ネプテューヌEX ~とある青年のエクスペリエンス~   作:S・TOM

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第22話 後日

ラステイションでのモンスター来襲から一日。デビッドは第三班のソルに声をかけられ、その時の様子を聞かされていた。

 

「お前ら第四班は確か、あの研究所へ調べに行ったんだよな?」

 

「……まぁな。結局、研究所はラステイションの方に任されたけどよ」

 

研究所についての質問にぎこちなく答える。ソルは無表情で、口数の少ない男だった。それゆえソルの事をよく知らないデビッドには、彼が何を思っているのか分からなかった。

 

「…………」

 

二人を見ている男もそうだ。名前はリジー。ソルと同じ第三班で、こちらも無口な性格だった。二人は一体、何が聞きたいのか……そう思えて仕方なかった。

 

「研究所の番人だったロボットを倒した後、お前たちはプラネテューヌとラステイションの女神と候補生に会ったって言ってたよな」

 

「……あぁ、そうだけど?」

 

そう答えるとソルの目の色が変わった。

 

「お前は候補生二人と付き合ったそうじゃないか。その事について聞きたい事がある」

 

「聞きたい事? というか、付き合ったって俺は別に――」

 

ソルの言葉を否定しようとするが、昨日の出来事を思い浮かべるとデビッドは口ごもった。そういえばあれ、よく考えたらデートだったんじゃないか? だとしたらこれは不味いかもしれない。

 

「候補生を間近で見た感想はどうだった?」

 

「えっ?」

 

ソルから直球な質問を投げかけられ、デビッドの頭は真っ白になる。

 

「はっきり言う、俺は候補生に興味がある。どんな奴かは知らないし、偶然でその姿を見たきりだ。だからお前に聞いておきたいんだ」

 

興味があるだって? いきなり何を言い出すんだソルは。デビッドは困惑する。

 

「えーと……感想の他に何を言えばいいんだ?」

 

「髪の柔らかさ、肌の感触、身体のライン、繰り出される仕草、笑顔……全てだ、全てを言え」

 

全てだって? ちょっと待て、自分だって候補生の事は知らないぞ。デビッドは言おうとするもソルの迫力に押され、言えずで困り果ててしまう。助けを求めようとリジーの方を見ると、表情を変えずただ見ているだけだった。

 

「どうした? さっさと言え。俺は知りてぇんだ、一目見たときから惹かれているあの候補生の事が――」

 

「はい、やめ」

 

問い詰めようとするソルを制止する声が聞こえた。呼びかけられたソルは振り向くと同時に、電撃込みのデコピンを額に食らい、机に倒れ込む。デコピンを仕掛けたのはソルと同じ班の凛だった。

 

「デビッドに何を聞いているのよソル。アンタの訳分からない質問のせいで困ってるわよ、彼」

 

「痛ってぇ……電撃は駄目だろ…………」

 

「特命隊のアンタならこれぐらい平気でしょ。ごめんなさいデビッド、ソルが迷惑かけたわね」

 

「あっ、ああ。おかげで助かったぜ」

 

声を掛けられたデビッドは思わず顔を伏せた。いつもだらけている凛だが、仕事となればシャキッとして大人の女性になる。今の彼女から溢れ出る色気にデビッドは耐えられなかった。

 

「アタシ達は指令が来たからそろそろ行くわ。ソル、いつまでも寝てないの」

 

ソルは電撃で焼け焦げた額を擦り、凛と一緒に歩き出す。

 

「……結局なんで候補生の事聞きたがっていたんだ?」

 

「分からないな。俺もソルの考えている事が理解できてない」

 

デビッドの疑問に今まで無言だったリジーが喋った。しかしリジーもソルが何を考えているかは分からなかった。その言葉を最後にリジーは席を立ち、二人の後を追っていった。

 

「ソルもそうだけど、リジーも何考えてるが分かんねぇんだよな……」

 

リジーの後ろ姿を見ながら、デビッドは小さく呟いた。

 

――――――――――――――――――――――

 

「あの大きいネプトゥーンさんの事ですが……信じられますか?」

 

寮の一室。大きいネプテューヌについて、黒斗は一室に集まった界人、ウェイン、楓、そして第一班の『アキラ』に問う。黒斗にはどうにも大きいネプテューヌを信じる事ができなかった。別の次元から来ただって? 大陸なら理解できるが、次元はさすがにありえなさすぎる。

 

「そりゃあ、信じるしかないだろ」

 

最初に答えたのは界人だった。

 

「俺は最近来たばっかで、ここの事はよく知らねぇけどよ。大きいネプテューヌの事は本当だと思うぜ。俺の感がそう言ってる」

 

「うむ、カイトと同意見だな」

 

ウェインも界人の考えに賛同する。

 

「タリの女神がゲイムギョウ界を滅ぼそうとした事例がある。これは以前邂逅した魔術師の話だが、その力により次元が歪み、本来なら招かれない別次元の女神がこの次元に行き来ができたそうだ。タリの女神を倒した女神のほとんどが、別次元からの来訪者だとも言っていた」

 

「……話の意図が分からないな。つまりそのあり得るはずのない話を聞いたから君は信じると?」

 

黒斗の戸惑い半分の質問に、ウェインは「ああ」と頷いて肯定する。しかしあまりにも突飛な話に、黒斗は納得できなかった。そんな話に信憑性があると思っているのか?

 

「楓さんはどう思います? 大きいネプトゥーンさんと一緒にいましたが」

 

「……確かに信じがたいと思うわ。大きいネプテューヌがいた別の次元が本当に存在するのか分からないし、それを証明する手段が私にはない。もしかしたら嘘なのかもしれないって、心の中で少し思っているわ」

 

質問を投げかけられた楓はそこまで言って一息つき、「でも」と付け加える。

 

「彼女が示した感情や想いは本当よ。嘘だっていう雰囲気なんて微塵も無かったわ。これだけじゃ根拠は薄いと思うけれど、私は大きいネプテューヌを信じるわ」

 

楓の答えを聞いた黒斗は、複雑な気分になった。自分はまだ納得できてないのに、何でこの人達はあっさりしているんだ? 心構えが違うからか? 自分もこの人達の様になれたら、気が楽になるのだろうか……。

 

「アキラさんは信じるんですか? やっぱり」

 

あれこれ考えながら、最後にアキラへ質問をする。アキラもあのネプテューヌの事を信じるんじゃないかと、黒斗は何故か確信めいたものを感じていた。

 

「ああ、前に会った事があるしな」

 

「……何ですって?」

 

思いがけないアキラの返答。その言葉に黒斗だけではなく、界人、ウェイン、楓も目を見張った。

 

「会った事があるって、何時? 何処でだ?」

 

真っ先に界人がアキラに食いついた。

 

「色んな所で放浪していた時に何回か出会ったんだ。あいつも各地を駆けまわってたそうで、時には一緒に旅をした事がある」

 

アキラの話を聞いていた黒斗はひっかかりを感じた。大きいネプトゥーンと一緒に旅をした? どういう事なんだ?黒斗と同じく、何かを察したウェインはアキラに問いかける。

 

「アキラ。お前も別の次元から来たのか?」

 

「……まぁ、そういう事になるな」

 

このゲイムギョウ界の住民ではない事を、アキラはあっさりと答えたのだった。

 

「……勘弁してくれ。信じがたい事を立て続けにぶっこんでくるのは」

 

黒斗はアキラの衝撃的カミングアウトに頭を抱え、呆れ果ててしまう。しかしこの中にもう一人、別の世界からの来訪者(カイト)がいる事に四人は気づかなかった。

 

――――――――――――――――――――――

 

プラネテューヌにある商店街。そこでエリナとマシロはとある小店に到着していた。

 

「意外だったわ、貴女と同じ場所にくるなんて」

 

「私も同じ気持ちだ。まさかだとは思ったが、お前と一緒になるなんてな」

 

店の前に出ていたのはパープルハートのブロマイド、ストラップ、タペストリーなどの限定グッズだった。二人の目的は同じ。発売したパープルハートの限定グッズを買いに来たのだった。

 

「マシロ、聞いてもいいかしら? パープルハート様の限定グッズ、貴女は何を買うつもり?」

 

「……決めてない。限定グッズの事は今朝、雑誌で知ったきりだ。何を買うかまでは考えてない」

 

「甘いわね、貴女のパープルハート様への信仰はその程度なの?」

 

エリナからダメ出しを受け、マシロは少しイラッとした。

 

「じゃあ、お前は何を買うか決まってるんだな? 偉そうな事を言っときながら、考えてませんだったら承知しないぞ」

 

「もちろん、全部よ」

 

エリナはきっぱりと言い切る。

 

「限定グッズの事は一週間前からチェック済みだったわ。私はこの店にあるパープルハートのグッズを買い占めるために来たのよ。もしお金が無くなってもそれで構わない。パープルハート様のグッズを手に入れられるなら些細な事だって思うわ」

 

「……あっそ」

 

熱弁を振るったエリナに対し、マシロは空返事で答えた。馬鹿かコイツ? 別に本物のパープルハート様が来る訳でもないのに、何をそんなに必死になるんだ?

 

「……って言ったけれど、買い占めはさすがにやり過ぎね。パープルハート様の限定グッズを買う権利は貴女を含め、皆平等よ。だから全種類だけにしておくわ」

 

ちょっとズレたエリナの発言にマシロは呆れ果てる。全種類だけって、その考えがすでにおかしくないか? エリナにそう言いたかったが、色々めんどくさくなるので心の中に留めておいた。

 

「もし良かったら、貴女の分も買ってこようかしら?」

 

「いや、そんなに要らない」

 

「遠慮しなくていいわ。お金なんて後でいくらでも――」

 

突然、甲高い音が鳴り響き二人の会話を遮った。今のはギターを鳴らした音だ。振り返って見ると、エレキギターを持った男が店の入り口に立っていた。

 

「……ふっ、皆の関心が俺に向かっている」

 

周囲の視線を集めたその男は濃赤髪に白いコート、朱色のカーゴパンツの姿をしていた。エリナとマシロは男の姿を見て誰なのかを察し、呆れた表情になる。名前は『アクトリア』。かつて特命隊に入ろうとしていたが、試験に落ちた男だった。

 

「ちょっ、何だと思ったら君!? ギターを弾くのはやめるんだ!」

 

店の中から店長らしき人物が現れ、アクトリアに苦言を呈する。またこのパターンか。学習とかしないのかあいつは? 二人はあの光景を何度も出くわしていたのだ。

 

ノープロブレム(問題なし)だ。こうして俺様が目立っているからな」

 

「それが困るんだよ! さぁ、早く中に入って仕事をしてくれ!」

 

「断る。何故なら俺様の伝説は今、ここから始まるからだ!」

 

アクトリアの奇行に店長は困り果ててしまう。その様子を見ていた二人は呆れを通り越し、怒りを感じていた。そして我慢できず二人は歩き出し、アクトリアのいる店に向かっていく。

 

「見ろ、俺様の姿に心奪われた少女達が来たぞ。この調子で――」

 

訳の分からない事をほざくアクトリアに、二人の蹴りが炸裂する。エリナは足に雷を纏わせた焼け焦げる様な蹴り。マシロは鉄板の入ったとても手痛い蹴り。その蹴りがアクトリアの顔面に減り込み、空高くまで吹っ飛んでいった。

 

「あっ……あ?」

 

アクトリアが吹っ飛んでいったのを見て、呆然とする店長にエリナは謝罪する。

 

「迷惑をかけてしまって申し訳ありません。しかし、あの馬鹿は即刻で追い出した方がいいです。隙あらば演奏しようとしたり、サインを配ったりする非常識な男なんですよ」

 

空高く、打ち上げられたアクトリアが地面に減り込む。エリナは店長に忠告した後、一礼してマシロと一緒に店の所に戻った。

 

「……買いましょう」

 

「……そうだな」

 

二人はそう言って店の中に入り、それぞれ限定グッズを買って帰っていった。




今回、初登場したオリキャラ
「アキラ」は第二仮面ライダーさん(ID:37318)
「アクトリア」は中居さん(ID:131153)
が考えてくださいました!
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