あれから俺たちはひたすら牛型っていうの面倒くさいから牛でいいか。
牛を倒しまくった。討伐数をみると80を超えていてレベルも3に上がっていた。コルもそこそこ溜まっていて
アイテムストレージが上限を超えそうだった。少し街に戻ろうと思い声をかける。
「ストレージもそろそろ限界だから一旦街へ戻らないか?」
キリトはそれに頷くがクラインは申し訳なさそうな顔をして、
「いや、俺は腹も減ったしそろそろ落ちるわ」
「そうか、まぁここでも食事は空腹を紛らすだけだからな」
キリトが言うとクラインはウインドウを開きログアウトボタンを押そうとするが、少し慌てた様子で指を動かしていた。
「ログアウトボタンがねぇ」
その言葉を聞いた俺たちは同じようにウインドウ開き確かめるが、クラインが言ったようにどこにもない。
次の瞬間目の前に強制転移の文字が現れ俺たちは光に包まれ、街に戻された。
街に戻るとそこには無数の人。多分SAO内の全てのアバターが集まっているだろう。俺はなぜか落ち着いていた。それはキリトも同じなようで目を合わせると互いに頷く。
「一体何がどうなってるの!?」
モブキャラが騒ぎ始め、それが広がるように街は喧騒に包まれた。うわうるせぇ。逃げたい。超逃げたい。
すると空を防御障壁が覆い繋がれた壁の間から血のようなドロドロとした液体が流れて、巨大な赤いマントを作り出した。
「私の名前は茅場晶彦」
マントから発せられる声はTVで聞いた声と同じで本人であることが分かる。その声に反応するように周りは静けさを取り戻し一斉に視線が茅場晶彦に向いた。
うん、俺だったら無理。この視線は耐えらんない。
「プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅しているのに気づいていると思う。しかしゲームの不具合では無い。繰り返す。 これは不具合ではなくSAO本来の仕様である。諸君はこの後アインクラッドをクリアしてもらうために勤しんでもらいたい。また外部からナーブギア停止を試みた場合、ナーブギアが諸君らの脳を破壊する、またHPが0になった場合も脳を破壊する。回復手段は無い。」
待って。それって帰れないじゃん、小町に会えない、と、ととと戸塚にも会えないだと……
もうマヂ無理、死の。あ、死んじゃダメだわ。
「最後に私から君たちにプレゼントだ、確認してくれ。それではSAOの公式チュートリアルを終了する」
すると茅場晶彦は消えていった。
周りは騒然としていて、泣き始める奴もいる。本当かどうか俺らでは確かめようがない。これからどうなるんだろうな。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
先ほど茅場晶彦が言っていたプレゼントを確認してみると手鏡が入っていた。それを具現化させて出してみる。一見どこの家にでもある鏡だが何かに使えるのか。模索していると1人の叫び声に続き何人もの人が光に包まれていき、そばにいるクラインやキリト、そして俺も光に包まれた。
「お前、ハチか?」
声がする方を見ると背は低いもののそれをカバーする可愛らしい顔立ち。なんだイケメンか。まぁだいたい察しは付く。ナーヴギアを被った時の動作で身長や体重までも計測し、顔は覆われているため現実世界の身体が仮想世界で形成されたのだろう。
「キリトか? イケメンかよ爆発しろよ」
「お前らハチとキリトか、アバターと随分印象が違うな」
クラインはアバターとそんなに変わらず社畜ロードを走ってそうな感じの顔。サラサラの赤髪にバンダナが印象的だったが今じゃツンツンになっていた。まぁ明らかに俺らより年上ですよね、これって敬語使ったほうがいい感じ?
俺は先のことを提案してみる。
「これからどうする、外からの助けはまずないとして帰る方法はさっき言った通りクリアするしかないよな。俺はこれから次の街に行くがお前ら2人は来るか?」
今の装備やアイテムのままじゃクリアするなんてまず無理だ。そのためにはいち早く次の街へ行き情報や資源を集めそれを公開しなければならない。βテストでも俺とキリトは1層の半分も行けなかった。それを踏まえて考えてもやはりテスターの俺が頑張らないといけなかった。
あいにくβテストの時に腕のいい情報屋とも知り合えた事だしな。
「あぁ、俺は行くがクラインはどうする?」
キリトは俺の意見に賛成のようだ。てかこいつは付いて来てもらわないと困る。一人じゃ死んじゃうよ。まぁ戦闘はこいつに任せるのが目的なんだけどね。こいつ上手いし。
「誘いは有り難いけど俺はダチと一緒に来てんだ、そいつらを見捨てられない。だからお前達だけで行ってくれ」
渋い顔をするキリト。まぁ当然だよな。製品版で初めて仲良くなったかもしれない相手だ付いて来て欲しい気持ちも分からんでもない。ただ人数が多ければ多いほど死んだ時の悲しみが大きくなる。つまりソロでやってたほうが悲しみを背負わなくて良い。ただその分ソロは回復やその他諸々全部一人なため限界がある。
どちらにせよ厳しい事には変わりない。
「わかった、じゃあ俺たちは先に行く、またいつか会えたらその時はよろしくな」
「おう、当たり前だ」
こうして俺たちは別れ、次の街に向かった。
そして数日が経ったが結局ソロでやる事になり、会った時はパーティを組む形に落ち着いた。