ネプテューヌEX ~とある青年のエクスペリエンス~   作:S・TOM

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半年ぶりの更新です。

事後報告となってしまいましたが、シモツキさんの小説「超次元ゲイムネプテューヌ Origins Relay」のコラボエピソードに参加させていただきました。
エクスペリエンスの主人公、カイトを含めた計7人のキャラによる奇妙かつ愉快な体験談、是非お楽しみください。


第42話 コンビネーション

 リゼッタが開催した黒ひげ合戦は成功に終わった。教会の一部が焼失するというアクシデントがあったが、黒ひげを通じて特命隊とルウィー勢の親睦が更に深まり、何よりカイトにミスティックドライブを発動させるにまで至らせた。遊び半分の面もあるが、リゼッタが用意した特訓は確実にカイトを成長させていた。

 その後、ミスティックドライブの反動でどっと疲れが押し寄せたカイトは寝室で泥のように眠っていた。昼間に就眠してから一切目を覚まさず、結局その日は起きる事は無かった。

 

「っ……もう朝か」

 

 カーテンの隙間から差し込んだ太陽がカイトの意識を覚醒させる。徐々に視界がハッキリし、身体を動かそうと寝返りを打った――――先に。

 

「おはよう。今朝は良く眠れたみたいね」

 

 リゼッタが同じベッドで横たわっていた。昨日までの人を食ったような態度から一転、労わる様な優しい顔をカイトに向けている。

 

「あ、えと……おはようございます」

 

 何故こうなっているかは分からないが、とりあえずカイトは返事をした。

 際立って驚いていないが、明らかに困惑している。その反応を見たリゼッタは、クスクスと笑って更に語り掛ける。

 

「驚かせたかしら、今朝は私もこの寝室で一夜を過ごしたのよ。魔法の応用で身体は温められるけれど、人肌の温もりには及ばないわ」

「そう、ですか……リゼッタさんも良く寝れたみたいですね」

 

 冗談か本気か。いつもながら真意が分からないリゼッタの言葉に相槌を返し、起き上がろうとするカイト。

 その腕を掴まれ、反射的に身体を止める。再びリゼッタに目を向けると、今度は悲しそうな表情を浮かべていた。

 

「もう行ってしまうの? 私を置いて一人で行ってしまおうだなんて、貴方はなんて残酷なのかしら……寂しいわ」

「あっ……す、すみません」

 

 か細く、今にも途絶えてしまいそうな声。演技の可能性が大きい――――というか完全に演技だが、それでもカイトは罪悪感を抱き、せめて気持ちに寄り添おうとして身体を寝かせる。

 

「クスッ、私の言葉を素直に受け止めてくれるのね。やっぱり貴方は面白いわ」

「……ありがとうございます」

「ええ、弟子はこうでなくてはいけないわ。如何なる時も素直であれ。それでこそ私の弟子たる資格があるわ」

 

 彼女の為に行動を取ったカイトにリゼッタは満足気な様子だった。

 この人は師匠として自分を試したのだろうか。揶揄う様に見せかけて。頭の中で考えるカイトの頬を、リゼッタの手が触れかける。

 

「私の事が気になって仕方ないのね。安心なさい、これからじっくり――――」

『リゼッタ。そこにいるのは分かっています、早く出てらっしゃい』

 

 コンコンコン、とノックの音と共に女性の声が聞こえる。ルウィーの教祖、ミナだ。

 ミナの声を聞いたリゼッタの動きが止まり、その表情は焦りに満ちていた。

 

「ッ……こんな時に邪魔されるなんて!」

 

 急いでリゼッタはベッドから出る。シーツで隠れていた時は分からなかったが、着ている物がキャミソールのみという、非常にラフな服装だった。

 

(リゼッタさん、あの姿で俺のベッドに……!?)

 

 動揺しつつもカイトはリゼッタから背を向け、着替えを見ない様に心がける。

 どうにも彼女に触れ回されっぱなしだ。相手にするだけでとても疲れてくる。これもミスティックドライブを習得させようとリゼッタさんが考えた特訓の一環なのだろうか。ならいつでも落ち着いた対応を取るべきか。

 本人が後ろで着替えてる間、カイトはリゼッタとの接し方を考えていた。

 

 

 ルウィーの各区域には、モンスターの出現を検知するクリスタルが配置されている。増加するモンスターの出現に対処できるよう、リゼッタが生成した魔法石だ。モンスターの発生に反応して輝きを放ち、共鳴する教会のクリスタルから介して知らせる。モンスターの力が強ければ強いほど、数が多ければ多いほど、クリスタルの輝きは増す。そうして事前にモンスターの戦力を把握する事で、教会は余裕をもって対処に移る事が可能になった。

 ルウィーが平穏を保っていられるのは女神や第四班の働きは勿論、リゼッタが生み出したクリスタルのおかげだった。

 

「おーおー。これはまた大所帯で来たもんだね」

 

 今回、モンスターが観測された区域は三ヶ所。その内の一つである白い雪に包まれた草原にはエリナ、デビッド、シーシャの三人が出向いていた。

 モンスターの数は五十程度。幸いにも危険種を思わしき個体は見当たらず、三人で対処できる範疇に収まっていた……とは言うものの、モンスターが凶暴化している故に油断は出来ない。

 

「数は多いけど一匹一匹はそれほど強くは無い……なら行ける!」

「そうね。数が多ければ私達を倒せる、なんて単純な頭で考えたのでしょうけど、それが浅はかな愚考だって言う事を思い知らせてやるわ」

「フフフ。エリナちゃんもデビッド君も張り切っちゃって。二人がその調子ならアタシが出るまでも無いかな。応援するわよ、二人とも」

『はい!』

 

 ――――――――あれ?

 しばらくしてからシーシャの言葉に違和感を覚えた二人。

 アタシが出るまでも無い。彼女はさっきそう言った。出るまでも無い。『戦線』に出るまでも無い。『戦う』までも無い。

 

「……シーシャさん、戦わないんですか?」

「うん、今回は見物させてもらおうかな」

「……なんで?」

「なんでって、二人が凄く張り切ってるのにお姉さんが入ったら邪魔になっちゃうでしょ? 足を引っ張る訳にはいかないし、ここは二人に任せて思いっきり戦わせてあげようって思ったのよ」

「シーシャさん……そりゃないですよ」

 

 納得できない理由にデビッドが零す。二人……否、第四班にとって、シーシャは女神と並んで頼りになる存在である。幾度の戦いをこなしてきた彼女が二人の邪魔になるはずが無い。ましてや二人の足を引っ張る事など以ての外である。

 恐らくシーシャは単に見物したくなったのだろう。モンスターの相手をするエリナとデビッドの姿を。第四班とは一緒に戦う事が多いが、たまには戦線から一歩引いたから彼らを観てみたいという彼女の気まぐれ。それが本当の理由である事は二人も察しがついていた。リゼッタが人を翻弄する性格なのは周知の通りだが、彼女も中々である。

 

「大丈夫、こっちに逃げてくるモンスターはアタシが相手するからさ。見物するとは言ったけど、ルウィーを見捨てる様な真似はしないわ。最も、そんな出番は無さそうだけどね」

 

 同時に、二人なら全て倒せると確信している事も感じ取れた。モンスターの侵攻を許せば大惨事が起こる状況。それを彼女が理解していないはずが無い。その上でシーシャは二人を信用しているのだった。

 

「いや、あの、シーシャさん、いくら何でも二人であの数は流石に厳しい物が――――」

「分かりました。ルウィーはシーシャさんにお任せします」

「えっ!? ちょ、ちょっとエリナ、本気でやるつもりかよ!?」

 

 いまいち踏ん切りがつかず、及び腰なデビッドの言葉を力強く遮ったエリナ。

 恐れを感じない表情からは確固たる自信を伺わせる。デビッドとは対象的だった。

 

「……シーシャさんに甘えていては駄目よ。特命隊の使命は人々の手に負えない害敵を打ち滅ぼす事。その過程で決して浅くない、癒える事の無い傷を負うかもしれないわ。けれどそんな事は最初から分かっていたはずよ。それを覚悟して入隊を決意したのでしょう、デビッド」

「…………」

 

 エリナの叱責は最もだ。自分は心の何処かで、シーシャさんに甘えてしまってたのかもしれない。だから必要以上に動揺してしまったのだ。

 心に落ち着きを取り戻し、モンスターの群れを再確認する。何だ、数が多いだって小粒ばかりじゃないか。シーシャさんがいなくても、俺達だけで十分だ。

 

「あったりまえだ、ここで逃げたら特命隊の名折れってもんだぜ!」

 

 ここでようやくデビッドの決心がつき、両腰のホルスターから拳銃を引き抜く。もはや恐れは無い。

 横に並び立ち、モンスターを見据えるデビッドに、エリナは喜びから柔らかな笑みを浮かべた。

 

「そうこなくちゃ、それでこそデビッドね。援護をお願い、デビッド!」

「おう!」

 

 始めにエリナが、続いてデビッドが飛び出し、モンスターの大群へ接近する。対抗してモンスターも叫びを上げ、一斉に攻撃に入る。

 

「せいっ!」

 

 先手を取ったのはエリナだった。正面のモンスターを一刀し、すぐに距離を取る。攻撃が来ない事を確認した後、再びモンスターへ踏み込んで斬り払う。ヒット&アウェイ。軽やかな身のこなしを生かしたエリナの戦法だ。

 攻撃後、距離を取ってすぐに小型のモンスター数匹が飛び掛かる。しかし、それらの攻撃が通るより先にエリナの斬撃がモンスターらの身体を通過した。飛び掛かった数匹は倒したがモンスターの攻撃は終わらず、さらに小型がエリナに襲い掛かる。

 

「ッ!」

 

 背後からデビッドが現れ、数匹を的確に撃ち抜いた。援護射撃によって攻めあぐねるモンスターを牽制し、エリナが攻撃する間を作る。危険種以上に対する決定打に欠けるデビッドだが、サポートは完璧だ。

 攻撃はエリナが俊敏な動きで敵を翻弄し、僅かに生じる隙をデビッドが埋める。その強さは二人の戦闘スタイルが噛み合っているからこその産物だった。

 

「おー、二人とも良い動きしてるじゃない。さすが特命隊って言ったところかしら」

 

 後ろから観戦していたシーシャも二人のコンビネーションに感心していた。二人が強いのは分かっていた事だが、それにプラスした、流れるような連携は見ていて気持ち良い物だった。

 

「一気に片づけるわ。デビッド、時間を稼いで!」

「オッケー!」

 

 ある程度モンスターの数が減った頃、エリナが大技を放つ準備に取り掛かる。剣を地面に刺し、後方から正面へ魔法陣を展開する。実質棒立ち状態のエリナをモンスターが見逃すはずが無く、一斉に狙いを定めた。

 当然だがデビッドはそれを許さず、モンスターの前に立ちはだかる。先陣を切った小型を拳銃で倒し、さらに群れへ向かって手榴弾をばら撒いた。投げ込まれた手榴弾は派手な爆発を起こし、近くのモンスターを吹き飛ばすと共に群れをたじろぎさせる。大して数は減らせなかったが、デビッドの目的はあくまで時間稼ぎ。モンスターを怯ませるだけで十分だった。

 

「下がって!」

 

 そして目的は達成した。準備が完了し、大技を放つ寸前に至ったエリナの周囲には火花が散り、魔法陣が青く煌めいていた。デビッドが離れ、目の前にはモンスターの群れ。敵の存在をしっかりと確認し、エリナは大技を放つ。

 

「ディバイン・ジャッジメント!」

 

 煌めく魔法陣から射出された無数の矢。矢はモンスターを目掛けて飛んでいき、次々と貫いていく。

 激しい矢の雨に殆どのモンスターが力尽きる中、耐えきった個体が数匹。だが、エリナの大技はこれで終わりでは無かった。矢が撃ち尽くした後、空から数撃の雷が降り注がれる。逃げようとしたモンスターだが、既に矢のダメージによって動けなくなっていた。雷がモンスターに直撃し、跡形も残さず纏めて焼き焦がしていった。

 

「……ふぅ、片付いたわね」

「ああ。カイトとウェインがいなくても、俺達だけで十分だって事が分かったな」

「何言ってるのよ。そんなの分かり切っていた事じゃない。私達は特命隊でしょう?」

「アッハハ、それもそうか!」

 

 モンスターは全滅し、エリナとデビッドは生き残った。二人の勝利だ。

 戦いを終え、他愛もない言葉を交わす二人の元にシーシャが合流する。

 

「お疲れー、エリナちゃん、デビッド君。二人の戦い、観ていてとっても面白かったよ」

「そう言っていただけて何よりです、シーシャさん。特命隊である以上、無様な戦いは出来ませんから」

「そうですよシーシャさん。それにあんなモンスター、何匹来ようが負けませんよ。だって俺達、特命隊ですから!」

「へー、凄い自信じゃないか。だったら近くにG級モンスターが集うダンジョンがあるんだけど、終わったら一緒に行かない?」

「それは勿論! ……遠慮しておきます」

「ハハハ、冗談冗談!」

 

 和気藹々とした空気の中、三人は白銀の草原を進んでいく。

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