「随分と厄介な手法を使っているな……」
ナギ達が魔法世界に帰って行って、数日。
私達は、アスナに施された術式、年齢やら精神やらを固定する魔法等を調査していた。
同意の上でちょっと眠ってもらって、色々やってみたんだが……得られた結果はまあ、えげつないというか、さもありなんというか。
「不老化の部分が、エヴァにゃんの吸血鬼化と似てるんだよねー。
存在を精神優位にした上で、操作する肉体の形状を固定する。当時の厨二病の癖もあるし、厨二病が噛んでたのは間違いないかな」
「お前は関与していないんだな?」
「うん。してたら、いたっていう情報くらいは渡してるし。
たぶん、僕を封印する墓の出入りの時に、何かやってたんだろうなぁ。資料を渡しただけかもしれないけどさ」
「それにしても、これの解除は……正攻法では無理、だな」
存在自体が改変されているし、アスナを完全に戻すことが可能なら、私を人間に戻す事もできそうだな。方法が全く思い付かんが。
魂と肉体が完全に分離しているわけではないから、限定的な効果でいいなら手が無いわけではないが……
「記憶封印をして人格の分離を誘発、肉体との関連性を薄めた上で年齢固定術式に介入すれば……
うん、今の魔法使いでも体は成長させられるね。手法的に問題ありまくりだけど」
「他の方法は大掛りすぎて、現実性に乏しいのも問題か。
それでも、アスナを隠すには有効な手段ではあるな。年齢固定の術式に自信があるほど成長したアスナを見付けるのは困難だろうし、性格が変わる事も発覚が遅れる理由になるかもしれん」
「後になって魔法に関わらせたりするのは謎だけどねー」
「その辺は考えても無駄だろう。元老院が後先考えなくなってきたとか、そもそも隠し切れなくなってきたとか、そういう事なんだとでも思っておけばいいさ。
だがまあ、これ以上調べても、アスナの負担になるだけだろう。
全て話した上で、どうするか選ばせるべきか……?」
「精神面が成長してなさそうだから、判断力に問題がありそうだけどねー」
「だからと言って、勝手に決めるのもどうなんだろうな。
私達から見た場合、不老だろうが異質ではないし……」
「価値観の問題って、大きいよねぇ……」
眠るアスナを見ながら2人でため息をつく絵面はどうかと思うが、それ以上の問題は、私達が一般人の感覚を忘れている事か。
幸せとは、何だったかな……?
◇◆◇ ◇◆◇
結局アスナについては、解析と教育を行いながらの現状維持という事になった。
精神面の現状に問題がある上に、周囲に不老者が多いからか
「だめ?」
「いや、駄目というわけではない。
それでも、問題なく体が成長できるようになる可能性はあまり高くないぞ。その為に記憶を封印するという手法は気に入らんが」
「気に入らないなら、しなくていい。
仲間も、ちゃんといる」
「やるなら、いい思い出が少ない今のうちだとも思うぞ?」
最大の理由はどうも、私がアスナに懐かれたからのように思えてならない。
ヴァンには、同類(幼女固定的な意味で)と思われたせいかもとか言われた。ナギへの態度やらで最初の印象は良くなかったハズだし、他にロリBBAがいないわけでもないんだが……他の連中の顔を見る機会が少ないのが問題なのか?
だが、ノア達の担当は当番制になっているし、アスナの為に担当を変えるのは問題になるか。未だに競争が激しいらしいしな。
「大丈夫。何人かに相談して、新しい名前も決まった」
「もう決めたのか。
誰に相談したのかは怖くもあるが……」
「ゼロさん、雪花さん、スクナさん、甚兵衛さん」
「……まあ、ネタに走る相手ではないか。
だが、由来やらには拘りそうだな」
「うん。新しい人生をゼロから始めるから、でもゼロさんがいるから、日本語でレイにした」
「…………ヴァンは?」
「さっき会って話したら、苗字は綾波しかないって力説してた」
「いや、それは却下するぞ」
後でエヴァ繋がりだのキャラの類似性がどうだのと言われる可能性を考えると頭が痛いが、ネタやふざけた要素が名付け時点では無いようだし、本人が納得しているなら名前自体に文句を言うべきではないか……。
そんな感じで思わぬ天然のネタ振りに困惑したりしながらも、私達はまったりしている。
だが、魔法関連の連中の動きは、かなり慌ただしい。原因の1つは、当然ながらレイ……とはバレていないようだから、黄昏の姫御子と言うべきか。
姫御子を探すためと思われる連中がウェスペルタティアだけでなく、メガロからも地球に送り込まれている。しかもメガロからの連中は、権力やらを傘に協力を強要しているらしい。
おかげで、情報がザルのように洩れる洩れる。
「黄昏の姫御子が行方不明という情報は、魔法世界では一般人にまで広まっています。
メガロは姫御子を確保する事で、ウェスペルタティアへの圧力を強める思惑があるのは間違いありません。動員可能な人員の質や量、地球の関係組織の数を考えると、先に見つけられるという自信があるのでしょう」
雪花が広げ、ヴァンが見ているのは、地球の地図。
そこに数色の駒を並べて、今回は各勢力の状況を表現している。
「連中が捜索しているのは、南米とヨーロッパ辺りが中心か。
出入りしたゲートの近くから、というのは分かりやすいが……」
「メガロメセンブリアは、アルビレオが偽装した目撃情報を追っているように見えますし、連れたまま魔法世界に戻ったように見せていたので、魔法世界での捜索も活発です。
しかし、ウェスペルタティアは日本にもそれなりに人を送り込んでいますし、メガロメセンブリアからも少数ですが侵入が確認されています。
ヴァンがここに居ることは造物主に知られていますから、ウェスペルタティアが私達を警戒するのは理解できるのですが」
「王族の誘拐である以上、アレが入れ知恵するのは必然だからな。
問題は、メガロか。怪しげな連中が暗躍しているのか、情報が洩れているのか、他の場所も探してみようという消極的な理由なのか……」
「完全なる世界的な組織が裏でメガロを動かしてる、って可能性が一番高いよねー?」
「そのような組織は見付けられていないが、残念ながら、そうだな。
それにしても、組織名と引き籠り用世界の名前が同じというのは、どうも紛らわしいな」
「混同を狙ってるのかもしれないし、部外者にバレにくくする工夫かもしれないけどねー。
この際だから、組織の方は幼女誘拐犯とでも呼んどく?」
「現状では、紅き翼を指す言葉になるぞ。
しかし、どうやって裏を探るべきか……日本に来ているメガロの連中が、戦争推進派かどうかは分かるか?」
「断定できるだけの情報は、現時点ではありません。
所属派閥がはっきりしている者はいますが、フリーの傭兵もいるようですので、依頼経路の調査は困難と思われます」
「そうか」
指示系統と本人の思想がかみ合っていない可能性もあるし、調査する意味は薄いか。
手間とリスクが大きいだけで、実入りは少なそうだ。
「知りたいなら、何人か捕まえてくればいいんじゃない?
エヴァにゃんなら、血を吸えば知識を見れるわけだしさー」
「……ああ、そんな設定もあったな」
「設定って言っちゃう!? 設定じゃなくて、本当に仕込んであるんだよっ!!」
いや、知識の吸収を意図的にやったことは無いし、好き好んで血を飲む気も無いんだ。
いくら吸血鬼相当の能力持ちでも、吸血鬼としてその能力を使うのは……
「……人としてのなけなしの意識も捨てろ、と言いたいんだな?」
「あ……えーと、うん。やっぱり無しで。
色々とままならないねー」
「現状でも、かなり人から外れてる自覚があるからな。
これ以上踏み外せば、ずるずると堕ちてしまいそうだ」
「イシュトさんなどは、エヴァ様の為なら地獄の底までと言って憚りませんし。
道連れは多いですよ」
「だからこそ、堕ちるわけにいかないんだ」
そうなってしまったら、私のせいで世界が滅びる事になりそうじゃないか。
◇◆◇ ◇◆◇
ナギ達が魔法世界に戻り、姫御子絡みで無駄に手出しをしてくるメガロやウェスペルタティアの連中や、無駄な戦争をしている阿呆共を薙ぎ払いながら旅を続けているある日。
山の中で針葉樹の森の中なのに芝のような行動の邪魔にならない草しか生えてない、実にご都合主義的な場所で。
筋肉さんに、出会った。
「……と、変態からの報告が来ていたわけだが。
ラカンで間違いないな?」
「はい。監視部隊も、戦争の鎮圧に協力するようヘラスに依頼されたジャック・ラカンが、襲撃騒ぎを起こした後に紅き翼に合流した事を確認しています。
特定の陣営に肩入れせず、復旧にも手を貸している事が好評価に繋がっていますから、非公式ながら皇帝からの依頼に繋げられたようです」
今は私と、報告書の束を持ってきて、そのまま整理に参加している雪花しかいない。
ヴァンやゼロはやりたい事があるとかで、参加率が下がっている……が、事前に仕入れている関連情報が明らかに増えているから、恐らくはそういう事なのだろう。
……別に、報告に関する情報まで事前に調査しておく必要は無いんだがな。
「いくら皇帝の一族と親しいといっても、そこまで口を出せるのか……」
「今回は皇帝から情報収集の依頼があったため、偽りのない報告を行った上で、個人的に提案しただけだそうです。
積極的な介入はしていないとは言えるでしょう」
「積極的に介入する必要がなかったからしなかっただけ、じゃないのか?
結果的に問題が無いから、それでいいんだが」
「そうですね。
なお、ラカンとの戦闘ではデバイスが猛威を振るい、1時間ほどでラカンが降参したとのことです。
ナギはデバイスを絶賛していますが、ゼクトは技術の鍛練にならない点や、魔法行使の難易度低下が魔法使いの質の低下に繋がる可能性を危惧しているようです」
「その可能性は確かにあるが、倫理観の育成や教育の問題も絡むからな。現状の魔法使いの質も褒められたものではないし、銃を持つ人間の質だって同じだ。
人類に付き纏う、永遠の問題だろう」
「そうですね。
その後の経過を見る限り、ラカンとナギの仲は良好です。侵略者鎮圧の際の余波による被害は大きくなっていますが、戦闘時間の短縮や再侵攻がかなり少なくなっている事から、総合的に見れば損害の低減になっているようですね」
「再侵攻が減ったのは、ラカンに関係するのか?」
「はい。侵攻軍の被害がとても大きくなって許容範囲を超えるという事もありますが、再侵攻開始直後に容赦なく軍を殲滅したという実績から、目を付けられたら危険だという噂が広まっている事も理由にあります」
「その噂を広めたのは……まあいい、住人やらの感情は?」
「心配されるほど悪くありません。
圧倒的な力を見せつけている事と、戦闘を短時間で終結させている事が、感情の悪化を防いでいるようです。英雄として祭り上げられる要素としては、十分でしょう」
「見える被害は、終わりの見えない戦争よりもマシか。
……メガロやらの追跡は、どうなっている?」
「姫御子を連れていない事は確実ですし、実力でどうこう出来る相手ではない事を思い知ったためか、遠巻きに監視する程度になっています。
趣旨も敵対的かつ危険な戦闘力を持つ人物の動向を把握する事に変わっているようですから、当面は安定する可能性が高かったでしょう」
……高かった?
「ちょっと待て。どうして過去形なんだ」
「調査員として派遣されていたガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグがアルビレオと接触し、結果的に紅き翼に寝返りました」
「また変態かっ!?」
「アルビレオが渡した情報は、メガロメセンブリアの元老院による非人道的な手下の確保手法と、それに使われていた孤児院の実態です。
ガトウが調査する過程でとある孤児院の経営責任者が変わり、そこにいた高畑・T・タカミチを含む10名ほどの少年少女がガトウを師と仰ぎ始めたそうです」
「変態自重しろっ!!」
原作の再現という意味では正しいのかもしれんが、勝手に何をしでかしているんだ!?
「念のため補足しますと、アルビレオ自体は件の孤児院やそこの子供達に関わっていません。
この点は、ダイアナ達……ヨーロッパ方面の眷属で構成された監視部隊も確認しています」
「そういうところだけは自重しているのか」
原作のフェイトのような、孤児ハーレムを目指しているわけでは……ん?
「そこ以外の子供達には、何かやっているという事か?」
「孤児院の調査や若干の支援をしているようですが、直接的な関わりは特に無いようです。
神出鬼没なアルビレオの行動ですから絶対とは言い難いですが、最近スーパーステルスと呼ばれるようになっているさよさんの報告ですので、信憑性は高いでしょう」
「最近さよの顔を見ないと思ったら、変態を追っているのか」
「はい。
本気で隠れた場合は、アルビレオにも見付からないと言っていました」
「そうか……さよについては、自信を持てる力を得たのはいいことだと思っておこう。
それにしても、変態は今のところ証拠無しで無罪という事だな。だが、普段がアレだし、ナギ達の状況を追うついでに、変態の監視も続行で頼むと伝えておいてくれ」
「承知いたしました」
それにしても、高二病関係者を警戒すべき状況のはずなのに、どうして身内や原作主要キャラの方を注意する必要があるんだ?
いや、元凶は概ね変態か……早々に姫御子を確保できたのはいいが、もっと根本的な部分も何とかしてほしいものだ。
2016/07/01 当時厨二病→当時の厨二病 に修正
2016/07/19 ずれてる自覚が→外れてる自覚が に修正
2017/05/15 念のため捕捉→念のため補足 に修正