こちらでも楽しんでいただけたら幸いです。
そこは地獄だった。
部屋中に赤い液体が飛び散っていた。壁どころか天井まで赤い液体に侵食されており、模様と言われれば納得してしまうかもしれない。
部屋中に人が倒れている。生きている人どころか、人としての原型を留めているものもいない。ここまで来ると死体というよりも肉塊という方がお似合いな気がした。
そんな部屋に一人の人間が立っていた。
その人間はジュニアスクールにでも通っていそうな小柄な体、雪を連想させるような足まで伸びている真っ白い髪、そして肌、青空のような碧い瞳を持つ少女だった。しかしその体には夥しい量の血が付着していた。少女の血ではない、部屋中に転がっている肉塊どもの返り血である。
「~~♪~~~♪♪~~」
その白い少女は歌っていた。体中を血に
「……」
そしてその光景を眺めている男たちがいた。男たちは先ほど行われた実験という名の虐殺のデータを解析しながら、様々な意見を言い合っていた。
「これは完成といって良いのではないでしょうか」
「レアスキルらしきものの発動が確認できた」
「まだだ、アレはまだハード面が弱い」
「ハードはこれから改造していけば良い」
「ならば、あとは精神面か」
「洗脳を施さなければな」
「主任、コードネーム【
モニタを見ていた研究員が、主任に声をかけた。実際にモニタを見てみると、歌い終わり周囲を見回している白い少女が見えた。
「よし、通信を繋げろ」
「了解」
次の瞬間、白い少女の頭上にモニタが表示され、そこには主任が映っていた。
「白、実験は終了だ。帰投しろ」
「え~、やだよ。もっと遊ばせてくれないの?」
「我儘を言うな!毎回毎回同じことを言わせおって。首輪に仕込まれた爆弾を起爆させられたくなければ、黙って従え」
「……jawohl(了解)」
白は明らかに不満気だったが指示に従い、実験室を出て行った。着替えてから再び実験するのだ。
「バインドは外していいんじゃないか?何かするような脳みそも無さそうだ」
「あまりアレを甘く見るな。子供のように見えてもコードネーム【
コードネーム【
「先ほど評議会にデータを送ったのだが、最終調整を施し本局に移送せよだってよ」
「馬鹿な!?肉体的にも精神的にもまだまだやることはあるんだぞ!?」
「俺もそう送ったさ。でもそのくらいこっちでも出来るの一点張りだ。実験を凍結させられたくなければ、さっさとしろってよ」
「クソッ!精神が特に危険で何をしだすか分からないっていうのに!!」
「ま、従うしかないでしょ。唯一の成功作だから手放したくないっていうのは分かるけどさ」
「……今できる限りの最終調整を行う。その後、移送を行う。急げ!」
■■■
白い少女はある意味、生まれ故郷から移送され、異なる実験室に来ていた。実験室には白い少女と多くの研究員がいた。
「ほう、これがコードーネーム【
その中のメガネをかけた中年の男性が白い少女に手を伸ばしていた。―――しかし、
「触るな!」
メガネの男性は少女の大声に驚き、その手を少女の目の前で止めてしまっていた。最初は呆けていたメガネの男性も、状況を理解したのか少女に食ってかかろうとした。
「主任、お待ちください。データによりますと白は触られることをひどく嫌うようです」
しかし、その前にデータを読み上げている女性に止められた。
「はぁ!?じゃあ、前任者はどうやって調整を行っていたんだ!?」
「気に入った人間は触ることができるようです」
「じゃあ、私のことは気に入らなかったということか!?実験体のくせに!?ふざけるな!!」
メガネの男性-主任は少女の襟を掴み上げた。
「触るなっ!!」
「黙れ!!お前は私の実験体だ!私を拒否することなど許さない!なんなら触られることに慣らしてやろうか?」
暴れる少女を押さえつけながら、主任は少女の体をまさぐっていた。それを他の研究員は呆れながら見ていた。このようなことは今回が初めてでは無い。主任は気に入らないことがあると物に当たり実験体に当たる。今回結果を出せなければ上層部に消されるだろう。しかし、そんなことに気付きもしない主任は少女の服を脱がせようとしていた。これはマズいと、ほかの研究員が止めようとしたときにそれは起きた。
「ぐぁっ!?」
主任の背中から手が出ていたのだ。そしてその血で真っ赤に染まった手が引き抜かれると同時に主任は崩れ落ちた。そしてその下から右手を地で真っ赤にした少女が現れた。両手と両足を縛っていたバインドはすでに破られており、少女は立ち上がった。
「……」
研究員たちは状況が理解できないのか、白い少女の放つ雰囲気に気圧されたのか立ち尽くしていた。それを見ながら少女は口を開いた。
「僕が嫌がることをしたんだ。君たちは敵なんだろ。敵は殺さなくちゃ」
これが前任者たちが白を移送することに反対した理由だった。白は敵味方の区別がつかないのだ。気に入った人は味方、嫌なことをした人は敵。このような簡単な区別しか出来ないのだ。このことは送ったデータにも記載されているのだが、それを見る前に主任は白が嫌がることをしてしまった。つまりは白に敵認定されたのだ。
白は何かを探すように周囲を見回していたが、お望みのものを見つけたのか部屋の隅に向かって歩いて行った。そして何故か椅子を持ってきたのだ。そして椅子を使って思い切り研究員を殴りつけた。殴られた研究員は壁に衝突し、殴られた時に首でも折れたのかピクリともしなくなった。
「うわぁぁぁっぁあああ!!!」
それを見て、正気に戻ったのか研究員たちは我先にと逃げ出していった。
「あは、あはははははははははははは!!!!」
しかし白は一人も逃がす気はなかった。狂笑しながら視認できないほどのスピードで次々と研究員を椅子で殴り飛ばしていく。
「動くな!!」
声がした方へ振り向くと頭から血を流しながらスイッチのようなものをこちらに向けている研究員がいた。
「動いた瞬間、これを押すぞ!!」
それは白の首輪に仕込まれた爆弾を爆発させるスイッチだった。しかし白はそんなこと知ったことかと言わんばかりに、両手で自分の首に付けられている首輪を掴んだ。この首輪はスイッチのほかに、鍵以外で外そうとすると爆発するようになっている。つまり白は現在、首輪を外そうとしているが、それは自殺行為なのだ。
―――そして、爆発した。
爆風から両手で顔を庇いつつも研究員は、今見た光景に驚愕しながらも安堵していた。死ななくて済んだと。そして煙が晴れてきて周囲を見回したとき研究員は再び驚愕した。何故なら、
―――白が無傷で立っていたのだ。
白はこちらを見て、消えた。
そして次の瞬間、研究員の腹部で鈍い音が聞こえた。まるで肉を何かが貫通したような。恐る恐る自分の腹部を見ると、そこからは金属の棒が刺さっていた。
「ばいばい」
背後から声が聞こえ金象の棒が引き抜かれた。崩れ落ちる中、研究員はやはり研究員なのか、死ぬ瞬間も思考を続け、白が爆弾で爆発しても無事だった理由を推察した。
―――おそらく白は首輪が壊れ爆発するまでの僅かな時間に離脱したのだ、と。
■■■
「~~♪~~~♪」
血に染まった少女は歌いながら主任の服を漁っていた。そして服から抜き取られた手にはカードキーがあった。少女は外に出ようと扉に向かったが、血まみれの服に気付いたのか、立ち止まり服を両手でつまみ上げていた。そして周りを見回し、比較的綺麗な服を女性の研究員から剥ぎ取り始めた。
「~~~~~♪」
そして数分後、少女はブカブカの服を引きずりながら、生まれて初めての外の出発した。
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