連続投稿二十話目です。
苦節二時間。私は魔力を制御することに成功した!
『感覚的でも理詰めでもそれができるとか絶対吸血鬼としてもスペックがおかしい。良い意味でおかしい』
「いいの? 悪いの?」
『才能があるかどうかって意味で聞いてるなら間違いなく才能はある。それもありすぎてヤバいレベルである。大は小を兼ねるとはよく聞く言葉ではあるけどいくらなんでも大きすぎだろってどこからでもクレームがつくレベル。……ああ、そう言えば吸血鬼的にはまだまだ成長途中で色々とよく染み込む時期か。だとするとまだ何となく理解ができなくはないな。そうすると今度は魔力の量が多すぎるって問題に直面するわけだが』
……よくわからないけれど、とりあえずほめてくれてるらしい。
『……よし、それじゃあ今日の授業は最後にさっき微妙に失敗した魔法陣の起動をしっかりやって終わりにするか』
「はーい!」
ちょっと前に魔力の込め過ぎで物凄い炎を出してしまった魔法陣の書かれた紙に手をかざし、今度はほんの少しだけ魔力を込める。すると私の身体からほんの少しだけ魔力が流れ出していき、魔法陣を流れて現象として現れる。
結果、小さな小さな炎が魔法陣の真ん中に現れた。
「できた!できたよ神様!」
『できてるな。よくやった。……しかし方法が凄まじく力任せと言うか脳筋的と言うか……できないならできるようになればいいじゃない論かよ』
「……ダメだった?」
『いや? 普通はできないってだけで出来るんだったら最高の方法だろうな』
「やった!」
『やったな』
ぱちぱちと拍手しながら神様は私を誉めた。いつも通りに面倒臭そうな顔で、けれどとても楽しそうな視線で私の事を見つめている。なんだかちょっとだけくすぐったくなって、私は被っていた帽子で顔を隠した。
『ここまで優秀なんだったら、もしかしたらお嬢ちゃんはハイブリッドができるかもしれんな』
「はいぶりっど?」
『あー、聖人兼覚者兼神格持ち兼錬金術師な魔法少女、だな。この場合』
……それはちょっとどころじゃなく難しくなってくるんじゃないかな?
『まあ、聖人として他者の罪を背負い、覚者として中道を歩むために罪と同じだけの徳を積み、神として世界の一端を知り、錬金術師として知り得た全てを使って究極を目指しながらも誰よりも人間らしくあり続ける……なんて真似ができればいけるな。お勧めは絶対にしないが、できなくはない』
「できる可能性はあるの?」
『ある。正確には完全にゼロであるわけではないという程度の無いに等しいような可能性ではあるが、全く無い訳ではないしな。一応形だけの真似事なら俺もできるんだが……と言うか一応破壊と破滅と殺害と戦争から来る罪を背負いつつそれらから得られる徳も積む神格持ちの魔法使いだから、覚者にはなれないのさえ無視すれば状況としてはそう変わらないんだけどな』
「すごいねそれ!」
『色々あっていろんなことに手を出してきたからなぁ。俺以外は基本的にスペシャリストの集まりで、俺ともう一人くらいしかある程度以上何でもできるやつがいなかったからできるようになっただけだよ』
「それでもすごいよ!」
神様は私の顔を見つめ―――優しそうな表情で笑う。私と同じ姿をしているのに、私にはできそうにないこんな笑顔を浮かべられるなんて――――――とも思ってしまう。
そして思うことは、きっと『羨ましい』と言う感情。私もいつか、今の神様のような笑顔を浮かべられるようになりたい。それにはきっと、神様に近くなることが必要なんだと私は勝手に解釈する。
「……うん、やってみようかな」
『本気か?』
「うん。できそうなら、全力でそこに向かってみるよ」
神様の言った『神様への道』は、きっととても厳しいものになるんだろう。
けれど、私は新しい目標を見つけることができた。神様になって、神様と一緒に色々なところに行ってみたい。できないのではなく、ただただ難しいだけなら……頑張ればきっとできる筈だから。
この部屋から出ることならもうできる。ただ、いまここから出ていってもできることなんて何もない。だから、私がここから出ていってもなんとかなるように。出ていった後に、何かを残せるようになってから、私はここから出ていこうと思う。
『……よく言った。だったらできることから全部やってくぞ』
「うん!」
神様の言うことを聞いて、できることを全部やっていく。一番大切なのは基礎力。基礎がなってないなら何もできないし、基礎さえできていれば応用はそれなりにできるものだから。
応用は基礎がなくちゃできないけど、基礎は応用がなくてもできる。やれることを増やすなら、基礎をしっかりやらなくちゃ。
『じゃ、十字架と水を克服するように頑張るか。半分吸血鬼からずれると思うがなんとかなるさ』
「わぁい。神様っ!私は吸血鬼をやめるぞーっ♪」
『お嬢ちゃんが楽しそうでなによりだよ』
こうして私は吸血鬼をやめて何か別のものになることになった。種族って、結構簡単に変わっちゃうものなんだね?
『半分神で半分吸血鬼、魔法使いでかつ覚者見習い兼聖者見習いの錬金術師か……ついでに陰陽道辺りもやってみるか? 俺は陰陽術系もいけなくはないしな。術の本領は陰陽術よりも概念術だけど』
「……概念術?」
『有名な伝説とかに肖って作った物や伝説の一部再現をしたものに名前や行為などから本物の概念を引っ張ってきてくっ付けて強化するようなやつだな。口先上手い奴なら結構使えると思うぞ? 陰陽術の派生だから西洋妖怪に使えるかどうかは知らんけど』
「やるだけやってみる!時間ならいっぱいあるしね!」
神様は呆れたように溜め息をつくと、私の目の前に紙と筆を用意してくれた。
『陰陽術の符を作るところから始めるか。魔法陣と理念自体はそう変わらないし、ついでに霊力が無くても相手を変えれば魔力で対価を支払えるから効果は出るからな』
「うん!」
鏡の中で眼鏡をかけた神様は、また私にたくさんのことを教えてくれる。私も私のできる限りのことはやろうと思う。