すくーるらんぶる!   作:カーディナル

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やっと完治!諸事情によりここ一か月入院していたせいで、執筆は疎かログインすらできなかった……けどそれも昨日までっ!今日からがっつりとそしてバッチリと更新再開していきますよー!
続きを期待していた読者の皆様、これまで申し訳ありませんでした……報告をしようにもログインできなかったのでどうしようもなくて……
一か月も間が空いていたというのに感想書いていただいた方、読んでくれてくれた方々、どうもありがとうございますっ。



【野犬を】好きな味はフルーツ味【侮ってはいけない】

2‐Cがプール掃除を引き受けてから翌日。快晴が続く中、どんなにめんどくさくてもほとんどの生徒は休まず登校し、勉学や部活に精を出していた。

その日の放課後、中庭ではいろんな生徒で溢れかえってる中――――

 

「おいでー。私もこの国に着いたばかりで知り合いもほとんどいない。ほら、あなたと同じでしょ?」

 

1人の西洋人らしき少女がいた。たくさんの日本人がいる中で、一際異質さが出ている金髪の髪を後ろで縛った少女が黒猫を呼び寄せようとしていた。

この少女の名前はサラ・アディエマス。1-D所属。列記としたイギリス人であり、留学生。教会のシスターでもあるが、彼女の性格は活発でお転婆と言った方が良いだろう。西洋人でありながらも日本語を流暢に使えることができ、母国の英語もペラペラである。

 

――――黒猫=伊織。学校に遊びに来ていた。

 

「なんちゃって。あーあ、全然懐かないなぁ…」

 

目線を合わせるため、屈んで伊織をおいでおいでと手招きするが、元々野良猫である伊織は警戒心が飼い猫よりも高いため、サラに背中を向けて走っていった。

伊織が向かって行ったところはベンチだった。なぜ伊織が一直線にそこへ走って行ったのかというと

 

「あれ見て、1-Dの塚本さんでしょ?」

 

「カワイー!猫なんか抱いちゃって」

 

そのベンチに飼い主の八雲が座って眠っていたからだ。すぅすぅ……と煩くなんてない規則正しい寝息を立てて。

他の女生徒からはその絵になる光景に自分らじゃただの居眠りになるだとか春の女神《プリマヴェーラ》のお昼寝だとか……近寄りづらいようであり、誰も起こそうとはしなかった。

 

「(う~ん?あの子たしか私とおんなじクラスだったよね。起こしてあげたほうがいいかな………って、いっけない!今日スーパータイムセールスで安売りしてるんだった!)」

 

サラは起こそうと考えたのだが、その前に急ぎの用があることを思い出してタタッと駆け足で中庭を去った。

 

 

 

 

 

 

カリカリッ

 

「ん…………あ!」

 

日は沈み始め……夕方。

途中で伊織も寝ていたが、いくら経っても主人が起きなかったので。爪を出さずに八雲の膝を掻いて、起こすことができた。

起きた八雲はなぜベンチに座っていたのかボーっと寝起きの状態の頭で考える。しばらくすると、自分がベンチに座って、風に揺られてざわめく木々を見上げていると自分のどこでも寝てしまう癖が出て……ついウトウトしていたら……といつものパターンで夕方まで寝てしまっていた八雲だった。

 

 

――――八雲、これが初めてではない。

 

 

 

「寝過ごしすぎ!いくらなんでも!!ほんっっとに八雲は良く寝るわねー」

 

「ごめん……スーパーの特売に間に合わな……あれ?」

 

誰もいなくなった中庭から、八雲は急いで特売日であるスーパーに向かったが着いた頃には既に閉店のプレートが入口の扉に掲げてあった。

ちなみに、サラもここの特売で数日の食材を買いに来ていたのだ。きちんと店が開店してる時間に来ていたサラはホクホク顔で店を出て行ったという。

塚本家に帰った八雲は、居間で待機していた天満に特売に間に合わなかったことに頭を下げて謝った。

 

「ふっふっふ、ちゃんと私が買っておいたわよ!八雲のことはお見通しなんだからー」

 

「………ありがとう…」

 

えっへんとお姉ちゃんらしく振る舞う天満。

この姉妹、下手をすれば亀裂を生みかねない正反対な姉妹なのだが、度を越えてると言って良い程二人の関係は仲睦まじく良好である。

 

 

――――何年か前は妹が勝気で姉は…………まぁ、不仲であった。

 

 

「…それにしてもそのどこでも寝ちゃう癖なんとかならないの?夕食のおかずよりずっと問題だと思うんだけど…」

 

少し遅めの夕食の中、天満は八雲の癖について心配げにどうにかならないかと聞く。

才色兼備と言ってもいい八雲だが、この居眠り癖については天満の超鈍感と同レベルクラスと言ってもいい。

友達に起こしてもらえばと天満にしては中々に良い案を八雲に出してみたら、伊織に起こしてもらったよと友達いない発言をして返した。

どうやら、同性異性関係なく八雲と同じクラスの連中は八雲を高嶺の花、雲の上の存在、声をかけにくいようだった。本人がフランクで自分から話しかけれる積極性があればいいのだが……八雲に今すぐそれを求めるのは酷である。

 

 

――――食材を買ってきたのは天満《姉》作るのは八雲《妹》

 

 

 

 

 

そしてその翌日の放課後、1-Dでは……今日の八雲は一段と男子の心の声と欲望が強く視えていた。

 

「な?行くっしょ塚本もカラオケに?」

 

「女子が誘えってうるさいんだよなー」

 

『(塚本っていまだにフリーだもんな。俺にもチャンスあるんじゃねーのか』

 

『(へっへっへ、なーんてな。女子なんて一人もいねーよ。男の中に女子一人……うひひ』

 

とまぁ、このように一見そんな下心はなさそうにも見えるが八雲にはその下心はお見通しであった。

特に後者の男子は脳内で八雲と卑猥なことをしてることを思い浮かべていた。強く視えてる日は心の声だけじゃなく、その相手の八雲を使って妄想してる光景まで見えてしまうのだ。

 

「………あ、あの…私。中庭《ラウンジ》で……友達と待ち合わせしてるから………」

 

そんなことを見たくて見せられてるわけじゃない八雲にはたまったもんじゃなかった。やんわりと男子たちの誘いを断り、待ち合わせ以前に今の八雲には友達すらいないのだが嘘を付いてまで、一刻も早く教室から立ち去りたかったのだ。

 

「……」

 

同クラスのサラは男子から誘われてるとこから一部始終見ていた。

 

 

 

「…………また視え始めた…だんだん強くなってる……」

 

中庭ことテラスの二人席分のテーブルに独りで座る。

他のテーブルでは男同士でくだらないことを楽しく話していたり、異性の友達と会話しながらお茶していたり等……八雲のとこだけが一つ空席であった。それが一層八雲の孤独感が強くなっていく。

 

「我慢…しなきゃ……」

 

このまま……独りで……

とうとう八雲はテーブルに突っ伏してしまい、その孤独感を無理やり内に押し込めようとする。

これが八雲の欠点ともいえるいけないところだろう。姉の天満とは違い、思ったことをはっきりと言えない性格である八雲は悩みも嫌な事もなんでも独りでため込んでしまう。

このままこんなことが続いていたら、いつか八雲は壊れてしまう可能性がある。

この先ずっと姉以外の人とは関わらずに……と決意しようとした八雲だが―――――

 

「オイ、見ろよあれ。あの猫大丈夫かな」

 

「うわマジだこわっ!」

 

一つのテーブルのとこで男子たちがテラスから離れた場所を見て、そんなことを話しているのが聞こえた。

 

「あの黒猫あれだろ?最近見かける。女子が名前つけてるのさ、勝手にだけど」

 

黒猫…とその単語を聞いた八雲は嫌な予感がして、席から立ち上がる。

 

「おいおい大丈夫なのかあれ?」

 

「相手の野犬マジでキレてねーか」

 

自分より何倍も体格差がある大型の野犬に対し、黒猫は相手に負けじと威嚇をしていた。

テラス内はざわめき始め、女子たちは席から離れ、男子たちは野次馬根性丸出しで観戦していた。

誰も猫と野犬の間に入って止めようとする生徒はいなかった――――

 

 

――――言わなくてもわかるだろうが、黒猫=伊織である。

 

 

「伊織!!」

 

と、誰もが傍観しようと決めてたが八雲だけが伊織のとこまで走って、伊織を抱え上げる。

野犬の方は八雲が現れても気性が荒いままで、低く唸り声を上げている。

たかだか犬じゃねーかと思う人もいるだろうが、甘く見ない方が良い。相手は大型犬であり思いっきり突進されたらかなりの激痛が襲ってくるだろう。噛まれたりして、狂犬病にでも感染する恐れだってある。それが八雲みたいな華奢な女性ならなおさらだ。

 

「ダメ……私、犬は……誰か……!」

 

咄嗟に飛び出して伊織を抱えれたのは良いものの、八雲は犬が大の苦手であった。

野犬に襲われるかもしれないという恐怖が八雲を支配する。誰か助けを求めてその場にいるやつらに振り向くが……

 

『(おお~さすが塚本さん。カッコいいぜ!)』

 

『(きっと犬なんか、軽く追い払えるんだろうな!)』

 

『(なんでもできちゃうんだろうな~。惚れた!)』

 

『(がんばれよ~)』

 

男子たちの心が視えてしまう八雲は彼らを見ただけで頼ることはできないとわかってしまった。

女子に助けを求めるわけにもいかず、男子たちならばと思った八雲だが……学校にいるときのイメージしか見ていない彼らは八雲一人で野犬をどうにかできるとしか考えていなかった。

 

「グルアアアアアッ!」

 

「……っ」

 

遠吠えを上げただけだが、犬が苦手である八雲を震えさせるには十分であった。

 

「わんっ!」

 

犬の鳴き声を真似たような吠え声に八雲はビクッとし、伊織を抱える腕の力を強め縮こまる。

……違和感を感じた八雲は顔を上げてみると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ…わん?あの女の子が言ったのか?」

 

上着のベストを腕に巻きつけて野犬と対峙してる西洋人の――――もう遠まわしに言わないでもいいか、サラだった。

どうやらサラは他の遠巻きに見てる男子とは違い、勇気を出して飛び出た。クラスでは常に一人でいる八雲が気になって、良く見ていたサラは八雲が犬に怯えてることに気が付いたのだ。

野犬だからといってもっともらしいことを言い訳に傍観している男子たちとは大違いである。

サラの登場に周囲はおろか、野犬すら突然の乱入者に対し目が点になっていた。が、今度の敵はこの女だと理解した野犬はすぐさま唸りを上げて全身の毛が逆立つ。

 

「ガルルルルルッッ!!」

 

「む!」

 

まだご立腹である野良犬を見てサラはすぅっと息を吸い込む。その前に胸元で片手をグッと握りしめていた。強気に出ているサラだが、内心は少し怖がっているのかもしれない。

だがそれでも、また勇気を振り絞って

 

「グワウウウ!!」

 

野犬に負けじと吠えた!

……これが大型犬でなく小型、もしくは中型なら文字通り尻尾捲いて逃げ出していたのだろうが

 

「グル……グルルルルルッ」

 

野犬はサラが好戦的だと受け取ってしまい、口から涎が漏れ出すのも気にせず。ジリ、ジリと二人ににじり寄って行く。予想とは違った野犬の反応にサラは戸惑い、こちらに野犬が近付くにつれ一歩、また一歩と下がっていくが

 

「あうっ」

 

……八雲がいるところまで下がっていくと、足が絡まったのか横に倒れてしまった。

 

「たはは…こりゃちょーとやばいかなぁ。ごめんね、どうやら私の一喝じゃ効き目がなかったみたい」

 

「あ……」

 

そんなサラの謝罪に八雲は気づく。

おどけているように言ってみせるサラだが体が小刻みに震えてることに。自分に不安を与えないようにしてまでこの人は泣き言は口に出さないのだと。

 

「そんなこと……ないです」

 

「え?」

 

「私とこの子を助けようと…飛び出してくれて。それだけでもとても嬉しかったです」

 

だから、八雲も今の自分の気持ちを月並みではあったが精一杯の感謝の言葉を述べる。

こんな少女が二人地面に倒れこんでいて、野犬はもうすぐ近くまで迫ってきているというのに周りの男子たちは野犬にビビって誰一人助けようとしない。

 

「グアアアアアッ!!」

 

「「ッ!!」」

 

サラが八雲の方に顔を向けているのが好機とみたのか、野犬は大きく口を開け二人に飛びかかった。

二人は来るであろう衝撃に備えてお互い相手に抱き合ってギュッと身をすくめて目を瞑る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?」

 

「あれ?」

 

いつまでたっても痛みは襲って来ず、二人はどうなったのかと気になり目を開けて顔を見合わせる。

横には人影と思われる影が差していて、八雲とサラはゆっくりと振り向いて顔を上げいてき――――そこにいたのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほんの少し時間を遡り……場所は同じくして中庭。

 

「拳児のやつ途中で早退してたな。昼休みまではそこそこ機嫌がよかったのに」

 

学生の身分だというのにサングラスをかけており、昼食のときに食べ損なったカロリーメイロをポリポリと食べかすを溢しながら今日の学校で起きた出来事を思い返してく。

 

 

カロリーメイロ。現代社会において食事に時間を割くことができなかったりする忙しい人向けのスティック型バランス栄養食である。影人のような時間が有り余ってる人でも好まれる食品であり、味の種類も豊富なため学生の中でも購入してる人は多い。

影人が好きな味はフルーツ味。男子の割には甘いものがそこまで嫌いじゃないご様子。

だが、それだけでは育ち盛りの年頃である影人の腹が満たされるわけはなく今日のランチタイムはカロリーメイロの他に、登校途中に寄ったコンビニで買ったおにぎりや総菜パンやらあったのだが、中庭の水飲み場で播磨と烏丸という珍しいコンビが金欠のため昼飯がなく、たらふく水を飲んで空腹を紛らわそうとしていた。

いつもは屋上で食事を取る影人だったが、屋上で空を眺めるよりも気分的に中庭でボケーっとベンチにでも座ってぼんやりとしながら食べることに決めた。なので意図せずに二人の学生だとは思えない食事に影人は自分の分の飯をいくつか渡して、3人で昼食の時間を過ごしたのだ。

 

「あの後なんかあったと見るべきか。烏丸はなぜか塚本(姉)と教室に戻ってきたし、拳児のやつは帰ってこなかったし」

 

影人の推測通り、二人よりも早く食べ終わった影人は一足先に教室に戻ったのだが……烏丸と一緒に取り残された播磨は影人がここに来るまでに飲んだ大量の水のせいで、烏丸に一言言ってトイレに行った。

用を済ました播磨はそのまま教室に戻る際、烏丸はどうしたかと気になり中庭に戻った。……が、これが行けなかった。

密かに……と本人はそう思ってるだけなのだが、烏丸に対する好意を顕わにしている天満は烏丸が昼食をまともに取ってないことを知り、カレーを作ってきたのだ(弁当なのにだ。しかもルーの入ってる方は八雲の方に行き渡っている)

 

 

――――八雲の今日の昼飯のメニューはカレールー×2。昼は抜きであった。

 

 

播磨がいない間に天満がいたことが災いした。

自分の想い人である天満が他の男に愛妻弁当を作ってきた!?

 

 

――――天満はコメを突っ込んだ弁当を持ってきただけである。しかも二つ。

 

天満は自分が好きであるはず!……と、入院する以前から確認できた(播磨が勝手にそう思っているだけである)事実とは裏腹に数分前まではカレーのことや影人との関係とかをネタに話しながら飯を食べた間柄である烏丸と天満が……天満ちゃんが一緒にいるだと!?しかも烏丸が握ったおにぎりを……天満ちゃんが……!?等と一歩捉え方を間違ったら播磨にそっちの気があるように思われてしまうが、まぁ、そんなこともなく……衝撃の光景を物陰から見ていた播磨は午後の授業に出る気も起きず絃子のマンションにと帰宅した。

以上が影人の知らぬ間に起きた出来事。が、当の本人はそんなことを知る由もなく

 

「んー、家に帰ったら拳児の携帯にかけて聞き出しゃいいか」

 

退院してからここ毎日はサボらず登校し、最後まで授業を受けていたのに急にどうしのやらとそこまで考えていたのだが、最後はま、いっかと思考を打ち止めた。いつものごとく行き当たりばったりなやつである。

 

 

 

 

 

「聞いたか?校内に野犬が――――」

 

「聞いた聞いた!今中庭で暴れてるんだって?」

 

「1-Dの塚本さんが黒猫を助けるために飛び出たって――――」

 

2袋目のカロリーメイロへと突入しようとしたが、下校途中らしき男女の生徒たちの会話が耳に入り、手が止まった。

 

「……野犬、中庭、1―D、塚本……」

 

このキーワードはどれも影人の脳内Googleに全てヒットし、会話していた生徒たちから視線を中庭の方に向ける。

 

「(えーっと、たしか…隣子が塚本には妹がいるとかいないとか言っていたような言っていなかったような……今日はバイトは夜からだし)……行ってみるか」

 

これがもし野犬と襲われている生徒が八雲ではなくただの一般生徒であれば、影人の興味を引かずそのまま帰宅していたであろうが……親友である播磨の想い人の妹ということで、人の名前の覚え忘れが激しい影人でもその情報が記憶に残っていたので覚えていたのだ。

 

 

――――自分が動物が苦手だということは忘れていた。

 

 

 

 

 

「グワウウウ!!」

 

「犬……じゃないな。犬の鳴き声を真似た女の子ってとこか。うおっ、野犬にしてはでかいサイズだな」

 

中庭……テラス付近に着いた影人は残りのカロリーメイロを食べながら、周りの野次馬同様のんきに眺めていた。

 

「(威嚇のつもりなのか知らんがあの外人さん、塚本(妹)を助けるために野犬との間に割り込んだのか。勇気あるな~。あんなでっけー犬を相手するのは俺にゃ無理だ。だって苦手なんだもん)」

 

動物が苦手である影人にとっては自分よりも一回り、二回り大きい大人を相手するよりも生れたての子羊を相手する方が抵抗がある……色々な意味で。

 

「グル……グルルルルルッ(なんや……あっしとやる気なら容赦せんぞっ)」

 

「…………」

 

頭に直接語りかけて来るような感覚に影人はどこか諦めたような顔で片手で覆う。

このTHE☆変人王は普通とはかけ離れた力を持っている。どこかおかしい思考回路が働くことがある分、なにかと器用でハイスペックな影人ではあるが、そういった普通の人でも埋めれるものではなく特別な、どう努力しても得ることができない力のことだ。

それが動物の言葉を理解できるといったものだ。某動物王国の人や動物好きの人が一度は思うことだろう。動物と話せるようになってみたい……と。影人はそのファンタジーめいた力を願わずに手に入れていたのである。苦手の対象である動物の言葉を理解できるようになっても影人にとっては嬉しくもなんともない。完全に宝の持ち腐れである。

 

「今日は力が強まる日か……これだけ距離離れても聞こえるくらいだからな」

 

影人の力は日によって強弱が決まる。力が強い日は50mちょっと離れていても声が脳内に響く。弱い時は近くに寄らなければ声が聞こえないし、どれだけ近くにいても人語に訳せず他の人と同様にしか聞こえない時もある。

自分の力について再確認していたら、気づかないうちにカロリーメイロを食べ終えていたようだ。内袋の中に手を入れたのはいいが、触れた感触はアルミホイルのツルツルだった。

 

「あの野犬、かなり興奮してるみたいだな……このままじゃあの女の子たちが危なくないか…?」

 

顔を上げ前方に目を向けると、サラがびっくりして倒れていたとこが目に入った。

動物の声が理解でき、観察力の高い影人はこの後に起こりうる出来事がやばいことに危機感を抱いていた。

 

「(ここは助けに入ったほうがいいんだろうが……)」

 

チラっと野犬の方を見ると、すでに八雲とサラの近くまで迫っていた

影人の顔はどうするか……と眉を潜めていた。他の男子が誰か行動に移さないかとこの場の男子たちを見てみるが、期待はできそうになかった。

 

 

「グアアアアアッ!!(往生せいやあああっ!!」

 

「「ッ!!」」

 

「ちっ……!(ええぇぃ!もうどうにでもなれや!)」

 

野犬が相手だということにどうしようかと彼らしくなく悩んでいたが、野犬の声が響くのを聞き、自分よりも年下っぽい女の子が身を小さくして抱き合ったとこが視界に入ったのと同時に、影人は舌打ちと同時にズボンのポケットに乱雑にコンビニのビニール袋を突っ込みつつ、これまで鍛えていた身体能力を全開にし、喧嘩屋の播磨や武道家である花井でさえ目で追うのが精一杯と思われる驚異的なスピードで飛び出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ユーザーから黒シスターとして定評のあるサラサラ登場!数少ない貴重な後輩キャラです。キャラ的に多分色々と書きやすそうなので、これから長い付き合いになるかもしれません。
今回も長くなりそうなので前半として投稿です。次回はその続きです。




原作では天満が烏丸に持ってきた弁当のお話は播磨と烏丸が話し合っていたのを天満が目撃し、その翌日にカレー弁当を作ってきた……という時系列でしたがこのSSでは同じ日に作って来ていたこととします。天満が烏丸が超がつくほどのカレー好きだと知ったのは晶姐さんからの情報である。そしてその情報源は影人からのリークである。
という、裏話でしたとさっ!
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