ネプテューヌEX ~とある青年のエクスペリエンス~   作:S・TOM

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第17話 黒の危険種

界人達がいる市街地から離れ、工場近くの街道。そこにいるのは無数のモンスターと一人の男だけだった。

 

「ウオオオオォォォ!!」

 

雄叫びと共に繰り出されるモンスターの攻撃を、男は軽々とかわし続ける。その途中、男は攻撃の隙を見て両手の拳銃を発砲し、モンスターの頭部に銃弾を撃ち込む。

 

「……」

 

煙草を咥えて離さない男、バクスターはバックステップして距離を取り、モンスターの囲いから逃れる。二丁の拳銃を前に構え、モンスターがこちらに顔を向けるまで待つ。モンスターの顔が全て自身に向いたと同時に、バクスターは拳銃を発砲。銃弾は一体につき一発ずつに流れ、的確にモンスターの急所を貫いだ。

 

「ガウルぅ!」

 

後方からモンスターが襲い掛かる。バクスターはモンスターの攻撃をかわし、カウンターとしてエルボーを食らわせた。顔面を強打されモンスターが怯んだ所を見て、バクスターは拳銃で撃ち倒す。その後、各方向からモンスターが出現してバクスターに一斉攻撃を仕掛けてきた。対するバクスターは攻撃を避け、捌き、そして蹴り、殴り、撃ってとモンスターを対処する。銃弾を食らったモンスターは糸が切れた操り人形の様に倒れ、粒子となり消えていった。

 

「フゥ~……」

 

バクスターは拳銃をしまうと今まで咥えている煙草を取り、貯めこんだ煙を吐き出す。モンスターがいなくなり、殲滅が終わった事で生まれた余裕だった。市街地の方は相も変わらず衝撃音が絶えずにいる。こっちはとっくに倒したというのに、女神達はまだ手間がかかっているのか? バクスターはそこまで考えた後、端末を取り出して連絡を取ろうとした。

 

「――私だ」

 

発信音が鳴り終え、ようやく連絡先の相手が声を発した。

 

「こちらからの要請は受けたか? 知ってのとおり、今のゲイムギョウ界は――」

 

「生憎だがグラウト、今はもっと大事な話がある」

 

バクスターがそう伝えると、相手のグラウトは無言になる。バクスターの脳内にグラウトの呆然とした表情が浮かんだ。

 

「ラステイションが襲撃を受けた。そっちの女神も一緒に行った」

 

「なんだと!? ラステイションが襲撃を?」

 

グラウトが驚いた後、女の声が聞こえた。何だ、他に誰かいるのか? まあいい。

 

「ああ、とてもベストなタイミングで来やがった。既に市街地が被害を受けている」

 

「そうか……お前は今どこにいる?」

 

「市街地から少し離れた工場の近くだ。ここで凶暴化モンスターの襲撃を受けた……もう片付けたがな」

 

ふと、強い殺気を感じる。まだ出てきたのか、面倒な物だな。

 

「悪いが、俺は女神達を助けにはいけない。またウジャウジャ来やがった。まっ、女神様なら問題なさそうだが」

 

少し皮肉を交えながら伝えると、グラウトとの連絡を切り端末をしまった。背後から唸り声が聞こえ、たくさんの殺気が当てられている。バクスターは煙草を捨て、身体を後ろに振り向かせた。

 

「フン、随分と大所帯でやってきたな。たかが一人の野郎相手に、それぐらい連れてこないと殺せないのか?」

 

無数にいるモンスターを嘲笑い、再び拳銃を取り出す。

 

バクスターとモンスターの戦いはまだ終わっていない。

 

――――――――――――――――――――――

 

〆タルギアの機銃が二人を狙って発射される。界人とウェインは無数の銃弾を擦れ擦れでかわし、〆タルギアへと駆け出す。

 

「さっき出会った個体とは少々異なるが……心配はいらないようだな」

 

「昨日までの俺だったらやばかったけどな。今の俺なら消し炭にできる!」

 

自信に溢れた言葉を放った界人は剣に炎を纏わせ、〆タルギアに斬撃を繰り出す。斬られた〆タルギアは機械の身体を炎に包まれ、消し炭となって消えた。

 

ウェインは懐に潜ると見せかけ、〆タルギアにビーム砲を撃たせる。その隙をついてウェインは飛び上がり、真上から大剣を振り落とす。大剣は〆タルギアを両断し、〆タルギアは左右に割れると同時に爆発した。

 

同胞が倒された〆タルギアは各方面に散らばり、二人の囲んだのだった。

 

「カイト! ウェイン!?」

 

二人の仲間を見つけたデビッドが叫ぶ。目の前のモンスターが流れ弾で倒され、何が起こっているのかと二人の候補生も振り返る。

 

「ロボット!? あんなに沢山……ううん、今はそんな事言ってる時じゃないよね」

 

〆タルギアを相手にしている界人とウェインに加勢しようとする三人だが、突如出現したモンスターによって阻まれる。

 

「げぇっ、またモンスター!?」

 

「ホント鬱陶しいわね、邪魔よ!」

 

次々と出てくるモンスターにうんざりし、ブラックシスターはモンスターに向けて銃を発砲する。パープルシスターとデビッドもブラックシスターと共に攻撃を仕掛ける。

 

「カイトさん達のためにも、退く事だけはできません!」

 

パープルシスターは踊る様な動きで相手を斬りつける『ミラージュダンス』を繰り出し、モンスターの攻撃を避けつつ倒していく。前線に立って戦う二人の候補生に、デビッドは後方のモンスターを撃ち倒して援護する。

 

(しかしどんだけいるんだ? 数十体ぐらい倒してるけど全然減らねぇぞ!)

 

絶え間なく出現するモンスターにデビッドは焦り始めていた。いくらモンスターを倒しても、また新手が来てこの場を埋め尽くされる。そんな状態だった。

 

「きゃああっ!」

 

悲鳴を上げたのはパープルシスターだった。モンスターの一体の奇襲に遭い、ダメージを受けたのだ。

 

『ネプギア!?』

 

デビッドとブラックシスターの声がハモり、二人は奇襲を仕掛けたモンスターに銃撃する。そのモンスターは倒したものの、他のモンスターの視線が一斉にパープルシスターへと向いた。

 

「やばっ、ネプギアに狙いを付けやがった!」

 

思わぬ攻撃を受け、怯んだパープルシスターは上手く体勢を整えられずにいた。受けたダメージが大きかったのだ。これをチャンスとし、モンスター達はパープルシスターに攻撃を仕掛けようとする。

 

「しっかりしなさいよネプギア!」

 

ブラックシスターは口ではそう言うものの、パープルシスターに襲い掛かるモンスターを次々と倒し、彼女を助ける。今度はブラックシスターを狙うモンスターをデビッドは倒し、彼女と背中合わせとなった。

 

「ユニ、後ろは俺がやる! 気にせず前方に集中してくれ!」

 

「アンタだとちょっと不安だけど……頼んだわよ!」

 

五人がモンスターやロボットと戦ってる一方、エリナは黒く変色したエンシェントドラゴンと対峙していた。

 

「はああああっ!!」

 

先に仕掛けたのはエリナだった。倒壊したビルの屋上から跳躍し、エンシェントドラゴンへと剣を振るう。対するエンシェントドラゴンは爪を出し、エリナの剣を防いだ。

 

「えっ!?」

 

自身の剣を難なく防がれた事にエリナは動揺した。エンシェントドラゴンは剣を防いだまま、もう片方の手をエリナに振り落とそうとする。エリナは剣を引っ込め、片足に雷を纏わせる。そして振りかかる爪を蹴り上げ、攻撃を跳ね返した。

 

「雷を纏った蹴りはどうかしら? まだこんな物じゃすまさないわよ!」

 

そう言い切ると今度は剣に雷を纏わせ、エンシェントドラゴンを一閃する。これで倒せたと思い、エリナは足場の建物へと落ちていった。

 

「女神様に仇なすからそうなるのよ……次があるのなら精々、隅で悶えてなさい――」

 

着地したエリナに上空から何かが向かってくる。剣を構え、真上を向いたエリナはその正体を確認するとさらに驚愕した。傷を負わせたはずのエンシェントドラゴンがこちらに飛んできたのだ。

 

(そんな……普通なら、良くて致命傷のはずなのに?)

 

さっきの一撃を物ともしないエンシェントドラゴンに、エリナは呆然とするが振り上げられた拳に気づき、すぐに今いる建物から離れる。エンシェントドラゴンの拳は建物に突き破り、建物は粉々に崩れ去った。

 

「なあっ!?」

 

〆タルギアと戦っている界人は自身に落ちてくる瓦礫に驚く。機械音がして、〆タルギアが界人に体当たりを仕掛けてきた。

 

「……あっ、行けるか?」

 

何かを閃いた界人は〆タルギアの体当たりを避けずに待ち構えた。距離が縮まり、〆タルギアがギリギリの場所までに達すると界人はやっと回避の動作を取り、〆タルギアの体当たりをかわした。攻撃を避けられた〆タルギアは落ちてくる瓦礫に埋もれ、身動きができなくなる。

 

「どうやら落ちてくる瓦礫には把握できなかったようだな! オマケにこいつも食らいな!」

 

界人はそう言うと剣で地面を弾いて炎を撃ちだす。地面を這う炎は瓦礫で身動きが取れない〆タルギアへと流れ、そのまま瓦礫ごと〆タルギアを燃やしていった。

 

「よしっ、作戦通り! ……とは言ったけど、何で瓦礫が崩れ落ちたんだ?」

 

〆タルギアを倒すのに利用したものの、界人は先ほど崩れ落ちた瓦礫について疑問を抱く。しかしわらわら出てくるモンスターと、隣合わせとなったウェインを見てすぐに戦闘の体勢に入った。

 

「よう、ウェイン」

 

「また会ったな、カイト。ロボットの次はモンスターだ、全力で行け」

 

「分かってるって、来いよモンスター!」

 

威勢のいい言葉を吐き、界人はモンスターの群れへと駆け出した。燃え盛る炎で派手に敵を焼き切る界人、敵の攻撃を軽くいなし、トリッキーな動きで倒すウェイン。戦い方が対照的な二人は息を合わせながらモンスターを対処していく。

 

「あの怪力、敏捷性……さすがに並の危険種じゃないわね」

 

場面は戻り、危険種と戦うエリナは黒いエンシェントドラゴンの強さを改めて確認する。別の建物に飛び移ると剣を振りぬき、エンシェントドラゴンへ雷を撃ちだした。

 

「!!」

 

エンシェントドラゴンは爪から衝撃波を繰り出し、エリナが放った雷を打ち消す。攻撃は防いだものの、エリナの姿が消えている事に気づきエンシェントドラゴンは街中を探し始める。

 

「下じゃないわ、上よ」

 

上空から声が聞こえ、エンシェントドラゴンは振り返って空を見上げる。すると真上にはエリナがおり、さっきと同じように剣に雷を纏わせていた。

 

「デュアル・ライトニングスラッシュ!」

 

技名を言い放ち、エンシェントドラゴンに斬撃を与えた。相手が麻痺した事を確認し、エリナは次の攻撃に移る。今度は剣を突き刺してエンシェントドラゴンを吹き飛ばし、地面へと突き落とした。エンシェントドラゴンは奥底へと沈められ、その上を瓦礫が埋めていく。

 

「今度こそ終わりよ」

 

エリナは勝利を確信し、息絶えたであろうエンシェントドラゴンにそう告げる。建物の屋上から街を見下ろすと、仲間達が無数のモンスターと戦っているのが見えた。仲間の危機と見て、エリナが救護に向かおうとしたその時。

 

「――――っ!!」

 

背後からコンクリートが砕かれる音が鳴った。その衝撃を直に感じたエリナは思わず息を飲んでしまう。どうして? 確実にダメージを与えたはず。それでも大丈夫だっていうの?

 

おそるおそる振り返ると異質で、威圧感のある黒いエンシェントドラゴンがそこに立っていた。予想外に傷を負ってしまったのだろうか、エンシェントドラゴンの表情が不機嫌そうに見える。

 

「怒ってるの? 自慢の身体ごとプライドを傷つけられて、激昂しているってところかしら? 私もよ」

 

怒っているのはエンシェントドラゴンだけではない。エリナもまた、エンシェントドラゴンの形相を見て怒りがこみ上げていた。

 

「女神様を傷つけただけでも罪深いのに、それを棚に上げて自分勝手に怒るなんてね……身をもって償いなさい!」

 

エリナはすぐさま剣を振り払い、直情的にエンシェントドラゴンへ飛び掛かった。しかし――

 

 

――カァン!

 

 

全力で振るったはずの剣が片手で、一切動かずに防がれてしまった。さっきのとは違い、今のはありったけの力を入れたはずだ。それを片手だけで?

 

「グオオオオォォォォォウウ!!」

 

怒りの咆哮と言える雄叫びを上げ、エンシェントドラゴンは片腕を振り出しエリナを殴り飛ばす。吹き飛ばされるエリナは建物を突き破り、最後には壁にめり込んでしまった。

 

(今までと違う……全力を出したの? 今の私じゃ倒せないって言うの?)

 

朦朧とする意識の中で力の差を感じるエリナ。追い打ちをかける様にエンシェントドラゴンが突進し、ギラギラと光る爪をエリナに向けて振り上げた。

 

「ガルルウウゥゥ!!」

 

エンシェントドラゴンの雄叫びと共に衝撃波が放たれ、建物はあっさりと崩れ去った。

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