ネプテューヌEX ~とある青年のエクスペリエンス~ 作:S・TOM
「だぁーっ、また負けたぁ!」
寮の共用部屋でデビッドの悔しがる声が響く。デビッドは今日、四人で携帯機の対戦ゲームをプレイしていた。他の三人とは同じ班のウェイン、第二班の楓、そして第五班の『
「負けたわ……強いわね、ノア」
「まるで俺が手も足も出なかった……お前のゲームの腕は尊敬に値する」
「まぁな! 俺、このゲーム買ってからずーっとやってるんだ」
その中で勝ったのはノアだった。ノアは大のゲーム好きであり、暇さえあればいつもゲームをやっている。その積み重ねた時間があるため、ノアが勝つのは当然だった。
「おっ、みんな何やってるんだ?」
四人が楽しんでる様を見た界人が興味を示し、ノア達に声をかけた。
「大乱闘ゲームよ。結果はノアの勝ち。貴方もやってみる?」
「ああ、みんなでふっ飛ばしあうアレか! ……でもゲーム機持ってないんだよな、俺」
「えっ、どうして?」
界人がゲーム機を持っていない事を不思議に思い、ノアが聞いてきた。
「俺がプラネテューヌ、というよりゲイムギョウ界に来たのは最近でな。そういうのには鈍いんだ。実を言うと、そのゲームの事もCMで知ったきりなんだ」
元の世界で遊んでいた、とは言わずにそう答える。第一班のアキラは自分は別の世界から来た事をあっさりとカミングアウトしたが、自分の事とは別問題だと思っていた。
「そうなのか。じゃあ今度一緒にゲームショップ行こうぜ! このゲームの他におすすめなゲーム、お前に紹介するぜ!」
「ホントか!? よろしく頼むぜ、ノア!」
界人はノアの提案に乗り、一緒にゲームショップへ行く約束をした。その後、突然デビッドが立ち上がってノアに宣戦布告をする。
「もう一回だノア! 今度こそお前をふっ飛ばしてやる!」
「おっ、再戦か? いつでもいいぜ、かかってこい!」
「私もやるわ。今度はタッグで行きましょ」
「賛成だ。俺はデビッドと組む事にしよう」
「また始まるのか、どんな事が起こるか楽しみだぜ!」
こうしてデビッドとウェイン、楓とノアのタッグによる対戦が始まった。
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「あっ、リジー」
所変わって橋の上。川の流れをぼんやり見ていた第一班のアキラと第五班の『ヴァトリ』が第三班のリジーが来た事に気づく。一通り挨拶をした後、リジーも加わり三人で橋の上で時間を潰していた。
「……暇だな」
ぽつんとヴァトリが呟いた。二人は特に反応せず、ヴァトリの声はそのまま消えていく。
「平和なのがいいけど、僕達の仕事がないのはちょっと辛いな」
「そうか……」
アキラがヴァトリの言葉に反応した。だがそれ以上言わず、会話は続かなかった。
「以前は働き詰めで趣味とか持てなかったからなぁ……今になってそれがダイレクトに来てるよ」
ヴァトリは特命隊に入る前、諜報機関に所属していた。幼少のころから諜報機関に鍛えられ、これといった趣味は持てずに今に至る。それゆえ、プライベートの過ごし方がこれといってないのがヴァトリの悩みだった。
「…………」
今度も返事無しか。そう思っているとアキラが喋り始める。
「俺も特命隊に入る前は各地を放浪していて、趣味なんて持てない状況だった。確かにここまで暇だと色々悩むな。分かるよ、その気持ち」
アキラの言葉を聞いたヴァトリは少し嬉しかった。それまでで会話は終わったが、さっきよりは続いた。しかしリジーはここまで一言も喋らない。
「何か趣味見つけないとなぁ~、ゲームでもスポーツでも……リジーはどうだ?」
リジーが喋らない事が気になり、ヴァトリが話を振った。趣味について聞かれたリジーは口を開く。
「趣味を持ってないのは俺も同じだが、別に辛いと感じた事はない。こうしているのはいつもの事だし、落ち着くからな。普通じゃないのかもしれないが、趣味を持つより何もしない方が気が楽だと俺は思ってる」
リジーの話にヴァトリは首をかしげる。少し暗い性格ではあるが、それだけではない様な気がしていた。もしかしてリジーは、何か暗い物を心の中に秘めているのかもしれない。
……人の事情をあれこれ考えるのはやめよう。ヴァトリはそう思い、再び川の方を見つめる。
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「はぁ~、おかわり!」
プラネテューヌにあるレストラン。そこでは一人の少女が注目を集めていた。第三班のサクラだった。手前には料理、周囲には無数の皿があった。サクラと同じテーブルにいた第四班のエリナ、第二班のマシロ、第五班の『アリス・ハイデ』はサクラの食べっぷりに唯々驚いていた。そして料理を食べ終わっても尚、サクラはおかわりを要求していた。
「あうっ……す、すごいですね、サクラさん」
「まさかここまで食べるなんて思ってみなかったわ……見事な物ね」
「あはは、それほどでもないよ~」
「いや、褒めてないからな」
感嘆するエリナやアリスと軽くツッコむマシロ。三人は周囲の視線がここに集まっているせいで居づらかった。
四人はエリナの誘いで街を出回っていた。お互いに交流を深めるのが目的であり、街を回っている内に仲良くなっていった。そして小腹が減ったので近くのレストランに入り、それぞれ菓子類を注文した……一人を除いて。
「さっきまで菓子を食い続けていたってのに、まだ食い足りないんだな……呆れる」
「サクラさんのお腹の中って、どうなってるんでしょう? ちょっと怖いです……」
「えっ、怖いって?」
アリスの声を聞いてサクラは疑問に思う。するとアリスは慌て初め、さっきの発言を取り消す。
「はうっ! いえ、あの、何でもありません! 私、飲み物を入れてきますので――あっ!」
コップを持ってテーブルから立ち上がろうとするが、パニックのあまり躓き、転んでしまった。三人は思わず「あっ」と声を漏らし、エリナはアリスに駆け寄る。
「大丈夫、アリス!? 怪我はしてない!?」
そう言って優しく起こすと、アリスは涙目になっていた。
「ごめんなさい、エリナさん。私のせいで、エリナさん達に迷惑をかけてしまいました……」
エリナは穏やかな笑みを浮かべ、今にも泣きそうなアリスの頭を撫でる。
「いいのよアリス、迷惑だなんてとんでもないわ。私達はそんな事は気にしてないし、何より貴女が怪我をしていないかの方が大事よ」
「……本当に迷惑かけてませんか?」
「ええ、全然。だから泣かないの。笑ってる顔の方が可愛いわよ、アリス」
それを聞いたアリスは涙を拭いて、笑顔になった。
「ったく、大袈裟すぎるだろ。転んだ程度で泣くか普通?」
「……マシロ」
「分かった、分かったよ。だからまた泣くのはやめろ。周りの視線がきついから」
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第三班の凛はイラついていた。自分の寝床であるソファーが奪われていたからだ。
指令が完了し、寮に帰った凛。再び寝ようとソファーへ向かったが先客がいた。銀髪で小柄な少女。黒のワイシャツとミニスカートを着ている。名前は『ルナ』。特命隊第一班に所属する少女だった。
「何でアタシのソファーで寝てるのよ? もうっ!」
ソファーは共用の物であり、当然、凛の物ではない。しかし自分以外がソファーで寝てるのが許せない凛は、眠ってるルナをソファーから引き離そうとする。
「くっ、剥がれない……」
だがルナがソファーを掴んでいるせいか、引き離す事はできなかった。凛はルナを一旦離し、魔法を使おうとすると寝ていたルナが目を覚まし、眠い目をこすって起きる。
「うーん、煩いなぁ……」
「あら、起きたのね。丁度いいわ、そこを退きなさい」
ルナが起きたのを見た凛はそう言って退かそうとする。少しでも早くソファーで寝たかったのだ。しかしルナはそれを拒否する。
「嫌よ。何で貴女に命令されなきゃいけないの?」
「何でって……寝る所なら班の部屋に用意されてるでしょ? 寝たいならそこで寝て、そのソファーはアタシの物よ」
「その言葉、そっくりそのまま貴女に返すよ。自分が部屋で寝るって事は考えないの? 後からやってきて図々しいよ」
ルナの言葉が凛の怒りに火をつけた。指先から雷がパチパチと鳴り、凛は片手をゆっくりとルナの方へ向ける。
「退かないっていうのなら、仕方ないわね。黒焦げになっても知らないわ」
「……何? 怒ってるの? 見かけは大人っぽいのに、中身は子供なんだね」
ルナは鋭い目で凛を睨みつけ、武器のビームナイフを取り出す。一触即発。凛とルナはソファーをめぐって火花が散らしていた。そして、それを呆れた表情で見る者が一人いた。
「あのー、外でやってくれませんか?」
第二班の赤前黒斗だった。しかし黒斗の声は二人に届かず、ルナが凛へと駆け出し、凛は雷を撃ちだす――――
結果。黒斗の仲介により被害は少なかったものの、凛とルナは罰として寮の掃除をさせられたのだった。
今回、初登場したオリキャラ
「雨寺乃亜」は超輪さん(ID:126935)
「ヴァトリ」はジマリスさん(ID:92908)
「アリス・ハイデ」は白宇宙さん(ID:79875)
「ルナ」はAPOCRYPHAさん(ID:129512)
が考えてくださいました! 皆さん、ご応募ありがとうございます!