ネプテューヌEX ~とある青年のエクスペリエンス~   作:S・TOM

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第30話 特命隊参戦

ルーガスがプラネテューヌを襲撃する数分前。その時グラウトは隊長室で通話していた。相手はラステイションの特殊班、バクスター。

 

『プラネテューヌの状況はどうだ?』

 

「好調だ。モンスターの凶暴化が沈静しているおかげで平和になっている」

 

『らしいな。こっちも復興が進んである程度はまともになった。まさかラステイションだけ襲撃されるとはな、さすがシェア率ナンバー1の国だ』

 

女神への皮肉を交えづつ、バクスターはラステイションの現状を伝えた。相変わらずの言動にグラウトは呆れるも、そういう奴だと割りきり用件を聞く。

 

「そちらからかけてくるのは珍しいな。何か情報を掴んだのか?」

 

『大したことじゃないがな、それでもお前に伝える必要がある』

 

紙が擦れる音が聞こえた後、バクスターは話す。

 

『襲撃を受けた後、奴らについての情報を追っていてな。各地の諜報員からの報告を集めた。その中にプラネテューヌの街中で奴らを発見したという物があった』

 

「何だと?」

 

グラウトは驚く。平和になったこの国に忍び込んだというのか。

 

『三日前だ。凶暴化の報告が一件も無かった日だな。何を考えているのか知ったこっちゃないが、ボケている場合じゃないな』

 

そこまで言うとバクスターは煙草の煙を吐く。通話越しでもグラウトはそれが手に取る様に分かった。

 

『気を抜くなよグラウト。じゃねぇと奴らに寝首を掻かれる事になるぜ』

 

「……どうやら遅かったみたいだ」

 

忠告するバクスターに対し、何かを悟った様にグラウトは答えた。

轟音が聞こえた、それもモンスターの雄叫び付きである。襲撃か、まさかこのタイミングで来るとは。

 

「プラネテューヌの異変は我々で対処する。援軍は必要ない」

 

『オーケー』

 

通信を切り、グラウトは勢い良く隊長室を出る。

 

「グラウトさん!」

 

女性の声がグラウトを呼ぶ。妖精の様な小さな身体に、本に乗ったその女性。プラネテューヌの教祖、イストワールだった。

 

「イストワール様! 何が起こったのですか」

 

「凶暴化モンスターの襲撃です! 現在プラネテューヌの各地に出現し、被害を広げています!」

 

恐れていた事態が現実になった。グラウトは焦り始めるが、冷静を保ってイストワールに伝える。

 

「私は街へ出て、市民を誘導します。イストワール様は全域に避難警報を出してください!」

 

「分かりました。グラウトさん、お気を付けて!」

 

イストワールと別れ、教会の外へ出るグラウト。外は逃げ惑う市民で溢れ、混乱していた。

街の様子を見たグラウトは端末を取りだし、特命隊へ通信を入れた。

 

「特命隊全員に告げる、緊急指令だ!」

 

――――――――――――――――――――――

 

「うっ、うぅ……」

 

建物が壊され、誰もいなくなったかに見えた沿道に、逃げ遅れた市民がいた。瓦礫の陰から出ると市民はモンスターがいない見渡し、教会へと逃げようとする。

 

「グゴオォォ……」

 

しかしそう上手くは行かなかった。一匹の獣が市民を見つけ、唸り声を上げる。

 

「ひっ!?」

 

獣の声に市民は驚き、咄嗟に振り向く。その時、獣は既に駆け出しており、市民に襲い掛かろうとしていた。

市民は腰を抜かし、死を覚悟した。

 

「ゴオォ――」

 

だが、獣は市民の眼前で動きを止めた。てっきり殺されると思った市民は眼を丸くして獣を凝視する。しばらくすると獣は崩れ落ち、粒子になって消えた。

 

「…………」

 

獣が消えて、市民は初めて隣の少女に気づいた。銀色の長い髪。黒一色の服。特命隊第一班、ルナだった。

 

「行って」

 

「え、あ……?」

 

「行って」

 

脅しに似たルナの言葉に市民は怯え、教会の方へ逃げていった。

 

「ガアアアァァ!」

 

前方からモンスターの群れが現れ、ルナを威嚇する。ルナは平然とした表情でモンスターを見つめ、ビームナイフを両手に取る。

そして、群れの中から数体が飛び出した。モンスターはルナに向かって突進し、攻撃を仕掛ける。

 

飛び掛かったモンスターに対し、ルナは行動を開始する。

まず最初に一体の突進を避け、通りすがりにビームナイフを突き刺す。そのモンスターが消えた事を確認し、次に来た数体のモンスターを二本のビームナイフで切り刻む。そして最後尾から襲い掛かるゴーレムに爆弾を投げつけ、高速でゴーレムから離れた。

 

「ゴゴッ……」

 

ゴーレムの腕が爆弾に接触し、大爆発が起こった。周囲に煙幕が撒かれ、ゴーレムの位置から離れた場所に着地したルナはすぐに構え直す。

生死を確認するまで油断をしない、さもなければ死ぬ。それが暗殺者であるルナのモットーだった。

 

「グオォオゥ!」

 

その考えが正しいと証明するように、煙幕の中からゴーレムが飛び出した。ゴーレムだけではない。新たに数匹のモンスターが出現し、ゴーレムの後に続く。ルナはゴーレム達に迎撃しようとする。

 

「ルナ!」

 

しかし、男の声と共に無数の斬撃がゴーレム達を襲う。斬撃に当てられるとその線に沿ってばらけ、ルナに襲い掛かったモンスターは全滅した。

倒したのはルナの隣に立った赤髪の男、焔だった。モンスターを斬った刀を一振りし、ルナに目を遣った。

 

「ルナ、単独行動はやめろっていつも言ってるだろ! いくらなんでも無謀すぎるぞ!」

 

「……邪魔しないでよ、目障りだから」

 

焔がそう咎めるも、ルナは悪態をついて飛び出す。群れから飛び出したモンスターの視界から消えると、その死角からナイフを刺していく。

 

「はああぁ!」

 

ルナの他に一人、モンスターに迎撃する者が増える。アキラだ。禍々しい色彩の剣を手に、モンスターを両断する。立ち止まる事なく前進し、襲い掛かるモンスターを次々と倒していく。

 

「撃つ……!」

 

そしてまた一人。蒼依も戦闘に参加し、拳銃でモンスターに攻撃する。別方向から接近した個体に気づくと、大型ナイフで両目を斬りつける。怯んだ所で後退し、モンスターの頭部に銃弾を撃ち込んだ。

 

「まったく、どうしてこうも自分勝手なんだ……仕方ない」

 

三人の戦いを見ていた焔も飛び出し、道を阻むモンスターを斬っていく。

ルナ、アキラ、蒼依、焔。この四人が特命隊第一班だった。

 

「グウオオォォォォオォ!!」

 

ジェット機の様な轟音な響き渡ると、上空から何かがモンスターの群れの前に落ちた。屈んだ状態から起き上がると、第一班の方を向く。それはロボットだった。黒の塗装に機械のウィング、両腕はブレードになっている。

ハードブレイカー。それがロボットの名称だった。

 

「ッ! みんな、気を付けろ!」

 

ハードブレイカーを見た焔は三人に呼びかける。

 

「あのロボットは他のモンスターとは違う! 正攻法で戦っても勝ち目は薄い! いったん退いて――」

 

しかし三人は聞こえていないのか、ハードブレイカーに向かって突撃する。

最初にルナが機体に斬りつけるも、大したダメージは与えられなかった。反撃に振るわれたブレードを避けると、爆弾を当てて爆風を起こす。

次にアキラが煙幕の中に入り、ハードブレイカーに剣を振るった。しかし機体に傷は付かず、逆に払い除けられてしまう。

そして蒼依も頭部を目掛けて飛躍し、ナイフを突き立てるも、装甲の硬さから刺す事が出来なかった。不可能を悟ると蒼依はハードブレイカーから離れ、拳銃を構える。

結果、三人はハードブレイカーにダメージを与えられなかった。

 

「駄目だ、それじゃダメージを与えられない! 下がるんだ! チャンスを見極めて攻撃すれば――」

 

またもや焔の声を無視し、三人はハードブレイカーに攻撃を仕掛ける。それを見た焔は思い出すのだった。

 

 

 

駄目だ。そういえばあいつら、人の話を聞かないんだった……。

 

――――――――――――――――――――――

 

「ていっ!」

 

姿勢を低くして駆け出す青年、ノア。数体のモンスターに素早く接近し、両手に持つダガーで斬りつける。持ち前の敏捷さで攻撃を軽々と回避し、無数の斬撃を当てていく。あまりの速さにモンスターは反撃できず、倒されていった。

 

「ギィーーーン!」

 

モンスターを倒したノアの前に現れたのは一体の〆タルギアだった。ノアにとって〆タルギア、硬い装甲を持つロボットは相性の悪い相手だった。ダガーの一撃は浅いため、ダメージを与えるだけでも一苦労する。

 

「ヴァトリ!」

 

「任せろ!」

 

今までの経験からそれを知っているノアは、ヴァトリに呼びかけた。ヴァトリは背後から〆タルギアに攻撃し、鉄のグローブと円形の盾を着用した腕で殴る。パンチが胴体に当たり、怯んだ所でヴァトリは盾から杭を打ち出した。ヴァトリが持つ盾の中にはパイルバンカーが仕込まれていた。

杭が撃ち込まれ、胴体に大穴が空いた〆タルギアは機能を停止し、崩れ落ちた。

 

「さすがヴァトリ! お前ならどんな物でも粉砕できるな!」

 

「パイルバンカーのおかげだけどね。これでもモンスターを倒す力はあるんだ」

 

銃の乾いた音が鳴る。ヴァトリが振り向くと、散弾銃を持ったアリスと吹き飛ばされたモンスターが見えた。

 

Gotcha(やった)! あっはは! ヘッドショット決まった! これで十体目!」

 

アリスは倒れたモンスターを見ると満面の笑みを浮かべ、歓声を上げた。

そしてノアとヴァトリの元へ駆け寄り、嬉しそうに聞く。

 

「ねぇ見てた? ヴァトリ! ノア! ヘッドショット決まったよ! こんなに嬉しいのって他に無いよ!」

 

そこにはいつもの、引っ込み思案で泣き虫なアリスはいなかった。いるのはヘッドショットを決めて無邪気に喜ぶアリスだけだった。二人はそんなアリスに少しばかり恐怖を感じた。

 

「ふっふっふ~ん♪」

 

一方で襲い掛かったモンスター数体をワイヤーで縛り、隣で爆弾を設置する少女もいた。白華だ。

 

「あっ、もう倒したの? ちょっと待ってて~今こっちも片付けるから~」

 

爆弾を設置し終わると白華は急いで三人の所へ駆け寄る。しばらくして白華が設置した爆弾が起爆し、縛られたモンスターは燃え尽きていった。

 

「わぁ~、すごいね白華! モンスター達で花火あげるなんて!」

 

「えへへ、すごいでしょ。それにしても、あの花火綺麗だね~」

 

楽しそうに炎を見るアリスと白華。その二人にノアとヴァトリは背筋が凍りついていた。

 

「……鳥肌立ってきた」

 

「……僕も立ちそうだ」

 

「ここのモンスターは全滅したし、次いこ! 次」

 

「そうだね! またヘッドショット決めたいな~」

 

こ、怖ぇ~……。

それがノアとヴァトリの今の心境だった。

 

――――――――――――――――――――――

 

「ネプテューヌさん! ノワールさん! ブランさん! ベールさん!」

 

イストワールが四女神に呼びかける。ネプテューヌは不機嫌そうな表情でイストワールに詰め寄る。

 

「ちょっとちょっとー! 何なの今の地震!? おかげでゲーム機が壊れちゃったんだけど!」

 

「凶暴化モンスターの襲撃です! 今、プラネテューヌ各地で被害が増大しています!」

 

「何ですって!?」

 

イストワールの言葉にノワールが驚く。ラステイションだけじゃなく、まさかプラネテューヌにまで。

 

「……やっかいね」

 

「タイミングから察するに、私たちが集まるこの時を狙った、と考えればよろしいのでしょうか」

 

「そうだとしたら、モンスターの凶暴化が少なくなったのはこのためだったって事ね……何にせよ、すぐに片付けないといけないわ」

 

「そーだそーだ! ゲーム機を壊した報いは、必ず受けてもらうからね!」

 

「グラウトさんや特命隊の皆さんが討伐に当たっています。ネプテューヌさん達も協力して、各地のモンスターを倒してください」

 

四女神は頷くと急いで教会から出て、凶暴化モンスターの討伐に当たるのだった。

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