主人公をメイン原作キャラにかかわらせるまでは……!!
――――朝のHR
「じゃ席替えするぞー」
谷速人。英語教師で少し押しが弱い2-Cの担任の声が響き渡る。席替えと聞いて、前日から楽しみにしていた生徒たちの声で教室内が騒がしくなる。
そんな中、あの男は……
「……(なにがそんなに楽しんだか)」
心底どうでもよさげに肘を着きくじ引きを作っている女子生徒をボケーっと見ていた。
晶と播磨の二人と同じクラスになれたことは嬉しそうにしていたが、席替えについてはどこでもいいやーと拘りはないようだ。
「えいやっ!もらったーーーーーーー!!」
現在クジを引いてるのは塚本天満。播磨の初恋相手で……原作知っている人なら説明は無用だろう。
天満は烏丸と隣の席になろうと前日から色々としてきたみたいだが(原作1巻参照)……なにをどうすれば席替えの席を決めれるかとか野暮なツッコミはしないほうがいいだろう。
「暇だ…」
制服のポケットからCDプレイヤーを器用に弄って、いつもの黒カラーのイヤホンを付けて音楽を聴き始める。さっさと自分の番がこないかと肘付いてつまらなそうに待っていると。
「ん………メール?」
チラっと横に置いてある鞄を見ると、中に入れてある携帯が点滅していた。迷惑メールかもしれないが、どうせ暇だし出会い系とかだったら拳児のアドで登録してやるか……などとやってはいけないことを考えていたが、メールの主を見た途端にそんなことは既に頭の中から抹消されていた。
「晶から?」
送り主である晶はもう席のクジを引いたのか、廊下側の席に座っており。自分の前の席に座っている沢近愛理と話していた。影人は晶の方に視線をやるが、晶は沢近のマシンガントークに頷いたり返事をしたりとして一切携帯を弄る素振りはなかった。
どうやって晶が他の誰にも目の前の沢近にも気づかれずに、メールを打っていたかというと簡単である。背筋を伸ばしキチンとした姿勢で机の中に両手をいれ、その中でメールを打っていたのだ。画面をまったくみずに、メール作成画面までいき文章も誤字を出さずに打てたのは高野晶だからだ。
――――高スペックすぎる。
「いつ打ったんだあいつ」
相変わらず不思議な奴だ。と思う影人。
影人の今座ってる席は最後列の真ん中だ。肘を着き顔を手の甲に乗っけ、右手を机の陰に隠してメールを確認している。他の生徒は前に行ってクジを引いてるし、担任もその辺にいるのでバレることはないであろう。
そして気になる晶からのメールの本文は
『席隣になるといいね』
「……」
す……と顔を上げ晶のとこを見る。
たしかに晶の隣は空いている。だが、それは左右両方ともではなく片方だけの左側だけだ。可能性はまだあるが、影人がそこを引く確率は低いだろう。
そう考えた影人は視線を右手に戻し素早く打ち込んで返信する。
『いや、残り空いてる個所は左だけだし無理だろ』
なんとも現実しかみてない文なのだろう。もう少しこの男は女心を理解した方がいいと思う。
――――ちなみに他の晶の周囲はすべて埋まっている。
「あの…か、影浦君」
「……ん?」
前から声がしたので携帯の操作を一時やめ、顔を上げる影人。
そこには少し茶色のショートヘアの女の子が若干怯えながらクジ袋を持っていた。
「次、影浦君の番だから……」
「あー、そうなん。気づかなかったわ。わざわざ、ここまでありがとな」
俺のせいでクジが止まっていたので、他の生徒の視線が影人に集まっていた。
こっち見んな。と内心では威嚇していた。イヤホンを耳から外して、机の中に突っ込む。
「い、いいよ。お礼なんて!」
「俺が言いたくて言ったんだ。それとそうビクビクしないでいい。なにも取って食おうとするわけでもないしな」
「あ……う、うん……(影浦君ってみんなからは播磨君と同じ不良って思われてるけど……本当にそうなのかな?)」
――――影人は不良ではなく、変人が正解。
なんて、影人がクジ袋を漁ってる中意図せずに、彼女の評価が上がってるようだ。
「(えーっと……晶の隣の席の番号は30か。でもって残ってるのクジの数は14。……無理だろこれ)」
どの番号がどの席かと書かれてる黒板を見ながら、袋を漁って紙を手触りに確かめていく。
一枚触ってみては、これじゃなさそうだな。と勘で確かめていき、また一枚と繰り返す。
「すまん、もう少しだけ…待ってくれ」
「うん。がんばって」
「あぁ、頑張るぜ!(……これっぽいな)これにする」
なにを頑張れというのかわからんというのに、ノリのいい影人は袋の中を探ってない方の手で親指を彼女に向けて立てる。
一枚の紙を触ると、どうやら影人の第六巻がこれだ!と刺激してるみたいだったので、それを摘まんで取る。
影人が引いた番号は―――――
「隣の席になれたね」
「いやホント……俺の勘って冴え渡ってるとしか言えんわ」
「なにはともあれよろしく」
「……よろすく」
見事ピンポイントに30を引き当てた。影人はやたらと勘が良く、ここぞというときに電流が頭の中を駆け巡ることがあるらしい。晶曰く、影人の勘が働いてる時は9割の確率で勘のとおりになるだとか。
こうして、席替えは終了し影人は晶の隣に。天満は烏丸の前に。播磨は天満の隣の席となった。
「か、影浦君。隣の席になれたね」
「……うん?さっきのくじ引きの人か。そうみたいだな。がんばってお前の隣を引き当てたぜ」
「え…………さ、さすがだねっ」
「おう、さすがは俺!(それにしてもなんでこいつ俺の名前知ってんだろ……俺は知らんのに……隣の席の人でいいか)」
なんてやり取りがあっただとかなかっただとか。
晶はこのやり取り、彼女の赤く染まった頬と態度を見てブラックリストと表紙に書かれたメモ帳に彼女の名前を付けくわえていた。
影浦影人。言葉はちゃんと選んでから発言すべき。
――――彼女の名前は砺波順子。断じて隣の席の人ではない。
まさかの隣子ちゃんにフラグが立ち気味。
この小説では彼女のことを砺波順子とします。
彼女の名前についていくつか説はあるようですが、作者は多分砺波順子の説だと思うので。
けど影人からは隣の席の人と覚えられてしまった。やったね順ちゃん!