金色の娘は影の中で   作:deckstick

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原作の足音編第02話 産まれる先生

 アリカが、妊娠した。

 ナギと結婚しているのだし、国民から望まれた王子(男の子だと判明済み)だし、普通に考えれば何の問題もないし、表向きとしてはめでたい出来事なのだが。

 地球の裏に関わる者としては、色々と面倒というか、厄介な問題に悩まされるわけで。

 

「ウェールズの村にナギと子供と護衛達が住む、か。

 そっちに話を持って行ったとなると、アリカの王制廃止は本気なんだな」

 

「はい、その点は使者からだけでなく、いくつものルートで確認しております。

 いずれ元と付くのでしょうが、我々としては現在の王家との繋がりを持てるのですし、住むこと自体を問題視するつもりはありません。

 ですが、どの程度手助けをすればよいものか、判断をしかねております」

 

 通話の相手は、久しぶりな気がするマシュー。

 アリカとナギの子、要するにネギ(仮)だが、両親の予定通りナギと共に地球に移動し、一般人に近い扱いで育てられる方針になるらしい。

 その為の準備として、ウェスペルタティア王国からの使者が、イギリスの裏社会に強い影響力を持つマクダウェル家を訪れた。

 

「イギリスの王室には伝えたのか?

 今後を考えると確実に国と国の対話になるし、歴史という意味ではあっちの方が長いから女王辺りを巻き込まないと格で負けるぞ」

 

「あれに格で対等になれるのは、恐らく日本の皇室くらいでございますな。

 そもそも、王配が出身地に戻り王子を育てるという事態そのものが異常ですので、女王が対応せずとも問題にはならないかと。

 念のため話は通しておりますが、ほぼこちらに丸投げされていると言って良いでしょう」

 

「となると……監視を兼ねた警備を出す程度が無難だろうな。物流は通常の魔法使いの村と同程度を維持して、教育やらに関しては要請が無い限り干渉しない。

 当初考えていたプランそのままだが」

 

「手抜き、もしくは忌避されていると感じられる可能性がございます。

 当人にそのつもりはないのでしょうが、賓客として扱うべき身分を持っている以上、粗末な対応は国の名誉に関わりますので」

 

「そっちの心配か……ナギ自身は問題ないと言っても、周囲が煩そうだな。

 それでも最終的な判断は連中に任せる方がいいだろう。警備か物流の担当なりを通して情報を渡しつつ、相談に乗るのが無難か。魔法学校やらは村になかったはずだし、村だけで完結できるほどの規模も無いと聞いている。

 その辺を説明して、どういう情報が欲しいのかも合わせて早めに相談を始めておけば、忌避しているとは思われないんじゃないか?」

 

「やはり、そうなりますか。

 いやはや、名誉にうるさい連中を黙らせるのに苦労しそうです」

 

「それこそ、ナギの一声があれば黙るだろう。

 追加で、相手が求めないことをして悦に浸る事がお前達の名誉なのか、とでも言ってやればいいさ」

 

「確実に逆撫でしますな」

 

「別に潰してしまっても構わんぞ?」

 

 家柄やら血筋やらしか誇れるものが無い連中ほど、煩いものだしな。

 未来を見る目が無いなら、潰れる時期が少し変わるくらいで大きな違いにならないだろう。

 

 

 ◇◆◇ ◇◆◇

 

 

 そんなこんながありつつも、手続きや事前準備は進み。

 ウェールズの田舎の村に、ナギとネギ、護衛の連中(一応退役騎士が中心で、不自然に若者が溢れる状況にはなっていない)、それに乳母が住み着いた。

 

「……それで、だ。

 原作主人公サマは打ち合わせ通りなんだが、お前と変態は何をしていた?」

 

 今までも、気付くと数年単位で顔を見ない事がある2人だったが。

 このタイミングで姿を消していたのは、不気味で仕方がない。

 

「色々調査とかをね。

 そういえばエロオコジョ関係を調べてなかったなーとか思ってさ」

 

「ああ、エロガモか。

 何か判明したのか?」

 

「仮契約の儀式成立でお金が貰えるってなんでかなーと思って調べてみたら。

 なんと、高二病がだいぶ昔に作った組織が、今でも細々と活動しているみたいだよ」

 

「また高二病なのか……というか、どうしてそんな組織を?」

 

「どうもオコジョが使う仮契約の術式に仕込みがあってさ。

 魔法世界限定で従者に魔力供給すると、一部が高二病謹製の設備に流れるらしいよ?」

 

「……それは初耳だな。

 それだと、オコジョは相当な害悪という事になるが」

 

「元々がアーティファクトシステムの維持用に魔力を徴収してるみたいだし、その一部を流用してるだけだから、消費と効果はほとんど変わらないんだよね。

 当初は本契約や仮契約を普及させるために作った組織で、手下にオコジョ妖精を使うための給料を捻出するための措置らしいから、少なくとも当時は意味があったんじゃないかな? 魔道具やらを使って契約するのは費用や手間が大きいから、お手軽な手段だってのは確かだし」

 

「つまり、あれか。

 契約術式とアーティファクトも、厨二病カッコ当時の成果物という事か」

 

 確かに、アーティファクトなんてまさに厨二病患者が喜びそうな代物だが。

 魔法世界の創造といい、やる事がいちいち大きいのは……腐っても造物主と呼ばれるほどの実力者だからだな。

 

「みたいだね。

 魔法世界を作った頃の話らしいし、詳しいことは僕もアルも知らないんだけどさ」

 

「ただ……わざわざ普及のために組織を作ったという点には、違和感があるな。

 バリバリの厨二病が、そんな面倒なことを本当にしたのか?」

 

「その辺はだいぶ前にアルが聞いてたらしいんだけど、アマテルがどうのとか言ってたんだってさ。

 ウェスペルタティアの建国にも関わってる人だし、組織化はその人がやったんじゃないかなー」

 

「アマテルは、初代女王だったか?

 確かに組織化する能力はあるのだろうし、創造主の娘とかいう肩書的に造物主の関係者である可能性は高いのか」

 

「この辺はきちんと確認したわけじゃないから、確定はできないけどね。

 あと、フランスにあるオコジョ妖精の集落で、カモミール姓がある事は確認したよ。アルベールって名前のは見付けられなかったけどね」

 

 ……見付けていないだけなのか、まだ生まれていないのか。

 現れてからでも対処可能だろうし、その気なら下着泥棒で捕まった時や脱走時に処理してしまう事も可能だろうから、現時点ではどうでもいいのかもしれんが。

 

「そうか。

 その他だと……ネカネやアーニャはいたのか?」

 

「うん、一応いたよ。アーニャは護衛騎士の孫娘、ネカネは保母の血縁者みたいだね。

 ネカネはスプリングフィールド姓じゃないし、タカミチも護衛にいたけど」

 

「おや、ネカネはナギの家系じゃないのか」

 

「ウェスペルタティアの、公爵家の分家の娘だってさ。ちょっと遠いけどアリカの血縁だね。目元に王家の人達と同じ特徴があったりするし、僕としては納得できるよ。

 原作はナギの血縁に偽装してたんじゃない?」

 

「確かにナギよりも明日菜とアリカを混ぜた感じに近い気もするし、そういう事もあるか。

 タカミチは麻帆良に来ないと思っていたが、そっちに行くのか。強さ的にはどうなんだ?」

 

「んー、ものすごく強い、って程ではないかな。

 咸卦法とか居合い拳は一応使えるみたいだけど、まだまだ未完成で発展途上みたいだし。肉体年齢を代償にする魔法球での修業をしてない分、原作より若々しいけど弱い感じ?」

 

「いや、まだ10年ほどあるんだから、あそこまでオッサンになっていない時期だと思うぞ。

 だがまあ、問題になるような兆候は無いな。ウェスペルタティア関係というか、ネギ関係はとりあえずこれで安定か?」

 

「うん、そうだね。

 一応メガロの監視は強化してるみたいだし、仮に妙な事をしてもナギ達がいるからねー。

 原作は着実にブレイクしてるよ」

 

「……私がこうなっている時点で、原作通りにいくわけがないだろうが」

 

 そもそも私が呪われていないし学生になる事もあり得ない以上、仮にネギが来ても吸血騒動やらが発生しない事は確実だ。

 ネギが麻帆良に来る確率は……割とあるな。通うことになる魔法学校はイギリスにあるから、マシュー達の影響力が強いだろうし。

 

「それでも、原作の生徒の情報はちょっとずつ増えてるんだよね。

 今回来たザジはポヨポヨ言ってる方だったけど、計画の実行前には妹も呼ぶって言ってたし。

 幼女なマナたんは涙目だったけど」

 

「あれは魔眼で私の魔力を見たせいだからな?」

 

 

 ◇◆◇ ◇◆◇

 

 

 ネギがウェールズに来て、数年。

 私達は必要な準備を進めつつ、色々と楽しむ余裕があった。

 例えば、Pray Stariker(初代)などが発売され、懐かしいと言いながらヴァン達と遊んだり。

 

「あははははは、ナニこの顔!」

 

「今の技術だと、これでも頑張っていると思うが」

 

「でもさでもさ、男か女かも怪しいよこれ! 胸が文字通り胸部装甲みたいだし!

 さっきのゲームの方がまだましだよ、アニメのなりそこないっぽい上に動きが変だけど!」

 

「……頑張っているんだぞ、これでも」

 

 原作の生徒達、具体的には雪広あやか等が小学校に入学したり。

 

「いいんちょは、やっぱりいいんちょだったねー」

 

「ある意味で原作通りだろう。

 木乃香が来たのは予定通りだが、雪凪は……まあ、この世界通りの予定通りだから、いいのか」

 

「護身のための神鳴流、しかも師匠が青山鶴子って、贅沢だよねー。

 なんだか雪花っちーに憧れてるみたいだしさー」

 

「何だそのモフモフ雪男みたいな呼び名は。

 まあ、これも修正力的な何かだとして、だ。

 千雨はどうする気だ?」

 

「見付けちゃったんだよねぇ……親の転勤で入学直前に来たみたいなんだけどさ。

 原作みたいに過剰な認識阻害はしてないから別に嘘つきとか言われる理由がないし、そもそも原作とおんなじ体質なのかも確認できてないんだよねー」

 

「このままだと、ネットアイドルちうの誕生が危ぶまれる、と」

 

「そうなんだけど、精神的に追い詰める気は無いし、なんか桜子大明神と仲良くなってるしさー。

 このままだと、チアのアイドルちうたんになりかねない……けど、それもいいかなーとか思ってる僕がいるよ」

 

「チアの衣装的にか?」

 

「ミニスカ開脚脇見せへそ出しなんて普通だからねー。健康的なエロスってやつ?」

 

「小娘に欲情するな、変態」

 

 通信設備の発達と需要が合わさって深夜の定額制通信サービスが開始され、初期のパソコン通信の活況を目の当たりにしたり。

 

「なんていうか、妙な活気があるよね?」

 

「今参加してる連中は新しい物好きや技術オタクが中心だし、そういう連中が積極的に動く黎明期は面白いことが多いぞ? 何より、ドキドキ感が違う。

 その後は……まあ、あれだな。マンネリ化したり迷走したりする事も多いし、消費しかしない偉そうな連中が増えてからも勢いや質を維持できるものが少ないともいうが」

 

「あー、それはあるかもねー。

 評論家気取りが好き勝手言って、活動してた人のやる気がなくなっちゃうとかさー」

 

「それでも新しく入ってくる人が多いなら、何とかなるのかもしれんがな」

 

 神鳴流の剣士である葛葉刀子が、西洋系の魔術師と結婚して麻帆良に来たり。

 

「来ること自体は問題ないけど、結婚相手が鷹司の分家だったのは予想外だったかな?」

 

「本家じゃない分身軽だったから幕田の摂家関係者として京都に行くことも多かったし、接点がわかりやすくていいんじゃないか?

 互いの立場的にもメリットがあるだろう。修正力に負けて離婚しなければ、だが」

 

「その辺はちょっとつついておいた方がいいかなぁ。

 政治的な理由でってパターンもあり得るんだけどさ」

 

「子供を作りたい家柄と剣士でいたい刀子の意見の衝突、辺りがありがちではあるかな。

 その場合はどっちの味方もし辛いし、幕田公国としては働く女性を応援すると同時に子育ての支援を充実させる方向で制度やらを充実させている。

 それ以上は夫婦で解決する問題と割り切るしかないだろう」

 

「忍者な人たちも、妊娠中と出産直後くらいは訓練を控えるしねー。

 その辺を参考に教えとけばいいかな?」

 

「但しやらないとは言っていない、だろう?」

 

「もちろん」

 

 雪広家の弟が、トラブルはあったものの無事に生まれたり。

 

「いやー、病院を多めに作ったり、お金持ち用の高級医療施設を許可したりした甲斐はあったね。

 出産で危なくなる人がかなり多い日だったみたいだよ」

 

「但し、間に合わなくて死産になった件があるようだ。

 雪広の弟が無事だった代わりに知らない誰かが犠牲になった、と考えていいのか?」

 

「言い方は悪いけど、そういう事になるのかな。

 健康保険の補助がガツンと減る上に絶対的な金額も上がって一般人が使いにくい分、僕たちには便利だよねー」

 

「金持ちの傲慢とも言われている制度だがな」

 

「お金がある人も保険料は払ってるんだし、優遇だけじゃない制度なんだけどなぁ。

 そもそも、この制度が無くっても、有名人とかの御用達になる病院って、色々便宜を図るわけじゃない。それを制度として認めた上で、メリットとデメリットを明確にしただけだよ?」

 

「世の中には、知らない方が幸せという事柄もあるんだぞ」




この話の原作は「魔法先生ネギま!」であり、赤松先生の他の作品からはキャラクターがゲストとして登場するに留まります。「初めに」で「人物が登場する可能性があります」としているのはそういう事です。
というわけで、造物主等の設定とかがUQと違っていても独自設定ということで気にしないでください。UQが始まる前のプロットですし、厨二病設定にしておいて何を今更という話ではありますが。彼女ってなんだよー。思いっきり男で設定やら作ってたじゃんかよー(話にものすごく影響するとは言っていない)。絶望ってそういう意味かよー。思った以上に厨二病ぽいじゃんかよー。


Pray Starikerは、いわゆるプレステですね。この名前は青の~の小話ズ その4でも使っています。
本格的な3D(ポリゴン)がゲームで使われ始めた時期ですが、車や機械はともかく、人をポリゴンで表現したものは、今見ると……ねぇ。当時としては凄かったのは理解できますが。
「バーチャファイター1」で画像検索しちゃだめだぞ、ゲーム機が違うからな! 「闘神伝」は可。


今回の投稿に間に合ったから艦これのイベントで投稿できなかったと言われる問題は回避した。
これで次は遅れても問題ないな! ……相変わらず会社にいる時間が長いのですよ。
なお、前話後書きの「後半の難所」は、もろもろの都合により次話に回されました。
難所に到達する前に、思ったよりもいろんな出来事が……

ちなみに艦これの夏イベントは、燃料が3桁になったり、天津風(紅き翼編第01話の後書き参照)や海外空母重巡などの捜索に失敗したりもしましたが、結果としては満足です。乙乙丙丙とはいえ初めてのイベント突破ですし、予想を遥かに超える新艦娘が来てくれました。
その分、今度は保有枠がピンチ。また母港拡張しなきゃ。


2016/09/10 以下を修正
 家柄やらしか→家柄やら血筋やらしか
 エロカモ→エロガモ
2017/03/22 制度なんだけなぁ→制度なんだけどなぁ に修正
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