東方project~ほんとはただ寝たいだけ   作:真暇 日間

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 連続投稿十八話目です。


02~吸血鬼の目指す先は

 

 

 

 

 私の前に差し出された選択肢は五つ。私はその五つの選択肢を並べてじっと悩んでいる。

 

 “魔法の力でなんとかしよう! 魔法少女ですとろ☆フラン”

 

 “錬金術師の薬はいかが? 錬金少女あるけみ☆フラン”

 

 “こうなったらもうとことんやろう! 神聖少女ほーりー☆フラン”

 

 “もういっそ悟っちまえよ! 中道少女なむさん☆フラン”

 

 “原罪背負って神格化! 大罪少女きりすと☆フラン”

 

 ……うん、なんと言うか……これから選ばないと本当にダメ?

 

『名前は面白そうな感じにつけたが内容はかなりガチなヤツだから、しっかり企画書の内容読んでから決めろよ』

「はーい」

 

 言われた通りにまとめられた紙の束を見てみると……確かに、内容はしっかりしているように見える。ちょっと難しいところもあるけれど読めなくはないし、理解できる。

 

 “魔法少女”は魔法を使い、魔力の使い方や流れを覚えることで、私の能力を使いこなせるようにするのを目的としているらしい。その際魔法少女としての精神修行やなにやらも一緒にやるって言う……名前からは考えられないくらい真面目な内容だった。

 しかも、私の練習とかそう言うのの進み具合や適正によって内容をある程度変えたりとか、そう言う話がたっぷりと載っている。

 ……うん、でも一つだけ疑問がある。

 

「魔法少女に必殺技って必要?」

『魔法少女……と言うか、戦いをするなら決め技と言える高威力の技あるいは連続コンボは欲しいと思うがね。ただでさえ吸血鬼は狙われやすい種族であるわけだし、無いよりはあった方がいい』

「へぇ……うん、わかった!」

『まあ、まだ決めるのは早い。全部読んでから決めるんだ』

「はーい」

 

 それから『魔法少女』の中身を読み進めていくと……まあ、当たり前だけれど魔法少女のデメリットなんかも書かれていた。

 まず、魔法を覚えること自体は吸血鬼である以上簡単にできるけれど、覚えた魔法を極めることは難しいと言うこと。練習は色々苦しかったり難しかったりすると言うこと。そして、魔法の力で狂気を抑え込んでも、いつか抑えきれずに限界を迎える可能性が非常に高いためガス抜きが必要となってしまうことなど、全く隠すつもりなんて無いようで、本当に全部書かれていた。

 

 そして、次。“錬金術師”の奴を見てみる。これは私の狂気を抑え込むわけではなく、薬の研究などの生産的な方向の欲望に変えることを目標としているようだ。

 これにも当然メリットやデメリットがあり、メリットは『一度成功すればガス抜きの必要もなく狂気を押さえる必要もなくなる』と言うこと。狂気を欲望にしているのだから、欲を発散させれば狂気が薄れていくのは当たり前。これはわかりやすい。

 けれど、そんな状態に持っていくまでが非常に難しい。なにしろここにはそんな設備がないし、材料もなければ教科書も無い。そんな状態で狂気が転換してしまうほどのめり込むのは難しいし、そもそも肌に合わなければ夢中にはなれない。当たり前だね。

 ちなみに、この中にも必殺技の原案のようなものが書かれていた。ただし、どうやらこれは拠点防衛用兼逃走補助の物らしい。研究者らしい必殺技……なのかなぁ?

 

 次に手に取ったのは“神聖少女”の物。いったいどうやるのかわからなかったけれど……と言うか読んでる今でもよくわからないけれど、意訳すると『私の種族を吸血鬼から反転させて神聖なものに変えるついでに狂気も反転させてしまおう』と言うもの。

 メリットは、一番簡単だと言うこと。そして反転させると能力なんかも反転するから効果も抜群であると言うこと。

 デメリットは、私が私でなくなるために私としては消えるのとそう変わらなくなってしまうと言うこと。反転させた結果そうなるのは当たり前なので納得はできるけれど、これはまず選ばない。必殺技もないし。

 

 そして次、最後から二つ目に選んだのは“中道少女”。よくわからないけれどとりあえず読んでみると……どうやら改宗が必要らしい。

 ただ、そうしたとしても割とたくさん壊してしまっている私では本当に悟るのは難しいから、世界の全ての事を内側から世界と同一になることで悟るのではなく、現在過去未来全てのこの世界のことを外から見て得られた情報として知り尽くすことで擬似的に悟る方法で行くらしい。

 それができれば結果的に本当の意味で悟ることもできるみたいだし、狂気を溶かして私そのものの中に綺麗に置いてしまえばそれが世界と共有されて振り撒くことはなくなるようだ。

 効果は非常に高く、戦闘になる前に全てを回避できるようになるから強くなる必要もなくなる。存在そのものがもう必殺技と書かれているけど納得できてしまう。

 デメリットは……とにかく時間もかかるし死ぬほど辛い。世界と記憶を意識を全てを共有した上で自分を見失わないようにするのは妖怪と言う精神の在り方によって自分の全てが形作られている種族では非常に厳しいそうだ。デメリット欄に『まあ死ぬ』とか書かれてて何事かと思った。

 

 そして最後は“大罪少女”。……うん、これがどれだけぶっとんでるかは私でもわかる。はっきり言ってこれを吸血鬼が実行したら間違いなく吸血鬼じゃなくて神様に種族が変わる。

 なにしろ『大罪を体現する』悪魔と違って『他者の罪を背負う』だなんてことができる時点でもう色々おかしい。万が一できたとしても大罪の体現者ならともかく大罪の象徴としてあるようになってしまうと、それこそ十字教の救世主に向けられる信仰の一部が私の方に来るようになるわけで……。

 

「……これ、やっていいの?」

『駄目だと明言されてはいない、ってレベルかね。普通はやらないし普通はできないから目溢し以前に考えもしないって感じ』

「……アウトじゃない?」

『グレーゾーンだ』

「千歩譲ってグレーだったとしても黒とそう変わらないグレーだよね?」

『安心しな。傲慢を拗らせてやったんだったらともかく、ちゃんとした理由があってやったんなら許してくれるさ。基本的に奴等は気のいい奴だからな』

 

 まるで会ったことがあるかのように話す神様。……一神教の神様とは間違いなく対立すると思うんだけど……。

 

『いやいや、神とは対立せんよ。ただ教徒とは仲悪いことが多いけどな』

「そうなの?」

『別に敵対する理由もないだろうと思うんだがなぁ……なんでかあっちの死んでない奴はこっちの事を排斥しようとするんだよな。意味わからん』

 

 ……なんだか聞いちゃいけない話を聞いちゃったような気がする。神様の裏話とか、なかなか聞けないだろうけどあんまり聞きたくないよ?

 

『ちなみにそれのデメリットは、今言った通り敵も味方もガンガン増える事だな。少なくとも旧約聖書に出てくる奴等はともかく、新訳聖書の奴等は気のいい奴ばっかりだよ。一部のトラウマとかそう言うのを除けば異様に軽いし』

「軽いの!?」

『軽い。なにしろ聖人達がエイプリルフールで『改宗します』って言う嘘が冗談として通じるくらいだし』

「ほんとに軽いね!?」

『……俺としてはお前さんにある程度常識が通じるってのが驚きだがね。閉じ込められて長いんだろ?』

「……よくわかんない。でも、たくさんたくさん過ごしてきたような気もするし、たいした時間じゃなかったような気もする」

『……あ、ごめん寝てた。なんだっけ?』

「ちょっと!?」

『ってかお嬢ちゃん何を見て……ああ、そう言や渡したんだっけか』

「そこも寝てたの!?」

『内容……ってか題名からして深夜テンションだろ。俺は少しでも時間があれば寝たいからなぁ……半分寝たまま行動とかいつものことなんだよ』

「……それ、困らないの?」

『時々困る』

「やっぱり困るんだ……」

『そりゃな。神と言っても唯一神じゃないし、困ることも多々あるさ。唯一神だってしばらく前にやった大戦の時の筋肉痛がまだ来ないのが正直終末よりも怖いそうだし』

「なんだかさっきから聞いてはいけない神様の裏話をたくさん聞かされちゃってるような……」

『さっきも言ったが新訳の連中は軽いから平気だよ。新訳の方はな』

 

 ……旧訳の方には会わないようにしないといけないみたいだ。

 

『そうしとくのが吉だよ』

 

 そうだよね。

 

 ……うん、とりあえず五つ全部読んでみたけど……これって現状から実用可能にまで持っていけるの一つだけだよね? 実質これ一択だよね? 選ばせる意味は?

 

『やろうとすればできないこともないが面倒だぞ? できないこともないが』

「できるの?」

『一応神だからな。道具がないなら創って送ればいいし、時間がないならお嬢ちゃんを加速させるし、反転はこの鏡使えば簡単にできるし、罪の背負い方は意外な方法で簡単にできるしな』

 

 神様ってすごい。多神教の神様って大したことないのばっかりだと思ってたのに。

 

『クトゥルフの奴等は別格通り越して頭おかしいのばっかりだから除くとして……北欧の奴等は何かを作るのはともかく創造するのは苦手だが術式やら自然やらの管理は凄まじいだろ? 日本神話の奴等は上下の差が激しすぎるが太陽どころか宇宙の創成までしてるし、インドの奴等はこと戦闘にかけては一番荒っぽい上に怪物揃い。後は拝火教だが善悪トップの実力がおかしいし……実力の無い神ってのがそもそもあんまり存在しないような気がすんな? 日本の土着の神とかと合わせた八百万の神(一部除く)くらいか?』

「大したこと無い神様っているんだ……?」

『こっちで言う妖精とか精霊とかも神様扱いして奉り上げてるところもあるんだよ。それどころか悪魔や悪霊も神にされて良い面と悪い面を作られたりもしてるしな』

「神様って物知りだね。なんでも知ってるの?」

『いや? 知らんことは知らんさ。……で、お嬢ちゃん。決めたかね?』

 

 神様は胡座をかいた膝の上に肘をつき、頬杖をついた私の姿のまま私の持った紙束を指差した。

 

 私は、その問いに頷くことで答えを返す。

 

「私は──────」

 

 

 

 

 その日。私はただの吸血鬼であることをやめた。

 

 

 

『あ、ごめんその台詞なんだけどこれ読んでくれるか?』

「え? うん……え~っと……『私は吸血鬼をやめるぞっ!神ぃぃぃっ!!』」

『……GOOD!』

 

 神様はなんだかよくわからないけど良い笑顔を浮かべていた。なんでかな?

 

 

 

 

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