やはり俺の偽恋はまちがっている   作:ウェスト3世

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第1話

 ―――愛を永遠に(ザクシャ・イン・ラブ)

 あなたには錠を。私は鍵を。肌身離さず持っていよう。

 再会したら結婚しよう。

 

 それは子供の頃の約束。妹曰はく、「まだお兄ちゃんの目が腐ってなかった」頃の話だ。

 その頃の俺はとある少女のことしか考えておらず、クソガキの癖にちょっとロマンチックなことを考えていた。最初で最後の青春時代だった。何故に幼小に青春が来てしまったか謎。意味が分からん。

 けれど、人生であれほどイチャイチャした時代は恐らくない。そして相手側から好意を持たれたのも最初で最後だろう。それ以後、人からは嫌悪しか持たれたことはない。

 その子は今どうしているのだろうか?あの頃と同じく可愛いだろうか?八幡loveだろうか?

 まあ、十年も前の話だ。忘れられててもしょうがない。寧ろ十年も前の約束憶えている俺がちょっと異常かもしれない。俺ってばスゲェ!

 しかし、一度別れれば、相手の関係はそこまでだ。都合良く再会なんてことはない。

 だから十年前の出来事が記憶に残っていても、また会えるなんていう期待は微塵もなかった。

 出会った時点で必ず別離がある。それが今生の別れになることだってある。まあ、まだ余命数十年以上ありますから今生の別れでもないんだろうけど十年も会わなければ、ほぼ確定なんじゃない?だって会う機会ないでしょ。

 それに『女の子』から貰った錠。肌身離さず持ってなきゃいけないんだが、どっかに無くしちゃったし。

 

 まあ再会はないな。うん、ない。

 

 

 オス!オラ、比企谷八幡!高校二年生!

 今日は四月二十二日!月曜日!学校!

 オラ、ワクワクすっぞ!

 

 まあ、そんなワクワクしないけどね。寧ろ週始めにワクワクする人いるの?

 週始め程怠い日はない。

 体が重い、頭が回らない、目が死んでいる。これらの容態から、今俺がすべきことは登校ではないはずだ。速やかに下校して眠りにつくこと。これが今、比企谷八幡に必要な行為なのだ。

 理由は単純。昨夜、ラブライブを1クール一気に見たのだ。そしてもう1クール見ようとしたとこでお日様が登っていたのだ。つまり徹夜だ。

 お日様はもう少し俺に気を使うべきだ。ラブライブに十二時間、睡眠に十時間。最低でも俺の夜は二十二時間は必要だった。ほぼ一日だな。マジで夜が短いという事実が解せない。朝は怠いから数分あればいいのだ。俺の領分とも言える夜が長ければそれで良い。

 

「うっわ!マジで?それヤバくない!?」

「だしょ!あとアイツいつものアレもしてきてさー。」

「それないわー」

 

 賑やかな男女の会話が聞こえてくる。

 代名詞だけで会話が成立してるのが不思議でならない。

 あと、高校生とかって「うわ、マジ?」とかよく言うよね?あれ何なの?嘘だと疑ってるのかな。僕、嘘は言わないんですけどね。

 まあ、ぼっちの俺には関係ないんだけどね。というより興味ない。彼らが何を喋ろうが知ったことじゃない。

 そんなことよりも早くお家に帰りたい。

 

 

 

 基本的に理数科目は寝て過ごし、文系科目は真面目に受ける。これ私立文系の正しい授業の受け方である。

 まあ、学校によっては二年で文理選択をするところもあるが、この学校は焦らすのが好きなのか最終的には三年で決まる。ヤダ、焦らしプレイ?

 まあ、みんな文理選択でグズグズ悩んでる中、俺は悠々と学校生活を送るか(ぼっちだけどね☆)。

 しかし、私立文系と決まっただけで大学が決まったわけではない。ただ目指すレベルはGMARGHと決めている。

 そう、世間の奴らになめられない為にも学歴は大事なのだ。最近はラノベ作家も学歴良いヤツいるしな。もう、何をやるにしても学歴。

 

 まあ、ともかく午前中の授業は終了。昼はとっておきの場所で過ごし、あとは午後の授業に耐えるのみ。

 そう思っていたのだが………。

 なんか現国で読書感想文とかそんなん課題になってた気がする。それを終わらせないと家で怠惰な時間を過ごすことができない。

 仕方ない。ここは手っ取り早くレポートを終わらせてしまうか。

 

 

 ***

 

「んで、なんだこの感想文は?」

 

 平塚静という独身女性教師は鋭い視線で俺に問い質してきた。

 

「何って、感想文ですよ。」

 

 見て分からんのか。感想文ですよ。ちゃんと感想書いてあるでしょ。

 

「そうじゃない。私は夏目漱石の『こころ』の感想文を書けって言ったんだ。それを何故『そろそろ異世界系をネタにするのはやめた方が良い』というタイトルになってんだ!?」

「いえ、異世界系のライトノベルを読んだ感想を書いただけですよ。いいですか、先生。確かにそこそこ売れてるものもありますけど、プロローグのほとんどが異世界に転生するところから始まるんですよ。んで転生した主人公は最強。で、みんな『異世界って面白い』みたいな感情抱いて、いざ小説を書こうって時もみんな異世界を舞台にした小説しか書かないんですよ。こんなの間違っている。」

 

 ホント、「異世界系の話なら人気でます」というその幻想をぶち殺したい。

 上条さんの『幻想殺し』(イマジンブレイカー)ってこういう時役立つよな。

 

「ふむ。確かに最近異世界に突入する話が流行っているのは無論私も知っている。教師だからな。」

 

 いや、普通の教師は知らない思う。教師だから何でも知ってるわけじゃないでしょ。

 

「だが、私はそういうものより友情とか努力とか絆を大切にする作品の方が好きだな。」

「いや、聞いてませんけど。」

 

 まあ、要するに先生が好きなのは少年ジャンプでしょ。

 しかし、俺は少年ジャンプの重要な要素でもある友情という言葉には縁がない。そのため、ジャンプとはあまり仲良くできそうにはない。

 しかしアレだな。先生は心が少年だから結婚できないんじゃないの?

 

「ともかくだ。感想文はやり直しだ。『こころ』をちゃんと読んでから書け。」

「えー。」

 

 まあ、『こころ』は大分前に読んだから書けないことはない。

 確か中学の時も感想文書いたから、それを提出しよう。

 

「はあ。それにしても君は捻くれてるなあ。」

「先生。そこは俺の長所なんですから、あまり否定しないでくれませんか。」

「そこを長所という時点で捻くれてる。」

 

 捻くれて何が悪い。

 むしろ捻りがあるから新たな発想が生まれるのだ。

 捻りがない人間は乏しい想像力しか生まれない。そう、捻くれた人間こそ上位種の人間なのだ。

 

「どうやら変わる気はないようだな。」

「か、変わるなんてとんでもない!」

 

 俺が捻くれやめたら、この世界はどうなる?

 この世界の安寧を保つためには捻くれは大事。捻くれこそ世界の発展につながる。

 平塚先生は溜め息をついて、しばらく俯きながら黙考し、逡巡の末に顔を上げる。

 

「少しついてきたまえ。」

 

 ようするにストーカーしろということか。

 

 『影の追跡者』(ストーカー)。これが俺の二つ名だ。

 他者に認識されずに追跡するスキルには非常に長けている。ぼっちの特技ね。

 Fateの世界だったらアサシンのクラスに適性がある。気配遮断EX。

 俺ってば最強。

 

 

 ☆

 

 

 平塚先生の後を不審者さながらに追跡した挙句、たどり着いた場所は普段扱われていない空き部屋だった。

 

「何すか、ここ。」

「……………。」

 

 平塚先生は答えない。スルーされてしまった。

 だが、口元はにやけている。絶対何か企んでるよ、この人。

 

「はいるぞーーー!」

 

 勢いよく扉を開ける独身平塚。

 扉を開いた先に居たのは―――。

 

 桜吹雪に舞う黒髪の少女の姿がそこにあった。

 

 かくして俺達は出会った。

 

 

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