ネプテューヌEX ~とある青年のエクスペリエンス~   作:S・TOM

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第19話 再来と同一人物?

特命隊と女神がモンスターの討伐に当たっている一方、トレビスとアイエフは街にいる市民の救助、コンパは避難所に留まり、怪我人の治療に回っていた。倒れ伏していた男に襲おうとしたモンスターをトレビスが倒し、男を助ける。

 

「大丈夫か!? 避難所はあそこだ、早く行け!」

 

「あっ、あぁ! ありがとう!」

 

助けられた男が街から出るのを見届けた後、トレビスはアイエフと一緒に数体のモンスターと対峙する。

 

「何体も倒してきたけれど、一向に減らないわね……どうなってるのよ?」

 

「確かにモンスターの数は普通じゃない。何者かが糸を引いている、俺はそう考えている」

 

トレビスの言葉を聞き、アイエフは一瞬考え込む。しかしモンスターが攻撃を仕掛けた事を見て、拳銃で迎撃する。トレビスの正確無比な射撃で予想以上にモンスターが減ったが、それでもアイエフの目の前まで近づいた個体もおり、アイエフに飛び掛かった。

 

「ちぃっ!」

 

アイエフはすぐにカタールを取り出し、飛び掛かるモンスターを斬りはらった。トレビスも残りのモンスターを順々に撃ち抜き、この地帯に潜んでいるモンスターを全滅させた。

 

「終わった……わね。もうここに人やモンスターはいないようだから、先に進みましょ――」

 

「ッ! 足音!?」

 

アイエフが言い終わるより先にトレビスが後方を振り返り、拳銃を発砲した。

 

「トレビス!?」

 

トレビスの唐突な行動に驚いたアイエフ。後ろを振り返るとそこには見覚えのある人物が立っていた。直接面識はないが、二人には目の前の人物が誰か理解していた。真っ黒な髪とジャケット。肉食獣の様な鋭い眼差し。

 

「なんなんだよテメェら……とことん俺をコケにしやがってよぉ~?」

 

ルーガス。モンスター凶暴化の現象をバラまいていた男だ。今のルーガスは不機嫌そうな表情をしており、身体の至る所に傷を負っていた。

 

「ルーガス……! どうしてここに?」

 

「決まってるだろうが、このクソッタレな街をぶち壊すために来たんだぜ? それがテメェらのせいで台無しだがなぁ!」

 

ルーガスの怒声を聞き、アイエフは拳銃を構えた。

 

「ここで起こっている騒動はアンタの仕業だったのね。目的はやっぱりねぷ子?」

 

「それってアホみてぇな女神共の事かぁ? そりゃそうだろうがぁ!? あのアマは俺に泥を塗りやがった……それが許せねぇ!」

 

「なるほど、逆恨みね。理由はそれだけかしら?」

 

逆恨み。アイエフが言い放ったその言葉に反応し、ルーガスの表情はみるみる歪んでいく。

 

「テンメェ~……あのクソ女神といい、癪に障る様な事ばかりほざきやがってよぉ~!」

 

「……頭に血が上るの速すぎない?」

 

ルーガスのあまりの沸点の低さに驚くアイエフ。だがルーガスが取り出した二つの物体に目視し、さらに警戒を強めた。

 

「ぶっ殺す! テメェらも! クソ女神共も!!」

 

「来るぞ、アイエフ!」

 

取り出された物は短機関銃だった。ルーガスは二丁の短機関銃を両手に、二人への攻撃を始めた。トレビスの掛け声の後、動き出した二人は瓦礫の陰に隠れ、撃ち出された短機関銃の弾丸を防いだ。

 

「何なのよアイツ!? 突然キレて撃ってくるなんて、短気にも程があるわよ!」

 

「アイエフ! 俺が奴の注意を引く。その隙に近づいて動きを封じてくれ!」

 

アイエフに言い放った後、トレビスは囮となるため瓦礫から飛び出す。そして駆け出すと共に拳銃を発砲し、ルーガスを挑発する。

 

「グハァ! やりやがったなクソが!!」

 

思惑通り、銃弾を受けたルーガスの注意はトレビスの方に引き寄せられた。無数に飛んでくる銃弾を避け、トレビスは一丁の拳銃でルーガスの銃撃に応戦する。

 

「……すごいわ。一発も喰らってない……ってボーっとしてる場合じゃないわ」

 

ルーガスは囮のトレビスに意識を傾けており、こちらには気づいていない。アイエフはトレビスの提案に乗り、ルーガスの元へ走り出した。拘束すればこちらのものだ。

 

「このまま突っ走って――えっ!?」

 

しかし事は思い通りには進まない。ルーガスの身を守るためか、はたまた偶然か。数体のM-3や〆タルギアが前方から現れ、アイエフの行く道を阻んだ。

 

「あれは研究所で見たロボット!? まさかラステイションにも出てくるなんて……」

 

突如出現したロボットにアイエフだけでなく、囮を務めるトレビスも目を見開いたがすぐに平然を取り繕い、ルーガスの銃撃を回避する。ルーガスを無力化するための作戦が裏目に出てしまい、アイエフとトレビスは分断させられてしまった。

 

「考えが甘かった……これじゃ近づく所じゃないわ!」

 

M-3による電撃や〆タルギアによる銃撃をかわし、アイエフは瓦礫の陰に潜り込んだ。攻撃を外し、目標を見失ったロボットは分散して捜索を開始する。

 

「あのロボットをまとめて相手をするのはきついわね……ここは一体ずつ相手にした方がいいわね」

 

ネプテューヌ達ならともかく、自分がロボットを倒す事は困難だ。アイエフは瓦礫から瓦礫に移動し、ロボットを観察して好機を伺った。

 

「…………」

 

それらの事柄を見つめる者が、少し離れた建物の屋上に立っていた。以前ルーガスを助けた、漆黒のポニーテールに黒い服装をまとった青年だ。翻弄されているルーガスを見た青年は溜息を吐くと、黒い霧に包まれ消えていった。

 

――――――――――――――――――――――

 

上空から誰かが飛び降りてきた。エリナだ。黒いエンシェントドラゴンと戦っていたはずのエリナが飛び降りてきたのだ。俺の背後に着地すると剣から雷を散らせ、飛び掛かる数体のモンスターを一瞬にして切り刻んでいった。

 

「エリナ!!」

 

「待たせたわねカイト。背中は私が守るわ」

 

黒いエンシェントドラゴンについて聞きたいことはあるが、今はエリナに背中を任せよう。俺はエリナに頷き、前を向いてモンスターに突撃する。

 

「ていりゃあ!」

 

大剣を横に振るい、炎の線を描くと共に斬撃を繰り出す。斬撃を受けたモンスターは倒れるのを見て、俺はさらにモンスターの群れへ炎を放つ。剣からの衝撃で身体がよろめいたが、それだけ炎の威力は凄まじく、モンスターの群れを焼き尽くしていった。

 

「ガゥルルゥ!」

 

「――させないわ」

 

炎を放った隙を突き、突進してくる狼のモンスター。だがその前をエリナが立ちふさがり、素早い動きで繰り出された一閃によって倒された。

 

グラッツェ(ありがとう)、エリナ!」

 

もしエリナがいなかったら、モンスターの攻撃を食らっていただろう。自分を助けてくれたエリナに感謝し、俺は大剣を構えて突っ走っていく。

 

「グロオオオォッ!」

 

「上からくるわよ、カイト!」

 

エリナの声を聞き、モンスターが隙を突いて襲い掛かってくるのに気づく。俺は大剣を振るい、飛び掛かるモンスターを斬った。いつの間にかモンスターの数は少なくなっていた。それでも絶えずに襲ってくるがさっきより対処は容易く、俺の炎とエリナの雷で全て倒した。

 

モンスターを蹴散らした先にはウェイン達がいた。楓と紫髪が前衛、ウェインが後衛に着き、モンスターを相手にする。

 

「ここは別々に行くわよ!」

 

「はいなー!」

 

楓と紫髪は二手に分かれ、わらわらいるモンスターを攻撃する。太刀で斬りはらう楓に、大剣の二刀流で叩きつける紫髪。一人だけでもモンスターへの制止力はとても強く、迂闊に手を出させなかった。

 

「動きが止まったな、そこを突くのは容易い! 氷塊降雨(アイスレインフォール)!」

 

二人を警戒するモンスターをウェインが見定め、魔法で上空から無数の氷の塊を降らせた。氷はモンスターを押しつぶし、確実に数を減らしていく。楓と紫髪は氷の雨を避け、逃れようとするモンスターを次々と倒す。そしてウェインも、辛うじて氷から逃げ出したモンスターを斬っていった。

 

楓と紫髪のコンビネーションにウェインの援護魔法。それらが組み合わさった三人の猛攻に対し、モンスターは為す術もなく全て倒された。

 

「……終わったわね。貴女達のおかげで倒せたわ、ありがとう」

 

「ふふ~ん、ざっとこんなものだよ!」

 

楓に礼を言われ、得意げになる紫髪。……誰かに似ている。顔といい、声といい。誰なんだあいつは? ウェインも同じ事を考えているのか、顎に手を当てて紫髪の少女をただ見ていた。

 

「とりゃ!」

 

「せいっ!」

 

今のは黒斗とうずめだ。激しい打撃音と共にモンスターを吹き飛ばし、群れを蹴散らしていく。うずめがメガホンで怯ませ、黒斗が蹴り技で倒す。楓と紫髪に引けを取らない、抜群の連携攻撃だ。

 

「アクティブブロー!」

 

そしてアルドも負けてはいなかった。技名を言って動きが速くなり、拳と蹴りを複合したラッシュ攻撃を繰り出す。その攻撃はだんだん速くなり、モンスター達を翻弄していった。

 

「全力でいきます!」

 

「了解!」

 

一方デビッド達。ネプギアが飛び出し、その後をマシロが追う。踊る様な動きで直前のモンスターを斬り、ビームを撃ちだして数体の群れを飲み込む。ネプギアの身を守るようにマシロが隣に立ち、襲い掛かるモンスターを体術でいなし、猟銃で撃ち抜いて行った。

 

「狙い撃つわ! しっかり当てなさいよ、デビッド!」

 

「拳銃の扱いには慣れてるんだ、心配はいらねぇぜ!」

 

デビッドとユニは遠距離から射撃し、モンスターの群れに応戦する。二人が撃ち出した弾丸がモンスターを襲い、身体を貫いていく。群れに混じっているネプギアとマシロはしっかりと避け、仲間に撃たれる事は無かった。

 

それぞれが力を合わせモンスターを倒していき、ついにはこの街にいる全てのモンスターを討伐したのだった。

 

「すげぇ……終わりやがった」

 

「当然よ。私達特命隊と候補生が入ればあんなモンスター、どうってこと無いわ」

 

片付いた事に感嘆する俺に、エリナは自信たっぷりに言った。

 

「ははっ、どうだ! 俺達を倒そうなんざ十年早いぜ!」

 

「数は多かったけど何の事はない、大して苦戦する事はありませんでしたね」

 

「ヒーローの完全勝利! このアルドに不可能はない!」

 

黒斗とうずめも最後の一体に拳と蹴りを叩き込み、アルドもモンスターを倒し終え堂々と佇む。

 

「はぁ~終わりました……」

 

「外敵全滅……パープルシスター様、お怪我はありませんか?」

 

「やるじゃないデビッド! ちょっと見直したわ」

 

「当たり前だ! 俺も特命隊に入ったんだぜ!」

 

デビッド、マシロ、ネプギア、ユニの方も終わり、使っていた武器を仕舞った。

 

「楓さん、こちらの方は全部終わりましたよ」

 

「僕の方もね。凶暴化モンスターぐらい、この僕にとっては朝飯前さ」

 

黒斗に続き、アルドから姿を変えたブラインも楓に報告する。さらに続くようにマシロも口を開く。

 

「二人と同じだ、何度も言う必要はない」

 

「みんな、無事に終わった様ね。怪我なんて絶対しないって私は思っていたけど」

 

「まさに圧倒的大勝利! だね、カエデ!」

 

紫髪の歓喜の声に気づいたのか、ネプギアとユニが紫髪に目を向ける。エリナも反応して紫髪を見ると、たちまち驚きの表情になった。

 

「パープルハート……様?」

 

「お姉ちゃん!? それにうずめさんも!」

 

ネプギアの発言に、俺達は思わず驚愕する。ただ第二班の方は「へぇ~」という感じであまり驚いておらず、候補生とうずめも知っていたのか驚かなかったため、驚いたのは第四班だけだった。

 

「ユニ、あの紫髪の可愛い子がネプギアの姉ちゃんってどういう事だ? 確か、ネプギアの姉ちゃんって小っちゃかったよな?」

 

「えーっとね……あの人もネプテューヌさんなのよ。ただネプギアのお姉ちゃんの方とは違うって言うか、その……」

 

驚いた。目の前にいる紫髪も『ネプテューヌ』なのか? まさかあのパープルハートと同じ名前の奴がいるとは。そういえばどこかで見たような姿だと思ったら、あの小さいネプテューヌにそっくりなんだ。何でなんだ? 一体どうなってるんだ、このゲイムギョウ界は?

 

「ネプテューヌ……という事は貴女、パープルハート様なのですか!?」

 

目の前の少女がネプテューヌという事に、冷静さを失ったエリナが聞く。顔が真っ赤になっている。これは頭も真っ白になってるな。

 

「確かに私はネプテューヌだけど、パープルハートじゃないんだ。説明するとちょっとややこしくなっちゃうけど」

 

パープルハートじゃない。大きいネプテューヌにそう言われたエリナは言葉を失い、そのまま動かなくなった。パープルハートを信仰するエリナにとって、これは一大事どころではない。

 

「うずめさん。貴女もそうですが、あのネプトゥーンさんって一体何者なんですか? 信仰ガール……もといエリナさんが突っ立ったまま気を失っているようですが」

 

「こう言っちゃ分からねぇと思うけど、別の次元から来たねぷっちだ」

 

うずめの答えに黒斗は呆気にとられた。別の次元だって? 俺がいた世界とは違う場所なのか? 訳が分からない。本当にどうなってるんだ?

 

「……何だか混乱してきたわね」

 

ユニの言う通りだ。エリナは気を失い、デビッドは周りの状況にあたふたし、ウェインは黙って何かを考え込んでいる。俺も何か何だか分からなくなっていた。

 

畜生、今日はなんて日だ。

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