金色の娘は影の中で   作:deckstick

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始動編第11話 技術者(オタク)達のある日

 雪花が眷属になるのに、さほど時間はかからなかった。

 何しろ、私の本拠地ともいえる世界樹周辺には、普通ではない者が多く暮らしている。白い翼を見て綺麗だとか羨ましいとか言う者ばかりで、嫌悪する者がいなかったことも大きい。ギリシャ神話風と言えばいいのか、とにかくひらひらした布を着せようとした変態は、制裁済みだが。

 メイド軍団(戦力的にもこの名がふさわしい代物が仕上がっていた)に参加して仲間意識が強まった事も理由だそうだが、特にイシュトと雪花の忠誠心が少々怖い事になりつつあるのはなぜだ。

 

 雪花以外にも、部下的な存在になった者は多くいる。

 多くは有宣の部下という位置付けになるが、私の直属以外に選択肢が無い場合もある。

 例えば雪花のような、私が直接眷属とした者。

 そして。

 

「あ、なんか変な事考えてるでしょ?」

 

「どうして、鬼神が小僧化したんだろうな」

 

「何度も言ってるじゃん。

 僕は元々分霊で、式神契約の主の影響を受けたんだって」

 

「……何度考えても、納得出来ん」

 

 私の使い魔? 式神? まあ、そんな感じになった、宿儺(スクナ)(普通の人間風、なぜかショタ)。

 再封印の準備もしつつ挑んだ京都の鬼神だったが、どうも暇を持て余していたようで、割と簡単に契約に成功した。人形(ドール)契約と一時契約と式神召喚術を参考にして霊的存在との契約魔法を組んでみたのだが、上手くいって何よりだ。別に目新しいものは何もなかったはずだが、見ていた陰陽寮や摂家の連中に技法やらを絶賛されたのは……まあ、印象が良くなったという事でいいだろう。

 本人が言うように本体(飛騨の方にあるらしい)ではないし、手が多いのは当時の領民達が尊敬を込めて様々な対策や改善を行う様を手が多いと表現したのが原因で、両面だの略奪だのは(ヤマト)の連中の言いがかり、という事らしい。

 本体ほどではないものの、鬼神としての戦闘力はもちろん、救世観音の化身だの千手観音の力を得ただのといった方向からか、農業や狩猟に関する知識もある。分霊で存在的に本体より弱いせいかスクナ繋がりの少彦名(スクナビコナ)に影響されて、薬や酒に関する力や知識も少し得ているそうだ。

 聞けば聞くほど、思っていたより「神」をしている気がする。

 うまい酒が飲めると甚兵衛が喜んでいたのは……まあ、いいか。有宣もいい手土産や手札が出来たと言って活用していたしな。

 

 日本は戦国時代が終わり、徳川家が君臨する江戸時代が始まっている。

 それまでに、伊賀や甲賀が壊滅的な打撃を受けたところを保護したり、隠れ里を追われた狐や猫や犬系の(あやかし)達を助けたり、肩身の狭い思いをしているハーフ達を助けたり、商人が集まる街に見せる事で秀吉の目を誤魔化したり、家康を助けて貸しを作ったり、朝廷と徳川の調停役をしたり、北海道と樺太と千島列島を実質的に支配したりしていたわけだが。

 結果的に幕田家は、日本各地との交易ルートと蝦夷の支配権(各地からの入植希望者受け入れ義務あり)を持つ譜代大名という立場も持つ堂上家、という意味不明な立場になった。

 よく考えなくても世界樹は関東にあるから、徳川と敵対したら色々まずいことになる。それを避けられたのは、良かったと言っていいだろう。五摂家よりもはるかに広く生産力がある領土(もはや家領と呼べないレベル)を持って良かったのかは分からんが。

 望月を始めとした教師やその教え子達の活動は密かに知られていて、徳川家だけでなく各地の大名から人が集まる学び舎としての側面が強くなってきた。ついでに、江戸に近く、京を含む各地の郷土料理を含む様々な料理をおいしく食べられて、幕田家以外の隠密が入り込めない力を持つ中立的な土地だからなのだろう。参勤交代で江戸に滞在中の大名達が頻繁に訪れる交流都市としても立場を確立しつつある。

 どうやら、世界はここに原作の麻帆良学園都市以上の影響力を持たせたいらしい……いや、原因を作ったのは私だという自覚はあるが。

 様々な気候に設定した別荘をいくつも作って世界中の香辛料やら作物やらを研究や改良しつつ栽培し、並行して色々な料理も研究開発しているのは、少々やり過ぎだったのかもしれん。琉球で栽培が始まったばかりの砂糖(黒糖)を生産しているとか、まだ日本では食用になっていないジャガイモやサツマイモを生産しているとか、まだ作られていない菜種油の生産とか、牛や豚などの食肉用家畜とか、色々やらかしているし。

 止める気は無いが、一応自重はしている。作った食材や料理を別荘内でしか流通させない程度には。

 

 陰陽術と妖繋がりで、魔界との接触にも成功した。

 現状では深入りをする気も無いから、魔界に住む烏族の村との交易を中心に、機会があれば鬼やら他の地域の魔族やらとの接触を行う程度となっている。

 それでも、日本と繋がりやすい地域を統率している、複数の氏族との接触は行った。その中の1つ、有力な魔族との交渉時にザジ・レイニーデイという名のぽよぽよ言う魔族が出てきたのは、驚くべきか戸惑うべきか……

 口調に戸惑われたと思われたのは有難かったし、友好的に話が出来たのも良かった。積極的には関わらないものの、たまに情報交換等を行える程度の関係は作れたのだから上々だ。妹の存在は確認できなかったが。

 

 魔法世界は相変わらず、物騒な平和が続いている。

 まず、私達が肩入れした部族が王となり、ヘラス連合がヘラス帝国になった。眷属が教育係や補佐役として王室に出入りする関係だから、影響力は相当なものだ。

 眷属達に任せたアリアドネーの立ち上げは、何というか……これぞ魔改造、と言ってしまえばいいのだろうか。既に学術研究国家として不動の地位を確立して、世界中から研究者や貴族の子弟が集まる状況を作り上げてしまっている。教育なんて本来は国が未来に投資する、基本赤字の事業の筈なんだが……有償の高度教育、貴族や企業からの寄付という名の出資、研究成果を会社に使わせる契約料と技術指導料などなどで、しっかり黒字を確保しているそうな。中立という立場を利用して世界規模の企業の本社や研究所を抱え込み、それを利用して政治的な交渉力も維持しているようだから、運営も当面は大丈夫だろう。

 ウェスペルタティア王国はヘラスやメガロに押され、若干勢力を落としているようだ。私達があまり活動していないせいだとは思いたくないが、現状では大国と呼べるものの、このままだとそう遠くないうちに小国に転落しそうだ。

 世界全体としてはまほネットが完成し、それは同時に私達の諜報が魔法世界中をカバーできるようになった事が最大の出来事だろうか。防諜技術もほぼ私達が作ったものが採用されているし、抜け道を外部に漏らすようなへまもしていないから、当面はこのポジションも安泰だろう。

 その他の地域、つまりヘラス、メガロメセンブリア、ウェスペルタティア、アリアドネーの勢力が及ばない地域や境界付近は、基本的に治安が悪く小さな抗争が多発したり、小さな国が出来たり無くなったりしている。これは、時代的にも仕方ないと割り切るしかない。

 

 アメリカは、自由という名の混沌に包まれている、とでも言うべきなのだろうか。

 新天地を求めた権力者とか。

 広い土地を求めた農民とか。

 ヨーロッパの制度や軋轢を嫌った、所謂紙一重な人物とか。

 様々な地から様々な人物が集まり、それぞれが協力や反目しながら都市を形成していく。

 もちろん、ヨーロッパの眷属達もそれぞれの思惑で人を送り、活動を行っている。そのまとめ役として第1世代の眷属が必要だと依頼されたりもしたが、私としては依頼内容に問題が無いなら適度にこなすだけだ。ヨーロッパ方面での教育はマシューもいるしな。

 面識のない者を眷属化する事になったが、特に思うところは無くなっている。最初の躊躇いが嘘のようだが、今考えると私の背中を蹴り飛ばしたゼロの判断は間違っていなかったのだろう。

 その時の眷属は教育に関して強く主張するマシューの影響か、マサチューセッツ湾の植民地で学校を作る時に色々と手や口を出したらしいが……教育は大事だから、それはそれでいいのだろう。

 

 ヨーロッパ方面は、所々でおかしなことになりながらも、それなりに史実に近い歴史を歩んでいるようだ。

 まず、造物主がガリレオを名乗ったらしい。

 魔法世界やらの知識を考えると知識チートでヒャッホイできるのかもしれないし、未来の科学の基礎になるだろうから、生暖かい目で監視するしかない。眷属達にも不用意に近付かないよう注意するに止めておいた。

 スペインの(経済の掌握に路線を変更していた眷属達とは無関係な)艦隊が、イギリスの(マクダウェル家の手がかなり入った)海軍に敗北したのは、史実通りのはずだ。マクダウェル家はイギリスが行っていた略奪に反対の立場を崩さなかったし、スペイン財界の一員はイギリス攻撃に反対していたらしいが、やはり修正力や世間の常識は手強いらしい。

 その後、イギリス(というか、やっぱりマクダウェル家)やフランス(ぶっちゃけジャンヌ達)で東インド会社……別にインドに限っているわけではない独占権を持つ交易会社が設立された。

 オランダも触発されたのか、株式会社の様な形態の東インド会社を設立。ポルトガルを併合したスペインを追い落とす形で、アジア方面に手を伸ばしてきた。

 既に世界規模のネットワークを形成している眷属達が有利というか、情報や現地協力等で突出した状態となっているため、程々に手加減するよう通達する事にもなったが。

 

「でもさー、確か、鎖国中の日本の交易相手って、オランダだけのはずだよねー?」

 

「蘭学とか言っていたくらいだし、そのはずだな」

 

「裏でジョンとジャンヌと有宣が手を組んでるせいで、どう見てもオランダ不利なんだけど。

 いいのかなー?」

 

「オランダが排除されているわけではないし、文化面で積極的だから徳川には割と重宝されているようだぞ。

 フランスはキリスト教関係で警戒されているし、イギリスは商売相手という立場で一歩引いて交渉するからか踏み込みが浅い。結果的にバランスはとれるんじゃないか?」

 

「独占じゃなくなって大丈夫かなー、って方が心配なんだけど」

 

「なるようにしかならんさ。

 それより、魔法世界に地球の植物を持ち込んだ場合の影響が、ある程度調べられたんだが……」

 

「なんか、あんまり嬉しくなさそうだね」

 

「恐らく、効果は限定的だな。

 生態系に大きな影響が出るくらいまで増やせば、延命効果は出るだろう。逆に言えば、その程度でしかない」

 

 もちろん、何もしないよりはマシだとは言える。しかし、魔法世界と言う閉じた代物の中で何とかしようとしても、多少は魔法世界の魔力を消費してしまうらしい。

 しかも、後の事を考えずに突っ走れば、日本で杉を植えすぎて花粉症が蔓延かつ管理する人手不足で放置、みたいな事態になりかねないという事でもある。

 

「やっぱり、中をいじってパパッと解決、ってのは難しいかぁ……

 今いる黄昏の姫御子の力って、使えないのかな?」

 

 これまではあまり情報が出ていなかったのに、今は妙に表立って活動しているあれか。

 自分を王家の剣とか名乗っているようだから、力と役目を把握し納得しているのだろうが……

 

「あそこはお前達の方が詳しいだろう。

 造物主が近くにいる事がままあるんだ。眷属達は表立って動けんし、王家とのパイプも所詮商人と客でしかないぞ」

 

「厨二病は、なぜかあの王家にはあんまり手を出さないんだよねぇ。墓の方に出入りするばっかりだし、そこに出入りする時に僕を封印しちゃうから様子が見えないんだよ。奥の研究室みたいなとこに着けば、普通に活動させてもらえるんだけど。

 絶対に、何かあると思うよ」

 

「墓か。確か墓守の主がいるのだったか。

 あれが何者なのかは知っているのか?」

 

「墓所の主、だよ。

 ウェスペルタティア王家縁の女性で、政治的な意味を放棄した人物が就く役職。ぶっちゃければ、いい政略結婚の相手がいなかった女性の逃げ場。僕が知る限りでは、それ以上の特別な意味は無さそうかな。今までに3回見た事があるけど、全部別の人だったし。

 重要な施設ではあるらしいけど、王家の女性という点の方が重要っぽいかな? 墓所の主かどうかはぶっちゃけ身分だけみたいだし、会った人は黄昏の姫御子とか呼ばれてなかったし。

 魔力の解析とかはする隙が無かったから、詳しい事は解んないけどね」

 

「一言で言えば、よくわからない、だな」

 

「うん、そうだね」

 

 やはり、こいつらの情報は完璧ではない。それは理解しているが、こう、欲しい部分がマスクされているように感じるというのは、もやっとするな。

 

「結論としては、姫御子の力は未知であり、当てにしてよいかも不明。

 場合によってはリスクを取ってでも情報を集める必要があるかもしれない。

 ……やれやれだ」

 

「やれやれだねー。

 ってことは、やっぱり火星をテラフォーミング、外からの魔力供給も手段として考えといた方がいいのかな。

 予想してたけど、宇宙で活動するための装備が必要っと。僕、ワクワクしてきたよ」

 

「オタク趣味は自重しろ。

 頭の中にあるのは、無限の成層圏か?」

 

「何それ? 僕が思ったのは変形する戦闘機で、よく歌ってるアニメのなんだけど。

 これはあれだね。アルに頼んで漫画化案件だね」

 

「……しまった」

 

 インフィニットな話を知らないのか。

 漫画化すると言っても、私が知るのはアニメだけなんだが……

 

「あ、漫画以外でも大丈夫だよ。

 小説でもアニメでもゲームでも、やる時に意識した漫画家の絵柄で再現される超性能を発揮するから」

 

「その性能はあり得ないだろう」

 

「あるから問題なんだよねー。

 例えば少女漫画絵でぺしぺしやってる格闘ゲームの実況漫画を作ったりもできるけど、それが何の役に立つのかは気にしちゃダメだよ。再現率が微妙になったりする原因にもなるし。

 ストーリーとか演出が追加されるわけじゃないから、思った以上につまらなかったよ」

 

「絵柄以前の問題だろう、それは」

 

 だが、そこまで可能なのか……もはや何でもありだな。

 そういえば契約書の文面を漫画化したと言っていたから、これも予想しておくべきだったか?

 

「原作のアーティファクトだって、無茶苦茶だよ。

 少なくとも電脳空間にダイブするのとかに比べれば、ゲームの漫画化なんて現実的じゃないかな。そんな感じの絵を描く人に頼めばいいわけだし」

 

「……そうだな」

 

 あれは確か、コンピュータ的な攻撃が魚に見えていたな。それに比べれば、確かに小説やゲームの漫画化は普通か……恐ろしくお手軽という点を見なければ。

 絵柄やらをマネされた漫画家は堪ったものではない……いや、味方に引き込んでしまえば、お手軽コミカライズが可能なのか?

 

「あ、なんか悪いこと考えてるね。たぶん僕も考えたことだから、別にいいけどさ。

 次は僕の番、の前に1つ確かめておきたいんだけど。

 なんか、魔力増えてない?」

 

 なんだ、魔力の話か。

 これはあれだ。

 

「私が使っているわけでも、月の魔力が増えたわけでもないぞ。

 恐らくだが、眷属が増えた副作用だ。私を通して魔力を供給するからか、人数が増えると私を通る魔力が増えていくようだ。

 はっきり言えば、こんな構造にした上に眷属に頼り切った作戦を考えたお前達も悪い」

 

「えー? 一応、月からも供給できるはずだよ?」

 

「一番近い存在から供給されるのが基本だ。つまり、私が地球にいる限り、月より私の方が地球の眷属達に近く、何もしなければ私から供給される。当然の結果だろう?

 これを月に切り替えるには、常に意識して流れを制御する必要がある。それがどんな無茶か、お前でも想像できると思うが」

 

「う……やっぱりそうかぁ。その点は謝るよ。

 でも、そろそろ隠さないとまずいかなぁ。いくらこの辺は厨二病の興味対象じゃないといっても、遠くから感知されたらどうにもならないし」

 

「確かにな。だが、どうする?

 原作の大結界でもマネして、私を封印状態にでもするか?」

 

 現時点でも制御の手を抜いているわけじゃないんだ。

 これ以上増え続けたら、隠し通せないのは確実だ。

 

「それしかないかなぁ。せっかくのチートエヴァにゃんなのに……」

 

「それなら、眷属を増やすな、むしろ減らせとでも通達するか? それとも、今から私を改造するか?

 眷属達への魔力供給が理由である限り、根本的な対策はこれ以外にないぞ」

 

「だよねー。今から眷属の人たちに影響を出さずに魔力供給方法を改造するなんて無理だし……仕方ないかな。

 蟠桃の認識阻害と封印魔法を組み合わせて、何か考えてみるよ」

 

「それは任せた。私は世界樹に手を出さない方がいいだろうからな」

 

「うん。だから、まずは僕がやってみるよ。

 というわけで本題行くね。本格的なインテリジェントデバイスがようやくできたよっ!」

 

「……今まで、出来ていなかったのか?」

 

 精霊の知能強化とか、魔法の発動体とか、魔導具とか。基盤になりそうな技術は色々あったし、適当に情報を渡していたから、とっくにプロトタイプ程度はできていると思っていたんだが。

 

「厨二病に見付からないようにこっそりやってたし、他の事も色々やりながらだったからね。

 それにしても、ほとんどの人が扱えるのを目標にしたら、これが難しいのなんのって。ド素人からバグまでって感じで。

 必要な機能が違うし、少ない魔力でも稼働してバグ魔力でも壊れないのも難しかったんだ」

 

「ある程度はランク分けしても良かったんじゃないか?

 入門用とプロ仕様で違うものなど、いくらでもあるだろうに」

 

「そりゃあ、完全に同じものを使うのは無理があるのは分かってるよ。

 でも、少なくとも使用感は似た感じにしたかったし、プロでも苦手な分野は入門用並みのサポートが欲しい時があると思うんだ。

 重要だけど使う機会が少ない魔法だって無いわけじゃないし、某アンチョコ見ながら魔法を使う英雄サマだっているんだし」

 

「アレを何とかできるレベルになった、という事か?」

 

「うん。完璧とまではいかないし、かなり値段も高いけどね。

 修学旅行で、助けたこのちゃんに渡してスクナどーん! くらいはできるはず!」

 

 技術はないが魔力がある相手に渡して、いきなりスクナ級の相手を封印可能ということか?

 それはつまり。

 

「とある魔砲少女みたいに、か?」

 

 大きな魔力さえあれば、初期設定直後に砲撃を行う程度の事は可能だという事か。

 

「えぐざくとりー!

 ナギに渡して登校地獄をまともな形で使わせることもできるはず。

 魔法を知ったばかりのちうたんとかゆえきちに渡して、簡単な魔法を使わせることも大丈夫。

 普通の魔法使いだと、実力の底上げになる。

 仕様としては、完璧じゃないかな?」

 

「……で、値段は?」

 

「今の日本で売るなら、親藩譜代外様の全収入を数年分くらい欲しいかな?」

 

「おいおい……国が無くなるレベルなのか」

 

「外部に売るとしたら、だけどね。

 身内用にいくつか作るのは問題ないし、もっと研究が進めば、エヴァにゃんの愉快な眷属達が作れるようになるんじゃないかな。

 ストレージデバイスも、必要な技術はそこそこ揃ってるはずだし。売るならこっちだね」

 

「インテリジェントの方を先に作ったのか?」

 

 難易度やらを考えると、普通は逆だと思うが。

 知能の調整は、かなり手間がかかる……まさか、ここが高コストの理由か?

 

「単一機能の発動体や魔導具もどきとか試験用サンプルとかもストレージデバイスと呼んでいいなら、かなりの数を作ってるよ。

 出来てないのは実用性を考慮した設計と、高レベル精霊を使わずに魔力量の影響を抑えて効果を一定にする方法だから」

 

「自動制御に頼った構造なのか……

 だが、魔力量の影響はどうあがいても出るだろうに」

 

「単一機能で自動魔力充填式の魔導具だと、効果が一定なんだよねぇ。

 誰が使っても似た効果を得られるって点が既存の発動体との最大の差異、魔力があれば連続使用も可能って点が魔導具との差異。これがデバイスのウリになると思うんだ。

 現状でそれを実現可能なのがインテリジェントデバイスだった、って事だよ。

 これ以上は、まだまだ研究が必要ってことで」

 

 設定目標的な問題で、現状では高レベル精霊の知能調整が必須という事か。

 高練度な魔法使いが、相当な手間をかけて行う作業だ。製造コストの大半はこれだろうな。

 開発自体も相当かかっているし、広く売る気も技術を広める気も無い。そんな代物の元を取ろうとすれば高くなるのは、当然だな。

 

「だが、眷属連中の3世代目くらいまでは、発動体すら使わずに魔法を行使可能だぞ。

 デバイスが必要になる状況があるのか?」

 

「今はいらないと思うよ。けど、将来的には役に立つんじゃないかな?

 ちなみに、アルが守護騎士システムもどきを作ろうと色々やってるみたいだから」

 

「人形遊びでもしたいのか?

 いや、幼女誘拐犯になるよりはマシか……?」

 

「いやいや、一応戦力やサポート要員としてだからね?

 ……きっと」




デバイスの扱いは初期プロット通り。
ストレージデバイス≒アプリかなと思っちゃったりもしたけれど、UQが始まる前のプロット時点でこんな扱いデスヨ。

支配領域を「北海道、樺太、千島列島」で止めたのは、陸続きだと線引き(遊牧民やらとのあれこれ)が面倒だからです。
決して未来の恐ロシアを警戒したわけじゃないです。

あと、大阪(堺)は史実に近い形で発展します。
麻帆良には海が無いので、海運を牛耳るには向かないのですよ。




没ネタ

アル:ふふふ、やはり天使の様な翼にはキトンが似合いましたね。

ヴァン:それには同意するけど、この辺だと目立つよねー。

エヴァ:背中の穴は翼の関係で仕方ないと思ってやるが、下劣な視線は許さんぞ。

アル:ええ、骨身に沁みましたよ。

エヴァ:あと、あの派手な靴下は何だ? 明らかに時代やらを間違えているだろうに。

アル:ああ、アンチ=オード・ソックスですか。常に体の浄化を行う魔導具ですよ。

エヴァ:……効果だけ聞けば便利そうだが、何故靴下なんだ?

アル:女性は冷え性が多いという先入観ですよ。
   もう少し良い素材があれば、もっと長いものを作りたいのですが。

エヴァ:アレでも今ならオーパーツだと思うが。その次に作るのはミニスカか?

アル:いえいえ、その前に下着ですよ。

エヴァ:その心は?

アル:奥にちらりと見える白が良いの……はっ!?

エヴァ:死ね!

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