騙された気がするゼロの使い魔   作:真暇 日間

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 連続投稿五話目。まだまだストックはありますのでゆっくり楽しんでいってね!


騙されゼロ魔08‐S・H

 

〔わたしのこいびと〕

 

 

 

 私の恋人には秘密が多い。

 他の人に比べてできることは多いし、不思議な力を使う事だってできる。

 地球にいた頃からそうだったし、その力を不思議に思ったことはあっても怖いと思ったことはなかった。

 

 ───この世界に来るまでは。

 

 いきなりこの世界に呼び出され、訳のわからないままに使い魔とか言うのにさせられそうになって、マサに言われた通りにキスされないようにしてたら叩かれたし、お腹の上に乗られてしまった。

 よくわからないけれど変な棒みたいなものを突きつけられたところでマサに助けれもらえたけれど、私はそうされたこと自体がとても怖くなってしまった。マサに何も言われてなければきっとキスされて使い魔にされていただろうし、使い魔にされていたら絶対にまともな生活はできていなかっただろう。私を誘拐したらしいあの女の子の態度を考えれば、そういう風に考えるのは当たり前だろう。

 私は頭が真っ白になっているまま、マサに抱えられてそこから逃げ出していた。どうなるかなんて全然わからなかったけれど、マサと一緒ならきっと助かると信じて。

 

 

 

 ■ ■ ■ ■ ■ ■

 

 

 

〔こいびとのちから〕

 

 

 

 場所は山の中。見たこともない動物や、あるいは物語の中にしかいないはずの生き物に何度か襲われながらも、私達はなんとか生き延びることができていた。

 マサがそういった動物を仕留めたり追い払ったりして、私が動物から取れたお肉や山菜を料理する。水はマサがある程度用意してくれるし、調理器具なんかもその場で簡単に作ってくれた。まるで魔法のように……と言うより、まさに魔法なんだろう。昔から人の傷を治したりしていたし、真っ暗な場所では辺りを明るくするなんて事もしていた。流石に直接傷を治したりとかは私やお父さんたちにしか伝えていないみたいだけど、まあそれは当たり前と言えば当たり前のこと。これが広まったら色々面倒臭いことになりそうだしね。

 とにかく、今の私はマサのおかげでこうしてここにいられると言っても過言ではない。そして私はそれのお返しに、マサが取ってきてくれた食材を少しでもおいしい料理にしている。これで恩返しができるなんて思っていないけれど……これが恩返しになるんだったらずっと恩返しが続いてくれてもいいかもしれない。そう思う。

 

 それから、マサの魔法の力で素早く移動して近くにあった大きな町にまで行ってみたんだけれど、私達の世界とは通貨が違うらしくて何も買えそうになかった。

 けれど、そこは流石マサと言うべきなんだろう。落ちていた石ころを銀貨に変え、それで一日分の宿をとったかと思うと暫くふらりと姿を消して、そしてどこからか大量の金貨を持ち出してきた。盗んだものではなく、近くにあったお城の宝物庫らしい場所に入り込んで金貨の形と意匠を覚えて石ころから作ったんだそうだ。

 ついでに古びた本を一冊持って来ていたけど……なんなんだろう?

 まあとにかく、なんとか食料を買って、私達からすればかなり古臭い物ではあるけれど旅の道具を買って、旅に出た。車やバイクを使ったり、空を飛んだりしないのは、私の前にいつあの銀の鏡が現れても避けられるように、と言う事だった。

 確かに、早く進んでいたらあれは避けられないだろう。私にしか見えないこともあるし、私以外には干渉しないと言うのもある。もしも私以外にも干渉してくれるんだったらマサが錬金して作った自家製の手榴弾でも放り込んでやると言っていたけれど、それは多分不可能だ。

 つまり、いくらマサがすごくても、これに関しては完全に私が自分の力で何とかしなくちゃいけない問題らしい。

 ただ、マサが言う『人間相手にしては大分強い』程度に蹴り飛ばした相手がここ数日は動けないだろうと言う事で、一日だけマサに抱えて運んでもらい、後は徒歩で移動することになった。

 マサが言うには、この世界の魔法であの蹴りの傷を完全に癒せたとしてもその分体力を使う。その体力が完全に回復し、まともに動けるようになるには少なくとも三日程度はかかるらしい。

 あの場所から町に移動して、お金などの準備をして宿に泊まるので一日。作ったお金で色々と買い物をして物をそろえるのにまた一日。出発する今日が三日目となる。つまり、マサに空路で運んでもらえるのは今日だけになると言うことだ。

 その一日で国境の近くまで来れたのはいいのだけれど、マサは途中からまともな道を避けていく。国境には国境破りが出ないように警備隊がいて、しかも使い魔魔法使いと契約した使い魔たちが視界を共有して四六時中見張りを続けているらしい。

 その目を掻い潜るために道から外れ、そして最後には湖に沈んだ村から自作の潜水艦に乗って向こう岸にまで行くことにしたらしい。

 潜水艦は沈んだ村の家を再利用した木製で、後ろに金属製のフィンが取り付けられている。これもマサが錬金で作ったそうなのだが、詳しいエンジンの構造なんて覚える以前に知っているわけもない。そんなわけで自転車のように人力でペダルを漕いで動かす式になっている。チェーンもマサが作っていたけれど、普通の鎖だったらともかく自転車のチェーンは作るのが結構難しいと思うんだけど、よく作れたよね。私自転車のチェーンの構造なんて知らないよ? 日本のどのくらいの人がチェーンの構造を知っているかは知らないけど、割合的にはそんなに多くないんじゃないかな。物さえあれば直すことはできるだろうけど、直すのに構造を熟知していなくちゃならないなんてことはないだろうしさ。

 ちなみになんと窓もある。ハーフミラーになっていて外から中の様子を見ることはできないけれど、中から外を見ることはできると言う優れもの。剣と魔法の世界に科学技術を持ち込んできちゃいけないね。ほんとに。

 

 これで私とマサは無事に湖を……渡れてたらよかったんだけどね。うん。

 

 

 

 ■ ■ ■ ■ ■ ■

 

 

 

〔あのことのであい〕

 

 

 

 水の精霊。

 ラグドリアン湖に棲むと言うその精霊が、私達の目の前に存在していた。

 ただし、それは物語でありそうなロマンチックさなど欠片もなく、むしろ剣呑な空気の中の出会いだった。

 航行中、深度を上げてもいないのに突然船体が軋みをあげ始めた。マサが何度かボールペンを振って船体を丈夫にしても止まない軋みに一旦浮上すると、そこに見たことのない不定形の水の塊のようなものが存在していた。

 

「バシ……いや、水ごと消えたら困るな……何の用かね? 俺達はあんたに用は無いし、あんたも俺達に用は無いだろう?」

『……単にして大なるものよ。私には単にして大なるものが何を言っているのかがわからない』

「あ? なに言ってんだ? ちゃんとわかる言語で…………ああ、そう言えばゲート通ってないからなに言ってるかわかんねえんだったな……厄介だな」

「言葉が通じなくてもなんとか買い物できちゃうマサがすごいと思うよ」

 

 ちなみに買い物はマサが物を選んで買った。実際に支払いの時には私が出たけど、マサが後ろで何度か『マヌーサ』とか『メダパニ』とか唱えていたのが少し気になったけれど、どうやら適正価格で買えたらしい。初めはぼったくる気満々だったのが、マサの呪文でどんどんその気を失っていったみたいだね。

 けれど今は、言葉が通じないことが問題になっている。言葉が通じないって言うのは本来不便なものなんだね。かつて聖書の神様が罰として言葉をバラバラにしたって言うのも理解できる話だよ。実際にやるとなると意味わからないけどさ。

 

 そしてここで私登場!なぜか(マサは理由がわかったみたいだけど)こっちの世界の言葉もわかる私が、水の精霊とマサの間に立って通訳することでなんとか話を成立させることができた。

 けれど、水の精霊が言っていることは大分無茶苦茶なことだった。

 なんでも、大事にしていた秘宝を盗まれたらしい。そしてそれを取り返そうと湖の水嵩を増やしていた時に私たちが水中に入ってきたのを感じ取り、また来たのかと排除しようとした。でも思ったよりも強かったから排除するのはやめて秘宝を取り返してきてもらえるよう頼もうとしたんだとか。

 ……ちなみに、その話を聞いた時のマサの反応はと言うと、すっごい面倒臭そうな表情で何かをぽつぽつと呟き、水の精霊を見るだけだった。そして水の精霊にこう返す。

 

「場所は知ってるから自分で行ってろ」

 

『バシルーラ』

 

 その一言で視界に映る物が一気に変わった。水の精霊が消え、湖の水が消え、下には水が一度になくなってしまったせいで落下していく魚たちが見える。まあ、私達も落ちてるんだけどね!?

 

「『メイルシュトロム』、『コーラルレイン』。……これでよし」

 

 そしてまた一瞬にして湖が水で満たされる。今の一瞬でマサが何をやったのかはわからないけど、とりあえずまた無茶苦茶なことをやったと言うことだけは私にもわかった。

 

「えっと……なにをやったの?」

「フローミを使って俺を中心としたこの世界全土の相対位置を把握して、レミラーマを使って水の精霊が欲しがっていた物の場所を探し当てて、バシルーラでその場所に跳ばした。水はあの精霊と繋がってたせいか持ってかれたから、新しく俺が水を入れといた。今ごろアルビオンは一部大変なことになってるだろうが、まあどうでもいいだろ」

 

 うん、話を聞いてもよく理解できないけど、今マサが軽く言ったことがかなりぶっ飛んだことだって言うのはわかるつもりだ。だって、世界中を一度に見てどこに欲しいものがあるのか当ててその場所に湖一杯分の水ごと精霊を転送するとか絶対おかしい。魔法とかの詳しいことは知らないけどそんなの絶対おかしいよ。

 実際にできてるんだから認めなくちゃいけないんだろうけど、やっぱりなにかがおかしい。

 具体的に言うとあれだよね。魔法の理論が違いそう。

 

 物理に干渉して物理現象を起こす魔法か、物理とかそんなのはどこか適当なところに置いといて魔力だけで超常現象を起こすかの違い……って感じ。物理的な法則に則って効果をもたらすものか、そうじゃないか。この差はきっと大きいんじゃないかな? 知らないけど。

 

 ……そして、水の精霊がいなくなった湖を渡り終え、向こう岸についてすぐ。

 私は、こちらの世界で初めての友達になれる相手に出会った。

 

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