ネプテューヌEX ~とある青年のエクスペリエンス~   作:S・TOM

40 / 49
ここから二章開始です。


第2章
第36話 模擬戦


「……指令来ないな」

 

 寮の中でヴァトリが呟いた。最近、凶暴化モンスターの数と比例して指令が減っていた。

 他の隊員は色んな事をして時間を費やしているが、プライベートでやる事がないヴァトリは暇を持て余していた。

 

「あんた、いつもそんな事言ってるよな」

 

 そんなヴァトリの呟きに、同じ席にいたデビッドとアリスが反応する。

 デビッドの手には拳銃。アリスの手にはショットガン。二人はいつもやっている手入れをこなしていた。

 

「すまない、またどうでもいい事を呟いちゃったな。気にしないでくれ」

 

「いえ、そんな事ありませんよ! ヴァトリさんの事、気になりますから……」

 

 アリスの言葉にデビッドは頷いて同調する。指令が無い日は暇そうに過ごしているヴァトリ。彼がどんな事をしているか以前から気になっていた。

 

「ヴァトリ。数日前に給料貰ったけど、何に使ったんだ?」

 

「えっ、いや……まだ一円も使ってないんだ」

 

 ヴァトリは苦笑しながら答える。

 給料を全然使っていないという、意外な答えに二人は驚いた。

 

「ここは衣食住が揃ってるし、僕はそれで十分なんだ。元々僕は、市民を守るために入ったからね。そう多くは求めないさ」

 

「そうなのか……でもよ、指令とか無いとやっぱり暇なんだよな?」

 

「その通りだね。自由時間の時はやる事が無くて。入る前はとても忙しくなるかと思っていたけど……まさかこうも暇なんてね」

 

 深い溜息を吐いてヴァトリは落ち込んだ。

 四女神がルーガスを倒してから以来、特命隊への指令は無いに等しい物になっていた。何もない、平和なのが一番なのだが、やる事がなくて辛い物があるのは事実だ。

 暇だよなぁ……。手入れが終わるとデビッドは椅子にもたれ、真上の天井を見上げた。

 

「……何する?」

 

「な、何を……しましょうか?」

 

「何をしよう?」

 

 何も起こらない暇な時間の中、三人は何をしようか思いを巡らしていった。

 

 

「こうして話すのは何時振りかしら。久しぶりね、カイト」

 

 所変わって、ここは広大な草原。涼しい風が何処までも吹く、とても癒される場所でカイトとネプテューヌ、もといパープルハートは立っていた。

 

「特命隊に入ってから、凶暴化モンスターの討伐で色々忙しかったからな……その分強くなったと思ってるぜ」

 

「そう、楽しみだわ」

 

 ふふっ、とパープルハートは楽しそうに微笑み、カイトから離れる。

 

 広々とした草原に二人が赴いた目的。それは一対一の手合わせであった。

 プラネテューヌが復興して数日、大きいネプテューヌを通してカイトから手合わせの願いが来た。

 小さいネプテューヌは引き受けようか断ろうか悩んだが、イストワールから「断るのなら仕事してくださいね?」と脅され、渋々ネプテューヌは引き受ける事に決めた。

 

「まぁ、初めから引き受ける気だったけどね! 主人公ですから!」

 

 とはネプテューヌの言。本当かどうかは本人にしか分からない。事実は女神のみぞ知る。

 

「準備オーケーよ。何時でもかかってきなさい」

 

 パープルハートは剣を構え、真っ直ぐカイトと向き合う。彼女から漂う強いオーラを感じ、カイトは気持ちが高揚する。

 

 カイトは初めて会った時からずっと、パープルハートと戦いたかった。四女神の一人、そしてプラネテューヌの守護女神。そんな彼女に自分の力がどこまで通じるか試したがっていた。

 それは、カイト自身の性と言って良かった。

 

 どこまで通用するかな……今の俺が、あのパープルハート(ネプテューヌ)に。

 

「All right!」

 

 湧き上がる高揚感を胸に、カイトは大剣を手に駆け出した。

 パープルハートへ向かって一直線に駆け、思いっきり大剣を振るった。

 

「……!」

 

 対するパープルハートは剣を傾け、容易にカイトの大剣を防いだ。

 やっぱりこの攻撃は防がれたか。防がれる事が分かっていたカイトは一旦退き、横から再び大剣を振るう。

 

「っ!」

 

 しかし慌てる事なく二度目も防がれ、逆に大剣を弾かれて怯む。

 一瞬の隙を作ったパープルハートは剣を横に構えると、怯んだカイトへ向けて突きを繰り出した。

 

「ううっ!」

 

 一方、カイトは体勢を立て直し、大剣でパープルハートの突きを凌ぐ。

 そして拳に炎を纏わせると、顔面を狙ってストレートを放った。

 

「――――!」

 

 迫りくる拳に驚くパープルハート。

 すぐ上体を反らして拳を避け、ステップして距離を取った。

 

 そういえば炎を使えるようになっていたわね……中々だわ。

 

 今の攻撃を見て、パープルハートは感じる。カイトは成長している。最初に会った時から確実に。分かっていた事だが、こうして向かい合うとそれがよく伝わってきた。

 

「ふっ!」

 

 そんな事を思っていると、カイトが大剣を自身の背後に突き刺した。よく見ると刺した地面から炎が湧き、爆発するかの様に一気に噴き出した。

 

「うおおおおおおおお!!」

 

 炎の噴出を利用し、カイトは怒涛の速さでパープルハートに急接近する。

 彼の底力に流石のパープルハートも動揺を隠せなかった。呆然としている彼女を見て、チャンスと見たカイトは一気に詰め、大剣を振り払った。

 

「――――っ!」

 

 呆然からすぐ我に返り、パープルハートは咄嗟に大剣を防ぐ。

 しかし重い。カイトの振るった大剣は炎と一緒に女神に匹敵する威力を得ていた。

 

「ぐっ……!」

 

 このままでは持たない。そう判断したパープルハートは大剣を受け流し、カイトをよろめかせようと目論む。

 相手が身を退き、自身の攻撃が流されたカイト。一瞬怯んだかに見えたが、すぐにパープルハートの方を向き、しっかり大地を踏みしめて剣撃を放った。

 

「ああっ!」

 

 重い一撃を剣で防ぎ、その衝撃でパープルハートは大きく後ずさった。

 まさかここまでやるなんて……。自身の狙いを外し、さらなる攻撃を加えたカイト。これは一筋縄ではいかない。パープルハートは剣をしっかり構え、相手の出方を見る。

 

「はぁぁぁぁ!」

 

 パープルハートの前に火柱が現れる。大きく、そして激しく燃え盛るそれは彼女を威嚇している様だった。

 さらにその中から、カイトが火柱を突き破って現れる。すぐ目の前にまで接近すると、突きの姿勢で勢いよく攻撃する。

 

「くっ! きゃぁぁぁ!」

 

 剣で防御を試みるパープルハート。しかしその攻撃は余りに強く、数秒持たずに吹き飛ばされてしまった。

 攻撃が成功したカイトはその場に留まり、ゆっくり瞼を閉じる。

 

「サーベイジ……」

 

 これで決める。次の一撃に勝負をかけ、カイトは静かに集中する。

 大剣が赤く染まり、刀身から火花が散る。火花は段々炎へと変わり、大剣に纏って激しく燃え盛る。

 カイトの周囲は凄まじい熱気に包まれていた。

 

「ファァァァァァング!!」

 

 カッと目を見開き、大剣を勢いよく地面に突き刺す。

 先ほどまでとは比べ物にならない、巨大な火柱が噴き上がった。前へ前へと火柱は噴き上がり、驚嘆するパープルハートをいとも簡単に飲み込んだ。

 

 大技を放ったカイトの目の前は一面、火の海と化していた。炎以外は何も見えず、さっきまで戦っていた女神すら姿を見せていない。

 この燃え盛る炎から逃げる事は出来ない。それを確信するカイトはじっと炎の中を見つめる。

 

 完全に入った。さあ、どうなる……!

 

「せいっ!」

 

 紫に輝く裂け目が生じ、瞬時に炎が消え去った。

 視界を覆っていた炎が消えると太陽が明るく照る、晴れ晴れとした晴天が現れた。草木は燃え、大地は一転して荒野の様な有様に変わっていた。

 それらと対照的にただ一つ、何も変わっていない物があった。

 

「ふぅ……今の凄いわね」

 

 パープルハート。彼女の身体に傷や焦げは見当たらず、少しの乱れも無かった。

 

「驚いたわ、まさかこれほどまでの力を発揮するなんて思っても見なかったわ」

 

 そこまで言った後、パープルハートの表情が和らいだ。

 

「成長したわね、カイト。お見事としか言い様が無いわ」

 

「…………」

 

 賞賛の言葉をかけるパープルハートに対し、カイトは呆気に取られていた。

 

 サーベイジファング。炎を扱えるカイトが持つ、最強の威力を誇る技だ。この技に少なからず自信を持っていたカイトにとって、直撃したパープルハートが無傷だと言う事に強いショックを受けていた。

 

 しかし。ショックとは別に、ある感情がカイトの中で湧いていた。

 高揚感。戦い始めた時にもあったそれは今、さらに大きく膨れ上がっていた。

 

「今度は……本気で行くわよ」

 

 パープルハートの表情が引き締まり、ゆっくりと構えた。

 その姿は今までの彼女とは明らかに違っていた。見てるだけでも圧倒されそうな雰囲気にカイトは息を呑む。

 

 本気、だって? じゃあ、今までのは……?

 

「――ふっ!」

 

 一瞬の出来事だった。

 目の前にパープルハートが現れ、カイトを斬ったのだった。

 見えなかった。光の様な速さの太刀筋に、反応も出来ずに喰らってしまった。

 

「ぐあっ! っ……はぁぁ!」

 

 痛みに耐え、カイトは大剣で反撃にかかる。しかし、それは空を切る結果となった。

 ふっとパープルハートの姿が消え、カイトの視界に映らなくなる。

 

「なっ……どこに――」

 

 身体が宙に舞う。眼前の世界が回転し、身動きも出来ない。

 どうやら打ち上げられた様だ。攻撃の隙を突かれ、逆に返り討ちになってしまった。

 

 宙に浮かんだカイトの上を何かが覆う。パープルハートだ。

 空高くにまで飛躍し、剣を掲げていた。

 

「はぁっ!」

 

 一気に振り下ろし、カイトを地上へ叩き落した。地面に激突すると地響きと共に砂埃が舞い、視界を覆った。

 

「…………?」

 

 砂埃が消えると、大の字でめり込んだカイトの姿が映った。彼の表情は呆然としており、何が起こったのか理解していない様だった。

 

――ガシッ

 

 カイトの手を離れ、宙に舞った大剣が地面に刺さる。

 その音を聞き、カイトはやっと自分がやられた事に気づいた。

 

「……負けた」

 

 自身の眼に映っているのは青空。そして余裕そうに浮いているパープルハート。

 その光景を見たカイトは潔く降参した。

 

「フフフフフ……ハハハハハハハハ!」

 

 女神の本気を垣間見たカイトは、考えるより先に笑いだす。

 嬉しかった。こんなにもあっさり、自分を倒してしまうなんて。それこそお見事としか言いようが無かった。

 そうこなくちゃ、女神は。負けて嬉しいという変な気分だが、カイトは気にせず笑い続ける。

 

「嬉しそうに笑うわね……てっきり悔しがるとばかり思っていたけど」

 

 笑うカイトの姿にパープルハートは少し困惑するも、微笑ましそうな表情を浮かべる。

 よほど楽しかったのね。私も貴方と戦えて嬉しかったわ。

 猛攻によりヒビが入った剣を見て、心の中でカイトに賞辞を贈った。

 

「この街は我らが支配する! ちっぽけな女神よ、塵に変えてやろう!」

 

 プラネテューヌの街から宣戦布告が聞こえる。

 敵ね。すぐにパープルハートはプラネテューヌへ向かい、草原から消え去る。

 

「我は暗黒の支配者、ダークネス・ルーラー! ゲイムギョウ界、いや全次元世界よ! 我らが黒より深い闇に染め上げよう――――」

 

――ドォォォォォォン!

 

 大きな衝撃音が響く。パープルハートが一撃で倒したのだろう。

 その心地良い音を聞き、カイトは一人呟いた。

 

「敵わないよなぁ、やっぱり」

 

 その夜、帰ってきたカイトはエリナとマシロに小一時間、問い詰められる事になった。




『ネプステーション!』

ネプテューヌ「久しぶりにやってきました! 二年ぶりのネプステーション! 司会はこの私、ネプテューヌと!」

ノワール「ラステイションの女神、ノワールがお送りするわ。ごめんね皆、一章の終わりにやるはずだったのに遅れちゃって」

ネプテューヌ「まぁまぁ、それよりもー! 見た? 私の活躍! 女神オブ女神、主人公オブ主人公の私だからこそ出来る事だよねー!」

ノワール「主人公はともかく、女神なら女神らしく仕事したらどうなの? 降ろされるわよ」

ネプテューヌ「アー! アー! キコエナーイ! ナンノコトカナー!?」

ノワール「そうやって誤魔化していられるのも今の内よ。私も後で来るからイストワールと一緒にお話ししましょ?」

ネプテューヌ「ギャー! ヤメテー!」

ノワール「……茶番はこれぐらいにして。次回からはプラネテューヌだけじゃなく、ラステイション、ルウィー、リーンボックスも話に交わるわ。それじゃあ皆、次回も楽しみに待っててね!」

ネプテューヌ「うわーん! 司会も奪われた―!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。