ネプテューヌEX ~とある青年のエクスペリエンス~   作:S・TOM

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第20話 決着

「……よし、これで五体目!」

 

ロボットの不意を突く形で倒していくアイエフ。気づかれないようにロボットに近づくと、カタールを突き刺して機能停止にする。この方法でロボットを五体倒したが数が多く、アイエフは全て倒せるか不安になりつつあった。

 

「たくさんいるわね、まだ半分も行かないなんて……くっ」

 

瓦礫に身を隠して残っているロボットを見る。その数はアイエフが倒した分の数倍ほどだった。その事実がさらにアイエフの不安を強める。一瞬トレビスの顔が思い浮かんだが、彼はルーガスを相手にしている為、助けを求める事は不可能だ。そう思うとアイエフは、ロボット一体も簡単に倒せない事にますます自分の無力さを悔やんだ。

 

「……えっ?」

 

突如、ロボットの行動が変わった事にアイエフは戸惑う。それには目をくれず、ロボットの狙いは一点だけに集中し、電磁波や機銃を発射した。

 

「砲撃した!? 一体何が?」

 

驚くアイエフだが、撃ち込まれた場所から人影が見えた事で理解した。青いニット帽にサングラスが特徴の男。その男は女神曰く、特殊班のリーダーを務めているという。

 

「バクスター!?」

 

バクスターはロボットの電撃や銃撃を回避し、近くにいたM-3を蹴り上げて銃弾を一発撃ちこむ。〆タルギアが発射したビームを飛んでかわすと、懐に潜り込み至近距離から拳銃を発砲した。胴体に銃弾を撃ち込まれ、〆タルギアは機能を停止して崩れていった。

 

「ん? あぁ、お前が受けろ」

 

別の〆タルギアがビームを発射した事に気づくバクスター。近くから攻撃を仕掛けたM-3を掴み、自身の所に引き寄せる。バクスターはビームの射程距離から離れ、その身代わりとしてM-3にビームを受けさせた。その後、バクスターは遠距離から砲撃した〆タルギアに発砲する。弾丸は〆タルギアの頭部を貫き、ガラクタとなった機械は地面に倒れ伏した。そしてバクスターは、俊敏にして正確な銃撃を周囲のロボットに叩き込み、片付けていく。

 

「すごい……女神並みかもしれないわね」

 

だが驚いている場合ではない。ロボットはバクスターに任せ、アイエフはルーガスの所へと駆け出す。

 

「畜生、ちくしょぉーー!!」

 

その頃、ルーガスは弾丸が当たらない事に苛立っていた。その理由は、トレビスの動きが尋常ではないほど速いからだ。ルーガスの動きや銃弾の位置を常に読み取り、撃ち出される前に回避行動を開始していた。だからルーガスの銃弾は、トレビスには当たらない。そんな事は知らずにルーガスは、唯々、短機関銃のトリガーを引いた。

 

何故当たらない? こんなに撃っているのに、当たらないのは何故なんだ? その事を考える度にルーガスの怒りはさらに強くなっていく。吹き出てくる怒りがルーガスの冷静さを失わせる。そしてそれが、ルーガスの隙を生んだ。

 

「せいっ!」

 

「なぁっ――!?」

 

背後からアイエフがルーガスを倒し、短機関銃を取り上げて動きを封じる。不意打ちを受けたルーガスは手も足も出ず、そのまま無力化されてしまった。

 

「よくやった、アイエフ!」

 

「てめっ、俺を出し抜きやがったな! 離せよクソアマぁ!」

 

「黙りなさい!!」

 

アイエフの一喝にルーガスは思わず黙り込んだ。その間、トレビスはルーガスの元へ近づいて尋問をする。

 

「この街を襲撃した目的は何だ?」

 

「……あんだって?」

 

「お前が生み出したモンスターの襲撃でこのラステイションは被害を受けた。何のためにこんな真似をした? お前は何者だ? あの研究所は何と繋がっている?」

 

畳みかける様に質問を繰り出すトレビス。

 

「ひひっ、答えるわけねぇだろ? こんな様でバカみてぇに答える野郎はいるか? うががっ!?」

 

挑発するルーガスだが、拘束しているアイエフに強く絞められ、苦痛の表情を浮かべた。

 

「聞いたところによると、貴様はくたばると黒い霧になって消えるそうだな」

 

ロボットを全て倒し、戦闘が終わったバクスターは箱から取り出した煙草を吸い始める。

 

「そしてまたどこかで無傷で復活してくる……嫌な野郎だ。貴様の様な馬鹿が何人いるか吐いてもらうぞ」

 

「おいおい、俺を殺さねぇつもりか?」

 

「ああそうだ。貴様の仕掛けはとっくに知っている。簡単には死なせん」

 

こいつにもう逃げ場は無い。そう考え、ルーガスを捕らえていたアイエフが何かに気づく。

 

(えっ? こいつの方から何か聞こえてくる……これって電子音?)

 

「おうおう、このアマがなんか気づいた様だぜ? クックッ」

 

アイエフの表情を読み取ったルーガスが、トレビスとバクスターに言う。当然その言葉に疑問を感じる二人だったが、徐々に大きくなっていく電子音に気づいた。

 

「……なっ、まさか!?」

 

「そうだよ! このウスノロ共ぉ!!」

 

ルーガスが勢いよくスイッチを取り出し、三人に見せびらかした。それを見たトレビスは、とっさにアイエフをルーガスから引き剥がし、遠ざける。

 

――カチッ

 

スイッチが押される音が響いた。息づく間もなく大爆発が起こり、爆風が周囲に行き届く。ルーガスが爆破する前に逃れたトレビス、アイエフ、バクスターは爆発による強風を受けるも、怪我は受けはしなかった。

 

「ほっ……大丈夫か、アイエフ?」

 

「えぇ、私は平気よ」

 

アイエフの安否が確認でき、トレビスは安堵する。二人はルーガスがいた方を見ると、その場所には炎や煙幕が広がっていた。

 

「嘲笑っていた、奴の表情……あれは決死の覚悟という物じゃないな。当然の事だが、単細胞な奴にしてはいい判断だったって事だ」

 

空中に浮かんでいく煙を見ながらバクスターが呟く。モンスターは全て倒したが、そのリーダーは逃がしてしまった。アイエフは燃え盛る炎をしばらく見た後、深い溜息を吐いた。

 

――――――――――――――――――――――

 

パープルハートの剣がエンシェントドラゴンに振るわれる。対するエンシェントドラゴンは片腕で弾くが、紫の女神は怯む事なく攻撃し、胴体に傷をつけた。

 

「グウゥ……」

 

苦痛を感じ、パープルハートから遠ざかるエンシェントドラゴン。しかしもう一人の女神がそれを許さなかった。

 

「逃がさないわ!」

 

ブラックハートだった。彼女は斬撃を二回繰り出した後、蹴りを入れてエンシェントドラゴンを叩き落とす。エンシェントドラゴンは体勢を立て直し、何とか空中に止まった。

 

「へぇ、意外と根性あるじゃないの。それも倒されるまでの時間が長くなるだけ、だけどね」

 

女神から侮辱を受け、エンシェントドラゴンは激昂する。ありったけの力を込め、ブラックハートに向けて爪から衝撃波を繰り出した。

 

「無駄よ、ほら!」

 

ブラックハートは大剣を振り払い、衝撃波を一瞬にしてかき消した。

 

「これで分かったでしょ? どう足掻いたって、私に勝つ事なんで不可能よ」

 

呆気に取られていたエンシェントドラゴンの表情が、ブラックハートの声を聞き、怒りに満ちていくのが見えた。それと同時にエンシェントドラゴンから黒い靄が吹き溢れ、その身体を包んていく。

 

「? 何よあれ――」

 

ブラックハートが黒い靄について疑問を口にしようとした瞬間、エンシェントドラゴンが今までより速いスピードでこちらに飛んできた。距離はすぐに縮まり、爪がブラックハートに降りかかろうとする。

 

「やああぁっ!」

 

横槍を入れたのはパープルハートだった。ブラックハートの前に立ち、エンシェントドラゴンの爪を剣で防ぐ。

 

「ネプテューヌ……!」

 

「油断しすぎよ、ノワール。貴女のその自信過剰な所は直した方がいいわ」

 

「むっ……何よ、貴女がいなくたってこれぐらい平気だったわよ」

 

ブラックハートの強がりを聞き、パープルハートは少し微笑む。防いでいた爪を弾き返し、二人同時に怯んだエンシェントドラゴンを斬った。

 

「グガゥ!?」

 

反撃を受け、大きく後ずさったエンシェントドラゴン。切り刻まれた胸部を片手で抑え、二人の女神を睨みつける。その怒りの表現なのか、黒い靄がまたもやエンシェントドラゴンから溢れだした。

 

「あの靄、前に見た事あるわね」

 

「ええ、確か名前は――」

 

ネガティブエネルギー。負の感情から生み出された、シェアエネルギーとは異なる物。二人の女神にとってネガティブエネルギーは、エンシェントドラゴンから溢れるそれと酷似していた。

 

「グゴオオオオオゥ!」

 

エンシェントドラゴンが怒りの咆哮を上げる。その迫力を直に感じた女神は剣を構え、再び戦闘の態勢に入った。

 

咆哮から間髪入れず、エンシェントドラゴンが仕掛けてくる。敏速な飛翔で女神に接近し、両手の爪を振りかかった。二人の女神は爪の攻撃を避け、左右に分かれてエンシェントドラゴンに攻撃を仕掛ける。しかし、エンシェントドラゴンは両腕で左右からの攻撃を防ぎ、女神の動きを止めた。

 

「なっ!」

 

「くっ!」

 

女神は腕に力を入れるが剣はビクともせず、エンシェントドラゴンに弾かれてしまった。怯んだパープルハートだがすぐに立て直し、真上から巨大な剣を作り上げる。

 

「32式エクスブレイド!」

 

パープルハートが腕を前に振りかざすと、巨大な剣はエンシェントドラゴンに向かって発射された。エンシェントドラゴンは両腕を盾にし、防御態勢に移る。パープルハートが繰り出した巨大な剣を防ぎ、勢いよく振り払って雄叫びを上げた。

 

「こっちよ、こっち」

 

声がした方を振り向くと、ブラックハートの蹴りが顔面にめり込む。思わぬ攻撃にエンシェントドラゴンは顔を押さえ、無防備状態になった。ブラックハートはそれを見逃さず、エンシェントドラゴンに接近して連続で斬りつける。

 

「トドメの一撃!」

 

確信したかの様に言い放ち、ブラックハートは一撃と共に衝撃波を撃ちだした。その威力に押され、エンシェントドラゴンは切り刻まれるような感触を味わう。

 

「ガ、ガファアア!」

 

エンシェントドラゴンは両腕で衝撃波をかき消し、次々と繰り出される斬撃から抜け出す。それを見てブラックハートは「あら?」と驚いた顔をするが余裕に満ちており、焦る素振りは一片もなかった。そのブラックハートを標的に、エンシェントドラゴンは両腕から衝撃波を出そうとする――

 

「私がいる事も忘れないで」

 

エンシェントドラゴンの攻撃は不発に終わる。目の前にはパープルハートがおり、剣を振り上げる姿がエンシェントドラゴンの眼に映った。とっさの防御態勢ができず、剣による一閃で両腕に深手を負う。今の攻撃で腕はだらりと垂れ下がり、もう使い物にはならなくなった。

 

「この一瞬に、勝負を賭ける!」

 

パープルハートは宣言し、エンシェントドラゴンを空高くまで打ち上げた。後を追いかける様に飛び出し、高速でエンシェントドラゴンの周囲から斬撃を繰り出す。そのあまりの速さに対応できず、エンシェントドラゴンの傷はどんどん増えていく。

 

「ネプテューヌだけに美味しい所は取らせないわ!」

 

さらにブラックハートも加わり、エンシェントドラゴンへの攻撃は激化した。こうなるとエンシェントドラゴンに為す術は無く、二人の攻撃を甘んじて受けるだけになった。

 

「次は終わらせるわ、ノワール!」

 

「分かってるわよ、ネプテューヌ!」

 

周囲を回っていた二人の女神は足並みを揃え、エンシェントドラゴンの前に現れる。剣を大きく振り上げ、全力でエンシェントドラゴンに一閃を決める。その軌跡はX状を描き、シェアエネルギーが大量に噴出した。

 

「ゴオオオォォ……」

 

女神の一撃を受けたエンシェントドラゴンは断末魔を上げ、身体を黒い靄に変えていく。その靄もシェアエネルギーにかき消され、跡形もなく消え去った。

 

「通常よりも遥かに強かったけれど、私達の相手にはならなかったわね」

 

「当然よネプテューヌ、私を誰だと思ってるの?」

 

パープルハートの言葉に自信満々に答えるブラックハート。エンシェントドラゴンとの決着はつき、ラステイションで起こった騒動はこれにて幕を閉じた。

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