東方project~ほんとはただ寝たいだけ   作:真暇 日間

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 連続投稿二十話目。いよいよ巣立ちです。


06~吸血鬼の旅立ち

 

 学んだ。

 遊んだ。

 戦った。

 鍛えた。

 笑った。

 怒った。

 泣いた。

 楽しんだ。

 調べた。

 至った。

 成った。

 

 私にとっての千と数百年、周りにとっては多分数十年程度。それだけの時間を存分に使って、私は私が最低限必要だと思えるだけの準備を終わらせた。

 

 魔法少女となった私は、御伽噺に出てくるような常軌を逸した魔法を使えるようになった。神代にまで遡り、神しか神秘を扱うことのなかった時代の非常に大規模な魔法を、私はいくつかこの身に再現することができるようになった。

 錬金術師となった私は、私に必要なものを何かに魔力を加えることで自ら製作し、使いこなすことができるようになった。食べ物も、薬も、貴金属も、錬金に必要な材料すらも、私は魔力とごくありふれたもので作り出すことができるようになった。

 聖人となった私は、いくつかの奇跡をこの身に宿すようになった。他者の傷を癒し、パンを増やし、水をお酒に変えることができるようになった。

 覚者となった私は、世界の中道を歩めるようになった。世界に繋がり、徳を積みながらも罪を犯し、善と悪の中道に立ってまっすぐ歩けるようになった。

 そして、神となった私は、とある神の子と同じように他者の罪を背負うことで神格を得ることになった。全人類の罪を背負うのは私にはできなかったけれど、その代わりに私は中道を通してつながった世界の罪を背負うことになった。人間と言う罪を産む根源がいない世界の罪は、動物や虫などの軽い物しか残っていなかったのか結構軽々と背負えてしまった。

 こうして私は旅支度を始めた。千年以上も過ごしたこの部屋ともお別れとなるのは少し寂しいような気がしないでもないけれど、それもきっと縁と言うもの。もしかしたらまたいつの日にかここに戻って来ることがあるかもしれない。

 私は自分が作った道具や服を全部小さなポシェットに入れて、中に大きな研究施設が入っている棺桶型のリュックを背負う。

 最後に荷物に入れるのは、神様の映った大きな鏡。神様の作ったこの鏡を真似て作った小さな手鏡があるから、そっちを普段使うようにしている。大きい方はちゃんとした家ができたらそこに置くことにする。

 

『ハンカチ持ったか?』

「持った!」

『食料は?』

「たっぷり!」

『地図とコンパス』

「ポシェットの中だよ!」

『目的地は?』

「心の中に!」

 

 神様と最後の確認をしてから、部屋に張られた結界を壊さないようにすり抜けた。時間の圧縮が解かれたため、姿を隠して移動する。空間転移や飛行などの魔法を使うと魔法使いにばれたりしそうだし、認識阻害や意識を私からそらす魔法を主体として使う。また、世界と一体化することで気配を自然に溶け込ませ、私に気付きにくいようにしてただ歩く。

 ……昔の私が檻だと思っていたこの屋敷は、こんなにも簡単に抜けられるものでしかなかった。なんだか少し虚しくなってくる。

 !これが『諸行無常』なんだね!わかった!フランはまたひとつ賢くなったよ! 生きることは勉強だって言う神様の言葉は本当だった。あれだけ考えてもよくわからなかったのに、外に出たらすぐわかったよ!

 私は心を弾ませながら外に出た。偶然にもこの館に外から入ってくるお客さんが居たので、その人が入ってくるのと同時に外に出た。門は結界で閉じられていたけれど、結構簡単に外に出ることができた。

 ……意外にあっけなく終わってしまった。私の脱出計画ではもう少し苦労するはずだったのだけれど、幸運にもお父様へのお客さんが来てくれたお陰で結界を破る必要も無くなったのが大きい。本当に『奇跡的な』幸運だった。

 

 ……勿論、狙っていたのだけれど。

 

 私を地下に閉じ込めていた結界は私と魔力は閉じ込めても光と音は閉じ込めない。ならば、私が純粋な光に成れば抜けられる。

 地上までの道程にある図書館の主は、魔法に頼りきっていて私に気付くことはできない。

 屋敷の廊下に居る妖精メイド達は、私のことなんてはじめから気にしていない。

 情報は、魔法少女として世界にアクセスするか、錬金術師として現状から推察するか、神として知るか、仏として知っていた(・・)か、どれかで簡単に手に入れることができる。

 そうして手に入れた情報を使い、タイミングを合わせただけ。奇跡と言うのもおこがましい、単なる計算でしかない。

 

 ……けれど、それを知らない人から見ればきっとそれは奇跡に見えるのだろう。

 奇跡と言っても結果がある以上必ず原因がある。過程を跳ばして結果だけを持ってくる技術もあるから過程があるとは限らないし、実際に過程を跳ばして攻撃を必中させる武器や、攻撃するのと全く同時に結果を出す術や概念が存在するけれど、原因がなく結果が生まれることはあり得ない。

 もしも原因がないまま結果だけが生まれるようなことがあるのなら、この世界はとっくにどうにかなってしまっている。理解できるできないは別として、物事には必ず、原因がある。

 奇跡と言うものは、願いを理不尽に現実に持ってくるものではない。願いが叶うと言う結果を導きだすために、それこそ無数に近い原因を作り出し、望んだ結果を現在に持ってくる。その過程を最大限省略し、願った時に願ったと言う原因から即座に願いの成就と言う結果を持ってきているだけなのだ。

 海を割ったと言うモーセの奇跡。あれも周囲の目から見れば奇跡には違いないだろうけど、実際には原因もあれば過程だってある。一神教の神が力を貸したのか、あるいはモーセ自身が奇跡を起こすことができる人間だったのか、それはわからないけれど。

 

 さて、それじゃあ私も奇跡を起こしにいこう。

 世界の多くに夢を振り撒き、世界の多くに知識を与え、世界の多くに道を示し、世界の多くに信仰される。

 ……あ、やっぱり信仰は多くなくてもいいかな。あんまり信仰されたりすると私自身に多面性が出すぎて分裂しちゃうかもしれないしね。

 

 まったく、本当に人間ってわからない。

 

 

 

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