この年D糖尿病患者予備軍のカーディナルでござりんす。
だいぶ期間があいてしまいましたが、続きを投稿します。
続きを期待していた方はたいへん待たせてしまってすみませんでした。
6月3日修正しました
それでは本編!
べ、別にサブタイが特に思いつかなかったわけじゃないんだからねっ!そこのところ勘違いしないでよねっ!
前回のあらすじ。播磨ヒッキーになりかける。先輩登場。
お 米 食 べ ろ!!
以上。
影人の燃えるおうふくビンタと自分が振られたと早とちりしたことを指摘され、絃子の折檻も受けた播磨がまた登校するようになってから数週間が経過した―――――
すっかり書き忘れてたけど烏丸の旅立ちまであと290日!
「それでね!私は言ってあげたの、目玉焼きには醤油だって!――――聞いてるのぉきみぃ!」
「あー、そうですね。聞いてます聞いてます」
……このありえない光景に、原作本編の主人公になってしまうほど現実逃避をしてしまう。
もうそろそろ7月に入る時期、夜とはいえ蒸し暑さが続くが1人暮らしである影人のマンション……自室ではまだクーラーを付けず、一人でカフェオレを飲み…………
「男の人は肉じゃがを女性に作ってもらいたい料理だって聞いたから、肉じゃがを作ってみたのに彼はカレーの方が好きなんだって!」
「あー、そうですか。俺もカレー派です。その人とは気が合いそうだ」
「初めて彼からデートに誘われて、昨日の夜はドキドキしちゃってあまり眠れなかったのに
信じられる?!帰りに女の人が待っていててね、彼の彼女さんだって言ったんだよ!」
「そうですね。信じられませんねー、最低っすねー(……もう何週目に入るんだこの話)」
1人じゃなかった。影人よりも明らかに年上であり、酔っていなければその緩めにかかったウェーブの茶髪ロングみたく緩やかな雰囲気に魅了されそうな女性が。
生ビールを何個も飲んでいるようで、周囲には彼女が飲んだ空き缶がいくつも散らばっている。影人は未成年のため紙パックのカフェオレを一本ちまちま飲んでいる。ここは相手に合わせるにしても、せめてオレンジジュースとかがよかったのだろうが……影人の家には麦茶かカフェオレしかなかった(麦茶があるのにカフェオレを選択したのは影人だから)
――――生ビールが冷蔵庫にあったのは絃子と絃子の学生時代からの友人、笹倉葉子がたまに影人んとこまで押しかけて飲み会を始めるため、飲まなかった缶を置いていくからである。
「なんで卵焼きにソースなの………醤油じゃダメなのっ!?」
「(また同じ話だよ。てか、それって卵焼きじゃなくて目玉焼きじゃねーの?)」
トンっとたいして強くもなく床を叩き、グイッとビールを仰ぐお姉さん。ここ1時間ほど、彼女が愚痴りまくるのを影人は適当に相槌し、それっぽく話を聞くというそれの繰り返し。
胸の奥に溜まった嫌な思いや出来事をぶつけて、少しでもスッキリしたらどうかと提案したのは影人なのだが……いくらなんでも同じ話を何回も聞かされるのは堪えるようだ。
「(……なんでこうなったんだっけ)」
呂律が回らなくなってきているお姉さんの愚痴を聞きながら、彼女を連れてきた原因……ついさっき見た時よりも一向に勢いは変わっておらず大雨である窓の外を見つつ、数時間前の出来事を思い出そうとしていた。
――――ちなみに影人は目玉焼きにはなにもかけない。
あれは今から360000いや、14,000年前だったか――――どっちも違いますね、うん。今日も元気にスケボで拳児と登校して、だらだらと授業受けて、バイトがあるから茶道部に顔出さないで、晶と一緒にバイトをして……バイトが終わり夕方から振りはじめた大雨の中傘を差し帰り道の途中。
あの女の人がいたんだよなぁ。大雨の中、夜に、一人で、公園のブランコにのって……雨に打たれたまま。傘も差さずにキーコキーコとブランコをこいでる姿はなにかあったとしか思えなかったんだが、どうせ他人だし、バイトで疲れてたからとっとと帰って寝ようと公園をそのまま素通りした。
「そっかぁ………………………………………………………あはは、なにやってんだろ私」
「ホントなにやってるんですか。こんな雨ん中」
――――んだけど結局気になって戻ってきちゃいましたとさ。一本の傘を知らない女性に差し出すなんて……俺もなにやってんだろうなぁ。
夏間際とはいえ、こんな大雨の中傘を差さずにいたせいで体は寒さで震えてたし、服は透けて下着とか……と、とにかくだな!こんな状況下で女性を一人に置いていくこともできず!
「どんなに収入が少なくても、どんなに顔がよくなくても、どんなに頭がよくなくてもね……私を想う気持ちが誰よりも強くて愛してくれる……そんな人と温かい家庭を築けたら……って」
「(あ、やっと無限ループから逃れた)」
こういうわけですよ。
……ほんとなにやってんだろうね俺。雨が止むまで俺んちで雨宿りしませんかーとか……やってることナンパと変わんねーよなこれ。
まだ互いの名も名乗ってない関係なのに、このお姉さんにシャワーを貸してあげて……着替えの服とか持ってるわけもなかったので、絃子先生が置いてった(勝手に)シャツとショートパンツを着てもらった。
「情けないよね……こんないい年した女が君みたいな年下の子の家に転がり込んで、他の男の人の……期待してた人に振られた経緯を愚痴って……」
こういう時なんて言えばいいのやら……俺自身恋だとか誰か好きになったことないからなぁ。
けどこの人のこんな姿は似合わない。なんて、初対面だっつーのにそんなことを頭ん中を過ったし。
「……そんなことないと思いますよ」
「え…」
「年上だからって年下に縋ったりするのはいけないんですか?」
そんなことはないだろう。年上が年下に物事を教えてもらうのはプライドが邪魔して聞きにくい。
これと一緒だ。お姉さんは年下に頼るというのが恥ずかしいのだろう。
「でも、君と私は」
「他人ですね。しかもまだ名乗ってすらいない。けど俺は貴方が心配ですし、気になります。……こんな俺でも胸を貸すくらいはできますよ」
自分の胸をドンと叩きドヤ顔をする。すると、お姉さんは俯いていた顔をゆっくりと上げ、こっちにゆっくりと寄ってきて……頭をこてんと俺の胸に置いた。
顔を俺の胸板のとこに寄せているのでこっからじゃわからないが、ポタポタと滴……涙が俺のズボンに零れて
「ふぇ…」
それからポロポロと大粒の涙が零れ落ち――――
「うぁあぁぁぁぁぁ……」
俺の胸に顔を埋めて静かに泣き始めた……
「うぅん……」
「泣き疲れて寝ちゃったか」
泣きじゃくるお姉さんを宥め終え、俺の膝の上に顔を乗せどこかすっきりした顔ですやすやと寝息を立てている。身じろぎをするお姉さんの横顔を見ると、完全に寝てしまったようだ。
「よっ…こらっせ」
いつまでもこのままにしておくのはアレなので(結構な時間正座してたので、足が限界だし)お姉さんを起こさないようそっと頭を抱え、自分の膝からどかさせる。そんでもって、揺らさないように後頭部を抱え両足のひかがみのとこに片手を擦り込ませ、立ち上がる。
俗に言うお姫様抱っこだ。ずっと正座してたのに、いきなり立ち上がったからほんの少しぐらついてしまったが、お姉さんは起きなかった。
それにしても――――
「軽いな。寝てる人を持ち上げるんだから、腕に負荷が掛かると思ってたんだが」
今まで誰かを、それも異性をお姫様だっこした事なんてなかったが、年頃の女性ってみんなこんなんなのかね。
彼女を持ち上げてる腕から伝わる、男とは違う髪質。ゴツゴツとした筋肉なんてなく、白くしっとりとした肌。胸元の付近にある彼女の顔……初対面の男に寝顔を見つめる。
「ん…」
じっとお姉さんの顔を見ていたら、胸元の方に顔を向けてきた。
寝ているとはわかっていても、起きてしまったんじゃないかと心臓が跳ね上がる。随分長く泣いていたせいか、目元が赤く腫れている。
……至近距離で見るとこの人ほんと綺麗っつーか、少し童顔っぽさがあるけど、それもまた魅力に拍車がかかる。
そんな人と二人っきり……風呂上りのお姉さん、健全な男子高校生……これらが導き出す答えはただひとt――――
「(ぐおおおお!大仏様から借りた保健体育の参考書のタイトルが俺の脳内に浮かんでくるううううう!落ち着け俺!もしくはもう一人の俺!この人は俺を信じて、こんな無防備な姿を晒しているんだぞ!その信頼を裏切るようなことはしちゃいけない!こんな美味しいシチュエーションでも欲望のままに行動しちゃいかん!)」
――――影人、一人で悶々と悶える。
お姉さんをお姫様抱っこしてるからこんな不謹慎なことを考えちまうんだ。ならば、速やかにお姉さんを俺のベッドに寝かし、俺もソファーの上で羊の数でも数えながら寝ればええんよ!
そう、それがいい。てか、これしかない!この窮地に立たされた状況……一歩ミスれば人生が決まりかねない、社会的に抹殺される未来が作りだされるかもしれぬ。
そうだ、早く寝よう。京都行こう的なノリみたいだが、あながち間違ってはいない。なぜなら今から俺は夢の世界に行くからだ!
はい、お姉さんを俺のベッドの上にそっと置いて、布団をかけて寝かす。
「よし……それでは良い夢を」
パチっと部屋の明かりを消す。まだ顔の火照りが残ってるが、さっきと比べりゃ随分治まった。さっさとリビングに行って俺も寝るとしよう。
タオルケットとかは……別にいいか。雨は降っていたがそこまで涼しいというわけでもないし、そのままソファーの上で寝ても平気だろう。
「あのお姉さん、明日には持ち直してるといいな……」
今日は色々あって疲れたな。この先のことはまったく考えてないが、明日にはなんとかなるだろう。
根拠はまったくないが、そんな…気が…する。
羊を数えようと……思ったが…そんな必…要はなか……ったな。横になったら……急に眠…気……がきた……しな………
……
…………
……………………
チュンチュン
「……ん………あ、もう朝…………あれ、ここ私のベッドじゃ……部屋も。なんで私…………そうだ。昨日あのまま…………あの子はどこにいるんだろ……いたいた。…昨日はあんなに凛々しかったのに寝顔はこんなかわいいんだ。えいえいっ」
「……うへへ……C……」
「(C?なんのことだかよくわからないけど、昨日お世話になったんだしお礼はしないとね。喜んでくれるかしら)」
――――影人。今鳥と交流しているせいか段々侵食されつつある。
「……あーよくねた」
気持ちの良い朝や――――ぐっ……体の節々が痛い。ソファーで寝ちまったのがたたったか。
睡眠はそれなりにとれたが疲れはあんま取れてないって感じか。昨日はそんなに疲れていたわけでもないが。
「うん?昨日……」
あれ、そういや昨日はおねーさんが…………まだ寝てるのかね。
まだ意識が覚醒してないがおねーさんのことは気になるし、体の節々が悲鳴を上げてるのにも関わらず起きて自室に向かおうと――――
「くんくん……良いにおい。この涎が出てしまいそうな食欲と胃袋をくすぐる香りは……」
「お姉さん特性カレーだゾ」
いつもとは違う香りが部屋中に漂っていることに気づく。
ソファーに座ったまま台所に顔を向けると……そこにはお玉を片手に純白のエプロン姿に身を包んでいたおねーさんが立っていた。
……朝からなんという破壊力の高い恰好でいるんだ。朝っぱらだというのにむらむr――――なんでもない。
「えっと……おはようございます」
なんでおねーさんが俺んちのエプロンを着て朝食を作っているのかはわからんが、取りあえず挨拶をしておく。どんな状況下においてもまずは挨拶だよね。挨拶は大切よ?
「おっはよーシャードぉ。昨日はよく眠れた?……聞くまでもないみたいね」
なぜかお姉さんは顔を赤くして、俺の方ではなく俺の下半身のとこを見……………………そういうことか!
「どこ見て言ってるんですか!?……って、え?シャドー?」
お姉さんの視線から逃れるべくベッドから勢いよく起き上がる。熱っぽい視線を送ってたお姉さんだが、俺が一歩下がって疑問を浮かべるとお姉さんはなんのことかわかったようで、ポンと手を叩き。
「君のこと。ごめんね、勝手に見るつもりはなかったんだけど…」
今度は申し訳なさそうにし、エプロンの中からA4サイズくらいの原稿を俺に渡す。
……貴方どっからそれを取りだしたんです?
「机の上に置いてあったでしょ?つい気になって見ちゃったの」
「なるほど……だからシャドーって呼んだわけですね」
数枚の原稿をめくっていく。これは次回作としてジンガマに乗せる漫画の下書きなのだが、まさか見られるとはな。
俺が不用心に机の上にほっぽりだしていたのがいけないし、一番上に載っていた原稿は俺のペンネーム『シャドー』とこの作品のタイトル(仮)が書いてあったしな。
編集者からは他人には見せないようにと口煩く言われてたが……別にいいか。
「……もしかしてシャドー怒ってる?」
俺が原稿を見続けていたせいなのか、お姉さんは捨てられた子犬のような目で窺っていた。
「怒っていませんよ。ただ俺がこの漫画を書いてることは他言無用でお願いします」
ジンガマで書いているってことは言わなくてもいいだろう。今俺は新作を作るまではジンガマに関係ないわけで。ただ趣味で書いてる一般学生ってことに
「まっかせて。私こう見えても口は堅いほうだから!ねえ、これって『B&B』に続く次回作?私ね君の漫画は最初から見ていたの。その時からずっとファンで、こうやって本人と会えて今こうして話してるなんて……運命を感じるわー」
「…………」
なんで下書き見ただけでわかったんだ。
……あ、ペンネームが書いていたからか。
――――――B&B。影人の処女作にて前作の野球四コマ漫画である。野球の描写だけでなく、学園生活の風景を描いたりもしてるのでそこそこ人気はあった。
「それじゃ行きましょうか」
お姉さん……じゃない、姉ヶ崎 妙《あねがさき たえ》さん。妙さん(名前で呼んでシャ~ドウはぁと…と言われた)の作ったカレーに舌鼓を打ちつつ、お互いの自己紹介などをし俺は学校に。妙さんは自宅に帰るとのこと。
ローファーを履き、妙さんがヒールを履き終わるのを玄関前で待つ。
「んっしょっ、これでよし。お待たせっシャドー」
つま先をコツコツと地に叩き、きっちりとヒールを履く妙さん。
……ちゃんと本名名乗ったのに、妙さんはペンネームで呼ぶんだよな。変なあだ名でもないからいいんだが。
用意もできたようなので、扉を開け……
「ねえ……シャドー?」
「!?た、妙さん?」
ようとしたのだが、妙さんが急に俺の腕に抱きついてきた!?
腕に非常に幸せな感触がががががががが!俺のライフポイントが削られてえええええええ!
「どどど、どうしたんですか?」
平常心を保ちつつ、横で抱き着いてる妙さんの方に顔を向ける。
俯いているので、表情は窺えないがさっきの声の雰囲気からしてシリアスっぽい気がする。
うぅ……俺はこの妙さんの女性特有の感触やら香りやらで気が気でないのによ。
「昨日はホントにありがとね。シャドーがいなかったら私……」
「お礼なんていらないッスよ。俺はただ自分のしたいようにしただけッスから」
それに妙さんは気づいてないだろうが、俺はこの感触やら朝食やらでなにかと受け取っている。
そこまで気にすることなんてない。
「そっか……ね、シャドーさえよければまたここに来てもいいかな?」
「大歓迎ですよ。毎日……はさすがに無理ですけど、夜だとか休日とかに俺が家にいれば…ですけどね」
こちらを見上げてきた妙さんに微笑みかける。妙さんも俺につられたのか笑顔で返してくれる。
こんなきれいな人がまた来てくれるなんて、拒否するわけないだろうが。
「ありがと!……それじゃ、これは私からのほんの気持ち」
そう言っておねーさんは背伸びをして
チュッ
「…………ゑ」
俺の頬に口づけ…………俗にいうキスをしてきた。
「またねっシャドー。ちゃんと漫画も学業も頑張るんだゾー!」
扉を開け、ヒールの音とともに走り去っていく妙さん。
…………
「社交辞令……みたいなものだよな今の」
俺はキスされたとこを手で押さえ、その場で数分立ち尽くすのであった。
丸の旅立ちまであと289日!……って、書く必要ないかw
スクランの癒し天然キャラこと姉ヶ崎先生登場回。
原作では播磨が妙さんに飼わr――――救われましたが、このSSでは影人が妙さんを……ってことにしました。
この下から軽い原作のネタバレ含むので注意。
原作での妙さんですが、播磨を家に上がらせる時に妙さんは
「私もねフラれちゃったの」
と言っているのですが、これはウィキやスクラン専門サイトによると播磨を気づかった嘘ということらしいのですが、全巻を読んだ自分としてはそれらしき描写はなかったのでこのSSでは他の男に振られたという設定にしています。
真相は不明……ちょっと気になっちゃってますw