ネプテューヌEX ~とある青年のエクスペリエンス~ 作:S・TOM
第6話 指令
やっほー、ネプテューヌだよ! プラネテューヌの女神にして『超次元ゲイムネプテューヌ』の主役! 画面の前の君なら言わなくてもわかってるよね! で、その私は今、いーすんに無理やり仕事をさせられてるんだ。
「というか、私の出番がこんなところで始まるなんて嫌だよ! こういうのって私のかわいさをアピールするのが普通でしょ? こんなの見せられて喜ぶ人はいないよ!」
「そういう事を言っている暇があるのなら、もっと仕事をしてください」
私の言い分をばっさりと切り捨てるのはいーすんこと『イストワール』。プラネテューヌの教祖で姿は小っちゃくて可愛いんだけど、口うるさくて仕事の事ばっかり言ってくるんだ。
「何でこんなに仕事ばっかりなの!? 無理やり働かせるなんてロードーキジュンホーに違反しているよ! 断固抗議する!」
「それはネプテューヌさんの自業自得です。毎日仕事もせずに遊び呆けて……これに懲りたらちゃんと仕事してください」
「むぅ~いーすんの鬼! 悪魔! 人でなし!」
最近こんなんで満足にゲームできないんだ。聞くとノワールとブラン、ベールも仕事ばっかりで外に出ていないそうなんだよ。いや~女神って苦労するよね。だらだらしたいなぁ。
あれ? そうこう言ってると聞き覚えのない名前がファイルに書いてあるよ。えーと、プラネテューヌトクメイタイ……ナニソレ?
「ねぇいーすん、これってどゆこと?」
「……昨日、説明したはずですが」
昨日? ああ、いーすんが何か言ってたっけ。途中で眠たくなって寝ちゃったけど。
「いいですか? ここ最近、モンスターの謎の凶暴化によって各地で被害が起きているんです」
うん、知ってる。あいちゃんに無理やり連れてかれて戦わされたからね。たしか私とネプギアとあいちゃんと後……誰だっけ?
「そこで、被害を抑えるためにこの『プラネテューヌ特命隊』という物が結成されたのです。分かりましたか?」
「うん。要するにそのトクメイタイがモンスターを討伐してくれるんでしょ? それなら問題なしだね! さぁ~て、ゲームしようっと!」
そう言って部屋から出ようとする私の肩をいーすんが掴んだ。ねぷっ、すごく痛い!
「そういうわけにはいかないんです! 女神であるネプテューヌさんがそんな体たらくでは、いつまで経っても収まりませんよ!」
いーすんの肩を掴む力が強くなってゆく。
「痛い痛い痛い痛い! わかった、わかったから! ちゃんと仕事するよ!」
なんとかいーすんに手を離させ、仕方なく私は戻って仕事を始める。こんな事、いつまで続くのかな……って私の出番これで終わり!?
――――――――――――――――――――――
俺、高坂界人は寮にある野原に来ていた。特命隊に入った翌日、朝飯を食べた後からする事がないのでこうして野原で仰向けになっているのだ。嗚呼、日差しが暖かいな。こうしていると段々眠たくなってくるが、まぁいい。このまま寝て――
「何そのまま寝ようとしてるの!?」
……煩ぇ。そう言って起こしたのはエリナ。俺と同じく特命隊に入った奴で、実力は俺と同じぐらいか。しかしなんだよ、せっかくの昼寝を邪魔するな。
「なんだ、エリナ? 人がお休みタイムに入ろうとしているのによ。お前そんなに無作法だったか?」
「こんな事で無作法って言われないわよ! それに指令が来てるのに寝られたら困るのよ」
指令? 指令って言えばモンスターの討伐……そういう事か。それを聞いた俺は身体を起こして手足を動かす。
「場所はどこだ? モンスターは?」
俺の質問を聞くと、エリナは背を向けて歩き始める。
「場所はバーチャフォレストの最深部。モンスターはスパイダー5匹。それだけじゃないわ」
スパイダー……ああ、『蜘蛛』か。段々遠くなっていくエリナはさらに続ける。
「諜報員が最深部で怪しい人影を見たって報告していたそうよ。何か手がかりが掴めるかもしれないわ……」
エリナはいきなり立ち止まり、俺の方へ振り返る。
「……何だ?」
「来なさいよ」
あっ、ついていくのか。これは失礼。俺達が寮の入り口に来ると、デビッドとウェインがいた。
「おまたせ、界人を連れてきたわよ」
「やっとか。待ちくたびれたぜ、こっちは……よし、終わった」
デビッドは愚痴りながらも拳銃の手入れをしていた。
「これが俺達の最初の指令だな。準備はいいか、俺はできてる」
俺は剣の具現化させて振り回した。
「ちょっ、いきなり振り回さないで! 危ないじゃない!」
「……失礼」
エリナに咎められ、振り回していた剣を消した。
「ウェインは? エリナもできてる、デビッドも手入れが終わった。後はお前だけだが?」
「俺もできてるぜ」
そういうウェインは剣を手のひらに乗せ、倒れないようにバランスを取っていた。
「……何してるの?」
ウェインの行動が理解できないエリナは問う。
「こうでもしないと、戦う時に苦労するからな」
エリナは『何を言っているんだこいつ』と言わんばかりにジト目になった。そんな事はお構いなしにウェインはそのまま剣を上空に飛ばし、落ちてきた剣を造作もなく片手で取った。
「それじゃあ行こうぜ。帰ってくる時に、日が暮れてたら困るからな」
ウェインが急かすとエリナが突然俺達の方に振り向いた。
「……ウェインの戦い方ってなんなのかしら?」
俺達に聞くなよ、そんな事。まぁ、こうして俺達はバーチャフォレストの最深部に向かった。
――――――――――――――――――――――
指令を受けた私達は今、バーチャフォレストについていた。とは言っても、まだ最深部にはほど遠い所だった。
「……モンスターいないな」
バーチャフォレストに入って数分、界人が呟いた。長い間歩いていたが、モンスターの姿はどこにも見えなかった。
「凶暴化の影響でしょうね。凶暴化したモンスターっていうのは、そうでないモンスターを襲うらしいわ」
「共食いって奴か?」
「ええ。同類以外は皆敵って認識なのかしらね」
私がふとデビッドの方を見ると怖がっている素振りを見せ、二丁の拳銃を構えていた。
「デビッド……もしかして怖がっている?」
「えっ? いや、ビビッ、てなんかねぇ、よ~」
否定するデビッドだが、声は引きつっていた。今度はウェインの方を見ると、上を見ながら歩いていた。緊張感はないの、貴方?
このメンバーで大丈夫なのかしら……私の脳内にそんな事が浮かんてしまう。
しばらく歩いていると、草むらからスライヌ三匹と馬鳥が現れた。
「やっと現れたな、モンスター。しかも――」
界人が私達の前に立つとスライヌの攻撃を弾く。
「攻撃の速さ、そして重さ。凶暴化してるな、こりゃあ」
そう、現れた四匹のモンスターは凶暴化していた。さっきの攻撃とモンスターの顔で分かる。
私はすぐさま剣を具現化し、大きく一振りする。
「私の剣は凶暴化したモンスターをも一刀両断するわ。精々、早死にしないようにしなさい」
襲い掛かってくるスライヌの攻撃をかわし、私は剣を振るってスライヌを斬る。斬られたスライヌは綺麗に真っ二つになり、消滅した。
界人の方は攻撃される前に、先に攻撃をしかける。さっき弾いたスライヌに素早く近づくと、蹴りを入れて怯ませた。そしてその隙に剣で叩き斬り、スライヌを倒す。
三匹目のスライヌが界人に襲い掛かろうとしている所を逃さず、私がとっさに斬って倒した。
スライヌ達を倒した私と界人は足並みを合わせ、馬鳥と向き合う。
「後はこいつだけだな、エリナ」
「ええ、余裕ね」
私達は同時に駆け出し、馬鳥に攻撃を仕掛ける。馬鳥は私達の攻撃を避け突進してきたが、当たる寸前に界人に斬られて怯んでしまう。
「今だ! 真っ二つにしてやれ」
「了解!」
界人の呼びかけを受け、私は怯んだ馬鳥を真っ二つに斬って倒した。
凶暴化したモンスターとの戦闘が終わり、私達は剣を消した。
「なんてことは無かったな。よし、さっさと最深部へ――」
すると私達の上空から数匹のスライヌが振りかかってきた。不意を付かれた私達は迎撃の態勢が取れなかった。
凶暴化しているモンスターの攻撃はものすごいほどダメージを受ける。それを数回も受けたら――
しかしスライヌ達の攻撃を受ける事は無かった。何故ならスライヌ達が何かしらの攻撃を受けて消滅してしまったからだった。
「四匹だけじゃなかったぜ、他にもモンスターが潜んでいやがった」
そういったのは二丁の拳銃を構えたデビッドだった。ゴーグルを付けており、拳銃の銃口には煙が吹いていた。
「デビッド……」
「くそっ、また来るぞ!」
界人の声を聞くと、周囲からまたモンスターが襲い掛かってきた。まだいるの?
だがどこからか剣がブーメランのように飛び回り、それによってモンスターは次々と倒された。
その剣の持ち主はウェインだった。ウェインは飛び回る剣を見事にキャッチする。……すごいわね。
「危なかったな、エリナに界人。モンスター達はお前達が気を抜く瞬間を狙ってたらしい」
そう言われ私はため息を吐いた。油断して不意を付かれるなんて、私もまだまだね。
それにしても、私はデビッドとウェインを見て思う。戦う前は不安だったけれど、一瞬にしてモンスター達を倒すなんて。界人もそうだけれど、特命隊に入れた人は強いわね。『能ある鷹は爪を隠す』、こういう言葉がぴったりね。まぁ、意図的に隠してるかは分からないけど。
「……もうモンスターはいないな」
辺りを見回しながら界人は言う。
「どうやらここ一点に集まっていたらしいわね。行きましょう」
戦い終えた私達は最深部の方へ向かった。
――――――――――――――――――――――
「畜生……なんで俺がこんな事をやらなきゃいけねぇんだ?」
そのころバーチャフォレストの最深部では黒のオールバックで黒いジャケットを着た男がいた。
「暴れる事しかできない小者だぁ? ふざけるんじゃねぇぞ! こういうのはなぁ、暴れてナンボって奴だ! あいつらみてぇに裏でこそこそとやるよりはよっぽと手っ取り早いぜ」
次々と出てくる不満を漏らしながら、男は手のひらから球状の黒い物体を出す。そしてその物体を上空に投げると破裂して辺りに散らばった。
「あいつら、特命隊の野郎共がこっちに来てるって言ってたな。それなら好都合だぜ。まずそいつらをぶっ殺して、プラネテューヌを滅茶苦茶にしてやらぁ!」
湧き出てくる興奮を抑えきれず、男は狂ったように笑う。
「ヒャーハハハハハハハハ!! これなら俺があいつらより格上だって事が証明されるぜ! 待ってろよ、プラネテューヌ!」
興奮状態になった男から黒いオーラが出てくる。はたして、この男は何者か――――