ネプテューヌEX ~とある青年のエクスペリエンス~ 作:S・TOM
次々と襲い掛かるモンスター。その奥には親玉であるルーガスが立っている。
セリスは親玉の元へ向かうためにモンスターを倒す。
「やあっ!」
繰り出される攻撃をいなすと、ナイフでモンスターを切り裂く。敵の動きを感じ取り、隙をついて適格に攻撃を加えていく。
「っ!」
遠距離からの電撃に気づくと即座に回避し、複数のM-3を視認する。セリスがM-3に向けて二本指を突き刺すと、その中心で爆発が起こった。煙が晴れるとM-3の姿はどこにも無かった。
ルーガスによって凶暴化されたモンスターを倒すセリス。彼女は女神に匹敵する実力を持ち合わせていた。
「やってくれるじゃねぇか……ああァ?」
面白くない表情で睨むルーガス。短気な性格上、楽々と倒し続けるセリスに苛ついていた。
「いい加減かかってきたらどうだ? モンスターが相手になっていないのは分かっただろう」
「はっ、冗談だろ? 雑魚を倒したぐらいで粋がってんじゃねぇぞ」
ルーガスが指を鳴らすと、セリスの前にエンシェントドラゴン、フェンリル、キラーマシンと危険種レベルのモンスターがぞろぞろと現れた。
「ちぃっ……」
「どうだ、テメェ一人でそいつらを倒せるか? 無理無理、ありえないね。そのまま殺されちまいな!」
「いいや、一人じゃねぇ」
セリスでもルーガスでもない、第三者の声が聞こえた。ルーガスはセリスの隣に、二人の少女がいる事に気がつく。
「俺達を入れて三人だぜ、チンピラ!」
「間に合った~……大丈夫、君?」
天王星うずめと大きい方のネプテューヌだった。ルーガスは二人がここに来た事に焦る。
「カス共……もう来やがったか!」
「…………?」
セリスは大きいネプテューヌに既視感を感じる。目の前にいる彼女は自分の友達に瓜二つだった。
「あれ、返事ない……もしかして気絶してる? もしもーし」
「ん……あぁ、大丈夫だ。まだ生きている」
大きいネプテューヌの呼びかけでセリスは我に返る。今はそれを考えている場合ではないな。
「お前達、名前は? 私はセリスだ」
「セリスか、俺はうずめ。一緒にこいつら倒しちまおうぜ、せりっち」
「私はネプテューヌ。あっ、プラネテューヌの女神と同じ名前なのは気にしないでね!」
セリスは驚く。うずめからせりっちと呼ばれた事もだが、何よりネプテューヌと名乗った事が信じられなかった。
「ネプテューヌ…………分かった、今は気にしない様にしよう」
この二人の事は後で聞くことにしよう。
セリスは気を取り直し、立ち塞がるモンスターを睨んだ。
――――――――――――――――――――――
「うおおおおおぉぉ!」
一方、特命隊第四班。炎を纏った大剣を手に界人は突撃する。先方にいる数体のモンスターに向けて大剣を振るい、一体の皮膚を斬る。すると大剣に纏われた炎が残りの数体に広がり、一瞬にして焼き尽くした。
「おおっ、カイト! お前の炎少し強くなったんじゃないか!?」
界人が出した炎に、やや怯え混じりに驚くデビッド。炎の力が開放されてから約一週間、界人の炎は以前より強くなっていた。
「グガアアアアア!!」
「よし、弾はまだある!」
しかしデビッドも負けておらず、襲い掛かる凶暴化モンスターを拳銃で仕留めていく。今まではモンスター一体に対し、数十発も弾を消費していた。しかし今は一発や二発程度で倒していき、冷静に立ち回る。以前のデビッドなら不可能だったが、自分の拳銃を改造した事、そしてラステイションでのミスを反省した事が彼を成長させた。
「そっちも銃の使い方が上手いじゃないか! 俺には出来ないぜ、そんなの!」
界人とデビッドがモンスターを倒すと黒い霧が出て、その中から新たにモンスターが出現した。
「ちぃっ、また出てくるのか!」
「こりゃあガチで殺しにかかってるぜ……やられはしねぇけど!」
絶えずに湧き出るモンスターに苦心しながらも、界人は大剣、デビッドは拳銃を構え駆け出す。
しかしモンスターの中から撃ち出された砲弾が二人を阻んだ。撃ったのは陸上歩行兵器、パンツァーだった。二人は左右に別れて回避すると、砲弾は建物に着弾し大爆発を起こす。その威力は周りの建物や地面を大きく抉り、二人を恐怖させる。
「なんだありゃ……あんなのが教会に当たったらガチでやべぇ」
「おいおいおい、また撃ってくるぞ界人!」
デビッドの言う通り、パンツァーは砲撃の発射準備をしていた。そうはさせないと二人は飛び出すが、モンスターが周囲から襲いかかり妨害する。
二人はすぐに返り討ちにしてパンツァーを見る。その時既にパンツァーは準備が終わり、第二発を撃ち出した。
「させはせん」
二人の前にウェインが飛び出す。ウェインは前方に魔方陣を張り、砲弾をパンツァーへと跳ね返した。パンツァーに着弾すると砲弾は爆発し、周囲のモンスターごとパンツァーを飲み込んだ。
「勇み足だぞ、カイト、デビッド。状況を見極めてから動くんだ」
「……そうだな、お前の事を忘れてたぜ」
パンツァーが消えると、今度は建物の中からモンスターが飛び出した。モンスターは三人に狙いを付け、四方から襲い掛かる。
「散りなさい」
少女の声と同時にモンスター達の身体に雷が散る。次の瞬間、モンスターは幾つかに切り分けられ、霧となって消え去った。
そして三人の前にモンスターを全滅させた少女、エリナが姿を現した。向けられたその表情は険しくなっており、握られている剣には雷が散っていた。
「行くわよ」
一言だけ言うと、エリナは次の場所へと歩き出す。モンスター襲撃の警報が鳴ってから、エリナはずっとこの調子だった。
「……っ、あれは!」
宙に羽ばたく黒龍を見たウェインは驚く。エンシェントドラゴンだ。ラステイションの時の様に黒く変色し、腹の底に響くような低い唸り声を上げた。
「黒いエンシェントドラゴンかよ……簡単には倒せねぇぞあれ」
「私が倒すわ」
怖じ気づく事なく、はっきりと宣言するエリナ。宙にいる黒のエンシェントドラゴンに向かって飛び、猛スピードで接近する。
「ゴオオォウ!」
エンシェントドラゴンは腕を振り抜いてエリナに攻撃する。鋭く尖った爪がエリナに当たるも、身体を切り裂かず空振りに終わった。
「はあっ!」
真上から繰り出された足蹴りがエンシェントドラゴンの頭部に直撃する。さっきエンシェントドラゴンが攻撃したエリナは残像だった。
蹴りを与えたエリナは距離を取り、エンシェントドラゴンを警戒する。前回の戦いで大したダメージを受けていない事は分かっていた。それを証明するようにエンシェントドラゴンは怯んだ様子は見当たらず、雄叫びを上げて周辺を震わせた。
「カイト、デビッド、ウェイン! 手出しは無用よ! こいつは私一人で倒す!」
三人に言い放ち、エリナは再びエンシェントドラゴンに向かって飛び出した。
「マジかよ……エリナの奴、一人であのドラゴンを倒そうってのか」
デビッドは信じられなさそうに呟く。
呆然と立ち尽くす三人の前に、無数のモンスターとロボットが出現した。
「……こちらも余所見している暇は無いな。行くぞ!」
ウェインの呼びかけに応え、三人はすぐに構える。
「ヘヴィだぜ……」
目の前のモンスターを見てカイトはそう呟き、改めて気合を入れた。
――――――――――――――――――――――
空高く、モンスターが打ち出された。モンスターはもがくもどうにもならず、そのまま星となって消えていった。
「せーの!」
打ち出したのは第三班、サクラだった。小柄な体格に似合わない巨大なハンマー『トリプルDX』を豪快に振るう。その一振りは十数の群れを吹き飛ばし、周辺にある建物にめり込ませた。それでもモンスターは増え続け、サクラに襲い掛かってくる。
「うえぇ……まだいるの~?」
モンスターにうんざりするサクラの前に凛が立った。
「サクラ。ああいう手合いにはこれが有効よ」
サクラにそう言い、凛は指を鳴らす。するとモンスターがいる地面が割れ始め、モンスターはその亀裂の中に落ちていく。その場所から逃げようとするモンスターもいたが凛は見逃さず、上空から雷を落として殲滅させた。
「すっご~い……凄いよ凛~!」
「猪なんて足下を崩してしまえば余裕よ」
感心するサクラに凛はさも当然の様に言う。
一方、廃ビルの屋上。そこにはソルがスナイパーライフルを構え、空中のモンスターを撃ち落としていた。手ぶれを起こさない様に気持ちを落ち着かせ、手前のスコープでモンスターの姿を正確に狙う。そうする事でソルは確実にモンスターを撃ち抜く事が出来ていた。
「――――ガガッ」
足場のコンクリートにひびが入ったのを直に感じ、ソルは別の建物へ飛び移る。コンクリートを突き破り、ゴーレムがソルの前に現れた。
ゴーレムはソルを視認すると間髪いれずに体当たりを仕掛けた。ソルはスナイパーライフルをしまい、デュアルソーで体当たりを防ぐ。勢い良く回転する刃がゴーレムを削り取るもその岩石は硬く、大したダメージは与えられない。
ソルは腰にミサイルポッドを具現化させ、至近距離からゴーレムにミサイルを放った。ミサイルは全弾直撃し、ソルは咄嗟に後退する。
「……ゴゴゥ」
煙幕の中のゴーレムが動き出すが次の瞬間、岩石の身体が分散して崩れていった。
「…………」
「お前か、リジー」
煙幕が晴れるとそこに一人の青年がいた。リジーだ。ゴーレムが崩れた理由は、リジーがナイフで四肢を切り落としたからだった。
「俺の方は終わった。そっちは?」
「今のゴーレムが最後だ。全部撃ち落としてやったよ」
お互い確認すると、二人は廃ビルから飛び降りる。
「あら、終わったのかしら?」
「ああ、俺もリジーも終わった。……酷い有り様だな」
酷く崩壊した地面にソルは唖然とする。凛の魔法で地面は割れ、歪に変形していた。
「問題ないっしょ、このぐらい。襲撃を食い止めた後に直す事になるし」
「そういう問題じゃあねぇだろ……ここに生き残りがいたらどうするんだ?」
「それも問題なし。アンタ達が戦っている間、辺りを探索しといたから大丈夫よ」
ソル達三人がモンスターと戦っている時、凛は騎士を召喚して建物や瓦礫の中を探索していた。その結果、生存者は0。それが分かった上で凛は範囲の広い地割れを起こしたのだった。
「巻き込まれた人がいないならそれでいいじゃ~ん。という訳で、先いこ~!」
「あっ、ちょっと待って!」
サクラが崩壊した道に行こうとするのを見て、凛は魔法を発動する。土属性の魔法で地割れした場所を補強し、平らな道を作り出した。
「ほら、置いていくわよソル」
凛に言われ、ソルはモヤモヤする気持ちを抱きつつ先へ進む。凛とリジーも行こうとすると――
「ゴオオオォォゥ!!」
背後から一匹のモンスターが襲い掛かった。一匹だけ凛の攻撃から逃れ、瓦礫の中に身を隠していた。そしてモンスターがいなくなって気が抜けた瞬間を狙い、二人に攻撃を仕掛けた。
「甘いわよ」
しかし攻撃が通る事は無かった。モンスターの身体にワイヤーが巻かれ、地面に叩きつけられる。ワイヤーの先にはリジーがいた。
「不意打ちなんてありきたり過ぎて予想できるわ。アタシはそんな攻撃を食らうほど馬鹿じゃないの」
凛は指先から雷撃を繰り出し、モンスターにぶつける。強い電流がモンスターの身体中に流れ、身を焦がしていった。
モンスターが力尽きたのを見て、凛とリジーは今度こそ次の場所へ歩き始めた。