前回のあらすじ、播磨告白失敗。身体測定中止。名前が覚えられないでござる。
ある日の授業。本日は美術室で二人一組ペアとなって人物画のデッサンをし、授業終了までに提出。
「担当の笹倉先生は課題を生徒に言いつけてどっかにいきましたとさ。課題がでてなけりゃな~。今頃屋上で昼寝できたのに」
「先生がいないんだし、課題でもやらさせておかないと授業を脱出したりする生徒がいるから出したんだよきっと」
「だよなぁー。まー、監視の先生もいねーしこうやって描きながら音楽を聴けるが」
愛用のヘッドホンを装着して、目の前に座っている烏丸をスケッチしていく影人。
男女ペアの組み合わせが多いなか、男同士なのはこの二人だけ。別に余り物同士というわけじゃなく、影人は播磨と組もうと探していたが生憎播磨はサボり。
異性で少なからず影人に好意のある晶と隣子こと順子が誘おうとしたが……その前に烏丸自ら影人とペアを組まないかと提案してきたのだ。
珍しい組み合わせにも見えるだろうが、学校では今まであまり一緒に行動してなかっただけで、学外では飯を食いにいったり遊びに行ったりしている。
……だが、そんなことを知ってるのはこのクラスでは晶だけ。他のクラスメイトには二人がどう映っているのかというと
「…おい、あの二人ってなんか関連あるのか?」
「クラス内で二人が話していたとこ見たことないけど」
「けど烏丸から誘ったみたいだし、喋りながら描いてるよな」
「無口な烏丸君もだけど、みんなの名前を覚えてない影浦君が烏丸君の苗字は覚えてるよね…」
「きっとあの二人……できているのよ!!」
『な、なんだってー!!』
――――できていません。
話が二人の知らぬとこでややこしいとこに向かいつつあるが、当人たちに聞こえていたとしても訂正はしなさそうだ。
影人と烏丸の仲を気になったり、怪しんでるやつらは上から石山、城戸円、梅津茂雄、順子、嵯峨野である。
順子はいいとして、残りの4人は誰か?と気になる人もいるので簡単にここで紹介しよう。
石山。男子生徒金髪2号。所謂モブキャラ。多分サッカー部。どうせ知らなくてもいいキャラなので今鳥じゃない金髪で見分けれればいい程度。
城戸円。陸上部のエース。この頃はまだ複数の男とは付き合ってない。童顔っぽく、容姿は大人しめに見えるが、見えるだけである。合コンとか良く行く。
梅津茂雄。こちらも同じく陸上部。ただし足の速さはそれほど速くない。石田と違ってこちらはそこそこモテる爽やか系男子。一つ前に紹介されてる城戸に告白しようとしてるが……?
嵯峨野恵。とある推理漫画のヒロインと容姿が似てる気がしないでもあるが気のせいである。定食屋『割烹さがの』の看板娘。噂話大好き。影人の素顔がどうなってるかめちゃくちゃ気になってるらしい。順子とも仲がよく、どうやって影人の素顔を暴いてやろうかと話し合ってたりもする(ほとんどは嵯峨野が押しで順子をその気にさせてるが)
そんな影人と烏丸がおホモダチな関係じゃないかと、様々な憶測や推測が飛び交う中いつもの4人組み。天満、沢近、周防と晶は……
「うぅぅううううっか~ら~しゅ~ま~く~ん……」
「ほら塚本!いい加減泣き止めって!描きにくいだろうが!」
「…意外な組み合わせよねー。行動を起こした烏丸君もだけど、それに応じた影浦君も」
「そうでもないよ。二人は去年から交流があるみたい。学外では一緒にいるとこをたまに見かける」
烏丸と組もうと意気込んでいた天満だが、影人という伏兵がいたため周防と組むことになり、現在影人と烏丸のとこを恨めしそうに見ながら泣いている。天満が泣いて、こっちを見てくれず上手く書けずにいる周防美琴。同性同士で絵を描くことにブツブツと愚痴っていた沢近愛理だが、そのことよりも二人のほうに興味が湧いたようだ。影人と組みそこなった晶だが、特に気にしてもなく沢近の愚痴に対応しながら黙々と進めていた。
――――沢近と周防。7話目にして本編には初登場。
沢近愛理。金髪ツインテのおぜうさま。天満たち4人グループの一人。帰国子女のため間違った日本語を使ったりする。学年問わず、男子から告白されまくられるが未だに彼女のハートを射る者は出ず。トップクラスの美少女。プライドが高く、素直になれない女の子。高野晶とは付き合いが長いようだが、影人とどっちが長いかは不明。
周防美琴。通称ミコチンorD。男勝りな言動と男子顔負けの運動センスを持ち、男女問わずに人気がある。本人はあんま自覚してないのだが、沢近に負けないくらいモテる。サラサラの黒髪に年の割には不相応に成長している胸。女らしくすればモテるだとか周りに言われてるが、このままでも普通にモテる。子供のころから拳法をやっていて、実力は全国クラス。そんな彼女だが、2-Cに置いて貴重な常識人で恋愛には奥手の恋する乙女である。
花井《メガネ》とは幼馴染。
「そうなのか?あたしゃ見たことないけどなー」
「烏丸君の交友関係からすると、影浦君は一番の友達じゃないかな」
「そ、そうだったんだ!……メモメモ。……ねぇ、晶ちゃん。影浦君って烏丸君のこと詳しいのかな」
「少なくとも、私たちよりは詳しいと思うよ。影浦君は烏丸君のメアドと電話番号知ってるし」
うそっ!と左右に結った髪がピーンと跳ね上がる天満。自分でも知らない烏丸の個人情報を知ってる影人に先を越された!と焦ってた。
美琴も天満ほどの反応ではないが、へぇーと思わず口からもれていた。
沢近というと……
「ねぇ、前々から聞こうと思ったんだけどさ。晶って影浦君と知り合い?」
「あっ、それ私も気になってたんだ!影浦君って晶ちゃんのこと下なの名前で呼んでたよね!?」
「なにっ、マジかよ塚本!まさか、付き合ってるのか!?」
「……(今まで黙ってたけど、別に隠さなくてもいいか)」
晶以外の3人は課題なんか忘れ、晶に詰め寄る。他のクラスメイトは手を動かし、絵を描いてるふりをしつつ4人の会話に耳を傾けている。クラス全員(烏丸と影人は除く)が盗み聞きしてることに気づいてないわけがないが、晶は淡々と沢近を描いている。
――――二人っきりのときや周りに会話が聞こえない時なんかは影人のことを名字で呼ぶ晶。
「3人が期待するような関係じゃないよ。影人とはバイトで知り合った友達」
どうせ後々知られることになるんだし、それなら今ここで言っておいたほうが良いと判断した晶は素直に影人とのことを話した。
「キャーッ!影人だって!名前で呼んでますよ奥さん!」
「そうですな奥さん!晶…影人……お互い名前を呼び合う仲!」
「晶ちゃんにも春が来たんだねっ!」
「あ、晶にそんな男がいたなんて……知らなかった」
異様なテンションで囃し立てる天満と美琴。沢近はなんで教えてくれなかったんだと複雑な気持ちでいた。
「私たちのことをどう捉えるかは勝手だけど、事実は揺るがないからね。あと隠してたわけじゃないよ、今まで聞かれなかったから言う必要ないと思って。……フゥ、できた。この人って誰だっけ?」
「どう聞けばいいかわからないでしょう。……って誰よその人!私を描いてたんじゃないの!?どうすればそなるのよ!」
二人のからかいに晶は焦ったり、恥ずかしがったりせずいつもの無表情のままである。ずっと手を動かしてた晶は書き終わったみたいだが、なぜかその絵はどう見たって沢近には見えなく、性別すら違った外人を描いていた。
晶のからかいのなさに二人はつまらなそうにするが、自分たちが絵を描くのを止めていたことに気づき、慌てて作業に戻り始めた。沢近は晶が見せてきた絵にこれは誰かと顔を真っ赤にして怒鳴るが、晶は冷静に時間ないよ?と言って怒りを鎮め、イスに座らせることに成功した。
「(みんなに知れわたっちゃったね……でもこれで気兼ねなく影人と話せるから結果オーライね)」
――――その絵を提出していいのか。
「(晶のやつ、ついに吐いた《ゲロッた》か。真実を脚色しなかったからまぁ、いいんだが)」
「影浦君。編集長から伝言を預かったんだけど…」
「……編集長………………………あー。ジンガマのか……」
周りが影人たちではなく、今度は晶の方にターゲットを変えたのを機に烏丸が視線を手元の絵に落としたまま話始める。
編集長という単語に影人は数秒考え始めるが、思い当たる節があったようだ。
「夏休みに入る前には新作の連載ものを書いとけだって」
「うあー……そういやすっかり忘れてたわ。以前の作品が完結して、数か月休止してたからな……」
クルクルと鉛筆を回転させ、自分のこめかみを突く影人。
天性の忘れっぽさで自分が漫画家だってことすら記憶の引き出しに閉じ込めていたままだった。
まったく関連性のない二人だが、共通点は二人ともプロ漫画家だってことだ。
学生の身ながら、出版社を出入りする身。初邂逅は影人がネタに詰まり、出版社のレストランで息抜きしてるとこを……烏丸が隣の席に座ったことがきっかけだった。その時に影人からネタに詰まったらどうすればいいかと、聞いたり。年齢を聞いたり、趣味はなんだとか聞き……最後に連絡先を交換しあって、今のような関係が続いている。
――――影人の前作の作品はちょっとした野球ものの四コマ漫画。それなりに人気はあったらしい。
「うーむ、これからちょいちょい次回作について考えておくか……そして書き終わった」
「それがいいよ。僕もちょうど終わった」
「どんな風に書いたんだ、見せてくれよ」
「うん。影浦君のも見せてくれるなら」
「おう、自信作だぜ!」
同時にスケッチ板を回転させ、見せ合う。
「………………浮世絵?」
「新しいジャンルを試してみたんだ。影浦君のは…水彩画だよね」
――――どうやって書いたかは謎。
オマケ ちょこーとランブル!『明日は遠足!』
放課後。2-C教室にて
「清掃終了。さっさと帰るか」
「あ、影浦君お疲れ様ー。また明日ね」
「隣の席の子か。……明日は学校休みだぞ?」
「(……まだ名前覚えられてないよ…)え?明日は「明日は遠足よ」た、高野さん!」
「晶……その気配を消して近寄るのはやめれ」
「一流のスパイにこの程度のスキルは当然。ダンボールがあればなお良し」
「お前はどこの傭兵蛇だ」
「ダン…ボール?(なんの話をしてるんだろう)」
「それよりも、いくら貴方でも遠足のことを忘れてるなんて……影人の物忘れの激しさを再認識させられたわ」
「失礼な。俺はどうでもいいことは真っ先に記憶から抹消するだけだ。つーか遠足?なにそれ初耳なんだけど」
「数日前から谷先生が言ってたよ。しおりだって配られたし…(みんなの名前のこともどうでもいいのかなぁ……ちょっとへこむ)」
「その日影人は遅刻してたわね……それ以降のHRも影人寝てたのがいけなかったみたいね」
「ふーむ……もしかして、その遠足入学手続きで振り込む学費に組み込まれたりするか?」
「えぇ。移動手段はバスだから。それに含まれてるはず」
「……そうか。言ってなかったが、俺学費の支払いは特例として最低限しか払ってないのよ」
「「え?」」
「つまりな……俺が遠足のこと知っていようとも、交通費払ってないから遠足にはいけん」
「え、えええええっ!?そうなの!?」
「……そういえば去年の修学旅行も休んでいたわね(さすがにこれは想定外だったわ……これは今後のためにもなんとかしておかないと)」
「お前らが飛行機に乗ってる間俺は家でのんびりとさせてもらったぜ」
「そうなんだ……影浦君と遠足いけるの楽しみにしてたんだけどな……」
「ん?今なんて?」
「な、なんでもないよっ!」
「(……おもしろくないわね)それならしかたないわね。土産話はたっぷり話して上げるから」
「おう。その話から色々妄想して遠足行った気分でも味わうわ……もちろん、土産も期待してるからな」
「え、遠足だよ?お土産なんて……」
「別にまんじゅうとか木刀とかそういうもんだけが土産じゃないぜ。その場現地にあるもんとかでも土産にはなる」
「松ぼっくりとかドングリを持ち帰ってくるわね」
「全然問題ないぜ!逃走中とかにそいつらは役に立つぜ!遠距離武器として!」
「(そ、そうなのかな……)」
影人遠足不参加が決定した瞬間である。
烏丸と影人は実は漫画家だったのさ!
烏丸の方が人気は上。影人は新人でもないがベテランでもない程度。