ネプテューヌEX ~とある青年のエクスペリエンス~   作:S・TOM

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第34話 四女神対ルーガス

「うずめ、大丈夫!?」

 

傷だらけのうずめの元にネプテューヌが駆け寄る。うずめ、セリスと比べ、大した怪我は見当たらなかった。

 

「あ、あぁ……すまねぇ。俺が不甲斐ないばかりにこんな様だ」

 

「いや、不甲斐ないのは私だ」

 

セリスが言う。ルーガスの攻撃で大きく負傷した身体だが、精神力で何とか立たせていた。

 

「お前達を窮地に追いやったのは私の油断だ。もしあの時、気を抜いていなければ……」

 

「そういうのはどうだっていいよ! 二人とも、教会へワープするから捕まって!」

 

この危険地帯から二人を逃そうと、ネプテューヌはねぷのーとを開く。

しかし、うずめは立ち上がって静かに言う。

 

「お前らだけで逃げてくれ。俺は良い。ルーガスを倒し損ねた尻拭いをあいつらに任せる訳には――」

 

「はいはい! 良いから行くよ!」

 

「えぇっ!? ちょっと――」

 

有無を言わさずネプテューヌはうずめの手を掴み、三人で教会へワープした。三人が消えたそこには、大小の瓦礫だけが散らばっていた。

 

「随分と余裕だな~。アァ?」

 

一方、ルーガスと四女神。

ルーガスはにやけ面を浮かべ、四女神に言う。

 

「不意を突いた程度で勝った気でいるみてぇだが、俺はこの通りピンピンしている。テメェらの攻撃の痕なんざぁ残っちゃあいねぇ。これがどういう意味が分かるか?」

 

「倒すのが少し手こずるって事ね」

 

「ぶん殴る手間が増えただけで、結局雑魚に変わりねぇな」

 

「それをボスと呼ぶにはあんまりですわね」

 

ブラックハート、ホワイトハート、グリーンハートの三人は熟考し、それぞれ答えた。

その緊張を欠いた、小馬鹿にした物言いにルーガスは苛つく。

 

「ちげぇよ! 倒せねぇんだよ!」

 

声を荒げさせながら続ける。

 

「まだ分かんねぇのか!? うんざりするぜ、どいつもこいつもよォォ! 俺が本気出せばテメェらごとき――」

 

「勘違いをなされている様ですが――」

 

グリーンハートが遮った。

 

「私達はまだ全力を出していませんわ。先ほどの攻撃も言ってみればほんの小手調べ。それを知らずに勝ち誇るのは浅はかですわよ」

 

「……んだとォ?」

 

どこまで俺をコケにしやがるんだ?

わなわなと身体を震わせ、頭に血が上っていく。

今にも爆発しそうなルーガスを見て、今度はパープルハートが口を開く。

 

「ルーガス。もし本気を出していないのなら、今すぐ出しなさい」

 

真っ直ぐとルーガスを見据え、剣を構えた。

 

「私は頭に来てるの。大群を率いてプラネテューヌを襲った以上、容赦はしないわ。覚悟しなさい」

 

それが引き金となり、ルーガスの怒りが頂点に達した。

上等だ、やってやらァ!

 

「ガアアアアアアァァ!!」

 

拳を大きく振り上げ、パープルハートを殴りつける。

その攻撃は余りにも強く、広範囲の衝撃波が周囲を襲う。

 

「ウグッ……!?」

 

……衝撃波が止むと辺り一面はまっさらな跡地となり、建物などは完全に消えていた。

 

しかし、相手には通用しなかった。

パープルハートの剣がその拳を防ぎ、一ミリも動かなかった。

 

「グ、グウウゥゥ!!」

 

負けじと拳に力を入れるも状態は変わらず。

逆に一瞬の隙を突き、パープルハートが拳を弾き飛ばした。

 

「はぁぁぁぁ!」

 

動き出したパープルハート。怯んだルーガスに接近し、斬撃を繰り出す。

対するルーガスは崩れた体勢を立て直す。迫り来る斬撃を防ぐと、距離を置こうと空中に逃げる。

 

「私も忘れないで!」

 

空中にはブラックハートが待ち構えていた。

逃げてきたルーガスの顔面にドロップキックを喰らわすと、そこから力を入れて吹き飛ばす。

 

「グハッ……アマァァ!」

 

不意打ちを受けて憤るルーガス。ブラックハートに怒りをぶつけるべく、一直線に突き進む。

 

「……フン」

 

ブラックハートの大剣が七色に光る。

待ってました。そう言わんばかりに口元を緩ませ、ブラックハートは大きく大剣を振るった。

 

「トルネードソード!」

 

次の瞬間、とても強大な斬撃がルーガスを襲った。

斬撃が当たると身体の大部分が削り取られ、上下に二分される。

 

「オ、オォォォォ……」

 

大ダメージを受けたルーガスの口から黒い煙が吐き出される。ネガディブエネルギーね。それがあるのは前のエンシェントドラゴンで知ったわ。

ブラックハートは一気に方を付けるべく、ルーガスへと飛ぶ。

 

「来るんじゃねェ!」

 

ルーガスが離れた下半身を動かし、ブラックハートに蹴りかかる。蹴りが防がれる間、頭部を含む上半身を移動させて地上へと降下する。

 

「この程度……俺にはァ!」

 

削られた下半身を再生させ、ダメージを回復する。

ふざけた事しやがって……。下半身を切り捨てたブラックハートを見上げ、高く飛び上がろうとした。しかし――――

 

「ウオアァァ!?」

 

まるで地面に打ち付けられたかのごとく、足がぴくりとも動かず、失敗した勢いで転倒してしまった。

見ると足に氷が張り付いていた。直ぐに抜こうとするも強度が強く、びくともしない状態になっていた。

 

「な……何だこりゃァ!?」

 

「おぉうりゃあぁぁ!!」

 

荒々しい雄叫び声を聞き、顔を上げると同時にホワイトハートの鉄拳がルーガスの頭に叩き込まれる。

 

「まだだ!」

 

ホワイトハートは大斧を持ってルーガスを打ち上げる。強い一撃をもらい、宙に浮かぶルーガス。ホワイトハートはそれを追尾すると、今度は地面へ強く打ち落とした。

 

「この程度じゃあ私の怒りは治まらねぇ!!」

 

凶暴化の事象もあり、ホワイトハートはキレていた。

大斧を勢い良く振り下ろし、地面にめり込んだルーガスに追い打ちをかける。衝撃で地面は崩れ、ルーガスはさらに深くめり込んでいく。

 

「アガァァァ……クソォ!」

 

痛みに耐え、地面に向けてエネルギー弾を放つルーガス。その反発を利用して地面から抜け出し、空高く飛躍した。

 

「ハァ、ハァ……ッ、次はテメェか!」

 

向かってくる女神の存在に気づき、その方向へ振り向く。グリーンハートだった。得物の槍を持ち、超音速でルーガスに接近していた。

 

「バカが……お見通しなんだよ!」

 

ゆっくり構えを取り、近づくグリーンハートを待ち構えるルーガス。

そして至近距離まで近づいた時、二人は同時に攻撃に移った。

 

「はあああぁぁ!」

 

「ぶっ潰れろォォォ!」

 

槍を振りぬくより先に、ルーガスの拳がグリーンハートに付着した。

仕留めた、ざまあみろ。攻撃を当てたルーガスはそう確信した。

 

「――甘いですわよ」

 

しかし、そのグリーンハートは残像だった。

質量を持たない像に拳は当たらない。気を抜いたルーガスは攻撃が空振りし、大きくよろけるのだった。

 

「ぬおっ、おぉぉ……?」

 

そして本物はルーガスの真上を飛び、瞬間、槍で頭を縦に切り裂いた。

 

「怒っているのは私もですわ!」

 

飛び超えたグリーンハートはすぐ次の攻撃に移る。

槍を持ち直し、狙いを定め、背後からルーガスに突きを繰り出す。

 

「グオ、オオオオォォォ……」

 

何回も、何十回も連続し、胴を貫かれる。馬鹿な。こんなはずは。苦しげに呻くルーガスの思考はそれらに押しつぶされていった。

思考停止に追い込まれていくルーガス。そこへグリーンハートが突きの手を止め、目の前に瞬間移動した。

 

「逃れる事は出来ませんわ!」

 

満身の力を槍に込め、縦、横と十字に薙ぎ払った。それがグリーンハートがルーガスに放った、会心の斬撃。

 

「グアアアアアァァ!」

 

斬撃の余波で発される衝撃波。ルーガスは衝撃波によって派手に吹き飛び、地面に叩きつけられた。

激しく横転し、倒れこむルーガス。今まで受けたダメージを回復させ、起き上がるも息を切らしていた。

 

「ゼェ……ゼェ…………クソッタレがあああぁぁ!!」

 

逆上し、猛獣の様な雄叫びと共にドス黒い靄を四方八方に放出した。

その靄は徐々に広がり、プラネテューヌ全体へと流れこもうとする。

 

「ルーガスの奴、完璧にキレたみたいね」

 

黒い靄から離れ、四女神が一ヶ所に集まる。

ルーガスは自身が放出した黒い靄の中に包まれ、姿を隠していった。

 

「思った以上にやるわね。私達の攻撃に耐えるなんて……ちょっとびっくりしたわ」

 

「ですがネプテューヌ、倒せない敵ではないのは変わりませんわよ」

 

「ああ、その通りだ!」

 

四女神は一斉に武器を構えた。黒い靄に紛れるルーガスをしっかり見据え、パープルハートは言う。

 

「ここから一気に決めるわ。皆、いいわね?」

 

「当然!」

 

「言うまでもねぇ!」

 

「無論ですわ!」

 

ブラックハート、ホワイトハート、グリーンハートが飛び出し、パープルハートも後に続いて出撃した。

四女神の身体が輝き、光の軌跡を描く。人々からの信仰を力に変えた、シェアエネルギーだ。ルーガスを倒すべく、シェアエネルギーを開放した四女神は黒い靄へと突撃する。

 

ブラックハートの剣さばき。

 

ホワイトハートの斧技。

 

グリーンハートの槍術。

 

それらの攻撃からシェアエネルギーが流れ、黒い靄を綺麗に掻き消していく。

そうして三人が切り開いた道をパープルハートが進む。

 

「覚悟!」

 

ネガティブエネルギーが最も濃い位置にルーガスがいる。

パープルハートは片を付けるべく、さらに加速してその塊に近づいた。

 

「くたばれェェ!」

 

靄を突き抜け、暗黒色の特大ビームがパープルハートを呑み込む。

そこから爆風が起こり、散っていく靄の中心にルーガスが腕を突き出して立っていた。

 

「油断したな単細胞! 最後の最後で勝ったと思ったのがテメェの死因だ!」

 

ビームが当たった場所から吹き上がる煙幕を見て、ルーガスは心の底から笑う。

 

「ッハッハッハッハ! 笑いが止まらねぇ! 馬鹿正直に突っ込んできたおかげで楽に殺せたからなァ! これで残るは――――」

 

パープルハートが輝きを放ち、煙幕の中から現れた。

ルーガスがそれに気づいた時には、既に目と鼻の先に位置していた。

 

「ネプテューンブレイク!」

 

刹那。無数の斬撃がルーガスを襲った。

巨体は四散し、その小さな一片一片が黒い靄を出して散る。

 

「アガッ……そ、そんな――」

 

その呻きを最後に、ルーガスはシェアエネルギー中に消えていった。

 

「最後の最後で油断したのは、あなたの方だったわね」

 

一息をついて、誰もいなくなった場所を見つめ、パープルハートは言った。

 

「やっとくたばったな」

 

ルーガスとの決着が終わり、ホワイトハートが最初に口を開く。

 

「思ったよりしぶとい野郎だったぜ。私達の全力全壊を食らってもピンピンしてられるなんてな」

 

グリーンハート、ブラックハートも続く。

 

「確かに、生命力はモンスターの比ではありませんね。私一人では倒せなかった……とまでは行きませんが手間取るのは確実でしたわ」

 

「ホント、しつこい奴だったわね。けど倒しちゃえば何て事はないわ」

 

「そうね。けれど、ルーガスを倒せたのは貴女達のおかげよ。ありがとう、ノワール、ブラン、ベール」

 

パープルハートのお礼に三人は笑って返した。

 

「――さて」

 

これで終わりな訳ではない。

四女神は気を引き締め、来た道を振り返った。

建物の残骸が並ぶあそこでは、まだ女神候補生(いもうと)達や特命隊が戦っている。

 

「私達も行って、市民を安心させないといけないわね」

 

パープルハートの一言を皮切りに、四女神は街の中心部へ飛び立った。




次回で一章が終わります。
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