騙された気がするゼロの使い魔   作:真暇 日間

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 連続投稿24本目……実質26本目です。とりあえず切りよく30本上げたら終わりにしようと思います。


騙されゼロ魔04

 

 

 中学生となった初日に騙された感がたっぷり供給された俺だが、一応自己紹介くらいはしておこうと思う。

 俺の名前は平船雅巳。これは確か前にも言ったよな?

 一応転生者で、チート能力も持っている。特に凄いのは成長力だが、鍛えないと結局衰えていくから軽い運動は毎日している。

 多少人間を越えていると思われる程度の身体能力があるが、遅刻しそうなときくらいにしか使わない。魔法も使えるが人前で使うことは無い。そんな感じの人間が俺だ。

 後は目がいいってのもあるが、そう言う細かいのはおまけ程度に取ったからよく覚えていない。

 目がいいってのは良いことだし、その恩恵をよく受けてるから覚えていただけだしな。

 

 そんな俺は中学生生活をつつがなく過ごしていたんだが、ある日事件が起こった。とあるロリコン供によって、俺の席の目の前に座る女子生徒がナンパされたという事件だ。

 いつもならスルーするんだが、流石の俺でも目の前でやられちゃあなぁ………しかも絡まれている本人には気付かれて『へるぷ!へるぷみー!』という視線を向けられてるし。

 

 ……ここで無視したら、多分明日から学校の女子の中で俺の評価が駄々下がりして面倒なことになるだろうし………はぁ……めんどくせえなぁ……。

 

 そう考えながらも一応絡まれている平賀才人に歩いて近付いていく。

 こういう時は話を合わせてもらって恋人のふりをするってのがいいんだろうけど……あいつ真っ正直な奴だから演技とか無理だろうなぁ……。

 ……やるだけやるけどさ。

 

 適当に笑顔を見せながら、平賀に呼び掛ける。

 

「よう才人、待たせたか?」

「?……! もう、遅いよ雅巳!」

「悪い悪い、道路が込んでてな」

 

 ナンパを仕掛けていた男達を無視して平賀に話しかける。平賀は咄嗟に察したのか、うまく乗ってきてくれた。

 正直に言って平賀が俺の名前を覚えているとは思ってなかったんだが、よく覚えてたもんだ。

 俺だって平賀がゼロ魔の関係者と同じ名前じゃなかったら、名字はともかく名前の方までは覚えてなかっただろうし……平賀はあれか? 友達百人作ることに全力を注げるタイプの人間なのか?

 

「あんまり怒るな。その分サービスはしてやるからさ」

「……ほんとに?」

「勿論」

 

 ……まあ、この場所から逃げるための大嘘だが。

 そのまま平賀と並んで男達に背を向ける……前に、軽くマヌーサをかける。

 ちょっとばかし方向感覚と距離感がおかしくなっているだろうから、追い付かれることは無いだろう。

 

 俺と平賀は横に並び、ゆっくりとその場を離れていった。

 しばらくすればマヌーサも解けるだろうし、問題ないだろう。多分だけど。

 

 

 

 ■ ■ ■ ■ ■ ■

 

 

 

 しばらく歩いた所で、平賀が口を開いた。

 

「……あの……ありがとう」

「気にすんな。これで喧嘩を売られてたんだったら仕返しに頬の一つや二つ引っ張ってやったかもしれんが、何もなかったんだし」

「乙女の柔肌をいじくり回すだって!?」

「人聞きが悪いな。せめて体を弄んだとか玩具にしたと言ってほしい」

「そっちの方が人聞き悪くない!?」

「やらないだろ?」

「そりゃあやらないけど……」

 

 じゃあいいじゃないか。言うだけならタダだ。

 

「と言うかお前、よく俺の名前なんて覚えてたよな。初めの自己紹介の時くらいにしか言ってなかったと思うんだが」

「まずは周りの人の名前から覚えようと思って」

「友達百人作るため?」

「なんで知ってるの!?」

 

 平賀はかなり驚いているようだが、そんなもん知るわけないだろ。適当に言っただけだよ。むしろ言ったこっちの方が驚いた。

 

 ……やれやれ、と溜め息を一つ。それから適当に用を思い出したことにして別れを告げた。

 

「じゃあな、平賀。また学校で」

「うん。またね、平船くん」

 

 ……平船くんとか、先生以外には久し振りに呼ばれたな。一応中学で作った数人の友人が初めの頃にそう呼んでいたくらいだぞ? 別にだからどうしたということは無いんだが。

 それももう数ヶ月前の話だし……って、それこそどうでもいいか。

 

 ……これからどうしようかねぇ……時間はたっぷりあるし、今まで通り適当に過ごしてるのが一番か。

 ちなみに説明の必要は無いと思うが、この場合の適当は適して当たっているという本来の意味ではなく、とりあえず簡単に流されながら……という今時の使い方だ。説明の必要なかったろう?

 

 ……だが、この時の俺はまだ気付いていなかった。

 この出会いをきっかけに、俺と平賀の関係がどんどん変わっていくことに。

 

 ……いやまあ、神じゃあるまいし未来のことなんてわからんよ。普通に考えて。

 

 

 

 ■ ■ ■ ■ ■ ■

 

 

 

 それからと言うもの。俺はなんでか妙に事件に巻き込まれている平賀に関わることが多くなった。

 例えば、見てくれはかなりいい平賀がナンパされているところを助けたり、なんでか引ったくり被害者になりやすい平賀の荷物を偶然(ぶつかってきたからとりあえず呼び止めたらナイフを出してきたから殴り倒したりとかして)取り返したり、平賀の昔の不思議体験(ホイミ&キアリクの話。どうやら平賀がそうだったらしい。世界って狭いな。マジで)の話も聞いたりしたし、なぜか学校でも俺と平賀が付き合っていることになっていたりと本当に色々なことがあった。

 

 そしてそのまま一年が過ぎて、ふと気が付いた時には何故か恋人になっていた。

 

 ……一応弁明をさせてもらうと……なんと言うかなぁ……平賀……いや、才人はいつもどこかヌけてて能天気で、それなのに色々なことに巻き込まれるからほっとけなくてな………気が付いたらそんな関係になっていたって言うか……そんな感じだ。

 切っ掛けは、ナンパから助けた回数が二桁くらいになった辺りで『なんつーかもう恋人って嘘つくのも面倒だな。もういっそ本当に付き合ってみるか?』って冗談のつもりで言ってみたら、才人が存外乗り気になって………それから付き合い始めた訳だ。

 

 ここで驚いたのは、才人はなんと言うか調子に乗りやすい上にちょっとした妄想癖があって……凄まじく乙女な思考回路をしていたことだ。

 簡単に言うと、外見は差異がかなりあるが中身は原作とよく似ている。ヘタレだし、落ち込む時はとことん落ち込むタイプだし。

 

 ………初めのうちは冗談に近いものがあったんだが、今は俺もかなり本気になってきている。学校では有名なバカップルになっちゃったしな。

 

 ……知ってるか? 素直に好意に答えてやった時の才人の笑顔は滅茶苦茶可愛いんだ。

 原作だとあのツンデレに空回ってたが、あのツンデレのツンがもう少しマイルドだったらもっと早く原作の才人も落とせてただろうに。

 まあ、今の俺にとっては原作とかハルケギニアとかどうでもいいけどな。とりあえず才人が可愛い。

 

 ……そう考えると、こうして騙されてみるのもたまにはいいことなのかもしれない。

 物によっては騙されたらそのまま人生が滅茶苦茶になるような事もあるから、気を付けなくちゃいけないけどな。

 

 

 

 ■ ■ ■ ■ ■ ■

 

 

 

 周囲から『お前らもう結婚しろよ』とか『リア充爆ぜろ』とか『祝ってやる……末代まで祝ってやる!(ニヤニヤしながら)』とか言われ続けて二年くらい。俺は才人を家の親に紹介してみた。

 

「で、どこから拐ってきたんだ?」

「表に出ようか、我が父上殿よ?」

「冗談だ。だからその言葉遣いはやめてくれ」

「あははは……仲いいね?」

 

 俺の両親に会うということでガッチリおしゃれをしている才人が、俺と父上殿の軽い言い合いに軽く笑う。

 ああまったく出会った当時はこんな関係になるとは欠片も微塵もほんの僅かも思っていなかったが、実際にそういう風になってみることで見えてくるものってのがあるんだな。

 恥ずかしがっている姿も色々変わるし、恋をしていると綺麗になるっていう話が真実以外の何物でもないことを証明しようとしているかのようにどんどん綺麗になっていくし、好きになっていくにつれて欠点すら可愛らしいと流せるようになっちゃったりもするし。

 恋っていうのは凄いな。恋する乙女は最強だとよく聞いたが、確かにある意味では最強なのかもしれない。

 

「そんなわけで、俺の彼女の平賀才人。二年くらい前からプラトニックに付き合ってる」

「平賀才人です」

 

 ぺこり、と才人が頭を下げる。父上殿と母上殿はニヤニヤという擬音語が似合いそうな表情で俺と才人を眺めている。

 ……ってか、才人もかなり緊張してるな。俺の服の裾を弱々しく人差し指と親指でつまんでいる仕草がグッド。ああ可愛い。

 

 そんな才人の仕草を見て、父上殿と母上殿は笑みを深める。美味そうな獲物を見付けた底意地の悪い猫のような表情だ。

 

「で、どう思う?」

「いいんじゃないか? どうせ何をいっても意思は変えないだろうし。お前の頑固さはしっかり理解しているからな」

「初孫は男の子かしら? それとも女の子かしら? どっちにしろ楽しみねぇ……ふふふふっ♪」

「気が早いって」

「……私は別に……」

「……才人って意外とエロいのな」

「エロくないよ!」

 

 いーやエロい。

 

 

 

 ■ ■ ■ ■ ■ ■

 

 

 

 またある日。今度は才人の両親と顔を合わせた。

 口うるさい母親と寡黙な父親だと聞いていたんだが………やっぱり才人の両親だということを理解した。

 

 簡単に言うと、かなりテンパり気味だ。特に母親の方。

 初対面で温めためんつゆが出てきたり、それを指摘したら今度はわたわたと慌ててなぜか味噌汁が出てきたり、母御殿がポンコツになって役に立たないことに気が付いた才人がお茶を用意しようとしている間に酒とメンマが出てきたり。

 ………もしかしてこれってわざとなのか? と思ったらかなり本気で謝られたし、父御殿からも済まなさそうに謝られたし……。

 

 まあ、才人も慌てるとポンコツになるから慣れてるし、別にいいと返したんだけど。

 

 そこで才人がお茶を持って戻ってきて、全員の前にお茶を置いてから、場が固まっている。

 さっきからの失敗の雨霰のせいか母御殿はすっかり静かになってしまっているし、父御殿は元からあまり話そうとはしない質であるようなので、何も言わずにじっと見詰め合う。

 隣では才人がありもしない緊張感に呑まれたのか居心地悪げに座り直すことを繰り返しているし、それは母御殿にも言える。

 

 ……実際は、俺と父御殿の間に緊張感等と言うものは無い。少なくとも俺は緩やかな空気しか感じ取っていないし、見た感じでは父御殿も同じような物だろう。

 

 暫くして、父御殿が僅かに口許を緩ませる。

 

「孫はいつ見れる?」

「気が早すぎます父御殿」

 

 どうやら、こっちはこっちで家の親と気が合いそうな性格をしているようだ。

 

 

 

 

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