ネプテューヌEX ~とある青年のエクスペリエンス~   作:S・TOM

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注意:この話ではネプ子達の出番はありません。


序章
第1話 別の世界で


 ありのまま起こった事を話そう。

 

『家の中で寝ていたと思っていたら森の中で目覚めた』。何を言っているかわからないだろうが、俺自身もわからない。

 

 目覚めたのも俺の知らない場所だった。森を抜けると街が見えてきたが、少し進んだ未来の街の様で当然、俺が知らない街だった。

 

 それを見た俺はこう思った。『場所どころか別の世界に来てしまったのかもしれない』と。

 

 俺の名前は『高坂(こうさか)界人(かいと)』。

 

 そしてこの物語は、俺が体験する物語だ。

 

 

「まいったな。別の世界となると、かなり大変な事になるな」

 

 ここを『別の世界』と認識した俺はこれからの生活について考える。

 

「まずは住む場所だ。暗くなるまでに何としても見つけねぇと。ホームレスはごめんだからな。後は金だ。無いと食う事もままならねぇからな……よし、行くか」

 

 考えるよりまず行動。俺が街に行こうと歩き出した――瞬間だった。

 

「ヌラッ!」

 

 直感、『何か』がこっちに飛んでくるのを察した俺は身体を傾け、ギリギリの所で避けた。

 

 危っ、何なんだ今のは?

 正体不明の何かを確かめるため、飛んでいった方へ目を向ける。

 

「ヌラ~ァ」

 

 俺に飛んできたそれはヘンテコな姿をしていた。青いゲル状の塊に犬の顔や耳が付いた、そんなおかしなスライムだった。

 そのスライムは俺に敵意を持っているのか、とても低く唸っていた。

 

「何だアレ、俺に懐いてる……って訳じゃないよな。どうする、今何も持っていな――」

 

 ズシリ。突如、俺の右手に何か重い物が乗っかった。

 今度は何なんだ? 右手を見るといつの間にか、見覚えのない大剣が握られているのが分かった。

 

「なんだこの剣……いや、そんな事はどうでもいいか」

 

 この剣でアレを相手にするしかない。大剣を両手で構えなおし、戦闘態勢を取る。

 

 こういう経験はした事が無いけど……行けるか?

 いや、行く。一抹の不安を払拭し、目の前にいるスライムに意識を集中する。

 

「ヌラーァ!」

 

 見える。スライムの動きが、鮮明に。

 体当たりを仕掛けるスライムを避け、大剣を振るう。

 刃が当たったスライムは真っ二つに切り裂かれ、粒子をまき散らして消滅した。

 

「消えた……倒したのか、俺が?」

 

 不思議な感触だった。手応えはあった物の、物を斬った感触がしなかった。

 今の現象に戸惑う俺だったが、後ろの茂みから二匹のスライムが出てくるのを見て気を引き締める。

 

「また来たか……よし!」

 

 戦い方は把握できた。今度はこっちからだ。

 スライムより早く動き出し、相手との距離を詰める。攻撃しようとする一匹に狙いを決め、スパッと大剣を振り抜いて両断した。

 

「ヌラァァ!」

 

 斬られたスライムが叫びをあげて消滅する。まず一匹。

 

 大剣を持ち直し、横から襲ってきたスライムを突き刺した。

 さっきの二匹がそうだったように、刺されたスライムは消滅した。しかしその時の驚いた表情がギャグ調めいていて、俺は思わず吹いてしまった。

 

「ププッ……初戦にしては良い動きだったな。才能あるかな、俺。ところで……」

 

 自画自賛の後、手に持っている大剣に目を移す。

 

「この剣、どうするかな? ずっと持っているには疲れるし、鞘みたいな物は無いしなぁ……」

 

 消えると結構楽なんだけどな……そう思っていると剣が徐々に消え、さっきまで感じていた重みも感じなくなった。

 

「念じれば出てきたり消えたりする……のか。オーケー、理解したぜ」

 

 その事を理解した後、気を取り直して街へと向かった。

 

 

 街に着いた俺はこの世界の情報を集めるため、まず街中を見て回る事にした。歩いてる内、周囲はとても賑やかで見てるこっちまで楽しくなる。この街に入った時の不安はもうとっくに消えていた。

 

「周りが何言ってるのか分かる……コミュニケーションは大丈夫そうだな」

 

 絶える事のない話し声を聞いて安心する。ここの住民は日本語で喋っている。

 なら会話で特に困る事はない……とはいうものの、これからどうするべきなのかは分からないままだ。とりあえず近くにあった公園に入り、掲示板に書かれた地図を確認する。

 

「プラネテューヌ……この街の名前なのか?」

 

 地図に書かれていたのは『プラネテューヌ』。この街、いやこの"国"の名前らしい。

 隣には世界地図らしき物が貼られていた。ラステイション、ルウィー、リーンボックス。これらは全て『ゲイムギョウ界』という世界に存在する国の名前だった。

 

 プラネテューヌの地図を一通り目を通すと、『ギルド』なるものの場所へ向かった。

 依頼を引き受け、達成すると報酬をもらえるという場所だ。俺はギルドで依頼をこなし、その報酬で食い繋いでいこうと考えた。

 

 辿り着いたギルドに入ると、中にはそれなりの人数の姿が見え、依頼を引き受けてたり休息を取っていたりしていた。

 カウンターにいる従業員に依頼を引き受けに来た事を伝えると、『モンスター』なるものの討伐や素材となる草や石などの収集など、色んな依頼が出された。こんなにあるのか? ちょっと驚いたぜ。

 俺は様々な依頼の中から『馬鳥』というモンスターの討伐の依頼を受けた。ちなみにさっき会ったのは『スライヌ』というモンスターらしい。なるほど、スライムと犬を掛け合わせた様な姿だからそう呼ばれているのか。

 

 そしてギルドから出て、馬鳥が生息する『バーチャフォレスト』という森林へと駆け出した。ゲイムギョウ界に来てから初のクエストだ、好調なスタートを切ってやる。

 

 

「バーチャフォレストはここ……俺が目覚めた所なんだな。んで、馬鳥はっと……」

 

 バーチャフォレストに着き、しばらく歩いていると馬鳥らしきモンスターを発見する。

 写真でも見たがその名の通り、馬の身体に鳥の羽の付いたモンスターだった。

 

「おっ、あれだな。……何か、様子が変だな」

 

 その個体の身体が黒ずみ、何というか……とても落ち着きが無いように見えた。

 不思議に思ってると、馬鳥が俺の存在に気づくといなや、目で追えないほどの速さで飛んできた。

 

「――なっ!?」

 

 間一髪。俺は馬鳥の攻撃をかわし、顕現させた大剣を右手で握る。

 

 速い。さっきのスライヌとは桁違いだ。

 馬鳥の方を向くともう次の攻撃に移ろうとしていた。

 

「上等だ。お前がその気なら、俺も本気で行くぜ!」

 

 さっきの速さで突進してくる馬鳥を剣で抑える。

 速い上に力も強い。なんて奴だ。しかし、負ける訳にはいかない。

 

「うおおおおおお!!」

 

 そしてそのまま押し返し、怯んだ隙に斬りかかった。

 馬鳥は大剣を避ける事が出来ず、俺が繰り出した斬撃を受けた。

 

「よし、やった――」

 

 しかしそんな攻撃を物ともせず、馬鳥は俺の腹に頭突きをかます。

 攻撃が当たり、油断した俺はその攻撃を正面から受け、ダメージを受けてしまった。

 

「くそっ、全然効いてねぇ……」

 

 腹部に痛みが走る。苦痛に耐えながら俺は、馬鳥の猛撃に対し避ける事しかできなかった。

 

 こらえろ、反撃のチャンスはこいつが俺に攻撃を当てる瞬間だ……。

 俺は自分に言い聞かせ、馬鳥の攻撃を避け続けていく。

 

「ヒィーン!」

 

 馬鳥は攻撃をやめたかと思うと、距離を取って攻撃の準備を整える。

 次の一撃で俺を倒すつもりか……面白れぇ!

 

「来いよ馬鳥! もうこっちは準備できてるぜ、かかってこい!」

 

 その言葉に答えるかのように、馬鳥は俺に向かって突進してくる。

 いいぞ、走ってこい。勝負だ!

 

 距離がどんどん詰まり、馬鳥が俺の目の前に来た瞬間――――

 

「そこだぁ!」

 

 ここしかない。俺は剣を振るい馬鳥を斬った。

 思わぬ反撃を受けた馬鳥は怯み、俺は攻撃に転じた。

 

「俺の勝ちだ、馬鳥!」

 

 勝利宣言。俺は大剣を振りまわし、馬鳥の身体に切り刻んでいく。さっきの反撃で大きなダメージを負った馬鳥はその攻撃をただひたすら受けていった。

 

「はあああああああ!!」

 

 最後に大剣を大きく振り抜き、馬鳥の身体を真っ二つに叩き斬る。

 切断面から粒子が溢れ、力尽きた馬鳥は粒子の塊となって消滅した。

 

「……ふぅ、終わった」

 

 闘いが終わり、ギルドに戻ろうとすると急に身体がふらつき、身体の痛みが激しくなった。

 

「いってぇ~! やっぱ、さっきの馬鳥の攻撃はよく効くぜ……」

 

 今日はもう休もう。気がつくと空はもう赤くなっていた。

 隅々まで痛む身体に引きずり、プラネテューヌに戻って行った。

 

 

 戻った後から分かった事だが、このゲイムギョウ界には四人の守護女神によって統治されているらしい。そしてこの国、プラネテューヌは守護女神の一人、『パープルハート』が治めているという。

 

 俺がまさかパープルハートに会う事になろうとは、この時はまだ思いもしなかった。

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