ネプテューヌEX ~とある青年のエクスペリエンス~   作:S・TOM

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第29話 プラネテューヌ襲撃

「……来たわね」

 

大人しそうな表情をした少女が呟く。小柄な体格に栗色のショートヘア。白のワンピースの上にファーがついたコート。そして白の帽子が被られている。

 

「ええ、来ましたわね」

 

上品で、穏和そうな女性が賛同する。ブロンドのロングヘア。緑のドレスから見える豊満な胸は、その存在を強く主張していた。

 

「この小説が始まって早一年……遂に私の出番が来たわね」

 

「そうですわね。これで今まで空気とされてきた氷河期にピリオドが打たれますわ」

 

そう話す二人のテンションはどんどん上がっていく。

 

「苦汁を飲まされる時代は終わったわ。ここからは私達の番よ」

 

「その通りですわ! 今回からは私、ベールとブランの活躍を、読者の皆様に見せて差し上げますわ!」

 

「ちょっとちょっとちょっとーーーー!」

 

二人のテンションが最高潮になった所に、ネプテューヌが割り込んで止めた。

 

「……何よ、ネプテューヌ。せっかく良い気分になっていたのに邪魔しないで」

 

不機嫌そうな顔でネプテューヌを見る少女、ブラン。ルウィーの女神で別名、ホワイトハート。

 

「いやいや! 二人共、何初っ端からメタ発言してるの!? メタ発言に定評のある私でも、流石にそれはないと思うよ!」

 

「いいじゃありませんの! 私達、貴女と違ってここまでず~~っと出番がありませんでしたのよ。メタ発言の一つや二つ、言わせてくださいな!」

 

注意するネプテューヌに対して子供の様にごねる女性、ベール。彼女も女神であり、グリーンハートとしてリーンボックスを守護している。

 

「それに日頃からメタ発言を繰り返す貴女には言われたくないわ。煩いから少し黙っててちょうだい」

 

「ねっぷぅ~! そう言われるとムッと来るなぁ! いいよ、どうしてもって言うなら私がねっぷねぷに――」

 

「あぁーもう! ネプテューヌもブランもベールも、全員まとめて黙りなさーい!」

 

喧嘩ムードになっていた三人。そこでラステイションの女神、ブラックハートのノワールが一喝した。

 

「何やってるのよ貴女達! 集まって最初にする事が喧嘩って! 止めるこっちの身にもなってみなさいよ!」

 

「貴女も相当煩いわ、ぼっちのノワール」

 

「のわっ!?」

 

ブランの矛先はノワールに向かった。そしてネプテューヌとベールも便乗し、ノワールを弄り始める。

 

「ノワール! いくらぼっちで寂しかったからって、私達の邪魔はしないでほしいな! ぼっち!」

 

「そうですわよ! これが終わったらいくらでも構って差し上げますから、少し待っててくださいな。ぼっちのノワール」

 

「なななな、何よこれ! 何で私が悪者にされてるの!? それにぼっちって! 私をぼっちネタで弄らなちゃいけない決まりでもあるの!? そもそもちょっとの間にボケ過ぎなのよ、自重しなさいよ!」

 

自分を弄る三人に怒涛のごとくツッコむノワール。

 

「……まぁ、冗談はこのぐらいにしといて。久しぶりだね、みんな!」

 

漫才を繰り広げていた三人はクールダウンし、再会の喜びを分かち合う。

 

「モニターでは何回か会ったけれど、こうして直接顔を合わせるのは三ヶ月ぶりね」

 

「これも凶暴化モンスターがいなくなったからですわね。おかげで溜まっていた積みゲーの数を減らすことが出来ましたわ」

 

満足げにそう話すベール。彼女は外見からは想像できないがかなりのゲーム廃人だった。

 

「あの時は大変だったわ……来る日も来る日も仕事仕事で、休む時間なんてほんの数分しか無かったわ。徹夜は当たり前だったし、全部終わった時はすぐに寝ちゃったわ」

 

「へぇ~色々大変だったんだね、ノワール」

 

「ええ、大変だったわよ。……どこかの誰かさん(ネプテューヌ)と違って」

 

小声で嫌味を言うノワール。他の三人が仕事で苦しんでいる間、どこかの誰かさん(ネプテューヌ)がだらだらしていたのは言うまでもない。

 

「ネプギアー! ユニー! ひっさしぶりー!」

 

「久しぶりに会えて、嬉しい……」

 

一方、小学生ぐらいの少女二人がそれぞれネプギアとユニに挨拶する。二人は双子の様に似ていた。元気そうな一人は栗色の髪にピンクの帽子とコート。大人しそうなもう一人は服装は同じだが色は青だった。

 

「ロムちゃん、ラムちゃん! 久しぶりに会えてこっちも嬉しいよ!」

 

ネプギアが嬉しそうに二人を呼ぶ。青い服がロム。ピンクの服がラム。ルウィーの女神候補生であり、双子の姉妹だった。

 

「ネプギア! 私と一緒に遊びましょ! お姉ちゃんに言われてずぅーっと教会にいたからつまらなかったもん!」

 

「私も、ネプギアちゃんと遊びたい(ドキドキ)」

 

「こらー、アタシがいるの忘れるなぁ!」

 

存在が忘れられている事を薄々感づいたユニは、大声で二人に主張する。

 

「ユニも一緒に遊びたいの? 相変わらず寂しがり屋さんね」

 

「大丈夫だよユニちゃん、寂しがらないで……」

 

「何でそうなるのよ!? 別にアタシは寂しくなんて無かったわ! 勘違いしないでちょうだい!」

 

そこまで言ったユニは顔を赤らめ、「でも」と付け加えた。

 

「アンタ達が寂しかったって言うなら仕方ないわね……一緒に遊んであげるわよ」

 

「やったぁー! 四人で思いっきり遊べるー!」

 

「何して遊ぶ?(わくわく)」

 

「……はぁ。何でこうも振り回されるの、アタシ」

 

「まぁまぁユニちゃん。久しぶりに会ったからしょうがないよ」

 

今日は楽しく遊ぶ事になった女神候補生。そして、姉の女神も――

 

「久しぶりにみんな集まった事だし、対戦ゲームでもやろっか!」

 

三人に言い、ゲーム機を取り出すネプテューヌ。

それを見てノワール、ブラン、ベールもそれぞれゲーム機を取り出した。

 

「そうしましょう。仕事漬けになってたけど、腕は鈍ってないわよ」

 

「数ヶ月程度のブランクがあったからと見くびっては駄目よ。一瞬で終わらせてあげるわ」

 

「ふふっ、私は仕事とゲームを両方こなしていましたのよ。勝つのは当然私ですわ」

 

「私だって仕事ほっぽり出してゲームしてたもんねー! 負けるなんてあり得ないよ!」

 

自信満々にゲーム機を構える四人の女神。

互いのプライドをかけた戦いが始まろうとしていた。

 

――――――――――――――――――――――

 

プラネテューヌの街中に一人、泣きべそをかく子供がいた。親と逸れてしまった子供はあちこち探し回る物の、あまりの人の多さで親の姿を見つける事が出来なかった。もしかしたら、このまま一生親に会えないかもしれない。そう思い始めた子供は、悲しさと寂しさに泣き出したくなっていた。

 

「どうしたんだい? 坊や」

 

そこへ通りかかった金髪の青年が声をかける。特命隊第二班、ブラインだった。

子供は顔を上げると、自分と同じ目線でしゃがみ込んだブラインの顔を見た。穏やかながらどこか頼もしそうで、まるで特撮物で出てくるヒーローの様だった。

 

「……ママと、逸れちゃったんだ」

 

「そっか、それは泣きたくなるよね。僕も小さい頃、母さんと逸れて泣いた事があったなぁ……」

 

ブラインは懐かしそうに語り、子供の頭を優しく撫でる。暖かかった。心の中にある不安を消してくれる様な暖かい手だった。

 

「でも、もう大丈夫だ」

 

そう言ってブラインは勢いよく立ち上がる。

 

「この僕が来たからにはもう安心だ! 必ず君のママを見つけてあげよう!」

 

ブラインは子供に高々と宣言した。その自信に満ち溢れたブラインの表情を見て、子供はみるみると笑顔になった。

 

――――グゥ~……

 

と同時に子供の腹が鳴る。この広いプラネテューヌを走り回ったせいで空腹になった様だ。

 

「アハハ、お腹すいちゃったみたいだね」

 

微笑むブラインの言葉に子供はこくりと頷く。ブラインはしゃがみ込むと、優しく子供に言った。

 

「ママを探す前にどこかで休もうか。お金なら僕が持ってるから心配しなくてもいいよ」

 

――――――――――――――――――――――

 

女神達が遊び初め、ブラインが迷子を見つけたその頃。ある少女がプラネテューヌに足を踏み込んだ。金髪のツインテールに黒の軍服、眼帯。セリスだった。

 

「遂に戻ってきたぞ、プラネテューヌに」

 

プラネテューヌに辿り着いたセリスは喜びを胸に、街の中を散策する。どこもかしこも賑わい、平和そのものだった。

凶暴化モンスターが勃発する中、プラネテューヌがどうなっているのか。セリスは不安に思っていたが、この平和な風景を確認し安心した。

 

「この様子だとネプテューヌはゲームばかりしてそうだな……そうだとすれば、何としてもモンスターの襲撃から守らなければならないな。失敗は絶対に許されない」

 

セリスは遊び呆けるネプテューヌを思い浮かべ、プラネテューヌを守ると改めて決心した。

 

「――――なっ?」

 

その時、轟音と共に激しい揺れがプラネテューヌを襲った。街の市民は崩れ落ち、突然の出来事に驚きと恐怖が入り交じった表情を見せる。

 

「うっ……何が起こった?」

 

セリスは立ち上がり、今の状況を確認する。今の揺れは何だ。モンスターの襲撃か? それならば不味いな。場所はどこだ、どこで起きている?

 

「あそこか!」

 

轟音が鳴った方角を確認し、セリスは一目散にそこへ走り出した。この街を守ると決めたんだ、モンスター共の自由にさせるものか。

 

――――――――――――――――――――――

 

「ヒャーハハハハァ!」

 

元の華やかな光景から一転し、荒廃とした街に下卑た笑い声を上げる男が立っていた。以前、凶暴化モンスターを率いてラステイションに襲撃をかけた男。ルーガスだ。

 

「壊せ! 殺せ! 前進しろ! このクソみてぇな街を滅ぼせ!」

 

掌から黒球を生み出し、空高く投げる。黒球は空中で分裂すると各地に散らばった。ルーガスが投げた黒球は、凶暴化モンスターを生み出すエネルギーだった。これでプラネテューヌは混乱する。ルーガスはほくそ笑んだ。

 

ルーガスのプラネテューヌ襲撃。その目的は、言わばストレス発散だった。

ルーガスは苛ついていた。ゲイムギョウ界の破壊を女神や特命隊に阻止された事。それを仲間達に嘲笑われ、馬鹿にされた事。この二つはルーガスにとって、屈辱以外の何者でもなかった。自身を嘲笑った仲間達を見返すため、そして苛つきを消すため、ルーガスはプラネテューヌの破壊工作を開始したのだった。

 

「いい気味だぜ……こうやってクソ共が蔓延った所がぶっ壊されるのはよぉ!」

 

モンスターの攻撃で壊された街々を見てルーガスは酔いしれる。ざまぁみろ。テメェらの平和も今日で終わるんだぜ、女神様よ。

 

「泣け! 喚け! 苦しめ! 俺に見せてくれ! 絶望や苦痛に満ちたテメェらの表情をよぉ!」

 

しかし、快進撃は長くは続かなかった。先頭にいたモンスター数体が切り刻まれ、倒れて消滅していった。

唐突な出来事。ルーガスは当初、何が起こったか呑み込めず、そして理解すると怒りの形相を浮かべた。

 

「それは無理な相談だ」

 

前方から声が聞こえる。見るからに十代半ばの少女だった。モンスターを倒された事にルーガスはその少女、セリスに向けて怒りを募らせていく。

 

「ここは住み心地の良い、賑やかな街だと言うのに。それを壊されるのはとてもじゃないが見過ごせん」

 

「そいつを殺せぇ!!」

 

ルーガスは叫び、モンスター達をセリスに仕向けた。たかが小娘一人、どうって事はねぇ。

セリスは焦る事無くナイフを取り出し、向かってくるモンスター達へ一歩踏み込んだ。するとセリスの姿は残像を残して消え、モンスター達の間を通り過ぎた。

 

「私はプラネテューヌを、ゲイムギョウ界を守ると心に誓った」

 

セリスに襲い掛かったモンスターはバラバラになり、黒い霧となって消えた。セリスと交差した一瞬、ナイフで身体を余すことなく切り刻まれていったのだった。

 

「そう、貴様の様な邪悪な輩からな。プラネテューヌに手出しはさせん」

 

ルーガスに向けてナイフを突き出し、セリスは宣言した。その目には一片の曇りも無かった。

宣戦布告を受けたルーガスは頭に血が上り、逆上しそうになった。しかしすぐに余裕を取り戻し、セリスを嘲笑する。

 

「そうかいそうかい、できもしねぇ事をほざけるのは羨ましいもんだ」

 

ルーガスが両手を広げると、黒い霧がルーガスの背後に出現した。霧は幾つかに分裂し、それぞれモンスターの姿をかたどった。

 

「……っ!」

 

霧から現れたモンスターを見てセリスは驚嘆する。モンスターは全て黒く変色しており、眼も赤く発光していた。その中には危険種のエンシェントドラゴンやフェンリルも紛れている。苦戦は免れない相手だった。

 

「さーて、どいつに殺されたい? 難ならこの俺が直々に殺してやろうか?」

 

ジャケットから短機関銃を二丁取り出し、構えるルーガス。こちらは数十で相手は一人、ルーガスは勝利を確信していた。

対するセリスは驚きはしたが、恐れる事なくルーガスやモンスターを睨んだ。

 

「死ぬのは貴様を倒してからだ」

 

セリスはそう言い、ルーガスの元へと駆け出す。

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