ネプテューヌEX ~とある青年のエクスペリエンス~   作:S・TOM

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読者の皆様、メリークリスマス!
小説本編とは関係のない事ですが。


第18話 救援

どこからか雄叫び声がこちらにまで響いた。この声、あの黒いエンシェントドラゴンか? そいつと戦ってるエリナは今どうなってる? ウェインは? 俺が考えにふけてるのを見逃さず、あちこちにいたモンスター達が襲い掛かる。

 

「ちぃっ、全員まとめて燃え尽きろ!」

 

前方の剣を大きく振り、炎を発生させる。攻め入ったモンスター達は炎に飲み込まれ消し炭になったが、それを補完するように大量のモンスターが出現した。

 

「切りがねぇ、いつになったら終わるんだ!?」

 

途方もないモンスターの大群にうんざりする。デビッドやエリナ、それに女神達の状況が分からない今、早く片付けないとまずい。立て続けに襲い掛かるモンスターを倒していくと、あるモンスターが目についた。あのライオンの様な獣毛に鋭く尖った爪……フェンリルか。薄々と気づいていたが、群れの中には危険種も混じっている。

 

「あぁもう、一々相手にするのもめんどくせぇ!!」

 

剣から炎を発生させてモンスターを燃やしていったが、ふと身体が重くなる感覚に陥った。

 

(疲れているのか、俺? まだモンスターがたくさんいるのに、これじゃ駄目じゃねぇか……!)

 

疲れが溜まっているせいか、体勢を崩した俺を見て威嚇していたモンスター達が一斉に飛び掛かった。

 

「――こいつに手出しはさせねぇ!」

 

だが、モンスターの一斉攻撃が俺に届く事は無かった。何故なら俺の目の前に紅い髪の少女が立ちはだかり、そして――

 

「オラオラオラオラオラオラオラァ!!」

 

無数の繰り出す拳をモンスターに叩きこみ、一網打尽にしてしまったからだ。何だ……今のは?

 

「おい大丈夫か、怪我は!?」

 

俺の前に現れた少女は振り返って安否を聞いた。二つ結びにした紅髪。白のYシャツに橙のネクタイ、灰色のスカートを着ている。

 

(驚いたぜ、何体もいるモンスターをいともたやすく倒すなんて……何者なんだ?)

 

強い。紅髪の少女に唯々感心していると近くから唸り声が聞こえた。フェンリルだ。どうやら一匹だけあのラッシュから逃れたようだ。

 

「――よっと」

 

飛び掛かろうとしていたフェンリルをまた一人、行く手を阻んだ。声色からして男だ。そいつは回し蹴りをフェンリルの身体に入れると、すかさずハイキックを繰り出して頭部を蹴り上げる。宙に浮いたフェンリルに追尾するように飛び出し、回転蹴りでフェンリルを地面に叩き落した。蹴りを数発食らったフェンリルは消えていき、倒した男は地面に落ちていった。

 

「仕留めそこないましたね、うずめさん。よりにもよって危険種のフェンリルを残すなんて……ボク達だったからよかったけれど」

 

「はははっ、悪いなくろっち」

 

『うずめ』という少女に『くろっち』と呼ばれた男はきょとんとした表情になった。こっちは見覚えのある姿だ。黒のポニーテイル。黒のジャケットに赤いTシャツ、黒のジーパン。間違いない。

 

「くろっち……それってボクの事ですか?」

 

「そうだ、クロトだからくろっちだ」

 

自信満々に答えられたくろっち、もとい『赤前(あかさき)黒斗(くろと)』は付けられたあだ名に対して複雑そうな顔をする。黒斗は同じ特命隊のメンバーであり、確か第二班に所属している。何故ラステイションに?

 

「黒斗、おまえ何でここに?」

 

疑問を口にすると黒斗は俺に顔を向けて答える。

 

「指令が来たんですよ。ラステイションで応戦している君達第四班に助成しろってね。そのとき出会ったうずめさん達と一緒にラステイションに駆け付けたら……見ての通り、酷い有様だ」

 

「指令? それじゃあ他の奴らも来ているのか?」

 

デビッド達の方を見るとさっきまでいなかったはずの一人が紛れていた。迷彩ヘルメットにタクティカルベストを身に着けた少女だ。二丁の猟銃と体術を駆使し、デビッド達の周囲を囲むモンスターを次々と迎撃する。小柄な身体に相応しく身軽な動きで近くのモンスターを蹴り飛ばし、手に持っている猟銃で遠距離にいるモンスターを発砲。二発撃ったところで使い捨ての猟銃を投げ捨て、もう一方の猟銃を持ち直す。最小限の動作でモンスターの攻撃を全てかわすと、離れたところを猟銃を構え射撃の態勢に移った。二発ほどで撃ち尽くした猟銃を捨て、何もないところから猟銃を作り出す。そして新たな猟銃を発砲してモンスターを撃ち抜いていった。

 

撃って、捨てて、作り出し、撃ってと繰り返し、少女はモンスターの数を減らしていった。

 

「えっ、今のなに!?」

 

少女の活躍によって、周囲のモンスターが一瞬にして消えた事にネプギアは驚嘆する。ネプギアに限らず、デビッドとユニも驚きの色を示していた。モンスターがいなくなったことを確認し、少女は弾切れになった猟銃を投げ捨てる。

 

「大丈夫ですか、パープルシスター様」

 

ネプギア達の方を振り向き、口から出たのは相手の身を案じる声だった。少女は『タカナシ・マシロ』、黒斗と同じく第二班に所属している。

 

「マシロ、助けに来てくれたのか?」

 

自分達を助けたことにデビッドは嬉しそうな表情をしていた。マシロはデビッドを見ると、冷たくこう言い放つ。

 

「お前をじゃない、女神様をだ」

 

「えっ、あっ、そう……」

 

マシロにきっぱり言われたデビッドの表情はしょんぼりとした物になった。同じく助けられたネプギアはマシロに感謝の意を表する。

 

「マシロさん、ですか? 助けてくれてありがとうございます」

 

「礼には及びません。私はただ、命令でここに来ただけなので」

 

「モンスターを一瞬で倒すなんて……もしかして、アンタも特命隊なの?」

 

ユニの問いに対し、マシロは頷いて肯定した。

 

「うぅ……デビッドはともかく、アンタみたいなのが十人もいるなんて」

 

「えっ? ユニ? それどういう意味だ? へっ?」

 

「どうたっていい。それよりもやる事があるぞ」

 

マシロの言う通り、減った分を補充するようにモンスターが出現してきた。気づいたネプギアは武器を構え、続いてデビッドも拳銃を構えようとしたが、何故か二丁あるはずの拳銃が一丁だけしか無かった。

 

「あれ、もう片方ねぇぞ……どこだ? どこに落っことしたんだ!?」

 

「ここだ、ここ」

 

拳銃が片方しかない事にデビッドは慌てふためいてしまう。その様子に呆れたマシロは足元に落ちている拳銃を拾い上げ、デビッドへと投げ渡した。

 

「装備品の管理はしっかりしろ、女神様の手を煩わせるな」

 

「ははは……以後、気を付けます」

 

マシロに咎められ、再びしょぼくれたデビッド。気を取り直してマシロを含めた四人はモンスターの大群と対峙する。

 

「地竜激掃刃!!」

 

場所は変わって技名らしき言葉を発したのはウェイン。ウェインが地面に剣を刺すと、モンスターの足元に尖った土塊がピンポイントに生み出された。土塊は胴体を貫き、モンスターは粒子を出しながら消えていく。敵が見えなくなり安堵するのも束の間、またしてもモンスターが出現しウェインへと駆け出す。

 

「エンドレスバトルか……きりがない」

 

大剣を構えたウェインの両側を二人が通り過ぎた。一人は紅髪、もう一人は紫髪。そして二人ともロングヘアだ。……見るからに女か?

 

「はあぁぁっ!」

 

「とりゃあぁー!」

 

紅髪は紅い刀身の太刀、紫髪は二本の大型剣を武器に、ウェインが相手にするはずだったモンスターの群れに突撃し、絶妙な連携で攻撃をしていく。片方の攻撃が終わるともう片方が攻撃を開始し、相手の反撃を許さない状況に持ち込んでいった。

 

「モンスターの一体がそっちに逃げたわ!」

 

「おっけー! 私に任せて!」

 

紅髪の声を聞き、紫髪はこちらに逃げたモンスターを大型剣で叩き斬った。そして紫髪は襲い掛かる一体のモンスターの攻撃を二本の大剣を防ぐと、紅髪の元へ吹き飛ばす。

 

「カエデ、お願い!」

 

「っ! 分かったわ!」

 

飛んでくるモンスターを確認した紅髪の『カエデ』。紅い太刀が光に包まれ、槍に姿を変えた。カエデは槍を大きく振り払い、周囲のモンスターもろとも一掃した。

 

「おぉ、初対面とは思えない完璧なコンピネーション! カエデとは運命の糸で結ばれてるような気がしてならないよ!」

 

「そうね、同感よ。こんなにも早く貴女と気が合うなんて、私も嬉しいわ!」

 

波長が合う事に二人は喜び、目の前にいるモンスターを薙ぎ払っていく。それを見てウェインは安心したのか、力が抜けて崩れ落ちそうになったが、剣を支えとして体勢を保った。

 

「神奈楓……第二班が来たのか。ならば紫髪の少女は誰なんだ?」

 

二人の連携を目の当たりにして、ウェインが紅髪の名を呟いた。『神奈(かみな)(かえで)』。モンスターと戦う二人の片方、赤髪の少女の名だ。しかしウェインは同時にもう片方の紫髪についての疑問も呟いていた。確かに、あの紫髪の少女は第二班にはいない。それどころか特命隊の中にもいない、まったく知らない少女だ。……正確には知らない()()だ。どこかで見たことがある、どこかで――

 

「ゲイムギョウ界の平和と自由を守るため、仮面の戦士はここに現る!」

 

大空に響く掛け声が聞こえた。この声、あいつか? 上空を見ると金色のパワードスーツを纏った何者かが建物に立っていた。そいつは建物から飛び出すとモンスターの方へ落下していき、着地の際に放たれた衝撃波でモンスターを退ける。パワードスーツは着地した時の姿勢からゆっくりと立ち上がり、胸に思いっきり拳を当て名乗りを上げる。

 

「正義の仮面ヒーローアルド、ここに見参!」

 

『アルド』、金色のパワードスーツを着てる時のあいつの名前だ。本来の名前は『ブライン』。金色のパワードスーツを纏って戦う、一風変わった第二班のメンバーだ。しかし名乗りを上げるとは。ヒーロー物によくある事だが、まさかここで直に見るとは思わなかった。

 

「カッコいいぜ、ぶらっち! やっぱヒーローってのはこうでなくちゃな!」

 

「……この状況で名乗りを上げるなんて随分と余裕そうですね、アーマードクーラーは」

 

『ぶらっち』と『アーマードクーラー』。どちらもブライン、もとい今はアルドの渾名……なのだろうか。まあいい。今の名乗りに喜ぶうずめとは対照的に、冷めた目でアルドを見る黒斗。二人の視線をまったく意に介していないアルドはさらに続ける。

 

「市民を苦しめるモンスターの悪行、見過ごすわけにはいかない。よってこの俺が、お前達を成敗する!」

 

アルドは勢いよく駆け出すと、接近したモンスターに拳を叩きこんだ。ノックアウトして消えていくモンスターに目をくれず、驚きの速さで一体一体に攻撃を加えていく。少し見てだけだが、あれがアルドの力なのか。これは心強い。

 

「さてと、カイトさん」

 

黒斗に呼び戻された俺は、投げ渡された栄養ドリンクらしき物を手に取る。

 

「ネプビタンです。それを飲んで元気出してください。まだまだ来ますよ」

 

辺りを見るとモンスターが出現しており、俺達に敵意をぶつけていた。モンスターが次々増殖する状況は変わっていないが、第二班が助けに来た事でさっきよりは楽になった。

 

「おう! この俺がいくらでも相手になってやるぜ! なぁ、かいっち!」

 

「かいっち、か……何だか嬉しいな。ああ、俺も一緒にやってやる!」

 

俺は渡されたネプビタンを一気飲みすると、すぐに剣を構えて戦闘態勢に移る。仲間が助けに来た今、みっともない所は見せられない。

 

「という事で、俺から先に行かせてもらうぜ!」

 

「よし、次は俺だ!」

 

「やれやれ、とことん愚直な二人だ」

 

俺が一足先にモンスターの群れに飛び込むと、黒斗とうずめも後に続くように飛び出した。炎を纏わせた剣を振るい、斬りはらうと同時に炎を前方に撒き散らす。斬られたモンスターはもちろん、飛び散った炎を被ったモンスターは徐々に焼け焦げていき、跡形もなく消えた。俺は横から飛び掛かったモンスターを斬ると、剣を用いて地面から炎を撃ちだす。炎は一直線に這って行き、数体のモンスターをまとめて焼き尽くした。

 

「二人で行くぜ、くろっち!」

 

「分かったよ、うずめさん!」

 

黒斗とうずめはモンスターの一群に突撃し、二人同時に攻撃を仕掛ける。黒斗は足、うずめは拳を武器にモンスター達を蹴散らし、残る危険種のフェンリルに目を向けた。

 

「だあああぁぁーーっ!!」

 

うずめは手のメガホンらしき物を用いると、フェンリルに向けて大声と共に音波を発した。予想外の攻撃にフェンリルはダメージを受け、身体を怯ませる。その瞬間を機に二人は駆け出し、フェンリルの目の前まで接近し――

 

『オラオラオラオラオラオラァ!』

 

拳と脚のラッシュを繰り出し、フェンリルの身体に叩き込んだ。無数の打撃を受けたフェンリルは建物にめり込み、その衝撃で崩れ落ちた瓦礫に埋め込まれていった。

 

「……強ぇ、どいつもこいつもよ」

 

駆け付けてくれた第二班の戦いぶりを見て、腹の底から嬉しさがこみ上げてくる。俺も負けてはいられない。そう決心すると意識をモンスターの方へ戻し、紅く染まった大剣を振るいあげた。

 

――――――――――――――――――――――

 

自分は一体どうなったのだろう。自身の記憶が正しければ、私はあの黒いエンシェントドラゴンに完膚なきまでに叩きのめされたはずだ。

 

私はあの時、黒く変色したエンシェントドラゴンに戦いを挑んだ。あいつがパープルハート様を下したと思うと反吐が出そうになる。私はありったけの力を使って攻撃したがまったく通じず、逆に返り討ちに遭う羽目になった。本来ならこの身体は今、バラバラに切り刻まれたはずだ。そうじゃないのはあいつが攻撃を外したからだろうか? どうして? 私は瓦礫に埋め込まれて動けなかったはずだ……いや、今や瓦礫の冷たく硬い感触はない。代わりにあるのは暖かく、そして柔らかな感触だった。この感触は……誰かに抱きかかえられているのだろうか? 一体誰なのだろう――

 

「――――ょうぶ?」

 

嗚呼、声が聞こえる。恋い焦がれていたあの人の声。幼少のころから惹かれていた、愛しい女神様の声。

 

「うんっ…………パー……プル、ハート、様……?」

 

ぼやけていた景色がはっきりすると、そこには女神様の顔があった。プラネテューヌの守護女神、パープルハート様の美しいお顔が。

 

「……よかった、無事だったのね」

 

私の無事を知ったパープルハート様は穏やかな表情を見せた。パープルハート様、貴女が私を助けてくださったのですね。

 

「ごめんなさい、貴女に苦労をかけさせてしまったわね。私が油断していなければ、こんな事には……」

 

「そんな、パープルハート様が謝る事は何もありません! 私が――」

 

思わぬ言葉に私は声を荒げて否定しようとするが、忌まわしき奇声によってその声はかき消された。黒いエンシェントドラゴンが、愚劣にもパープルハート様に攻撃を仕掛けようとしたのだ。

 

「トルネードソード!」

 

パープルハート様に攻撃はさせまいと、もう一人の女神様がエンシェントドラゴンを阻む。ラステイションの守護女神、ブラックハート様だ。プリズム状に輝く大剣を振るい、エンシェントドラゴンに斬撃を加えた。思わぬ攻撃を受けたエンシェントドラゴンは、ブラックハート様に標的を変え睨みつける。

 

「さっきのは効いたわ、少しだけね」

 

小馬鹿にするように言うブラックハート様にエンシェントドラゴンは激昂し、雄叫び声を上げて爪を振り落とす。しかしブラックハート様は余裕を崩さないまま飛びあがり、爪による攻撃を回避した。

 

「グオォウ!?」

 

攻撃が外れた事により、エンシェントドラゴンの動きに隙が生じる。その隙をブラックハート様は見逃さず、上空からドロップキックをお見舞いし、地上に叩き落したのだった。

 

「早くしなさいよ。いつまでも私だけ相手にさせないで頂戴」

 

自分だけに戦わせてる事を不満そうな表情をするブラックハート様。だがブラックハート様は明らかにエンシェントドラゴンを圧倒しており、助けがいるような状況ではない。パープルハート様に対する言動に私は少しばかり腹が立ったが、パープルハート様は微笑んだまま頷き、抱きかかえている私の方に目を向けた。

 

「そろそろ降ろすわ……立てるかしら?」

 

「えっ……はい、立てます」

 

パープルハート様の側から離れる事は残念だが、今は戦闘中だ。パープルハート様は私を建物の屋上に降ろすと、エンシェントドラゴンの方を振り向いた。

 

「パープルハート様……絶対に、あいつを倒してください!」

 

「ええ、女神として誓うわ」

 

パープルハート様は私にそう言うと、エンシェントドラゴンへまっすぐに飛んでいった。私は下でモンスターと戦っている仲間達を見て、加勢するため飛び降りていった。




今回登場したキャラの中で
「赤前黒斗」は澪刹弥凪さん(ID:28685)
「タカナシ・マシロ」はローハインさん(ID:46145)
「神奈楓」はミオンさん(ID:36953)
が考えてくださいました!

そして、ローハインさんがエリナを描いてくださいました!

【挿絵表示】
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