ネプテューヌEX ~とある青年のエクスペリエンス~   作:S・TOM

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番外編 集結、黄金の戦士

 ――――ゲイムギョウ界。

 四人の女神が守護する世界に、ある異変が起きていた。

 凶暴化モンスター。その名の通り、モンスターが凶暴化し街を襲うという事件が多発していた。

 これはプラネテューヌ特命隊が結成される少し前の話である。

 

 

「…………来ねぇな」

 

 プラネテューヌ近くにある森林。洞窟の前で誰かを待っている赤髪の男がいた。

 ジェイス。諜報機関の人間であるが、今はもっぱらデスクワークをこなしている。

 後に特命隊に所属するヴァトリとは同期だが、仕事が無い事に悩むあちらとは違い、次から次へと来る仕事の量にうんざりし、プライベートに打ち込めずにいた。

 そのため、プライベートを過ごせているヴァトリに羨望の念を抱いているのはまた後の話である。

 

「ゴールドサァド……本当に来るのか? 胡散臭いんだよなぁ、とても」

 

 ジェイスが愚痴を溢す。

 ゴールドサァド。その伝説と言える存在は、かつて女神不在の時に国を治めていた事から英雄と呼ばれていた。ジェイスにとって物凄く胡散臭い物ではあったが、グラウトが言うからに実際に存在している様だった。

 

『今回の作戦にはゴールドサァドが同行する。彼女らが来るまで決して洞窟に入るな』

 

 グラウトの命令で待機し、ゴールドサァドを待ち続ける事30分。奴らは一体何やってる? ジェイスの中で徐々に苛立ちが募りつつあった。

 

「それにしても、あちこちで騒ぎになっているわね~」

 

 女の声が聞こえた。

 顔を上げると街の方角から四人の少女が話をしながらこちらに向かっていた。

 

「凶暴化モンスター。通常のモンスターより凶暴な上に格段なほど強い。ルウィーでも被害が出ているって話だ」

 

「……興味ないね」

 

「またまた。リーンボックスでも発生してるって聞いたぞ?」

 

「プラネテューヌでも出ているよ。モンスターめ、次現れたら私がとっちめてやるんだから!」

 

「無理しないのビーシャ。モンスター恐怖症、まだ克服しきれてないんでしょ?」

 

「皆さんの所でも発生しているんですね、凶暴化モンスターは……」

 

「ブランちゃん達も困っているからね。狩りをしたい気持ちはあるけど、一刻でも早く排除しないといけないな」

 

 凶暴化モンスターの話をして近づいてくる。

 何なんだあいつ? まさかだとは思うが……。

 

「……着いた。ここが目的地の洞窟だな」

 

 四人の中から茶髪に青いベレー帽を被った少女が確認する。

 こいつらがゴールドサァド……。懐疑的な気持ちを胸に、四人に声をかける。

 

「ゴールドサァドというのはお前らか?」

 

 そう問いかけた後、一息入れて声を発する。

 

「今回お前らと同行するジェイスだ。ゴールドサァド、期待してるぞ」

 

 

「今回の目的はクリスタルの回収だ」

 

 洞窟内。岩に囲まれた中で鉱石が輝き、道を照らしている。

 ゴールドサァドの前を先導するジェイスは地図を確認し、四人に説明する。

 

「諜報員の報告によると、洞窟の入口でクリスタルを運ぶモンスターが確認された。黒の六角形、禍々しい光を発していたそうだ。これが凶暴化の要因だとすれば、十分に警戒する必要がある。気を付けろ」

 

「……クリスタルか」

 

 クリスタルという言葉に反応して呟く、白髪で赤目の少女。

 

 エスーシャ。かつてリーンボックスの統治者であり、魔王討伐のためにソルジャーを率いた。

 常に無口で何事に対しても興味無い、と切り捨てている。何なら興味があるんだ?

 

「うぅっ……それってどこにあるの?」

 

「100階まであるって情報だ。もしかしたら最下階にあるかもな…………というかお前ビビってんのか?」

 

 一旦足を止め、振り返る。一番背が小さい、黄色の髪と服の少女がブルブルと震えていた。

 

 ビーシャ。プラネテューヌの統治者であり、またの名をブレスト仮面。

 本人はバレてないつもりでいつも人々を助けているが、事ある毎に金を請求してくる困った少女である。

 今回同行するジェイスも以前、彼女から金を請求された事がある。請求してやろうか?

 

「び、ビビッてなんか無いよ! あんた、私の事信じてないの!?」

 

 ジェイスの言葉を聞いて強気を装うも、身震いまでは隠せてなかった。

 はぁ、とため息をつき、四人に言い放つ。

 

「ぶっちゃけ信じてねぇぞ。いつ伝説になったのかは知らないが、ゴールドサァドだとか言うお前らが女神に匹敵するほど強いとは悪いが全然思えねぇ。お前ら本当に伝説の存在か?」

 

「まぁまぁ、そうカリカリしないの」

 

 すかさずベレー帽の少女が止めに入る。

 

 シーシャ。ルウィーの統治者とされた少女で、国民が好むロリ……幼女とは正反対の存在。

 かつては女神ホワイトハートごと、ブランとコンビを組み、周囲からゴールデンコンピと呼ばれたそうな。

 

「確かにビーシャは怖がりさ。幼いころのトラウマでモンスター恐怖症になったし、今でもそれは残ってる。だけど子供たちのためにその恐怖を乗り越えてモンスターと戦ったんだ。決して弱くなんて無いさ、アタシが保証する」

 

「ビーシャ……」

 

「……あっ、あぁ……そうか」

 

 そう言われたら返す言葉がない。四人から目を逸らし、何と言おうかあれこれ考える。

 

「それに貴方の方こそどうなんですか? ジェイスさん」

 

 黒髪に赤いセーラー服を着た少女がジェイスに心配そうな音色で聞く。

 

 ケーシャ。ラステイションの統治者だった存在であり、その時教会を乗っ取った傭兵組織の一員だった。

 物心ついた時から傭兵の訓練を施され、その戦闘能力で傭兵組織を壊滅させた。

 ……ジェイスは以前、ケーシャの姿を見た事があるが交流は無かった。

 

「凶暴化モンスターの事は各国に知れ渡っています。犠牲になった人は数知れません……そんな規格外の力を持ったモンスターに戦えるんですか?」

 

「……そりゃあ、この任務に駆り出されるぐらいだし、十分戦えるぞ?」

 

 冷や汗をかきながらジェイスは答える。本音を言うと自信が無かった。デスクワークばかりで身体が鈍った今、凶暴化モンスターと果たして戦えるか不安が心の中に満ちていた。

 

「ケーシャの言う通りだよ! この前だって、街に出たモンスターにワンパンされてたんじゃんか!」

 

「うぐっ!?」

 

 ビーシャの容赦ない言葉がグサリと刺さる。この前、街で起きたモンスター出没事件。真っ先にジェイスが送られたが結果は惨敗。その後、遅れて来たブレスト仮面がモンスターを全て倒したという。

 

「……分かった分かった。俺が悪かったって! もう疑わねぇよ……ていうか、もう一人はどうした?」

 

「あぁ、エスーシャなら一人で先に行ってるよ。とっくに」

 

「……………………」

 

 我が強い黄金の戦士であった。

 

 

「ヌラァー!」

 

 洞窟にあった階段を下って数分。一体のスライヌが行く手を阻んだ。

 よく見ると表情が歪んでおり、凶暴化している様だった。

 

「ここは俺に任せてもらおうか」

 

 ジェイスが意気込み、前に出る。こいつらにああ言われたら黙っていられない。

 

「ジェイス! 一人で大丈夫なの!?」

 

「舐めんな! 凶暴化してるとは言えスライヌだ。あいつ如き、倒すのに二秒も――――」

 

「ヌラッ!」

 

 前に出て二秒。スライヌの体当たりを食らったジェイスは吹き飛ばされ、「ウボァァ!」と声を出して岩盤に埋もれた。

 自信満々な言動の割にあっさり倒されたジェイスの姿は、

 

「えぇっ、弱っ!?」

 

「ジェイスさん!?」

 

「えっ、ウソ、冗談でしょ?」

 

「………………………………」

 

 当然、ゴールドサァドからの評価は散々だった。

 

 ジェイスが一瞬で倒されるという、ある意味予想通りの出来事を見て、仕方なくビーシャがスライヌを倒す事になった。

 そして岩盤から身体を引き抜いた時には既に、ビーシャがバズーカでスライヌを焼き払っていた。

 

「……おい、なに勝手な事やってんだ」

 

「いいじゃない別に。それより君は後ろに下がってな」

 

 シーシャに笑顔で戦力外通告され、ジェイスは格の違いと身の程を否が応にも知った。

 

「…………まぁ、デスクワークばっかで身体が鈍ってたからな」

 

 言い訳にもならないことを呟き、渋々四人の後ろに下がった。

 

 

 洞窟を進んでいき、遂に100階。

 五人は禍々しく光を放つ、黒のクリスタルを発見した。

 

「あれだな……俺が取ってくる!」

 

「おい待て、罠だぞ!」

 

 仕事が終わる。ゴールドサァドともおさらばだ。

 エスーシャの制止を聞かず、ジェイスは一目散にクリスタルへ走る。

 

「取ったぁ! 何が罠だ、取っても何も起こらねぇよ!」

 

 クリスタルを取り、戻ろうとした瞬間。ゴールドサァドとの間に檻が出現し、ジェイスの退路を阻んだ。

 

 やっぱり。

 分かりきっていた事態が起こり、四人は呆れた様にジェイスを見る。

 

「閉じ込められた……おい! そこにレバーかスイッチないか!? それで俺を出してくれ!」

 

「無いね」

 

 エスーシャにばっさり言われ、絶望的な表情を浮かべるジェイス。

 

「……ォォォォォォオオオオ!」

 

 そこへ、四体の大型モンスターがジェイスの前に現れた。

 まるで主人公機の様なロボット。武装を積んだ殲滅用ロボット。鋭く尖った獰猛な肉食獣。堕天使を思わせる翼を持った人型。

 どれも危険種以上のオーラを漂わせ、侵入したジェイスに殺意を集中させる。

 

「お、お前らさっさとしろ! このままじゃ目的のクリスタルも――――」

 

 ジェイスの必死な声を猛々しい雄叫びが掻き消し、四体一遍に襲いかかる。

 

「うわああああああああ!!」

 

 主人公機のビーム射撃。殲滅ロボットの機銃。肉食獣の凪ぎ払い。堕天使による剣撃。

 次々と繰り出される猛攻と紙一重とくぐり抜け、ジェイスはクリスタルを護る。

 

 まずい、まずいぞ。

 ジェイスの心の中に恐怖と焦りが徐々に増していく。このまま避け続けてもキリがない。ただ疲れるだけだ。こっちからも攻撃を仕掛けないと――――

 

「うおっ!?」

 

 考え事をし、バランスを崩してしまった。

 ジェイスの身体が激しく転がり、その場で動かなくなった。

 何とか起き上がり、見上げると四体の鋭い視線が自身に向けられていた。

 

 なんてこった。これなら後先考えずに突っ走らなければ良かった。

 後悔先に立たず。四体の身体が動き、ジェイスに攻撃を仕掛ける――――

 

「はああああああ!」

 

 肉食獣にシーシャの跳び蹴りが決まった。

 跳び蹴りを受けた肉食獣は真横へ吹き飛び、岩壁に激突する。

 そこへ追撃をかけ、着地したシーシャは片手に装着したバスターで狙撃し、肉食獣を倒した。

 

 次に登場したのはロケット弾だった。数発のロケットが主人公機に着弾し、大爆発を起こす。

 煙幕が消えると主人公機は消えており、どこにもその姿を見せる事は無かった。

 

「殲滅する……!」

 

 殲滅ロボットに接近したケーシャが短機関銃を撃ち込む。

 銃弾が装甲を削り、内部にダメージを与える。止めにどこからともなく取り出したスティンガーミサイルで撃ち、殲滅ロボットを機能停止にさせた。

 

「決める!」

 

 最後にエスーシャが残った堕天使を攻撃する。

 魔力を込めた大剣を振るい、堕天使の剣を砕く。無防備になった隙をついて乱撃を繰り出し、最後の一閃で堕天使の身体を切り裂いた。

 

「やったぁ! 私達の圧倒的大勝利、だね!」

 

 モンスターが全滅し、ビーシャが無邪気に喜ぶ。

 ジェイスを追い詰めた四体のモンスターは、ゴールドサァドによって呆気なく倒された。

 

「……………………………………………………」

 

 こりゃ勝てんわ。

 ジェイスは確信したのだった。

 

 

「いや~ゴールドクリスタルの力、凄かったね!」

 

 洞窟の入口前。黒のクリスタルを手に入れ、無事に外に出た五人は和気藹々と話していた。

 

「久しぶりだったのであの時より弱くなってるかなと思いましたけど……そんな事は無かったようですね」

 

「黄金の力の源は、女神と同じく信仰心だ。ゴールドサァドの名が伝説になった今、信仰する者がいても不思議ではない。まぁ、好きに使わせてもらうさ」

 

「そうだね。……久しぶりに使ったからもうお腹が空いちゃったよ」

 

 そう言ったシーシャの腹の虫がなった。

 仕方ない。今回何にも出来なかったしやってやるか。

 

「なら俺が奢ってやるよ」

 

 ジェイスの声に反応し、四人が振り返る。

 えっ、いたの? 四人の表情はそう言いたげそうだった。最初からずっといたよ。

 

「良いんですか? ジェイスさん」

 

「良いぜ。お前達は実際よくやったよ。大した礼は出来ないけど、飯を奢るぐらいならお安い御用だ」

 

「……後でお金請求したりしない?」

 

 ビーシャ(お前)じゃないんだから。疑わしげなビーシャに対し「ああ」と答える。

 

 …………本当に請求してやろうかな。脳裏に浮かんだ邪心を消してもう一度ビーシャに頷いた

 

「よし! そう言う事ならお姉さん遠慮しないぞー!」

 

 ウキウキと嬉し気な表情を浮かべ、シーシャは早速レストランへ向かった。

 走り去る彼女の後ろ姿を見て、ジェイスは何だか微笑ましい感情が湧き上がった。

 

 こいつらともおさらばか。ちょっと寂しいな……。

 

「……自身が選択した道を、後悔するな」

 

 感傷に浸るジェイスにエスーシャが言葉を投げかけた。

 

 やっと喋ったかと思えばそれかよ……一体何だって言うんだ?

 そして数分後。やっとエスーシャが言った意味を理解し、後悔した。

 

「あ……あ……?」

 

 レストラン。五人が座るテーブルの上には無数の皿。幾らかする皿の数々にジェイスは震えあがった。

 

「……ふぅ。お代わりだ!」

 

 そして丼を平らげ、平然とお代わりを要求する少女シーシャ。

 彼女の胃袋は正にブラックホールだった。

 

「エスーシャ……シーシャの野郎、どこまで食う気だ?」

 

「興味ないね」

 

 ここに来てそれか!

 答える気がないエスーシャの代わりに、ケーシャが問いに答える。

 

「シーシャさんは私達より食べる量が少し多いので……ちょっとやそっとの額では収まらないかもしれません」

 

 あはは……そう言って苦笑いを溢す。苦笑いで済まないんだよ、こっちは……!

 はぁ、と大きなため息をついて、ジェイスはこれから残る財布の中身を懸念する。

 

「お会計、7777777円になります」

 

 駄目でした。

 中身を全部出してもなお足りない金額を掲示され、余りの惨さにジェイスは顔を伏せてしまった。

 後ろからは「今日はありがとうね」というシーシャからの感謝の言葉が聞こえる。奢ると言ったのは自分なので彼女を責める事は出来ない。

 ラッキーセブンって何だよ……畜生、畜生……。どうあがいても無理な金額に譫言の様に呟いている。

 

「クソッタレぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーー!!」

 

 悲鳴や断末魔とも言える、ジェイスの心の叫びがプラネテューヌ内を谺した。




番外編を一話挟むと言ったな、あれは嘘だ。二話挟むんだ。
いや、皆さんごめんなさい。最後の投稿から四か月遅れてしまいました……。
そして次回も番外編です。本当にごめんなさい。恐れ入りますが皆さん、暖かい心で待っていてください。
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