ネプテューヌEX ~とある青年のエクスペリエンス~   作:S・TOM

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第24話 第二班と女神達

「隊長、凶暴化モンスターの襲撃情報がまた来ました」

 

隊長室に入ったレイは真っ先にグラウトに報告する。凶暴化モンスターによる被害は以前より少なくなったが、こうして今も色んな場所で起こっていた。報告を聞いたグラウトは顔を上げ、レイに問う。

 

「場所はどこだ? 被害は?」

 

「ここ、プラネテューヌから少し離れた市街地です。この襲撃により幾つかの建物が破壊されましたが、幸いにも重傷人は出ませんでした」

 

レイから場所と被害の詳細を聞いたグラウトは安堵の溜息を吐く。凶暴化モンスターによる被害はこんな物では収まらない。一匹でも重傷者が十数人も出るぐらいの被害が出て、最悪死人が出ても何もおかしくはない。数日前のラステイション襲撃がいい例だ。あの中には凶暴化したエンシェントドラゴンもいたそうだ。女神や特命隊の奮闘によって被害の拡大は食い止められたものの、もし彼女らがいなかったらラステイションは今頃どうなっていた事か。

 

「幸運にも被害は少なくて済んだが、また市街地が襲撃されるのは確実だな。このままで済むはずがない、放っておくと被害は悪化する。即刻に手を打つ必要があるな」

 

グラウトは端末を操作し、第二班に指令を送ろうとする。

 

「ちょっと待ったぁーー!」

 

元気のいい声がどこからか聞こえ、グラウトとレイを驚かせる。そして扉が勢いよく開けられると、紫髪の少女が立っていた。

 

「その話、聞かせてもらったよー!」

 

プラネテューヌの女神ごと、ネプテューヌだった。突然の出来事に二人は驚き、ネプテューヌの姿を呆然と見ていた。

 

「ふふーん、驚いちゃってるね! 主人公ネプテューヌ、出番の匂いを嗅ぎつけて参上!」

 

一人喋り続けるネプテューヌに対し、二人は何も言えなかった。それにはお構いなしに、ネプテューヌの独り言は愚痴に変わる。

 

「というか私の扱い酷くない? いつの間にか主人公変わってるし、私は全然出ないし! まったくもうー! このシリーズ引っ張ってるの誰だと思ってるの? 私だよ! プラネテューヌの女神、ネプテューヌだよ! 確かに主役を取られた事はあるけど、やっぱり私じゃなきゃ主役は務まらないよ! ねぇ、二人もそう思うでしょ!?」

 

「……そうですね」

 

ネプテューヌの問いに対しグラウトはそう答える。場の空気に飲まれてしまった二人には、一言いうだけで精一杯だった。

 

「てなわけで、今回は私も行く事にしたよ! これ以上、私の出番が無くなるのはごめんだからね! それじゃ!」

 

ネプテューヌは勢いよく部屋から出ていった。ネプテューヌの嵐の様なはしゃぎっぶりを目の当たりにし、二人は固まったまま立ちすくんでいた。

 

――――――――――――――――――――――

 

「よし、これでボクは上がりだ」

 

ババ抜き。黒斗は二枚の(ジャック)を最後に、真っ先に上がった。

 

「うおっ、黒斗が上がっちまった」

 

黒斗が早く上がった事に界人は焦った。ババ抜きの参加者は四人。第二班の黒斗に第四班の界人、第三班のリジー。そして最後に第一班である紅髪銀眼の『(ほむら)』だった。

 

「ハハハッ、早いな黒斗は。俺達はまだカードが余ってるのに」

 

「何か策を使ったのか?」

 

リジーの疑問に黒斗は否定して答える。

 

「いえ、策なんて物はありません。ただボクは普通にやっただけです。特別な事なんてしてませんよ」

 

「そうか……けどさっきまでお前、余裕なさそうに見えたぜ」

 

界人に指摘され、少し驚く黒斗。そんな顔をしてたのか自分は。それを見た焔がフォローを入れる。

 

「必死になるのは悪い事じゃない。寧ろいい事だと思うぜ。それだけお前が楽しくやれてたって事になるしな」

 

「……必死になった覚えは無いんだけどね」

 

黒斗が立ち上がると同時に端末が鳴る。取り出して見てみると黒斗達第二班に指令が送られていた。場所はここから少し離れた市街地。近くの森林に巣食っているモンスターの討伐せよとの事。

 

「何だ、指令でも来たのか?」

 

「ええ、ちょうどいいタイミングで来ましたよ。それではボクは抜けるので、後は三人でやっていてください」

 

三人にそう告げ、黒斗は部屋を後にする。黒斗の姿を見送った後、界人、リジー、焔はババ抜きを再開した。

 

「うっ……巻き返せるか?」

 

ちなみに現在、カードが一番多いのは界人だった。

 

――――――――――――――――――――――

 

「第二班、皆揃ったようね」

 

黒斗、マシロ、ブラインが集まり、全員いる事を確認する楓。第二班が揃った所で、八人は集合場所から歩き出した……そう、八人。

 

「ぶらっち、またアルドが見られるなんて嬉しいぜ! 今日もカッコよく決めてくれよな!」

 

「言われるまでもないさ。知っての通り、この僕は何時だって美しくカッコいい男だ。君の願いを叶える事ぐらい簡単さ」

 

うずめとブライン。

 

「フンッ、気取りやがって……あの馬鹿の事は無視してください。パープルハート様、パープルシスター様」

 

「えぇ~、それってちょっと酷くない?」

 

「……ちょっとどころじゃないような」

 

マシロとネプテューヌとネプギア。

 

「また会ったわね、大きいネプテューヌ。こうして貴女に会える時を待っていたわ」

 

「おぉ! そう言ってくれるなんて嬉しいよ、楓! 私も、楓に会えるのをすっごく楽しみにしていたよ!」

 

楓と大きいネプテューヌ。そして彼女らがわいわいしている様を冷めた目で見ている黒斗。それらを合わせての八人だった。

 

(何でネプトゥーンさん達もいるんだ……?)

 

黒斗は第二班の他に、ネプテューヌ達四人がいる事に疑問を感じていた。そして他の三人が彼女達を受け入れている事もだった。

 

「どうしたんだくろっち? そんなシケた顔してよ」

 

うずめは黒斗は会話に入っていない事に気づき、不思議そうに聞いた。シケた顔か……どうも自分は暗い顔になっているらしい。まぁ、今に至るまで色々あったからな――

 

「何でもありませんよ、うずめさん。ただ、まさかうずめさんと早く再会するなんて思っていなかったので、つい」

 

「そうか、大した事なくて良かったぜ。……おっと忘れてた。今日はねぷっち達の他にもう一人連れてきたんだぜ!」

 

うずめは思い出したかの様に呟く。だがネプテューヌ達の他にその姿は見えなかった。

 

「もう一人? どこにもその姿が見えない――」

 

周りをあちこち見回すと、宙に浮いた、魚の様な何かが目に入った。青い球体な身体にひれが付いており、そのうえ人間の様な顔が付いた人面魚らしき生物だった。

 

「やあ、君がくろっちだね?」

 

喋った。しかも美声。何なんだこれ? 疑問に思っているとうずめが生物を紹介する。

 

「こいつは海男、俺の大切な相棒だ」

 

「君の事はうずめから聞いたよ。この間はうずめが世話になったね」

 

「あっ、はい……赤前黒斗って言います」

 

「赤前黒斗か。よろしく頼むよ、くろっち」

 

くろっちのままなのか、それに生態不明の生物によろしくって言われても困るぞ……。そう思いながらも黒斗は『海男』に返事を返した。

 

そして数十分。八人と一匹は街に繋がる森林の中を歩き続けていた。

 

「ねぇ~まだ~? もう疲れちゃったよ~」

 

初めのうちは燥いでいたネプテューヌだが、段々と飽きていき愚痴り始める。

 

「まだですよ。目的地はプラネテューヌから離れた所ですからね、もう少しかかります」

 

「本当ならクロちゃんの力でワープするんだけど、座標は分からないし、クロちゃんは疲れちゃってるし……使えないなぁ」

 

「おいおいふざけるなよ!? 何回も俺の力を使いやがって、少しは休ませろよな!」

 

ねぷのーとから声が聞こえた。名前は『クロワール』。曰く大きいネプテューヌの友達で、色々あってねぷのーとに入っているらしい。

 

「まぁまぁ。街に着いたら何か食べさせてあげるからね?」

 

大きいネプテューヌがクロワールを宥めていると、木陰から数体のモンスターが飛び出してきた。スライヌが四匹にウルフが三匹、馬鳥が三匹にリザードマン一体の計十一匹だった。

 

「モンスター、来たわね」

 

「やれやれ、めんどくさいな。さっさと倒し――」

 

「はいはーい! トクメイタイの君達はそこで休んでて!」

 

モンスターが出てきたのを見て大はしゃぎするネプテューヌ。さっきの疲れた姿は嘘の様に飛び出し、刀を構える。

 

「これぞ正しく、私が活躍できるチャンス! ネプギア、うずめ、大きい私、私の後に続いてー!」

 

三人に声をかけた後、モンスターに向かって走り出す。

 

「影が薄い私が目立つチャンス……全力で行きます!」

 

「よっしゃ! ぶらっち達にカッコいい所を見せてやるぜ!」

 

「小さい私には負けないよ! 楓、見ててね!」

 

ネプギアは剣、うずめはメガホン、大きいネプテューヌは拳銃を手に、モンスターの前に飛び出した。

 

「ええ、しっかりと見てるわ。大きいネプテューヌ」

 

「うずめ! この僕に君のカッコよさを見せてくれ!」

 

ネプテューヌ達の活躍を楽しみにする楓とブライン。二人とは反対に、黒斗は果たして変身してないネプテューヌ達がモンスターを倒せるのか心配だった。

 

「ネプトゥーンさん達に任せて大丈夫か? 女神とは言え、変身とかしないと力は出せないんじゃないか?」

 

「ばーか、お前は一体何を見たんだ。女神様ならあんな雑魚共、余裕で倒せる。アホ……」

 

黒斗の発言を聞いたマシロが憎まれ口を叩く。だがマシロの憎まれ口は今に始まった事ではないため、黒斗は特に気にせずにネプテューヌ達の方を見たのだった。

 

「行くよ、とりゃあー!」

 

まずはネプテューヌの先制攻撃。刀を振り払い、スライヌに攻撃を仕掛ける。しかし攻撃は外れ、避けたスライヌが体当たりをしてきた。

 

「なんの、スライヌの攻撃なんて当たらないよー!」

 

アクロバティックな動きでスライヌの体当たりをかわし、刀でスライヌを真っ二つに斬った。まず一匹。

 

「やあっ!」

 

駆け出したネプギアは馬鳥に接近し、馬鳥の頭突きを華麗な動作で避ける。そして速やかに剣を振り払い、馬鳥を斬って倒した。二匹目。

 

「っ!!」

 

振り返ると二匹の馬鳥がネプギアを目掛けて突進してきた。二対一。当然、ネプギアの方が不利だった。

 

「――させねぇぜ!」

 

だが、その状況をうずめが許さなかった。馬鳥の一匹を殴りつけ、メガホンによる音波で追撃する。殴られた馬鳥は音波を浴びて消滅し、もう一匹はその余波で怯んでしまい、ネプギアへの攻撃を外す。

 

「今だ、ネプギア!」

 

「分かりました!」

 

うずめの声を聞いたネプギアはすかさず怯んだ馬鳥に攻撃し、最後の一閃を決めて倒す。これで四匹目だった。

 

「撃って撃って撃ちまくるよー!」

 

言葉の通り、大きいネプテューヌは迫りくるウルフに向けて拳銃を撃ちまくる。一匹は倒れたが他の二匹は銃弾をかわし、大きいネプテューヌに飛び掛かる。

 

「おおっと!」

 

大きいネプテューヌは飛び上がり、ウルフの攻撃をかわすと上空から拳銃を発砲する。攻撃を外した二匹は飛んでくる銃弾に対応できず、身体を貫かれ倒れた。残るは一匹。

 

リザードマンが大きいネプテューヌを背後から襲い、両手に持つ斧を勢いよく振り下ろす。大きいネプテューヌはすぐさま二本の大剣を取り出し、リザードマンの斧を防いだ。

 

「ぐぬぬ……チャンスだよ、みんな!」

 

「待ってました!」

 

リザードマンの隙を突き、真上からネプテューヌが刀で斬りつける。その攻撃がクリティカルヒットした事でリザードマンは大きく怯み、防いでいた大きいネプテューヌは斧を横へ受け流した。

 

「トドメは俺が決めるぜ!」

 

うずめは勢いよく走りだし、リザードマンに強烈な一撃を叩き込む。攻撃はそれだけではなく、うずめは無数のラッシュを繰り出し、リザードマンに次々と拳を入れていく。

 

「オラァ!」

 

うずめは最後の一撃を叩き込み、リザードマンをふっ飛ばす。吹っ飛んだ先には木があり、リザードマンは木にぶつかり消えていった。十一匹目。モンスターは全て倒し、ネプテューヌ達の勝利に終わった。

 

「これが私達の力だよ! トクメイタイの君達には負けないよ!」

 

「はい……お見事でした、パープルハート様」

 

思いっきり活躍できた事に喜ぶネプテューヌ。それに穏やかな口調で答えるマシロ。

 

「でしょでしょ! 後、私の事はネプテューヌって呼んで!」

 

「……えっ?」

 

それを聞いたマシロは驚き、恐れ多い気持ちでいっぱいになった。

 

「楓! 私の活躍、ちゃんと見てたよね!」

 

「ええ、見事な銃撃と剣さばきだったわね。思わず見惚れちゃった、大きいネプテューヌ」

 

「えへへ、そう褒めてくれると嬉しいよ~楓」

 

楓に褒められた事で嬉しくなった大きいネプテューヌ。うずめの方も自分がカッコよく決めた事に喜んでいた。

 

「見てたか、海男! 俺、カッコよかっただろ!」

 

「ああ、カッコよく決めたよ。うずめ」

 

「そうだろ! ぶらっちとくろっちもそう思うよね!」

 

黒斗とブラインに同意を求めるうずめの口調が、何だか変わっていた。

 

「パーフェクトだ! この僕と肩を並べるぐらいカッコよかったよ、うずめ」

 

「カッコいいかどうかは分からないが……最後はバッチリ決まってたと思います」

 

「そうだよね! やっぱりうずめってカッコいいよね~!」

 

「うずめ、口調」

 

「……あっ」

 

海男に口調が変わっている事を指摘されたうずめは、恥ずかしさで顔を赤くした。

 

「うわぁ、台無しだぁ~……これじゃもうカッコよくも何ともねぇ~」

 

恥ずかしさの余り頭を抱えるうずめ。それを見たブラインが励ましの声をかける。

 

「心配する必要はないさうずめ。たとえどんな事をしても、君はカッコいいさ」

 

「……そ、そうか?」

 

「ああ、そうさ。たとえ口調が変わっても、うずめはカッコいいさ! この僕が言うんだから間違いはない!」

 

ブラインの言葉を聞いたうずめは顔を上げ、嬉しそうな笑みを浮かべた。

 

「そうだよな、ブラインの言う通りだぜ! 俺は何時でもカッコいいからな!」

 

「……海男さん、さっきのうずめさんの口調って何なんですか?」

 

「あれが本来のうずめさ。見ての通り、うずめはカッコよさに拘っていてね。男勝りな口調なのも、うずめがカッコいいって思ってるからなんだ」

 

さっきの口調がうずめの素だという事を知り、黒斗は少し驚く。まさかうずめがあんなキャピキャピした口調をするとは思っても見なかった。

 

「私、あんまり活躍できなかった……」

 

その一方で他の三人が活躍したせいで、大して目立たなかった事を落ち込むネプギア。扱いの悪さはここでも出たのだった。

 

「それじゃあモンスターを倒した事だし、このまま行っちゃうよ! モタモタしてると置いてっちゃうからねー!」

 

「あっ、お姉ちゃん! 一人だと危ないよ!」

 

ネプテューヌが元気いっぱいに駆け出し、姉の後を追う様にネプギアを走り出す。他の六人と一匹も二人の後を追ったのだった。




今回、初登場したオリキャラ
「焔」はAPOCRYPHAさん(ID:129512)
が考えてくださいました!
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