ネプテューヌEX ~とある青年のエクスペリエンス~ 作:S・TOM
今後はこの様な事が無いよう、気を付けていきます。
白の女神候補生、四女神登場です。
「散りなさい!」
凶暴化モンスターに向かってそう言い、思いっきり杖を振るう少女。少女の容姿はピンクの髪に白のレオタードで、まるで女神の様だった。それもそのはず、少女はルウィーの女神候補生ラムだった。
杖を振り回すとラムの周辺に氷塊が現れ、モンスターを凍りつけにする。ラムは魔法で杖を氷の鎚に変化させると、モンスターの入った氷塊に槌を叩き込んていく。
「負けない……!」
ラムと一緒にロムも女神の姿で飛び回る。双子だからか淡い青髪やカラーリング以外はラムとまったく同じ容姿だった。
ロムは魔法を発動し、竜巻を周囲に起こす。竜巻はモンスターを飲み込み、その身動きを封じる。ロムはその竜巻を氷塊に変えてモンスターを閉じ込め、そして砕いた。
「ロムちゃん、あれやるわよ!」
「分かった、ラムちゃん」
ロムとラムは空に上がり、杖を重ね合う。そこから氷が形成され、段々と大きくなっていく。
「いっけぇぇーー!」
掛け声と共に、特大の氷塊が勢い良く放出された。荒れた街道を包み込むほどの氷塊は、無数のモンスターを押し潰し、盛大に砕ける。
「やったぁ! 完璧よロムちゃん!」
「ラムちゃんのおかげ……嬉しい」
大技が成功した事に喜び、ロムとラムは無邪気にハイタッチする。
ロムとラム。二人合わせてルウィーの女神候補生、ホワイトシスターと呼ばれている。
「お兄さーん! モンスター全部倒したよー!」
ラムはウキウキとした声で地上にいる緑髪の少年を呼んだ。見事な剣さばきでモンスターを倒す少年、白皇寺レイはラムの声に気づき、空に浮かぶ二人に振り向く。
「気を抜くのはまだ早いぞ! いなくなったと思ってもモンスターは増殖する! 用心しろ!」
「むぅ~、少しは褒めてくれたっていいのに!」
「お兄さん、酷い……(ぷいっ)」
レイに褒められず、逆に注意された二人は不貞腐れる。
先ほど氷塊を落とした場所に黒い霧が立ち込め、モンスターがぞろぞろと現れた。
「いいもん! お兄さんなんて大っ嫌い! 行くよロムちゃん!」
「……うん」
ロムとラムは地上に舞い降り、モンスターの中へ飛び込んだ。
レイは何の躊躇なく凶暴化モンスターへ突撃した二人に一瞬ハラハラするが、自分の目の前にいるモンスターへ意識を戻し、剣を構える。
大丈夫だ。あの二人は女神なんだ。見かけは小さな子供でも強力な力を持っているんだ。だからモンスターにやられはしない。と心の中で言い聞かせて。
「はっ――!」
レイは一体の懐に踏み込み、胴体を剣で両断する。そして周りのモンスター数体に接近し、攻撃の暇を与えずに斬り倒した。
「――――ォォォオオオ!!」
遠くからモンスターの群れが駆けているのが見えた。群れはレイに急接近し、確実に殺そうと一斉に飛び掛かる。
するとレイの大剣ギルフォードから眩い光を放出された。光はモンスターの視界を奪い、その動きを止める。
モンスターが動かなくなった隙を突き、レイはモンスターの群れを横切った。剣を振り抜き、モンスターを一人残らず切り裂いた。
光が晴れるとモンスターは地面に倒れ伏し、身体を粒子に変えながら消滅した。
「ユニちゃん、援護お願い!」
「分かってるって! 当たるんじゃないわよ?」
二人の女神候補生の声が聞こえた。空中ではパープルシスターとブラックシスターが、上空から攻めてくるモンスターを迎撃する。
ブラックシスターが撃ち出した弾丸と一緒に、モンスターに突撃するパープルシスター。しなやかな動きでモンスターを攻撃し、空を華麗に踊る。
そして、ブラックシスターの狙いは正確にモンスターに定め、撃ち漏らし無く仕留める。
「ここから先は!」
「一歩も通させません!」
市民の避難先である教会を守るため、女神候補生は奮い立つ。それはレイも同じだった。
「そういう事だ。この街を、プラネテューヌを貴様らの好きにはさせない」
レイは現れ続けるモンスターにそう言い、雄叫びを上げて飛び出した。
――――――――――――――――――――――
マシロは苛立っていた。
今日午前、平和なプラネテューヌに大勢のモンスターが襲撃した。それによって市民への避難警報が鳴り、特命隊にはモンスターを殲滅せよという指令が下った。
指令でこの崩壊した街並みに送り出された事については特に気にしていない。特命隊に所属している以上、こういう場面に出くわすのは必然だからだ。
苛立っている理由は、本来この場所にいるはずの一人が姿を見せないからだった。
「ちぃっ、あのナルシスト!」
マシロは八つ当たりする様に猟銃の引き金を引く。弾丸がモンスターを貫き、そこから粒子が溢れる。撃ち尽くした猟銃を投げ捨て、新たな猟銃で仲間に目もくれずにマシロは銃撃する。
「うおっ! 危ないですよツンツンガール!」
「うるせぇ! ここに来てる時点で危険なのに何を今更!」
黒斗の注意も聞かず、モンスターに向けて乱射するマシロ。そんな彼女を心配に思った楓は、モンスターが少なくなった所でマシロの所へ来る。
「落ち着いてマシロ。怒る気持ちは分かるけど、ここでカッとなっちゃ駄目よ」
「……分かってる。分かってるけど」
マシロはもどかしそうな表情を浮かべ、楓から顔を背ける。
「ムカつかないか? 指令が来たっていうのに、あの馬鹿一向に来ないんだぞ? 何処にいるのか分からないし連絡も来ない。会ったらぶっ殺してやりたいぐらいだ」
「……きっと別の場所でモンスターと戦っているのよ。ブラインは普段ああだけど、決して逃げ出す様な事はしないわ。モンスターを片付けたら、必ずここに来るわよ」
楓はマシロの肩を叩き、そっと微笑みかける。
一方、黒斗はモンスターの群れを一人で相手にしていた。少々手こずるも得意の足技で一掃する。ここにいるモンスターは全滅したかに思えたが、建物や瓦礫の中からまた新たにモンスターが出現した。
「また来たか……というよりお二人さん、モンスターを僕だけに押し付けないでください!」
「ごめんなさい黒斗! ……だからブラインの事を気にする必要はないわ。このまま三人でモンスターを倒しましょ」
楓はマシロにそう言って飛び出す。
マシロは暫く思い悩んだ後、再び猟銃を構える。その顔に苛立ちは見えず、むしろ余裕そうに笑っていた。
あの馬鹿の事だ、後でひょっこり顔を出すだろ。
――ウィィイイイイン!!
「こっちを見ろ!」
突然のギター音とアホみたいな大声にマシロの気が抜ける。
後ろを振り返ると、そこにはギターを鳴らす赤髪の青年がいた。
「フッ、オレ参上……」
うわっ、別の馬鹿が来やがった……。
マシロは髪をかきあげてカッコつけるアクトリアを見てげんなりした。そんな事はお構いなしに、アクトリアはギターを鳴らしながら近づく。
「苦戦している様だな、特命隊。だがもう安心しろ! このオレ、アクトリアがそこにいるモンスターを倒す!」
「下がっていてください、アクトリアさん。ふざけてる場合じゃないんですよ」
何の根拠もなく自信満々なアクトリアに、黒斗は冷ややかに言う。特命隊になれなかった男が凶暴化モンスターを倒せる筈がない。
だがアクトリアは聞いておらず、モンスターに突撃する。
「行くぞ、ソウルマイスピリットォ!」
自分のギターを思いっきり振るい、モンスターを殴った。
しかし当然というべきか、ダメージは通っておらず怯んですら無かった。
「フン! セイ! ハッ!」
それに気づかないアクトリアは何回もギターで殴り、モンスターに攻撃した。モンスターは何ともなく、アクトリアに吠える。
「……あ、あれ?」
流石に気づいたのか、アクトリアは焦ってモンスターから後ずさる。
倒せない。そう確信したアクトリアはゆっくりとマシロ達に振り返る。アクトリアの表情は神妙な物になっていた。
「特命隊、ここは任せた! 第二、第三のピンチがオレ様を呼んでいる気がする――」
すかさず、マシロと黒斗はアクトリアの顔面に蹴りをめり込ませる。妙に息の合ったコンビネーションで身体に数発入れた後、教会の方角へ吹き飛ばした。
「……さてと」
邪魔者を除けた二人は、モンスターへ向き直る。アクトリアの攻撃で怒った様で、三人に対して咆哮を上げた。
「あのKY馬鹿、余計な事しやがって……尻拭いされるこっちの身になってみろっての」
「その割にはツンツンガール、貴女笑っていますよ」
黒斗の指摘通り、マシロの表情は微笑を浮かべていた。
「どうでもいいだろバーカ。後ツンツンガール言うな。
マシロは黒斗に悪態を突き、魔法で生成した猟銃を手に取る。
「来いよモンスター。お前らごときにプラネテューヌを潰されてたまるか」
――――――――――――――――――――――
特命隊が各地でモンスターを倒している間、四人の女神は街の中を滑空していた。イストワールが示したモンスターの発信源を目指し、猛スピードでそこへ飛ぶ。
「……酷ぇ有り様だな、派手にぶっ壊されてやがる」
崩壊した街並みを見たルウィーの女神、ホワイトハートが呟く。アホ毛の生えた薄青髪に白のレオタードを着た、四人の中で一番小さな女神だ。
「恥ずかしげもなく食い散らかすとは……品性の欠片もありませんわね」
ホワイトハートとは正反対に、緑のポニーテイル、露出度の高いレオタードスーツの女性が腹立たしそうに言う。リーンボックスの女神、グリーンハートだ。
「そりゃそうでしょ。親玉からして品が無いんだから、……それにしてもやってくれるわね」
ブラックハートは街を破壊し尽くしたモンスター、そして親玉のルーガスに怒りを覚える。目的が何なのかは知らないが、自分のためだけに弱者を踏み潰す事が許せなかった。自身もラステイションを襲撃されたから尚更だ。
「いーすんが言っていたポイントはもうすぐよ。これ以上、モンスターを野放しにする訳にはいかないわ」
パープルハートが三人に伝える。親玉の所まで後少し。四人の女神はそれぞれ自分の武器を握りしめる。
「ゴオオオオォォォォウ!」
前方から黒のエンシェントドラゴンが向かってくる。目で追えない程のスピードで目の前に接近し、鋭く尖った爪を振った。
「邪魔!」
だがブラックハートが前に出て、大剣で腕を切断された。間髪入れずにブラックハートはドラゴンの身体を切り裂き、先へ進む。
「どうやら私達に気づいた様ですわね」
行き先に次々と現れるモンスターを見たグリーンハートは槍を構える。現れたモンスターは怒涛の如く押し寄せ、四人に襲いかかる。
「失礼あそばせ」
今度はグリーンハートが三人の前に割り込み、モンスターの群れに突撃する。槍を自在に振るい、モンスターを薙ぎ払う。
次に黒のフェンリルがグリーンハートに攻撃する。振りかかった前足の爪を軽々と槍で防ぐ。手こずっている様子はなく、むしろ優雅な佇まいを見せていた。グリーンハートは防いだ爪を弾き、フェンリルが放るんだ隙に槍で真っ二つに斬った。
「ちっ、急いでるってのに……こうなったら、徹底的に叩きのめさねぇとな!」
巨大なゴーレムがこっちに来るのを見て、ホワイトハートは豪快に大斧を振り払う。大斧はいともたやすくゴーレムを砕き、一撃で唯の岩塊に変えた。
ゴーレムを倒したホワイトハートは空高く飛び、手前の群れに向かって大斧を振り下ろした。桁外れの威力を持った大斧が地面に刺さると衝撃波を発生し、地面と共にモンスターを一匹残らず割った。
「あらあら、ブラン。貴女の馬鹿力は衰えていませんわね」
「へっ! てめえの上品ぶった動作も鈍っちゃいねぇな!」
数ヶ月の間、デスクワークばかりやっていたが、身体の方は鈍ってはいなかった。
それが分かったホワイトハートとグリーンハートは連携し、モンスターを圧倒する。
「へぇ~少しは鈍ってるって思ってたけど、結構やるじゃない。
「ノワール。もしかしてさっきの事、根に持ってるの?」
二人の奮闘に感心していたパープルハートとブラックハートの前に三体の八百禍津日神を筆頭に、危険種の群れが現れる。
「……軽口を叩いてる暇は無いわ。ノワール、ここは一気に行くわよ」
「分かってるって。ここに長居する気はさらさらないわ」
二人の表情が一気に引き締まった。剣を構えると躊躇なく飛び出し、危険種の群れの中へ入り込む。