ネプテューヌEX ~とある青年のエクスペリエンス~ 作:S・TOM
昨日はよく眠れた。俺は寮に帰った後、真っ先に部屋に戻って寝た。エリナは隊長に昨日の事を報告しただろうし、デビッドとウェインはその後エリナにお話されてたのだろう。巻き込まれなくてよかった。
目が覚めて、ベッドから出ると他の三人はまだ寝ていた。どうやら俺が一番早く起きたらしい。そのまま寝かせておくのも悪くなかったが、もうすぐ起床時間になるので三人を起こし食堂に向かう。
食堂に着くと俺達はそれぞれ定食を注文し、空いているテーブルについて食べ始める。ちなみに俺は焼き魚の定食を頼んだ。朝はやっぱり和食がいい。
「まさかこんなに早く元凶を見つけられるなんてなぁ~」
デビッドがパンをかじりながら呟く。そのパンにはジャムが塗られていた。
「そうね。でもこれで終わりじゃないわ」
エリナはそういって味噌汁をすすった。お前も和食なのか……しかも焼き魚定食。
「あの下種は斬られた後、黒い霧になって消滅したわ。しかもその時、苦しむどころか平然としていたわ。あれを見るに、何か謎があるわね」
エリナはルーガスが消滅する際の事を説明した。それにしても、かなり腹を立てているな。ルーガスを下種呼ばわりしているのを聞くとそう思う。
「それに奴の言葉によると、他にも仲間がいるらしいな。まだ解決にはいかないな」
ウェインはラーメンをすすりながら言う。お前、朝からそれなのか?
昨日の事のついて聞いていると、ふと疑問に思う事が浮かび上がった。
「エリナ。お前、昨日の事を隊長に報告したよな。その時、隊長なんて言ってた?」
俺は報告する際の事について質問する。進展があったんだ、何もないはずがない。
「パープルハート様に報告する、って言ってたわ」
パープルハート……ここプラネテューヌを統治する女神か。えーと確か――
「……ネプテューヌ」
「うん? どうした?」
俺の独り言に気づいたデビッドが聞いてくる。まずい、思わず口に出してしまった。
「いや、なんでもない。他には何か言ってたか?」
俺は急いで話をエリナに振る。
「えっ? えっと……この事に関する情報が集まるのを待て、とも言ってたわね」
「……そうか」
これを期に新たな情報が来るといいが。だが、そう簡単に集まる物だろうか。俺の心の中から不安が湧いてくる。
「今の所こちらから打つ手はない、か」
ウェインがそう呟いた。
――――――――――――――――――――――
特命隊の隊長がここに来るという知らせを受け、私は女神の姿で待っていた。いーすんから変身前の姿では格好がつかないと、この姿を強要されて現在に至る。この姿でいるのも疲れるのに……。
「それにしても、直接報告したい事って何かしら?」
そう思っていると、教会の入口から隊長の姿が見えた。その隊長は銀髪に紫の服を纏い、真面目そうな表情をしていた。
「失礼します」
隊長は入口で一礼をして教会に入り、私の元にやってきた。
「貴方が、プラネテューヌ特命隊の隊長ね」
「はい。特命隊隊長のグラウトと申します。お会いできて光栄です、パープルハート様」
グラウトは私に対して深く頭を下げる。
「……顔を上げてくれるかしら? うれしいのだけれど、そこまでされると逆に恥ずかしくなるわ」
私がそう言うとグラウトは頭を上げた。
「立っているのも辛いでしょう。今から紅茶を入れてくるから、好きな場所へ座りなさい」
「いえ、私は苦にならないのでその……紅茶も結構です」
グラウトは紅茶を入れてこようとする私に戸惑いながら遠慮しようとする。
「遠慮しなくてもいいのよ。貴方が来たからと言って別に迷惑なんかしてないの」
グラウトは言葉が詰まって動かなかったが、しばらくすると私の言葉にうなずき椅子に座る。どうやら折れたみたいね。
「……分かりました、紅茶もいただきます」
その言葉を聞いた私は2杯のティーカップに紅茶に入れ、その内1杯をグラウトへ差し出す。グラウトはティーカップを手に取り紅茶を飲むと、彼の固い表情が和らぐ。
「ところで、報告したい事って何かしら。わざわざ私の所まで来るってことは、よほど重大な事なの?」
グラウトの目的について聞くと、彼は真剣な表情になり話し始める。
「特命隊の隊員からモンスター凶暴化についての報告を受けました」
凶暴化についてですって? 何か手がかりを掴めたのかしら。
「凶暴化させた人物が少しばかりですが、判明しました」
「……えっ?」
何かの現象じゃなくて誰かがやったって事? いえ、そんな事だろうとは思ってたから驚いてないけれど。一体誰なのかしら?
「名前はルーガス。隊員の前に姿を現した際に名乗ったそうです。その隊員によると黒のオールバックに黒のジャケット。凶暴な表情をしていたそうです」
名前まで言ったのね……悪役ってどうしてこうも名乗りたがるのかしら?
「あからさまに怪しいわね。それで、ルーガスについての情報はまだあるのかしら?」
「はい、これが一番重要な事柄です。その隊員がルーガスを斬った際、身体から黒い霧が出てきたそうです」
ルーガスの身体から黒い霧? どういう事なのかしら……。まさか――
「グラウト、その黒い霧について何か聞いていないかしら?」
私の質問に対してグラウトは否定するように首を振った。
「報告は以上です……それでは、私はこれで」
紅茶を飲み干した後、グラウトは教会から出ようとする。
「もう帰るの? せっかくここまで来たのだから、もう少しゆっくりしていてもいいのよ?」
私がそう言うとグラウトは立ち留まり、私の方を振り向く。
「お言葉は嬉しいのですが、私はまだやるべき事があるのです。こうしている間にも、またどこかで被害が起ころうとしているのかもしれない。それを考えると、ここで悠長する事はできません」
そう言うグラウトの眼差しは真剣そのものだった。女神の役に立ちたい、グラウトの言葉からそういう気持ちが表れていた。
「……分かったわ。呼び止めてごめんなさい」
グラウトは私に向かって深く頭を下げると、教会から出て行った。私はそれを見届けた後、モニターを点けて他の女神と連絡を取る。
――――――――――――――――――――――
ルーガスは今、ラステイション近くの森林にいた。プラネテューヌへの襲撃が失敗したルーガスは、場所を変えてもう一度襲撃するという極めて短絡的な考えに至っていた。
「クソッ……こんなはずじゃあねぇのによ!」
今のルーガスの内心は計画が失敗したせいで苛立ちが募っていた。凶暴化させたモンスターがたった一人の少女によって全滅させられ、プライドまで傷つけられたのだから。失敗したおかげで仲間には馬鹿にされ、戦力外通告までされてしまった。
「全部あのクソアマのせいだ。あのアマさえいなけりゃあ……殺す、必ずぶっ殺してやる」
少女、エリナへの憎しみが具現化するように、ルーガスの身体から黒いオーラが湧き出てくる。
すると前から草が踏まれる音が聞こえてきた。誰かがこっちに向かってくる。それに感づいたルーガスは湧き出る黒いオーラを抑え、近くの草むらに姿を隠した。
「ここね、元凶がいる場所って」
元凶……俺の事なのか? ツインテールの少女の言葉にルーガスは焦り始める。しかも場所まで特定されてるのか。
「うぅ、何か嫌な気配が……」
ツインテールの後ろからもう一人、ツーサイドアップの少女が現れた。気配だって? クソッ、バレてやがる。
「これぐらいで怖がらないの。今まで戦ってきたのと比べれば、こんなの大したことないわ」
こんなのだって? また馬鹿にされるのか俺は、しかも女に。
「それよりもユニ。気配が強くなったって事は、この近くにいるのは確実よ。いつでも戦えるように準備してなさい」
「うん、お姉ちゃん!」
『ユニ』はそういうと銃を具現化して構える。その姉も剣を具現化し、辺りを見渡す。
やる気まんまんって奴か……いいぜ、モンスターの方も準備できてる。二人は気づいてなさそうだったが、すでに周りには凶暴化させたモンスターが潜んでいた。
「それじゃあてめぇらのお望み通り、モンスター共と戦わせてやるよ!」
ルーガスがモンスターに合図を送ると一斉に二人に向かって襲い掛かった。ルーガスが二人の死を確信した瞬間、どこからか出現した光の柱が二人を包み込んだ。そして間もなく光の柱が消えると、少女達の姿は変化していた。
ルーガスはその姿に唖然とする。ユニだった少女は髪が白のツインドリルになっており、服装は黒いレオタードになっていた。姉の方も髪色や服装は似ているが、髪型は髪を下ろしストレートになっていた。そんな姿の二人を、ルーガスは知っていた。
「……ブラックハートに、ブラックシスターかぁ!」
白いストレートの『ブラックハート』は襲い掛かってくるモンスターを避けながら、大型のソードで次々とモンスターを倒す。ブラックハートの背後をモンスターが狙い飛びかかってくるが、ブラックハートは一瞬でモンスター達に振り返り、横に払いモンスターをまとめて斬った。
妹の『ブラックシスター』も上空を飛んでモンスターをかわし銃で素早く、そして正確に照準を定めて撃つ。銃撃はモンスターの急所に当たり、モンスターはそのまま消滅した。ブラックシスターは着地すると、周囲から襲ってくるモンスターとの距離の取りながら次々と撃ち、モンスターを倒しまくる。
そんなモンスター達が倒される様を見たルーガスは思い知らされた。
――――勝てない、と。
黒姉妹登場回。感想、アドバイス待ってます。
後、界人やネプテューヌ達と一緒に戦ってくれるキャラを募集してます。