金色の娘は影の中で   作:deckstick

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原作の足音編第04話 現状認識

 それからしばらくは、親睦的な意味を含む雑談が続く。

 当然だが、お互いの情報提供や情報収集でもあり、現状認識を摺り合わせる作業でもある。

 そうした事の結果としては、やはり。

 

「やはり、ネギは早めに麻帆良へ行かせるべきじゃな」

 

「だな。物語から無暗に離れるより、利用できるもんは利用した方が良さそうだ」

 

「メルディアナの魔法学校であれば、卒業後の試験内容に手を加えることができるでしょう。流れ的にも、これが最も適しているのではないでしょうか。

 もちろん、教師などという無理のある立場ではなく、穏当な名目にすべきでしょうが」

 

 ネギの将来、という現実的な問題に目が向くのは当然か。

 アリカやナギにとっては家族であり、マシューから見れば未来に大きな影響力を持つ可能性のある人物なのだから。

 

「いやまあ、それはそうなんだが。

 ただ物語がそうなっているからという理由だけなら、無理に従う理由もないんだぞ?」

 

「え? ボクはどちらかと言えば、行きたいですけど。まだ前世の意識に引っ張られている部分もあるので、日本が恋しい時もありますし。

 原作の問題はありますけど、吸血鬼騒動なんて起きないですよね?」

 

「それはまあ、血を狙う理由が全くないのは事実だが。

 アリカはそれでいいのか?」

 

「うむ。王家の廃止計画を考えても、ある程度ネギが成長した後の居場所が確保できるのは良い事じゃ。

 その上、我が子ながら信じられぬほどの魔力を持っておる。魔力バカのナギも付ける事が出来るから、例の計画への協力という建前で反対意見を抑えられよう。

 全く問題が無いと言ってよいぞ」

 

「いや、親子の……と言うくらいなら、こっちで育てるなんて事はしないな。

 ナギはいいのか?」

 

「別に今と変わらねーって理由もあるんだけどよ。

 原作ってのを考えると、オスティアと麻帆良を繋ぐゲートがあんだろ? むしろアリカと会うのがここよりも楽になるんじゃねぇか?」

 

 おぅふ。こういうところだけ鋭いのは、やはり腐っても英雄か。

 

「そのゲートだが、少なくとも今は稼働していないぞ。

 あれだけ地球と魔法世界を行き来していた造物主が、一度も使わなかった代物だ。何らかの問題を抱えていても不思議ではないのだが……」

 

 ……以前は世界樹の魔力が邪魔で小規模な起動では安定しなかったのが、最大の欠陥なのだろうな。大規模な転移魔法を発動すると、余計なものまで色々と付いてくるだろうし。

 私達が世界樹の魔力を回収してダイオラマ魔法球で利用している現状だと、他のゲートと同規模での転移が可能というのも、更に残念さを割り増しにしている気がする。

 

「ってことは、ここよりは面倒になんのか……

 麻帆良の近くのゲートって、知らねぇんだよなぁ」

 

「直線距離だけなら、中国のものが一番近いはずだ。地球側も魔法世界側も利便性は悪いがな。

 転移でどうにかできるならともかく、そうでないなら他のゲートを使った方が便利だろう」

 

「やっぱそうか。ま、それくらいは構わねぇか。

 ところでよ、この際だからはっきり聞いておきたいんだが……あんたの立場って、どうなってんだ?」

 

「私のか?」

 

「いや、麻帆良っつーか幕田公国の重鎮なのは確実で、マシューはイギリス裏社会の重鎮っぽい立場だって聞いてるけど明らかに臣下の態度だぜ? んで、闇の福音ときたもんだ。

 いったいどんな立場なのか、はっきり聞いとかねーと」

 

「おお、そうじゃな。

 さっきは闇の福音だという事に驚いて、内容までは聞いておらなんだからの」

 

 ……思い出されたか。

 だが、正式な立場という意味だと……

 

「私自身は、大した地位や権力は持っていないぞ?

 幕田公国に対しても君主の家系の始祖というだけで、ご意見番的な立場でしかないからな。

 闇の福音の逸話に出てくるような連中でコミュニティ的な緩い互助組織を作っていて、マシューもその一員だな。そして私がその取り纏め役というか、創始者兼筆頭的な立場にいる。

 いずれにせよ、私が支配しているわけではない。マシューは力が無く味方もほとんどいなかった頃に執事として私を支えてくれていて、その時からずっとこんな態度だ」

 

「……本当かの?」

 

「明文化された法や規則に限れば、という条件ではありますが」

 

 ちょっと待て。いかにも疑ってますという目のアリカも、やれやれとため息をつかんばかりのマシューも、おかしいだろう。

 間違った事は言っていないぞ。

 ……たぶん。

 

「つまりあれか。実態は違うってことだよな?」

 

「ええ。

 幕田公国での立場ですが、実質的に影の支配者という表現で差し支えないかと」

 

「いや、別にあれこれやっているわけではないぞ」

 

「口を出さないから支配していない、という訳ではございません。

 君主に提出される機密書類の写しが届けられる時点で支配者の一員であると、いい加減ご理解ください。

 そもそも幕田公国にある人外の里、通称“楽園”と呼ばれる場所は、事実上エヴァ様個人が保有し支配する国と言ってよいのです。通常は幕田の法が通用すると言っても、エヴァ様の指示が優先される以上は幕田の一部とは言い難いのです」

 

「魔法球の事か?

 あそこに指示したのは、表の法では対処できない、人外連中に関する事だけなんだが……」

 

「幕田にも人外を扱う部署がございますが、そこも手出しをしていないそうではありませんか。

 名目的に所属する国の機関を無視するやり取りで自治が成立しておりますから、エヴァ様が立法や司法の役目を担った実績があるという事でございます。当人や住人がそれを当たり前として受け入れている以上、エヴァ様が支配者であることは明白でございましょう」

 

「私がやったのは、せいぜい小競り合いを和解させたとか、その程度のはずなんだが……それも、幕田公国が成立する前の話だぞ」

 

「直接手を出したトラブルの沙汰としては、そうかもしれません。

 ですが、間接的なものや指示も含めればかなりの数になり、それらをまとめたものが実質的な法として機能し、根本では今もその体制が続いている事実を無視してはなりません」

 

「法は幕田のを取り入れているのだが……」

 

「その法に従う根拠が“エヴァ様の指示だから”というものだとしても、でございますか?

 エヴァ様の言葉が憲法より優先されているという現実から目を逸らしてはなりませぬ」

 

「……そんな理由だったのか?

 村長会で決を採って、幕田の法の受け入れを決めたと聞いた覚えはあるが」

 

「リズからは、エヴァ様の言葉が決め手になったと聞いております。

 当初は賛否両論で議論が紛糾し、エヴァ様が受け入れを希望していると伝えたとたんに全会一致での賛成となったそうでございます」

 

「うわぁ……」

 

 幕田の法で統一した方が楽だと言った覚えはあるし、その後は受け入れが決まったという報告を受けただけだ。

 細かい経緯やらは確かに聞いていないが……そんな事になっていたのか。

 

「我ら月の一族に関しても、認識が不足しております。確かに少人数のグループに分かれて各地の組織を運営しているため、一族としての明確な組織が無いという認識自体は間違いではございません。エヴァ様が上位者として強権を振るったことがないのも事実でございます。

 ですが、中心的な人物はエヴァ様に心酔する者ばかりでございます。エヴァ様が判断を口に出すだけで明確な指示がなくとも世界が動くことをご理解下さい」

 

「世界が動くなんて、そこまで大袈裟な……」

 

「御自身の影響力を、もう少し正しく認識すべきでございます。少なくとも軽々しく頭を下げる事は許されませんし、今回のようなJapanese DOGEZAなど本来は論外なのです。

 プライベートな場であり、個人的な付き合いと貸し借りのある相手であるからこそ問題とならなかったのでございます。この場に部外者がいた場合は別の大きな問題が発生したのは間違いございません」

 

「だが、今回の件はだな……」

 

「謝罪は必要でしょうが、DOGEZAまでは不要だと言っております。

 そもそも、我々が影響を与えられる範囲を、おおよそでも理解しておくべきでございます。

 支配下にある範囲ではなく、影響力を行使できる範囲を記した資料をご覧になった事はございませんか?」

 

「いや、無いが……影響力など何かあればすぐに変わるし、明確に線引きが可能なものでもないだろう。企業との取引関係や政治家とのパイプがあっても、内容によって使える使えないが変わるものだ」

 

「それでも行使できる可能性があるのであれば、全く可能性が無い場合よりも打てる手が増えるのです。

 その辺り、現役の女王陛下はどの様に考えられますかな?」

 

「ここで私の出番なのじゃな。

 そうじゃな、たとえ上辺だけの付き合いであろうが役に立つ者は大勢おるし、信用できる者であっても能力や性格的に役に立たぬ場合もあろう。そもそも、配下である事と協力的である事は同じではないからの。

 味方とそれ以外を分けすぎなのではないか、と思うのじゃ」

 

「それとアレだ、味方以外と会わなすぎなんじゃねーか?

 アルの野郎がヒキコモリって表現してたぜ」

 

 あの変態め、そんな事を言っていたのか。

 だがまあ、少なくとも本体は数百年ほど麻帆良を出ていないし、麻帆良での外出も護衛やらがうっとうしくて今のような分身もどきを使う事が……あれ? 本体が屋敷の外に出たのは建て替えの時くらい……というか本来の意味での本体は月だから、別に肉体的な本体だろうが分身もどきだろうが私という存在という意味では大きな違いは……と、とりあえずこれは後回しにしよう。

 味方とそれ以外……この場合は一族やその部下とそうでない者の区別という事でいいのか? 他の組織やその構成員ならそっちの都合で動くわけだからアテにしすぎるのはダメだろうし、状況にもよるだろうが部下とは扱いが違うのは当然だろう。

 ……別に、私は悪くないよな? 最近はともかく、最初のうちは味方なんてほとんどいなかったわけだし……

 

「やれやれ、これがリズの言う“ばかわいい”という状態ですか。

 自分の事になると途端にポンコツになる様子が最近ますますかわいくなったと、困った顔で喜んでおりましたが」

 

「ばっ……!?」

 

 ばかわいいだと!? 中身おっさん……たぶん根底はオッサンのままの私がか!?

 リズは……関係者達と一緒にいるか。何人か呼ぶ予定じゃないのもいるが。

 

「強制転移、そこの全員まとめて来いっ!」

 

 元々呼ぶ予定だったゼロとレイ(アスナ)。巻き込まれに近いイシュト、雪花、雪凪。

 リズと合わせて6人だが、会わせて問題になる者は含んでいないから大丈夫だろう。

 

「リズぅぅぅぅぅ! 私がばかわいいとはどういう事だ!?」

 

「え? そのままですよ。

 ご自分よりも人の事を優先しがちな点は変わっていませんが、そこに愛嬌が加わり微笑ましくて仕方がありません」

 

「だからといってかわいいとはなんだ!?

 私の中身は男なんだ!!」

 

「あら、“ば”の部分はいいのですね」

 

 

 ◇◆◇ ◇◆◇

 

 

「……アレは、良いのかの?」

 

 マシューから、ネギに関する事で地球の裏社会の重鎮が謝罪に来ると聞いておったのじゃが、あれが本当に重鎮なのかの?

 謝罪方法や話し合いの後の言い合いを見ておると、まるで身の丈以上の物を持ってしまった子供のようじゃ。ナギとネギが世話になっておるマシューから話と依頼を聞いておらねば、色々と疑わねばならぬところであったぞ。

 

「あの方にはそろそろ、御自身の立場を自覚して頂きたいのです。

 御協力感謝いたします」

 

「あの程度で良かったのかの?

 随分と根が深そうじゃが」

 

「これまで、幕田公国も含めて人の確保と育成ばかり行っていた弊害でしょう。

 それぞれの組織が動き出してからは口を出す事が少ないのも、上に立つ意識の無さによるものではないかと」

 

「それでも、意思決定はしておるはずじゃな」

 

「全体の大方針を決定しているのは間違いありません。

 ですが、通達の手段や指示の内容を考えますと、あの方が指導した相手に対するもの、それも提案レベルである場合がほとんどですからな。

 基本的にその先にある組織に対するものでないため、それらをどう動かすかは全面的に任せているとも言えるのですが」

 

「ふむ……ある意味では理想的な支配者とも言えるのかの。

 普段は細かいことを言わず、それでいて問題が発生した場合は真っ先に解決しようと動くのじゃろう?」

 

「だからこそ余計に、密かな忠誠がとめどもないのですが。

 さて、そろそろネギ様に彼女達を紹介すべきですかな」

 

 うん? ネギが随分とそわそわしておるな。

 アスナの話はナギから聞いておったはずだが、原作とやらと随分と違っておるせいで気になっておるのかの。

 

「あ、あの。あの人って、カリンさんと刹那ちゃんですよね? それに、水銀燈まで……」

 

「ふむ? その名は聞いた覚えがないが……あの様子では、新人は幼い一人しかおらんな?」

 

「あの幼子に関しては、正確に言えば配下ではなく保護下にあると言うべきでしょうな。日本の協会の子女と共に預かったそうですので。

 もっとも、これ以上は当人より聞いたほうがよいでしょう。少々お待ちを」

 

 マシューはそう言って、あの者たちを呼びに行ったが……声をかけるのは一番小さい、人形のような者なのか。それも、恭しいと表現すべき態度なのはどうしてであろうな。

 

「さて、まずは紹介いたしましょう。

 幕田公国の裏の情報処理部隊長、雪花様はアリカ様と面識がございましたな。

 こちらが、幕田公国の影のナンバー2、ゼロ様。

 エヴァンジェリン様のメイド部隊ナンバー2、イシュト様。

 雪凪ちゃんは、どの様に紹介すればよいでしょうかな?」

 

「そうですね、特に秘密にすべき事もないでしょうし、本人に任せましょう。

 雪凪、できますね?」

 

「は、はい!

 白の烏族、桜咲雪凪です。将来は白雪の一員として雪花様のお役に立てるよう頑張ります!」

 

「はい、よくできました」

 

「それと……この場合は、どちらで呼ぶべきですかな?」

 

「身内だけだから、どちらでも。

 原作を知っているからアスナの方が通じるかも、とは聞いている」

 

「ふむ、確かにそうですな。

 こちらがアスナ様。ウェスペルタティアの王家の血筋であり、ネギ様の親類縁者となります。

 現在は静養中とされておりますので、ここで会った事は問題のない事が確認できた相手以外には言わない方がよいでしょう」

 

「うむ、そうじゃな。私もこうして会うのは随分と久しぶりじゃ。

 息災であったか、アスナ」

 

「うん。アリカも元気そう。

 ナギは……相変わらずバカっぽい?」

 

「うぐっ!?

 そりゃねぇぜ姫子ちゃん」

 

「大丈夫。感謝はしてる」




な、何とか間に合ったぜ……作業時間の確保が難しいのなんの。
とりあえず問題が出ていたHDDを、SSDに換装。環境も概ね戻せたし、ついでに調整もちょいちょいやって、快適快適。だけど使う時間がぁぁぁぁぁ

そんなわけなので、まだしばらく不定期気味になると思います。予約投稿(水曜夜)時点で、次話が1文字も書けてないとかどうなのさ。


2017/04/25 言えるですが→言えるのですが に修正
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