「では、四回戦。副将の方お願いします」
「よし、姫路。決めてこい」
「はい!頑張ります!」
真剣な表情で、姫路さんが前に出てくる。そうか、雄二が強気だったのは姫路さんだったのか。
「アタシが出るわ」
「頼むぞ姉上、後がないからの」
「それぐらい分かってるわよ」
優子さんが出るのか、というか僕誰が出るとか聞いてないよ、代表なのに。
けど、ここが正念場だね。姫路さんには悪いけど、優子さんにはここで勝ってもらわないといけないから。いくらFクラスとはいえ、学年次席の実力を持つ彼女だ、優子さんには分が悪いかもしれない。
「では教科を」
「総合でお願いします」
しまった!総合科目では学年順位がそのまま召喚獣の力になってしまう。
「「試獣召喚(サモン)!!」」
「あなたはどうして試召戦争を?」
「私、この、Fクラスが好きなんです」
「Fクラスが・・・、好き?」
「はい。だから頑張れるんです。だから、絶対に負けられないんです!!」
総合
Aクラス 木下優子 VS Fクラス 姫路瑞希
4513 4409
「「「「「よ、4000点オーバー!?」」」」」
「な、なんなんですか!?その点数は」
姫路さんが必死に優子さんに訴えかける。
この試召戦争って、A(最高)VSF(最低)の戦いだよね?何でこんなにレベルの戦いしてるのさ!?Fクラスの点数が全員Aクラス上位並なんて。
「あなたは、Fクラスが好きだから負けられないんでしょ?」
「設備のこともありますが、この試召戦争で勝たないと私、転校させられるかもしれないんです。そんなの嫌です!こんなに楽しい人たちがいる。私の好きな人がいる。その学校を離れたくないんです!」
「なによそれ・・・・」
「?」
優子さんの目が光っているのが見えた。泣いて・・・いるみたいだ。
「そんなの、ただの自分勝手じゃない!ただ自分が学校にいたいから勝ちたいなんて。悪いけど、そんなあなたには負けられない。絶対に!」
「・・・、でも私だって・・・負けたくないんです!」
優子さんの肩が震えている。きっとあのことだろう。
「行きます!!」
姫路さ召喚獣が、優子さんに向かって突撃する。確かに速いけど、避けられないことはない。ここは確実に避けて、隙をねらって・・・。って、え?
なんで動かないの!?突撃する姫路さんに対し、優子さんは微動だにしなかった。
「あなたとは、正々堂々と戦う!」
グワァアン!!!!
鈍く大きな音が教室全体に響き渡る。なんて大きさだ!耳をふさいでも脳に直接響くみたいだ!
カンッ!キンッ!ドスッ!
両者ともに一歩も防御をせずに攻撃に徹している。けど、優子さんの攻撃の方が少しずつ当たり始めている。姫路さんの大剣は、試召戦争では有利だけど、一対一の個人戦となると小回りがきかず、不利になってしまう。それに対し、優子さんのランスは大きさもあるものの、意外と小回りがきく。その分攻撃が当たっている。ただ、大剣の場合重みがあり、受け止めるだけにもダメージを受けてしまう。
総合
Aクラス 木下優子 VS Fクラス 姫路瑞希
4210 3997
「くっ、ならこれならどうですか?(ポゥ」
姫路さんの腕輪が光る。姫路さんが優子さんに向かって、腕輪の着いている手をかざす。すると、
キュボッ
腕輪のあたりから、熱線が現れた。見ただけでも高威力なのが分かる。けど、それに対し優子さんは、また動かなかった。
そして、優子さんは熱線に飲み込まれてしまった。
「う、ぉぉぉおおおおおおお!」
その熱線を掻ききるかのように、中から優子さんの召喚獣が現れた。熱線は掻き消され、姫路さんの胴にランスが突き刺さる。
総合
Aクラス 木下優子 VS Fクラス 姫路瑞希
2150 2150
点数が並んだ!これで、どっちが勝つか分からなくなった。
「これは、一対一用じゃないけど、仕方ないわね(ポゥ」
優子さんの腕輪が光る。すると、優子さんがフィールドの地面に向かって、ランスを突き刺した。そのとき、フィールド全体に下から、黄色い、衝撃波?かな。が現れる。ダメージはもちろん、相手の動きまで封じられる。確かにこれは一対一には向かないかもしれない。
相手の動きが止まったところを狙って、優子さんが攻撃する。
「やああああああ!!」
「甘いです!」
な!?姫路さんが振り向きざまに優子さんの召喚獣を斬りつけた。あの大剣にあそこまできれいに切られたら、ダメージは相当なはず。
「!?」
なんだ?他の人は気づいてないみたいだけど、僕は明らかにおかしいことに気がついた。優子さんの腕輪が、秀吉の時で見たように、禍々しくて、黒い腕輪に変化していた。何か嫌な予感がする、ダメだ優子さん、それは使っちゃいけない!
「くっ、もう一回!(ポゥ」
優子さん自体が腕輪の変化に気がついていないみたいだ。腕輪がいつもと同じように光る。しかしそれはいつものような、光ではなく、黒く、まるで闇を表したかのような光だった。
ボゥウウウ!!
フィールドの下から、真っ黒の衝撃波が現れた。
「え?なんなのこれ!?」
前よりも大きく、威力がありそうな衝撃波だった。それが、一斉に姫路さんに向かう。
「制御できない!?」
なに!?制御ができない?そんなことあるの?
「キャア!」
真っ黒の衝撃波に包まれた、姫路さんの召喚獣が倒れる。
総合
Aクラス 木下優子 VS Fクラス 姫路瑞希
1 戦死
あと一点か、かなり危うかったな。いや!違う、さっきまで2000以上点数があったんだ、それにダメージを受けてないのにこんなに点数が減っているわけがない!きっとあの腕輪だ。
「優子さん大丈夫!?」
「あれ?吉井君?よかった、いないのかと思った。それで?いつまでそっちにいるのかしら?代表?」
「「「「「だ、代表!?」」」」」
Fクラス勢が驚く。無理もない、何せ僕自身も驚いたから。
「この学校って採点ミスしくれるのか?」「ありがたい、なら来年はAクラスだ!」
い、言いたい放題言ってくれるね・・・。
「あら?吉井君はれっきとした代表よ?」
「「「「「それは、ありえない!」」」」」
「おい、お前ら表出ろ!」
あ、つい本音が。
「なら、国民主権のもとでは、天皇は日本国と日本国民統合の象徴であって、政治についての決定権を持たない。このような地位の天皇が、内閣の助言と承認を必要としておこなう、形式的・儀式的な行為はなんと呼ばれるか、答えてみろ」
雄二が僕に問題を出してくる。こいつ僕を馬鹿にしやがって、中学生レベルの問題じゃないか。
「どうした?やっぱ答えられないんだろ?」
「『国事行為』内閣総理大臣の任命などがそれに当たるね」
「く、正解だ」
「なら、13748×10は?」
これは、横溝君、かな?
「137480」
「・・・?」
「自分で、答えられない問題を出すな!あと×10の問題ぐらいは分かれ!」
「そういや翔子は!?あいつが代表じゃないのか?」
「本当に何も知らないんだな」
パンパンッ
優子さんが僕の言葉を遮るように手をたたく。
「とにかく、吉井君はAクラ・・・スの・・・だ、い・・ひょう・・・(バタッ」
「優子さん!?」
「おい吉井、お前いつから女子とそんな仲に?」「お前は血の鉄則を忘れたのか?」
「そんなことより早く!意識がない!」
「な、なんじゃと!?姉上!しっかりするのじゃ姉上!」
「まずは救急車を呼びます」
「おい!木下!」
西村先生が優子さんを抱えて、保健室へと運んでいった。すぐに救急車がきて病院に行った。本当はついていきたいけど、今は試召戦争中だからそうもいかない。
「秀吉、さっきの優子さんの腕輪なんだけど」
「うむ、ワシと同じ黒い腕輪じゃったな」
「うん。僕はあれのせいだと思うんだ・・・」
「お主もか」
「秀吉も?」
「うむ、あれは何か嫌な予感がするのじゃ」
「僕もそう思う」
あの、黒い腕輪。何か波乱を呼びそうな気がする。