プロから見たSAO攻略   作:ベルクーリ2世

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 原作(プログレッシブ)では、第四層もクエストのお話がほとんどです。これも全部カットします。第三層の時と違って、ちょっと書きにくかったところです。アルゴとオリヒロインが少し出てきます。


第8話 悪魔と呼ばれても

 

 先に第四層に行っているキリトから、連絡があった。第四層の様相が、ベータテストからは一変している、と言う。やるべきことが山積しているが、ともかく、彼らがどうするか決めるのが先決だ。僕も第四層へ急いだ。行ってみて驚いた。確かに様相一変だ。主街区にいこうにも、大きな川が行く手を阻んでいる。

 

 「泳いでいけるかもしれないけど、一応泳げるってだけだから不安だし。それに何の用意もないしさ。」

 

 さすがのキリトもそう言う。

 

 「しかし、これ、何か渡る方法が、あるはずだよね。誰でも気づくような。」

 

 「そりゃそうだろ。まさか、いきなり攻略不能なんてことはないよ。」

 

 「SAOはさ、こっからおまじないか何かで、道ができるとかそういうのはない、お約束でしょ?渡り方もわからないのにみんなでここに来ても仕方がないな。クライン、ここはクエスト攻略の必要があるコンビにまず先鞭をつけてもらうってことで、どうかな?人数が多いと却って動きにくいからねえ。」

 

 「俺はそれでいいすけど、キリトよお、お前ぇそれでいいか?」

 

 「何だよ!俺に丸投げ?」

 

 「うん、そう。いやキリト一人だったら、そんなことはしないさ。アスナもいるから、安心してお任せできるというものだ。」

 

 「ダメでも、文句言うなよ!」

 

 (僕がいないのがご不満のようだな。)

 

 「いいから、ちょっとおいで。」素早くキリトを呼んで耳打ちする。

 

 「いいか、これは君たち二人の安全のためでもあるんだ。第四層にいれば、モルテに狙われる心配は全くない。あいつがこっちにこないうちに、さっさと片付けるさ。必要があればすぐ、こっちに来るから。」

 

(一発で了解してくれた。なるほどアスナが絡めば、簡単に言うことを聞いてくれる。これからはこの手に限るな。)

 

 「アスナもいいってさ。」

 

 「よし、それじゃあクラインは、エギルに連絡してくれるか?ギルドとしてこれからやるべきことを相談したい。大事なことはこっちいいる二人にも相談しなければならないけどね。」

 

 「分かりました。じゃ一緒に戻るってことで。」

 

 

 第三層のとある喫茶店でアルゴに会う

 

 「随分速かったナ。マサカ、カイトさんのギルドだけで攻略するとハ。」

 

 

 (しかし、改めて見ると、若いな。リアルでの年齢は確か23のはず、ちょっとそうは見えないな。)

 

 「それで、わかったかい?」

 

 「アア、報酬ハ約束通りデ。」僕は2万コル、彼女に払う。

 

 「約束ハ1万テ?」

 

 「いいんだよ。この仕事は非常に、危険を伴うものだった。それから、この件について話し合っておきたい。」

 

 「何ヲ?」

 

 「君の情報屋としての信条やプライドに反することを承知でお願いするが、この件については今後、僕が何か依頼するまでノータッチでお願いしたい。」

 

 「そんなコト・・・」

 

 「言ったろう。危険があると。ああ、君でも、だ。それから、君になぜ調査を依頼したか、この情報を僕がどう使うかも見当がついているはずだ。」

 

 「オイラと話をすれバそのこと自体が情報ニ・・・」

 

 「解っているさ。君は絶対に、これは商品にはしない。」

 

 「ナゼ?」

 

 「君は攻略そのものの妨げになるような情報は決して流さない。僕はこの点は、絶対的に信頼している。」

 

 「マタマタ、降参ダ。」

 

 「対価は払うよ。口止め料としてね。」

 

 「ソンナ、オレッチは・・・」

 

 「だから、信頼してるって、言ってるじゃないか。君が口止め料みたいなモノを取るのは、攻略には関係ない個人の情報に限られる。それもよく考えれば、笑って済ませるレベルのね。心配するな。対価はコルじゃない。情報だ。我々はもうトップギルドだ。共有すべき情報は即時に、君に流す。僕だけがもっている情報はこの限りではないけどね。それ以外についても、流せるものはすべて君に流す。ウチは情報を独占しようとは思わない。」

 

 「イヤって言えるようナ話じゃないヨ。」

 

 「ありがとう。分かっていると思うが、ASLとかDKBとかとは、そもそも、競争相手にすらならない。だからと言って、先のことを考えると、彼ら無視するわけにもいかない。彼らには彼らの役目がある。最も自覚はしてくれないだろうけどね。結果として攻略の役に立つ存在でいてくれればいいんだ。」

 

 アルゴは頷く。

 

 解ってくれたか。さすがだ。頭の良い女で助かる。この女相手に、こう一方的にしゃべるのは、僕だけだろうな。

 

 「それから、君にも危険なことが多い。君の存在はこの世界では貴重だ。護衛が必要な時には言いなさい。いつでも人を出そう。」

 

 「ソンナ。オイラなんかニ・・・」

 

 「手が空いていれば、必ず、僕自身が護衛するよ。」

 

 「そ、それって・・・や、やだ、あたしったら・・・」

 

 (あれ、「鼠」じゃなくなった。赫くなってる。やれやれ、こりゃ面倒な。ちょっとサービス過剰だったか。)

 

 「了承ということでいいね。」笑って言う。

 

 (正体はともかく、アルゴだって立派な女だ。言ってしまった以上は、恥はかかせないさ。)

 

 

 僕の宿にクラインとエギルを呼んだ。

 

(まあ、あまり寝ないから宿は要らないんだけどね。こういう時のためだ。シャルがなぜ、面白くなさそうな顔するのがわからない。クラインとは仲がいいはずなのに。)

 

 

 「さっき、連絡があってね。あそこ、渡れたって。」

 

 「へえ。さすがキリの字だ。で、どうやって?」

 

 「何でも、浮き輪の木ってのがあるらしい。ドーナッツみたいな実が生ってるんだって。それが浮き輪になる。」

 

 「なんじゃそりゃ、って感じですね。装備は、そのまんまで泳げるんすか?」

 

 「いやあ、一応、その、水泳の格好は必須らしい。」

 

 「海パンなんて売ってないじゃないスか。」「俺もそんなの持ってないな。」

 

 「いや、第一層には売ってるぞ。ほらいろいろな格好したいじゃないか、みんな。まあ、多少不格好でも泳げる格好ならOKってことじゃないかな。急がなくても他の連中に先を越される心配はないさ。手が足りないならすぐ知らせるように言ったしね。」

 

 「でもさあ。」とエギル。

 「アスナちゃんは女の子じゃないか。どういう格好で泳いだのかなあ。」

 

 「さあ、そのあたりはアルゴにでも聞いた方がいいだろう。金がかかるがね。本人たちは絶対言わないだろうね。」

 

 (ボクも不安だなあ、男だと上半身裸かあ。困ったなあ。カイトにバレちゃう。なんとか一人で渡る手を考えるしかないかあ。)

 

 後々、大波乱を呼ぶが、ブロンドの美少年シャルは、実は女の子だった。

 

 

 「ああ、そうそう、さっきの浮き輪だがね。とりあえず主街区までは、その浮き輪を使って行ける。アルゴにもその情報は流したからね。その先がどうかはともかくとして、浮き輪を独占しようと考える輩がいるかもしれん。いずれにしてもこの層は水だらけだからね。すぐ行けるかいエギル?」

 

 「俺のところは全員行けます。」

 

 「クラインは?」

 

 「全員大丈夫っす。」

 

 「じゃあね、浮き輪、人数分確保しといてくれるかなあ。いや、ずっと持ってろよってこと。君たち全員より3個余計に。ほら、キリトにたくさん確保させると他のギルドの連中が何かとうるさそうでしょ。それにアイテム取りまくり小僧だから、ストレージはいつも一杯。使わなくても持ってろって言うと本人も嫌がるんだよ。余ったのはボス攻略戦の前に捨てるなりあげるなりすればいい。」

 

 「キリトとアスナちゃんて、やっぱりカップルなんですか?」と、これはクライン。

 

 「誰が見たってそうだろ?」エギルが返す。

 

 「はは、でも本人たちは否定しただろ?」

 

 「『コンビじゃありません!』て見事にハモってましたよ。」

 

 「まだそんなもんだよ。ま、もういつ自覚するかだけの問題だな。二人とも、初恋だよ、あれ。」

 

 「やっぱりそうなのか!いいなあ!」

 

 (ほんとにいいよなあ、あの二人。ボクとカイトじゃ年の差がなあ・・・)

 

 シャルの密かな悩みだ。

 

 「まあまあ、二人共、まだ子供なんだから。可愛いじゃないか。本気で羨ましがっちゃいけない。それはそうと、ウチはメンバー14人いて、女性はアスナ君一人なんだ。これはいくらなんでも問題だ。僕からもクライン君にはぜひ女性プレイヤーの勧誘に尽力していただくようお願いしたいな。」

 

 (ホントはボクも女だから二人なんだけどなあ。こんなに悩むなら、女の子のままの方が良かったにかなあ。)シャルは後悔していた。

 

 「尽力したくっても相手がいないっすよ。」

 

 「俺は女房持ちなんで。」

 

 「まあ、女性プレイヤーの割合が、全体の6、7%でしかも、その大半は18歳未満だからなあ。うかつに手も出せない。ま、冗談はさておき、だ。いくら何でも、第四層そこらじゅう泳げ、なんてことはないはずだ。そうなると主な移動手段は船ってことになる。問題は大きさだよね。どのくらいの船があるかで、どう進めていくかが決まる。何人乗りがあるか、あるいは作れるか。いずれにしても二人なら、例えばカヌーでも何とかならないことはない。人数が多いと面倒だ。」 

 

 

 このあとの二人との話の中で、僕が重視したのは鍛冶屋の育成だ。武器の力は大きい。低層では、プレイヤーの鍛冶屋は少ないがNPCの鍛冶屋ではどうも物足りない。アスナの剣を作ったNPCの鍛冶屋には関心があるが、まさか鍛冶屋目当てでいちいちクエストを受けるわけにもいくまい。それはアルゴに調査してもらうとして、できるだけ早期に熟練度の高い鍛冶屋が欲しい。だから良い人材を確保して、熟練度を上げるのを手伝う、店を出す援助をする等で、ギルド御用達の鍛冶屋に仕上げる。これは重要課題だ。

 

 

 強制デュエル

 

 

 意外にもそいつは、僕の近くにいた。その夜、アルゴの情報に基づき、モルテを捕捉した僕は人気のないところに出るまで、「隠蔽」を使いつつ尾行した。キリト君がモルテに苦戦した第一の理由は、先手を取られたことにあった。

 デュエルは合意成立からインターバルが60秒ある。フライング攻撃はシステム上、犯罪行為とみなされる。しかし、それはインターバルの間にソードスキルを発動できない、ということではない。あくまでも攻撃がヒットしたのが、開始後であればいいわけだ。キリト君はまず、この間隙を突かれた。

 もう一つは、武器だ。最初片手剣を持っていたが、途中で片手斧に持ち替えた、しかもそれに気付けなかったといことだった。気づけなかったのはキリトの未熟だが、クイックチェンジだからな。相手はなかなか用意周到だ。片手斧なんか僕は見たこともない。まあ何を持っていようが、僕には通用しない。そろそろ挑発してみるか。

 

 「おい、ちょっと、待ってくれないか。」

 

 「こんな夜更けにぃー ボクになーんのご用ですかー?」

 

 「いや、失礼した。夜にソロで狩りに出歩くなんて、相当腕が立つプレイヤーとお見受けしたからね。一手ご教授願えればと思って声を掛けたのだが。」

 

 「またまたー。知ってますよ。あなた、攻略組最強ギルドの団長だって、有名ですよー おれらからすりゃ悪魔ですげどー 」

 

 「知ってるなら話は早いな。ところで、なぜ悪魔なのかな?」

 

 「人外だからじゃないですかー?百発百中のチート武器まで持ってるって話だしー」

 

 「そうかね。まあいい、ではデュエルは受けてくれるよね。もちろん。キリトの時と同じく半減決着モードでいい。ああ、チャクラムは使わないことにしよう。短剣もね。素手でいい。」

 (これで乗ってくれると助かるんだがな。)

 

 「その手には乗りませんよー キリトさんから聞いてるんでしょ?ボクの手の内。」

 

 「何だ、君の隠し芸は、あれだけなのかい?それはちょっとがっかりだな。次に何を見せてもらえるのか楽しみにしていたのだが。」

 

 「ボクは人外のあなたと、ヤル気はないんですう。帰ってくださいよー」

 

 「ここで帰るくらいなら、最初から尾行などしないさ。逃げるのは諦めるんだね。簡単な選択だよ。武器を持たない僕とのデュエルに応じるか、なんでもありの僕の前で、座して死を待つか。素手の僕相手の、半減決着モードなら君も死なないで済むだろ。」

 

 「すごい皮肉ですねー でもそうまで言われちゃあ、ボクもやったろうじゃんって気になって来ましたー いいですよー デュエル、やりましょう。」

 

 (やれやれ、オレンジにならなくて済んだか。)

 

 

 60秒のカウントダウンが始まる。キリトが相手の時とは違い、最初から片手斧を右手に持っている。盾は持っていない。僕が武器を持っていないのに盾を持つのは却って危険だ。距離は約10メートルだ。僕の方からは距離を詰めない。

 

 残り35秒 まだ動かない。キリトの時は残り数秒でソードスキル発動だったそうだが、僕にそんなことをすれば・・・

 

 「武器使ってくださいよー あの輪っか以外ならいいですよー 」

 

 残り25秒 

 

 「すごい迫力ですねー 何かゾクゾクしてきましたー 殺気だけでボク死んじゃいそう。」

 

 (まだ軽口が叩けるか。安心しろ。楽に逝かせてやる。リザインされたらここまで挑発したのが台無しだ。)

 

 残り5秒 (さあ、やってこい!)

 

 リアルでの八極拳はほぼ一撃必殺だ。近接戦闘向きなのだが、この世界ではリアルの肉体ではない。威力も半減だ。一撃でHPを0にはできない。奥義のあの技なら一撃で屠れるかもしれないが、なにせ実験できない。失敗は許されない。倒すには連続で技を繰り出す必要がある。

 

 モルテはソードスキルを発動させないで、打ち込んできた。

  

 1回、2回、3回、 躱すだけなら楽だ。モルテは打ち込んだ後、体勢が崩れないように注意している。ソードスキルを使ってこないのも、外した場合の硬直が命取りだからだろう。なるほど、よくわかっている。だが・・・

 

 「さすがー ってトコですねー 」

 

 3回ほど打ち込みを受けて解った。(遅いな。大したことはない。)しかし、それでは困るのだ。自信満々で打ち込んできてくれないと反動が利用できない。

 

 「何かぁ、いろいろ言ってくれちゃった割にはぁー 避けてるたけじゃないですかぁー そんなんじゃあ ボクを殺せませんよー」

 

 「君の方こそ本気できたまえ。これならどうだ。」僕は構えを解いて、モルテの方へスタスタと歩いていって距離を詰める。5メートルまでに詰まった。距離を詰められて怖いのはモルテの方だろう。普段盾を持っているだけに僕やキリト君のように攻撃そのものを回避することに慣れていない。

 

 「お言葉に甘えてー スペシャルゥ 行きますよー 」これまでより、若干振りかぶり気味に打ち込んできた。動作が大きいほど実は避けるのは楽だ。

 

 ヤァァァー!

 

 打ち込みに対し、僕は声は出さない。わざとギリギリで躱す。その方が、相手の腕が伸びきるからだ。少し掠ってしまった。躱すのは、力量差があるからこそ、できることで、少々の力量差であれば、相手の攻撃を躱しきるなんて絶対に無理だ。相手は板ではない。こいつ、思ったより、強い。

 僕はモルテの伸びた右腕の内側に左腕を添え、そのまま踏み込んで、添えた左腕を曲げて顔を守りつつ、右腕でモルテの腹部を突く。システム外スキルだ。八極拳奥義「向捶」(こうすい)。HPがどれだけ削れたかなんて見ない。殺し合いではては抜けない。この技では絶対に50%は削れない、それだけで十分だ。

 

 「グェッツ 参り・・・」言わせるか!

 

 デュエルのルールではウンドウを呼び出して、リザインのボタンを押さない限り、「リザイン」にはならない。

 モルテの体勢が大きく体勢が崩れた。今度は一発で削り切らなくてはデュエルに勝っただけになってしまう。スキルの中では威力の高い「エンブレイザー」をモルテの心臓部に打ち込む。いわゆる「貫手」だ。アニメなんかだと、心臓を掴み出したりするのだが、あれは実際には無理だ。ここでは、心臓はないけど。

 

 「うっ・・・あんた、やっぱり、俺らの同類・・・かよ。」

 

 「僕は、君のような連中の『天敵』さ。」

 

 黄色がかった光を帯びた僕の右の掌が、そのままモルテの胸を貫き、破片となって粉々に消滅した。悲惨な最期だが、何も残らないのは僕にとっては都合が良い。しかし、それはやつらにとっても同じことだ。

 

 一人残った僕のHPゲージは緑色のままだった。

 

 第四層の主街区から、さらに先へ進むには、ゴンドラを使うしか方法がない。そのゴンドラを気難しいNPCに作ってもらう、というクエストを受けねばならない。しかも取ってくる材料によってゴンドラの強度に差ができ、武器の有無もあると言う。武器があるってことは当然、これに乗るとMobと戦わなくてはならない。ゲーマーであるエギルやクラインは、おおいに興味を示したが、非ゲーマーかつ面倒なこと大嫌いの僕は聞いただけで、うんざりしてしまった。

 クラインに「またウチだけで突破したい?」とやる気のない顔で聞いたら、「この層はいいっすよ。」と気を遣ってくれた。そこで、僕はシャル、アルゴと一緒に最後にボス戦に参加(アルゴは観戦)することにして、みんなでレベル上げをしつつ、3人で狩りをして、キリト君たちの帰りを待っていた。

 もう一つ気になるのは、愛弟子シャルの様子がどうもおかしいことだ。妙に、単独行動を希望するし、しかし、その結果、僕とアルゴが二人になる場合は、今度は僕の傍にいたがる。アルゴに嫉妬しているとしか思えない。シャルはブロンドの美少年だが、寝顔なんかは完全に少女に見える。ここまで、ちょっと構いすぎたのか。もう、これ以上ないくらい可愛い存在なのだが、こういう反応をされると、どうしていいのか、困る。この子が可愛くて仕方ないのは間違いないのだが、まさか、男の子を愛してる?真剣に考えると混乱してくる。

 

 迷宮区のマッピングは適当に参加して、トップは取らないように、とおよそ気合の入らない指示を出しておいたのだが、そのせいで、ALSとDKBが張り切ってしまい、やけに簡単に突破できてしまった。ボス部屋一番乗りはALSだった。

 やれやれ、今度はキバオウ先生かい。初めてのリーダーということで張り切っており、キリアスコンビが攻略情報を得るかもしれないから待て、という説得はとても聞いてくれそうになかった。

 第三層でモルテの流したガセ情報を信じて、振り回されたALSとDTBはすっかり懲りていたからである。しかし今回は前回とは事情が違う。クエストの内容自体が大きく異なる。

 だが、もし彼らを説得するとすれば、モルテのことを説明しなければならない。しかし、ご案内の通りそれはできない。僕はモルテを早々に始末したのだから。むしろ完全に忘れてもらいたいのだ。

 見切り発車は多少不安だったが、攻略会議で意見を求められた僕は、「とりあえず、全員、浮き輪は携行すべきだね。」と一見緊張感に欠けた意見を述べた。死の危険はこれまでより少ない。ソードスキルもデバフも毒もないので、危険があるとすれば「水攻め」ぐらいだ。二大ギルドは、この進言を重視してくれた。DKBの中に浮き輪をしこたま隠し持っていた不心得者がいて、それをDKBに必要数を無償で提供することで全員の浮き輪携行、は実現した。

 いい加減な思いつきだったが、これをやっておかなかったら、水死者が続出していたかもしれないというのだから恐ろしい。

 ベータ版では第四層のボスはどってことない「残念なボス」だった。しかし、正式版のこの層はそもそも門を出たところであの変わりようである。ボスにも変化はあるはずだ。だが、アルゴも他にヒントになるようなクエストは噂すらない、と言う。

 果たせるかな第四層フロアボス「ウィスケー・ザ・ヒッポカンプ」は掟破り、いや、ベータ版破りの特殊攻撃を仕掛けてきた。

 「水没攻撃」である。大広間全体を水没させる。ここまでは読めなかった。しかもその能力を使うと扉が閉まって内側からはどうやっても開けられない。僕は無駄な努力が大嫌いだ。誰よりも先に、扉を内側から開けることを放棄した。

 「外から開けるしかないんじゃない?」開ける方法は不明だったが、この発想自体はビンゴ!そこにキリアスコンビがとんでもない助っ人を連れて戦場に到着した。その異形のモノは一言で言えば「魔法が使えるNPC」であった。おい、茅場!何だよそれ?

 扉を開ける方法も分った。一定以上水圧がかかるのを待つ、というのがミソであった。そこまで待てば、ちょっと引っ張ればすぐ開く。うん、今回はもうこの役でいいや。僕はアルゴと一緒に外で待っていて扉を開ける係という楽な持ち場に逃げた。

 

 溺れそうになりながらも我がインビクタスの面々は必死に攻撃を続けた。また、ALSの連中も頭と腕はともかく、根性だけは見所がある。へこたれずに敵に向かっていったのを見て、ちょっと見直した。

 戦局を決定付けたのはあまりにもチートなNPC戦士だった。ヨフィリス子爵と名乗るその助っ人は、部屋か水没しても平然と水の上を走って、ボスを攻撃し続けていたのだから何をか言わんやである。一言で言えば「根性の勝利」。ボスは壊滅した。

 クエストで情報は確かに教えてもらえたが、事前に聞いていたとしてもあまりいい手はなかった。チートな助っ人を連れて来てくれ。かなり助かったが。

 

 

 「何でカイトは、ボス戦になるといつも楽なところに居るんだよ!」

 

 「今回は僕がいてもいなくても同じことだったよ。いわば根性の戦いだった。僕はああいうのは苦手だ。」

 

 「変なとこで威張るなよな!」

 

 キリト君からはさんざん怒られた。またもLAボーナスを取ったのに機嫌が悪い。足場が悪くて「体術」が使えなかったのだ。短剣やチャクラムでちまちま削るなんて、およそやる気が起きなかった。

 

 「終わったよ。」

 

 その一言と僕のカーソルが緑のままという事実を確認して、彼は何があったかをすべて理解した。

 

 全員に浮き輪を持たせたことと、開かずの扉を開けたことの2つが高評価されて、僕はリンド、キバオウらからは全く責められることはなく、逆に大いに感謝された。

 

 キリトとアスナが得たクエストの報酬はかなり大きなものだった。ベータ版ではありえなかった報酬である。二人とも武器・装備をかなり強化できるようだ。しかし、この段階でそれほどの武器を手にすることができるということは、やはりこの先もベータ版よりも強化された敵が続くということでもある。喜んでばかりはいられなかった。

                                       続く

                                                 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 モルテを殺してしまったのは少々やりすぎかもしれません。この層では転移結晶がありませんから、黒鉄宮に連行するのは、いかにも面倒です。根は素直なキリトといえども、ここで「モルテは殺すべき」ということを理解するのは難しいのかも知れません。
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