東方project~ほんとはただ寝たいだけ   作:真暇 日間

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 一話目を上げないと予約投稿ができませんので上げさせてもらいます。


00~とある吸血鬼の出会い~

 

 

 

 

 目が覚めて、辺りを見渡す。窓もなければ時間がわかるものもないこの地下室で、いったい私はどれだけの時間を過ごしてきただろう。

 なにもしていないのに能力だけを見て危険だと言われ、能力の暴走を押さえられなかったからできるだけ被害を押さえようとしていたのに気が狂っていると言われ、いつの間にか私はこの薄暗い地下室に閉じ込められる事になってしまっていた。

 気が狂っている、と言われてここに入れられた私だが、こんなところにずっと一人でいては本当に気が狂ってしまいそうだ。

 

 孤独。私の周りには誰もおらず、多くあった玩具も能力の暴走に巻き込まれる事が多くて数える程度しか残っていない。

 部屋の壁や天井などは何度壊しても勝手に修復されるようになっているけれど、それもまた私の孤独を……無力感を煽ると言う結果以外を残さない。

 

 私がこの部屋の中で何をしようと外には届かず、逆に外からは声も届けば食事も送られてくる。

 私がどれだけ叫んでも、私がどれだけ行動しても、結果を持ってくるのは私ではなく外側の誰か。

 いつしか私の心には穴が開いたようになり、その穴を埋めようと何かをする度に虚無感と孤独が私の心の穴を拡げていく。

 このままでは、私はいつか本当に壊れてしまう。……いや、もしかしたらもうとっくに壊れてしまっているのかもしれない。

 だって、そうでもなければ───自分を壊すための『目』なんて、探すどころか考えることすらしなかっただろうと思うから。

 

 私はこの能力を使って色々なものを壊してきた。ぬいぐるみをはじめとする玩具や、いくつかの家具。昔々には何度か生きているものも壊したことがある。

 全てを能力で壊したわけではないけれど、能力を使って壊したものでは毎回この『目』を見てきた。だから、この『目』が私の『目』であることがわかってしまう。

 

 七色の、皹の入った歪な石ころ。七つの色が混じりあい、きれいなグラデーションを作っているその石は綺麗だったのだろうと私でもわかるけれど、今では皹だらけでくすんでしまっていて見ていられない。

 ただ、やっぱりなと納得できてしまう。この壊れかけの石は、やっぱり私そのものなのだろう。この石を壊してさえしまえば、私は本当に壊れ、狂ってしまえる。寂しさを寂しさと感じるようなこともなく、孤独を隣人とし、破壊を愛し、狂気に堕ちた吸血鬼として楽になることはできるだろう。

 

 ……躊躇う私の背を、なにかがそっと押す。今までの経験が、私自身の姿をとって私に囁きかけてくる。

 これを壊して楽になれるのなら、何を迷う必要があろうか。私をこんなところに閉じ込めたままずっと無視しているのだから、私が本当に壊れてしまったところで誰も悲しみはしない。

 かつて私の頭を愛しげに撫でたあの男も、いつか私のことを抱き締めたあの女も、私を最後に見たときにはその目に恐怖が浮かんでいたではないか。

 ならば、本当に私が壊れてしまっても───何も問題はないはずだ。

 

 私は『目』を潰そうと、右手に力を込める。頭の中で弱い私が悲鳴をあげて止めようとするけれど、そんなものは知ったことじゃない。

 死ぬのは嫌だ……なんて感情は、ずっと続く寂しさの中で擦りきれてしまった。壊れるのは嫌だと言う思いも、かつて私が能力に目覚める前に受けていた感情も、もう私には何の価値もない。

 

 ───何の価値も、ない。

 

 ──────だから。

 

「───壊れてよ」

 

 ……私の指は、私を壊す寸前まで握り締められ……それ以上閉じられることはなく固まってしまった。

 

「……どうして? 壊れてよ!もう何の未練もないでしょ!? このまま居たって苦しいだけでしょ!? どうしてっ……どうして壊せないの!?」

 

 力をいくら込めようとしても、私の身体は言うことをきかない。私の『目』も、軋みを上げはするものの壊れない。

 壊したくないものはたくさん壊してきたくせに。

 壊しちゃいけないものはたくさん壊させてきたくせに!

 

「なんで壊れてくれないの!? いつもみたいに壊れてよ!壊させてよ!」

 

 力の入らない手を、反対の手で無理矢理閉じようとする。けれど、それでも『目』は壊れない。皹の入った石ころは、ギシギシと軋みをあげながらもただその場に転がっていた。

 もう寂しいのは嫌だ。辛いのは嫌だ。苦しいのは嫌だ。

 

 ───ひとりぼっちは、嫌だ。

 

「壊れてよぉぉぉっ!!」

 

 私は叫ぶ。全力で叫ぶ。私に出せるすべての力を出しきって、私の右手の上にある私自身を壊そうとした。

 

 ───けれど、結局私は私を壊すことはできなかったみたいだ。

 かわりに、私の悲鳴に呼応するようにして現れた無色透明の『目』が、私の『目』の代替となるかのように砕け散った。

 

 力を使いすぎたのか、それとも透明の『目』が私自身ではないにしろ私の意識や何かを司るものだったのかはわからない。けれど私は、とにかく自身の意識がなにかに飲まれ、消えていくのがわかった。

 ……けれど、その意識の消失はけして致命的なものではなく……まるで眠りに落ちていくのを意識を中途半端に保ったまま一瞬で体感しているかのようだった。

 

 きっと、これですべてが終わるわけじゃない。私の意識はまたすぐに戻るだろうし、意識が戻ればきっとまた同じことを繰り返すだろう。

 私の全てが私の手で壊れるか、私の心が時の流れに狂わされるか。どちらが先かはわからないけれど、きっとどちらもいい終わり方ではない。

 でも、早く終わってしまった方が……きっと私としては幸せな終わり方だろう。

 

 そうして私は薄れ始めた意識を保とうとするのを辞め、そのまま流れに身を任せていった。

 

 

 

「……驚いた。また無茶苦茶な方法で来るもんだ」

 

 …………え?

 

 

 

 

 

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