータ変更があった。今回もあり、と考えるのが普通じゃないかな。少なくともその危険は軽視できないと思う。」

 

 「しかし、それは攻略に着手して危険があると判断した時点で一時撤退、で良いのでは?」

 

 「第一層、第二層とも一時は、総崩れになりかけた、というよりなっていた。僕はね、ここまで、かなり幸運に恵まれてきたと考えている。ディアベル君を早々に失ったのは、大きすぎる損失だが。いずれの場合も撤退そのものが難しくなってしまっていた。デスゲームでの撤退の判断の難しさは通常のゲームの比ではないよ。」

 

 「ほな、どないせい、と?」

 

 「うん、だからね。念のため、ウチが単独で、偵察戦に出ますよ。人数も14人でちょうどいいんじゃないかな。ベータ版から何か変更があっても、まさか、多数死亡ということはないだろう。万一の場合でもキリト君とアスナ君だけは必ず生還させる。これは、約束しよう。万が一何名か死亡しても、攻略組の中心を自負するASLさんとDKBさんは健在なわけだから、今後の攻略に差し支えるということもない。」

 

 (第一層、第二層とも、ベータテストから変更があったのは、最後の一本だった。普通偵察戦でそこまでは削らないだろ?どうせ気がつかないと思って、こう言ってるんだが、こうコロコロ引っかかると虚しくなってくるな。)

 

 「『インビクタス』のメンバーはあなたや、キリト君、アスナ君、エギルさんたちを除いては、失礼ながら我々も初めて聞く名ばかりで、言いにくいですが、実力がわかりません。」

 

 「実力は僕が保証する。何よりここまでこのスピードでたどり着いているということが、証拠になるでしょう。このクライン君のレベルは15で、メンバーの平均はキリト、アスナ、僕を除いても13以上ありますよ。」

 

 リンド、キバオウともに驚愕と後悔の表情。

 

 (ふふふ、僕らを甘く見ていたな。しかし、シャルのことも訊かないし、どうしてトップスリーのレベルを確認しないんだ?どうにかならないのかな、この頭。)

 

 「実力はわかりました。偵察戦から、どのくらいで本戦になりますか?」

 

 「一日休養をいただければ十分でしょう。」

 

 「改めて攻略会議ゆうことでっか?」

 

 「さて、それなんだがね。図らずも我々はこの層で、クエスト達成とこの層のボス部屋一番乗りをいずれも果たしてしまった。これではちょっと二大ギルドに申し訳ない。そこで、本戦の指揮権は放棄しましょう。」

 

 「「えーっ!」ホンマでっかカイトはん!」

 

 「ええ、それで構いません。リーダーをどちらがやるかは、コイントスでも話し合いでも、そちらにお任せしますよ。但し、一つだけ。」

 

 「なんでっか?」

 

 「その、ボスをですね、偵察戦で倒せるものなら、倒しきって構わない、という一点だけをご了承いただければ。」

 

 「いくら、キリト君、アスナ君、それにあなたがいても、その人数で最終攻略は不可能でしょう。その条件、ウチは構いません。」

 

 「ワイのところも異存ありまへん。」

 

 「ありがとう。それでは本戦のリーダーは、そちらでお決めになってください。」

 

 

 帰り道

 

 「何て言うのか、俺、あいさつ以外、一言も言えなかったですよ。師匠、凄いですね。」

 

 「うん、うん。あの連中がいかに愚かだったか、いちいち分からせるような内容でしたね。」

 

 「二人共、僕の完勝だって、分かってくれた?」

 

 「昔の大軍師みたいだったスよ。諸葛孔明みたいな。」

 

 「それは褒めすぎだよ。正真正銘大人と子供の話し合いだからね。いや、あの二人の頭の悪さは予想以上だ。張り合いがなさすぎたよ。これからも、いちいち教えてやらなければならないと思うとうんざりだ。」

 

 「でも、本当に俺たちだけで大丈夫ですか?」

 

 「問題ない。あいつらがいると邪魔なんだよ。ギルド・インビクタスは華々しいデビューを飾るんだ。キリト、アスナという攻略組ツートップを迎えてね。」

 

 「俺、キリトとはずっと一緒にやりたかったんです。だから、それだけでもう嬉しくて。」

 

 

 

 作戦会議

 

 

 「話し合いはうまくいったよ。すべてこっちの思惑通りだ。」

 

 「クライン、エギルとも話し合って役職を決めた。団長が僕、副団長がクライン、アスナとエギル、、アスナ付きの副団長補佐にキリト。以上だ。シャルは特命団長補佐。普段は僕に付いている。特命があれば、彼に従ってくれ。」

 

 「質問!」

 

 「何だい?キリト君。」

 

 「アスナの方が俺より偉いの?」

 

 「そうだよ。上司の命令には従うこと。」

 

 「えーっ」

 

 「あくまでも任務についての話だ。プライベートには関知しない。問題ないでしょ?」

 

 「大ありだよ!これじゃあ俺、アスナに全く頭が上がらないじゃんか。」

 

 「ちょっと、キリト君!何言ってるのよ!」

 

 キリト君はもう黙るしかない。

 

 「君にはボス戦でのうちの最強部隊のリーダーになってもらう。一番隊隊長キリト、だ。君の強力だが危なっかしい戦闘をカバーできるのはアスナ君だけ。だから、戦闘時に限り、君が上司だ。これで、今と何も変わらないだろう?」

  

 「わたしも、ビギナーなのに副団長、なんて。」

 

 「キリト君をしっかり見張って、躾けるのがここしばらくの主なお仕事だ。」

 

 「はい。任されました。」

 

 にっこりする。いい笑顔だ。

 

 「俺は犬かよ。アスナも任されました、なんて・・・」

 

 「作戦はこうだ。まず、キリト、アスナ、君たち二人が飛び出していって、ボスのHPを削れるだけ削る。その後は残りのメンバーでローテを組んで整然と攻撃する。その間キリアスは回復に専念、残り一本になったら、一旦下がり、僕の遠距離攻撃のみで様子を見る。慎重に残り一本を削り、最後は全員攻撃だ。」

 

 「すべての点から見てのトップ4が揃ってるんだ。タンクもしっかりしてるし、クラインたちだって、なかなかのものだよ。毒攻撃に備えて、すでに解毒ポーションは買い占めるくらい用意した。ベータからの変更についての心配は、今回はあまりないんじゃないかな。」

 

 「あるとすれば『毒攻撃』のところだよな。」

 

 「まあ範囲攻撃はとにかく避ける。チャクラムで隙を作って集中攻撃!でなんとかなるんじゃない?」

 

 キリトにだけ聞こえるように

 

 「深夜になったら出てきてくれるかい?あの話を詳しく聞いておきたい。」

 あの話とは、モルテのことである。

 

 

 

 キリトの話をまとめると、モルテというやつは、ALSとDKBの双方に攪乱の目的で潜入し、あまつさえキリト君の命を狙ったということだ。(これは捨て置けんな。始末するしかない。)14歳の少年には厳しすぎる話だが、奴を始末する以上は、本当のことを言っておかねばなるまい。

 

 「結局、そいつは本気で、攻略の邪魔をしたいんだな。しかも攻略の中心になる者ほど殺したい、と。驚かないで聞いてくれよ。こいつは殺すしかない、と思う。無論、僕がやる」

 

 「それは・・・だってオレンジになっちゃうじゃないか!」

 

 「最悪それは覚悟している。モルテを殺すべき理由はまず、攻略そのものの、障害になること。君たちを、無事に現実世界に還すことこそが僕の責任だ。その前提として、これは必要不可欠のミッションだ。こいつは、僕たちとは真逆で、ゲームクリアさせたくないんだよ。いつまででもここにいたいと思っている。

 そうだろ。ここは犯罪天国だ。ゲーム上の制約はあっても、リアルでの犯罪になるか?立証は無理だ。全部茅場のせい。だから、精神的にも非常に楽だ。こいつらは、僕たちとは逆に思い切り、ゲーム感覚でやってるんだよ。7000人以上の、人の命がかかっているんだぞ。

 次にこいつはキリトを殺害しようとし、今後もそうしようとしている。そして君は悔しいだろうけど、こいつにはそれをやり遂げる力がある。半減決着モードは、完全決着では相手が受けないこともあるが、失敗してもまたやるということでもある。次、を断固阻止する。これだけでも十分理由になる。

 さらに、こいつは次は、アスナを狙ってくると思う。アスナはまだ君の恋人でも彼女でもないと君は言うだろうが、君がこのアインクラッドで最も死んで欲しくない人であることは間違いないんだ。しかも、こいつの目的からすればアスナは、君のことを抜きにしても、奴の標的になりうる。今回アスナが、狙われなかったのは不幸中の幸いだと僕は思っている。こいつが本気で殺しにきたら、君やアスナではこいつには勝てない。」

 

 「確かに内容的に負けだったげど、ほとんど差はなかった。勝てないっていうのはなんでさ?」

 

 「簡単だ。君もアスナも、人を殺したことがないからだよ。相手は自分の命なんか、たいして惜しくはないんだ。だってそうだろう?第一〇〇層までクリアしなければ、現実世界に還れないというのに、それをわざわざ妨害しようというのだから。だからHPがどれだけ少なくなろうが、向かってくる。一方、君たちは、どれだけ相手のHPを減らしても、最後の一撃が加えることができない。なぜならその覚悟がないから。でもそんな覚悟なんてそもそも必要ないんだよ。やはり人を殺すことを、禁忌とする人間でいるべきなんだ。できることならね。」

 

 「一つ聞くが、もしアスナが、殺されそうになったら、絶対に阻止しようとするだろ?」

 

 「あたりまえだよ!」

 

 「自分が、殺されてしまうかもしれなくても?」

 

 「うん。」

 

 「でも最初から、相手を殺そうとは思わないよね?」

 

 「そりゃそうだよ!」

 

 「結果として殺してしまっても、相手を倒そうとしたことは後悔しないね?」

 

 「しない、と思う。」

 

 「その場合、心により重い傷を負うのは、より後悔するのは、助けられたアスナの方なんだ。自分のために君にそこまでさせてしまった、とね。そのことにものすごく感謝はしてもね。それすら乗り越えられるというのは、ものすごい強さだ。彼女はそのくらい強いとは思ってるけどね、僕は。

 君はアスナのためなら、こいつを本当に殺しかねない。こいつが強いからこそ、そうなる可能性がある。僕はね、そんなことになるのも、絶対に避けたいんだ。

 アスナが君にとって、そこまで大事な人だってことは、こいつなら必ず嗅ぎつける。アスナを殺して、殺すまではいかなくても大きく傷つけて、逆上した君を殺すのが、最もこいつの喜ぶシチュエーションだ。間違いない。」

 

 「さらに、同じことは、アスナにも言える。君のためなら、彼女もこいつに向かっていくよ。自分の危険を顧みずに。」

 

 「まさか!」

 

 「僕の眼には、必ずそうなるように映る。そのことは、君が今はまだ、わからなくても仕方がない。しかし、君たちは、お互いの命をもう何回も救い合っているんだ。それがあたりまえのように。もう、しっかりと絆ができているんだよ。

 とにかく、君とアスナには、二人とも同じくらい、危険が差し迫っている。命のね。さらに、そういうことをしようと考える奴がこいつ一人とは限らない。こいつは、リアルでも、おそらく極めて悪質な犯罪者だ。しかも組織犯罪の匂いがする。日常的にやってるな。手口が、個人の犯罪者の手口ではない。こいつは黒鉄宮に送るだけでは、不十分だ。リアルでまた同じことをする。

 僕はリアルでは誰にも負けたことなんかない。いや試合なら負けたことくらいあるさ。命のやり取りで負けたことはない。いいから僕に任せろ。僕への気遣いは無用だ。こんなことは、もう数え切れないくらいやっている。それでもこうやって生きている。」

 

 「でも・・・」

 

 「悩むな!悩んでしまったら、答なんか出ない。気にするな。万が一、オレンジになっても二日でグリーンに戻せるクエストが、この第三層にある。どうってことないさ。

 それより、だめだな。デュエルで遅れを取るなんて。君は対人戦闘には、意外に慣れてないんだな。下手をすると、クライン相手でも負けるかも知れないぞ。」

 

 「まさか、それはないよ。アスナならともかく。」

 

 「どうかな。クラインは僕とシャルが、毎日のようにデュエルで鍛えているんだぞ。とにかく対人戦の練習はいずれやろう。君も悔しいだろうが、僕だって君がこんな奴に苦戦したのは悔しいし、不愉快だ。だから二度とそういうことのないように君を鍛える。デュエルでも無敵にしてやるよ。僕を除いて。」

 

 

 

 ボス戦は実につまらない戦いだった。大体、ボス戦と言っても、苦戦しなければ特筆することもない。

 第三層フロアボスは「ネリウス・ジ・イビルトレント」ベータ版との違いはあるにはあった。広範囲の毒化攻撃を多用してきたが、それだけのことだった。相手の攻撃を避け、その後カウンターで攻撃、この繰り返し。

 

 単調な戦闘の中で目を惹いたのは、アスナのレイピアの威力が一段と増したことであった。何でもウインド・フルーレの二代目でシルバリック・レイピアという剣ということだ。これをNPCの鍛冶屋が作成したというのだから、この世界には僕に分からないことが、まだたくさんある。

 一般的に行われる最後の全員攻撃は、LAボーナスのチャンスを公平に、ということだが、これが実は全然公平じゃない。キリトのLAボーナス取得率が、異様に高い理由の一つでもある。こうすると、スピードの違いで、このパーティではキリトとアスナのどちらかが、取ることは確実だ。敏捷値はアスナがやや優るのだが、経験値に差がありすぎる。だから放っておけば・・・

 愛すべき黒いヤンチャ坊主は、またもLAボーナスを狙う構え。僕は彼に近づいて耳打ちした。

 

 「少なくとも、今回は彼女に取らせてやれ。」

 キリトはかなり不満そうだったが、喜ぶアスナの顔を見て、この方がよかったと思ったはずだ。これはお節介だが、重要なことだよ。

 

 戦闘時間はわずか四〇分。どうにも残念なボスだったな、茅場!

 

 

 第四層のアクティベートは、クラインとキリアスコンビに任せ、僕は戦後処理を考えていた。ここまで、我ながら完璧に立ち回ったが、最後でしくじると台無しになる。

 

 キリト君はアルゴにモルテの調査を依頼していたようだ。それを僕がひきついで、さらに彼女に行方をくらました奴の居場所の調査を依頼した。逃がさんぞ!モルテとやら。

                                        続く

 

 

 

 

 

 

 




 リンドとキバオウの頭がちょっと悪すぎます。どこかで、正しい判断をしていれば、こううまくはいきませんでした。例えば要注意人物である、カイトをマークしておくとか、偵察戦はあくまでも不要と主張するとか。
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