ネプテューヌEX ~とある青年のエクスペリエンス~ 作:S・TOM
俺達は指令の目的地であるバーチャフォレストの最深部についていた。対象はスパイダー五匹。さてと、ちゃっちゃと終わらせるか。
「おっ、あれがスパイダーか! よーし、早く倒して指令終わらせようぜ!」
意気込んだデビッドはゴーグルを付け、拳銃を構える。銃の照準はすでにスパイダーへと定まっていた。
「蜘蛛か……口から吐く糸がやっかいだ。近づかない方がいいな」
ウェインがそう呟いた。そういえば、蜘蛛の糸は一度付いたら剥がれにくいんだったっけな。俺も気を付けねぇと。
「安心しなさい。そんな物、私の剣で斬ってあげるわ」
身体ごと斬らないでくれよ、エリナ。
そうこうしていると一匹のスパイダーが俺達に気づき、糸を吐いてきた。俺達は糸をさけ、俺は糸を吐いたスパイダーに向かって剣を振る。相手のスパイダーは俺の剣を避け、牙で俺に襲い掛かった。それに気づいたデビッドはスパイダーに向けて拳銃を撃って怯ませる。
「へへっ、俺様がいる事を忘れちゃいけないぜ!」
「サンキュー、デビッド!」
俺は礼を言った後、怯んだスパイダーを何度も斬りまくる。そしてとどめの一撃を食らわせると、スパイダーは吹っ飛ばされながら消滅した。
デビッドの方も拳銃を撃ちまくり、他のスパイダーに銃弾を食らわせる。銃弾を受けたスパイダーの内、デビッドに反撃しようとする一匹をエリナが綺麗に斬り消滅させた。
スパイダーを倒したエリナだったが、残り三匹のスパイダーが吐いた糸によって身動きが取れなくなってしまう。
「なっ、糸が私の身体に!」
これが同人誌だったら別の意味で襲われるパターンだな――いや、そんな事を考えてる状況じゃねぇ。
俺は身動きが取れないエリナの方へ向かおうとするがスパイダーに阻まれてしまった。俺は急いで剣で攻撃するが牙で防がれ、スパイダーはさらにその牙で俺に攻撃する。俺は剣で防ごうとするが動作が遅れてしまい、腕に牙を食らってしまった。
「ちぃっ……一対一じゃ不利か」
助けを求めるようにデビッドを見ると、当人はスパイダーと戦っており、次々と吐いてくる糸を何とか避けながら銃で攻撃していた。あれじゃあ助けは期待できないな。
スパイダーの方へ意識を戻すと、今にも俺に攻撃を仕掛けようとしていた。俺は攻撃される前に先に攻撃するが、さっきのダメージをせいで動きが鈍くなっており、スパイダーに避けられた。さらに俺は体勢を崩してしまい、無防備の状態になってしまう。
それを見たスパイダーは素早い動きで俺に近づき、牙を振り下ろした。
ああ、駄目だなこりゃあ――
しかし攻撃は当たらなかった。どこからか飛んできた剣がスパイダーに突き刺さり、そのまま剣に押されて飛んで行く。そして剣は残りのスパイダーを全て焼き鳥の様に串刺しにし、木に打ちつけた。
剣を投げ飛ばしたのはウェインだった。ウェインは剣を槍のように使い、俺達を助けたのだった。できるんならもう少し早くやってくれよ……。
「デビッド、止めだ!」
「あいよっ!」
デビッドはコートの中から手榴弾を出すと、木に打ちつけられて動けないスパイダー達に向けて投げる。投げられた手榴弾が落ちる先には……
「――――えっ!?」
スパイダーの糸で身動きができないエリナがいた。説明すると、スパイダーを打ちとめているのはエリナのすぐそばにある木だった。そしてエリナとスパイダーの間に手榴弾が落ちてしまい――――
――――――――――――――――――――――
結果。スパイダーは全て倒し終え、エリナは助かった。手榴弾が爆発する寸前、エリナは剣で身体中に引っ付いている糸を全て斬り、すぐにその場から離れたのだった。当然、スパイダー達は打ちとめられて身動きが取れないため、爆発に巻き込まれ消滅した。
そして今、俺達は正座させられエリナに説教をさせられていた。何で俺まで。
「いい? 敵に攻撃する時は仲間を巻き添えにしない事。でなきゃ仲間に被害が及ぶし、行動にも支障が起きるわ。分かってる? 特にデビッドとウェイン!」
エリナは二人の方に指さす。
「私の近くに敵を飛ばす上に、手榴弾まで投げるなんて! 運よく離れられたからよかったけれど、一歩間違えれば天に召されてたわよ!」
天に召されるって……俺は笑いそうになるのを抑える。
「いやだって、ウェインがあの木にぶっ刺したから仕方なく……」
「スパイダー三匹をまとめて倒すにはあれしか――」
「言い訳しない!」
元凶であり二人の言い分を一掃するエリナ。ありゃあマジで怒ってるな。だが怒るのはいいが正座するのもそろそろ辛くなってきた。
「なぁ、エリナ」
「何よ?」
二人の方を向いていたエリナがこちらを見遣る。
「説教はいいが、そろそろ帰らないか? もう夕暮れだぞ」
そう言われたエリナは空を見るともう空が赤くなっていた。
「……確かに暗くなったら道に迷うわね。分かったわ、寮に帰りましょ」
それを聞いた二人は安堵の表情をしていた。もう説教させられないと思ったのだろう。だが――
「帰ったら、そこでたっぷりとお話しましょ? 話したい事はまだたくさんあるのよ」
デスヨネー。二人は絶望の表情になった。哀れなりデビッド、ウェイン。
スパイダー達を倒した俺達はプラネテューヌに帰ろうとしていた。
「待てよ」
背後から俺達を呼び止める声が聞こえた。振り向くと一人の男が立っていた。黒のオールバックに黒いジャケット。そして凶暴な表情は見るからに敵に見える。
俺は剣を具現化して問う。
「誰だ、お前?」
「俺が誰だって? これから死ぬてめぇらに答える必要はねぇが……教えてやるよ」
質問を受けた男は笑いをこらえながら答える。
「俺はルーガス! このプラネテューヌを、いやゲイムギョウ界を滅茶苦茶にぶっ壊す者だ!」
『ルーガス』の言葉を聞いた俺達は武器を構える。
「ちぃっ、またいたのかよ!」
「スライヌといいスパイダーといい、なんでこうも敵が現れるのかしら?」
デビッドとエリナが愚痴り始める。
「そりゃそうだろうよ! なんせ、モンスター共を凶暴化させてんのは、こ・の・俺なんだからよ」
それを聞いた俺達は驚いてしまう。目の前に元凶である男が立っていたのだから。
「まぁ他にもいるが、俺がプラネテューヌを滅ぼしちまえば、俺は奴らより格上になるってもんさ」
「……奴ら?」
奴らだって? 仲間がいるのか。あいつの言動を見るに仲は良くなさそうだな。
「答えるつもりはねぇよ! てめぇらを殺した次は、女神面してるアホ共だ!」
今の発言を聞いたエリナはビクッとなった。……どうしたんだ?
「クククククッ! 来いよ、モンスター共!」
ルーガスが呼ぶと奴の後ろから無数のモンスターがやってきた。そのモンスターは全て凶暴化していた。ヤバいぞ、これは……。
「これでプラネテューヌの住民も頭からっぽの女神も全員地獄行きだ。光栄だろ? なんせアホ女神と一緒に行けるんだからな」
奴が喋っていると、突然エリナがモンスター達の方へ歩き始める。お前、何やっているんだ!?
「さぁて、さっさとモンスター共にぶっ殺されちまいな!」
ルーガスが指を鳴らすと、モンスター達は一斉に俺達に襲い掛かってきた。
――――――――――――――――――――――
ルーガスには信じられなかった。自身は差し向けたモンスター達が、一瞬して小娘に斬り倒されたのだから。
界人達も同様だった。仲間があんなに苦労して倒したモンスターを、難なく倒しているのを信じられずにいた。
「こんな物なの? あっけないわね。もう少しできるものだと思っていたわ」
エリナは次々と襲い掛かってくるモンスターを一振りで斬り倒す。
「まぁ、貴方にはお似合いね。女神様を侮辱して悦に入る小者ですものね」
エリナの挑発を受けたルーガスの心の中から怒りが湧いてきた。あのアマまで俺を小者呼ばわりするのか? ふざけんな!
「さっきのは一番弱ぇ奴だったからだ! できそこないさ! だからてめぇが倒す事ができたんだ、調子に乗るんじゃねぇ!」
「だったらもっと強いモンスターを出したら? 殺すんでしょ? 私を」
あぁそのつもりさ、そうしてやるよ! てめぇをぶっ殺してやる!
ルーガスはモンスター達に合図を送り、エリナを襲わせるが、またもやエリナに倒され消滅する。そしてまた差し向け、倒され、消滅させられる。それを繰り返す内、モンスターは一匹もいなくなりエリナとルーガスだけになった。
「なんなんだよ……てめぇ一体なんなんだよ!?」
エリナはルーガスの問いを無視し、一瞬して近づき身体を真っ二つに斬る。
「答える必要はないわ」
そしてルーガスの身体は地面に落ちた。するとルーガスの身体から黒いオーラが出て消滅しかけていた。
「このクソアマ……覚えてろよ、必ずぶっ殺してやる!」
身体を斬られながらも意識を失っていないルーガスはそう言い捨てて消滅した。
――――――――――――――――――――――
強い、なんて強さなんだ。凶暴化したモンスターを何体も、それも一瞬で倒すなんて。
ルーガスの消滅を確認したエリナは俺達の方へ振り向く。その時、エリナは氷の様に冷たい目をしていた。
「早く帰りましょ。今の事、隊長に報告しなくちゃいけないわ」
さっきの現象を見た俺は戸惑いながら承知する。
二人を見るとデビッドは俺と同じく戸惑っていたが、ウェインは平然としていた。驚いて……ないのか?
「何してるの? 早くしないと暗くなるわよ」
気が付くとエリナはもう帰り道の方へ歩いていた。俺達はエリナに追い付いた後、寮に帰ろうと歩いて行った。
「……必ず追い詰めて、徹底的に潰してあげるわ」
エリナの口からそんな言葉がぼそっと聞こえた。
ルーガス:今話で倒されましたが、これからの出番がないわけではありません。